【始まりの街ルビキュータ】の酒場 兼 クエスト受付エリアは、大宴会場に様変わりしていた。
【ルビキュータ】にいるプレイヤー総出で行われた、エリアボス『宵闇の蟒蛇』のレイド戦。
残念ながら犠牲者が出てしまったが何とかクリアできた。多くのプレイヤー達は、報酬の『大蟒蛇の薬酒』のあまりの美味さに杯を空け続け、おごりだという宴会料理に舌鼓を打っていた。
:::エリアボス 宵闇の蟒蛇:::
常に”絶”の状態で獲物を狩る蛇。気配が感じられず真横にいても気が付かないほど。刃がはじかれるほどの硬い鱗と全身筋肉の素早い動き、麻痺牙と硬い鱗から発生する音波でめまいを起こさせ、遠距離からも鱗を飛ばして攻撃してくる。特殊な毒酒を飲ませることで気配を感じることができ、毒も弱くなる。年を経て何度も脱皮した個体は、太さ直径3mを超え、体長50mを超える記録も存在する。
倒すと【ブンゼン】エリアが解放される。一度倒すと二度と現れない。
:::No501 Cー300 大蟒蛇の薬酒:::
大蛇を特殊な方法で絞めて強い酒に付け込んだ希少な薬酒。あまりの美味さに戦争が起こる原因になったとの噂があり魔酒とも言われる。
胃腸、血行、免疫などに良く効き、生物由来の毒なら一口飲めば解毒できる。(二日酔いには効かない)
プレイヤー達はワイワイと騒ぎ、酒を浴びるように飲みながら先ほどの戦いについて興奮しながら語り合っていた。
「いやー、たかがゲームだと思っていたけど手ごわかったな!」
「おまえ幻獣ハンターだろ?現実世界にああいう大蛇はいるのか?」
「いや見習いだけどな。たしか師匠がオチマ連邦の奥地のジャングルで、でっかい蛇と戦ったって自慢してたな。話半分に聞いてたけど本当にいるかもな」
「討伐も大変だったが、納品クエストが面倒くさすぎぃ!」
「本当だよ!なんだよ月が真上に来ているときしか咲かない花を250株納品って!」
「しかもサイズ制限があるから、見つけても全部採取できないし」
「採掘の納品クエストは、剣を使う奴らが泣いてたぞ。『リモコンラット』の巣穴にぶつかっちまうと、岩を操作してゴーレム軍団で襲ってくるんだと」
「聞いた聞いた。『リモコンラット』が横穴の中に隠れながら操作したゴーレムで襲ってくるから、”凝”でも全然見つけられなかったんだろ?」
「”周”で剣を覆っても、岩が相手だと集中が切れて刃こぼれしてくるから、手入れが大変だったみたいだな」
大変で面倒くさかったことを愚痴っているはずなのに、酒を酌み交わしているプレイヤー達は笑顔だった。
討伐するために数人のゲームオーバーが出てしまい、一度目の戦いではボスモンスターを逃がしてしまった。
二度目の戦いでようやく倒すことができたが、ゲームオーバーになってしまった者たちは戻ってこないのだ。
しかしハンターなんていう職業を志してから、ハンター試験、そして実際のハントで少なくない死者を見てきたプレイヤー達は、自分の中でうまく切り替えるすべを心得ていた。
悲しむときは悲しむ、楽しむときは楽しむ。
そうやって切り替えられないとハンターなんかできないし、実際にそれができない者から死んでいくのだった。
そんな楽し気な宴の雰囲気の中で、ひときわ騒がしいテーブルがあった。
「いやーマクトアには助けられたよ、ありがとう!」
「もう何度も聞いたから大丈夫だよ。しかしあんな手ごわいモンスターでもCランク、報酬も指定カードじゃないなんて歯ごたえのあるゲームだよね。もちろん討伐だけがカード入手方法じゃないんだろうけど、これは鍛えなおさないといけないかもね。しかし、エリアが解放されたから次の【ブンゼン】?とかいう街に行くか、【アントキバ】の攻略を進めるか迷っちゃうね!【アントキバ】は明日月例大会とかいう月一回の競技大会があるみたいなんだよ。賞品がかっこいい名前のアイテムだったから、あれは指定カードなんじゃないかとにらんでるんだ!大会受付は8:00からだからこの宴会が終わったら移動しないとね。【アントキバ】のから北東に抜ける街道も封鎖されていたから、また討伐かなんかの条件で通れるようになるはずなんだ。やることが沢山あるから優先順位をつけながら攻略していかないと!」
「・・・あいかわらず語りだすと長いけど、酒飲むとさらに絶好調だな・・・」
一時的にクランマスターとして、討伐の主軸になったゲームハンターのマクトア。彼のまわりには討伐戦の時に助けられた者だけでなく、ゲーム知識の基礎から教えてもらった者たちが集まって、宴会を楽しんでいた。
「本当にクランを解消するのか?また次のエリアでも強敵が出る可能性があるだろう?」
「そうだよマクトア。せっかくこのゲームをするのも楽しくなってきたんだ。一緒に攻略しようぜ!」
「うーーん。いや予定通りこれでクランは解散するよ。僕は僕でこのゲームを検証して極めていきたいんだ。ジョブシステムとか魔法とか飛空艇とかがあるかもしれないし。それに最初はみんながゲームに慣れてないから手助けしてたけど、もうみんな慣れてきて大丈夫そうだし」
「・・・そうか、残念だけどしょうがないな」
「しかしまだこのゲームに来てまだ2週間なんだな。もっと長く感じるよ」
「本当だよね、まあ色々あったからな」
実際、この【ルビキュータ】でのエリア解放戦は多くの出来事があり、また少なくない遺恨も残してしまった。
***
【ルビキュータ】の街 ゲーム開始からの出来事
ゲームハンターのマクトアが一番に街に到着する
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【ルビキュータ】の先に行こうとすると『兵士』に止められる
実力を示せと言われる
街の人からも、大蛇が出るようになって物流が滞っているとの情報多数
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『クエスト受付嬢』がいるので彼女からクエストを受けて
モンハン的な★1クエストをどんどんクリアしていく
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マクトア、プレイヤーでゲームをあまりしない層を手助けし始める
↓
なんとなくまとまり始める。互助組織的なゆるいものが出来上がる
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マクトアがクランマスターとしてクランを創ることになる
↓
一定のクエストをクリアすると街に『領主の使い』が出現
「大蛇が居座っていて危険なので通行止めにしている。
通りたければ討伐するしかない。」
↓
大蛇は気配がほとんどなくて知らないうちに攻撃を受けてしまう
毒酒を飲ませると気配が分かるようになり麻痺毒も力も弱体化できる
弱体化前の麻痺毒はかすっただけで心筋すら止まって死んでしまうほど
(密林迷彩柄のガララアジャラっぽいモンスター)
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『クエスト受付嬢』から緊急納品クエストが受注可能になる
納品クエストが数多く発注される(30クエストぐらい)
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必要な納品数が膨大
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貢献度によって最終的なクエスト報酬量が変動する
貢献度判定=納品数+討伐与ダメージ量+アルファ
(隠し判定、他プレイヤーへのリーダーシップなど)
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マクトアのクランが多くの納品をこなしていく
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一部のゲームオタクをバカにしているイキったプレイヤーがマクトアに嫌がらせを始める
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嫌気がさしたマクトアが【アントキバ】に拠点を移す
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クランが解散される
↓
それぞれのプレイヤーが納品アイテムを取り合ってギスギスしだす
↓
納品クエストの攻略スピードが遅くなる
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なんとか納品クエストが完了。街の薬師に毒酒を造ってもらう
街道の兵士が討伐時に限り通してくれる
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昼に毒酒を森に仕掛ける
夕方頃、大蛇が毒酒を飲んで気配が分かるようになる(弱体化発生)
↓
初のエリアボス戦 開始
↓
レイド戦の連携がギスギスしていてうまくいかない
戦闘力のないプレイヤーも多数参加、足手まといになる
足の引っ張り合いが発生
念能力を他のプレイヤーに知られることを恐れて、応用技までしか使用できない
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『グリードアイランド』初のゲームオーバー発生(=死者5名)
ショックを受けているうちに夜になり、討伐できずに逃げられる
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原因となったイキリプレイヤーが半ば村八分を受ける
イキリプレイヤーがマクトアを逆恨みする
↓
再度、緊急納品クエストをこなしていくが全く進まない
↓
元クランメンバーが
マクトアを【アントキバ】から帰ってきてくれるように説得を開始
↓
マクトアが【ルビキュータ】に戻る、一時的にクラン再結成
(討伐までの期間限定)
↓
役割を分ける提案を行う
戦闘力が無いプレイヤーは納品クエストを全力でおこなう
戦闘力に自信があるプレイヤーはレイド戦に集中する
↓
クランに入っていない者も一時的に同盟を組む
↓
戦闘力に自信のないプレイヤーが特に納品をがんばる
納品クエストがサクサク進む
↓
納品クエストが完了、再度街の薬師に毒酒を造ってもらう
街道の兵士が討伐時に限り通してくれる
↓
今度は早朝に毒酒を森に仕掛ける
昼頃、大蛇が毒酒を飲んで気配が分かるようになる(弱体化発生)
↓
第二次エリアボス戦 開始
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レイド戦。戦闘力に自信のあるプレイヤーが主力
一部実力の無いイキリプレイヤーも参加
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マクトアの活躍で最初は連携がうまくいく
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反発したイキリプレイヤー数人が勝手な行動で窮地に陥る
マクトアが念能力を発動させて助けるが数人死亡
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イキリプレイヤーの生き残りがマクトアに更に恨みをつのらせる
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無事討伐
『領主の使い』に報告
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エリア解放、全体アナウンス発生
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『クエスト受付嬢』から貢献度に応じた報酬配布
No501 Cー300 大蟒蛇の薬酒
貢献度1位30本 2位20本 3位10本 4~10位5本
11~20位3本 21位~50位2本 51位~130位1本
131位以下はジェニーで支払われる
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『領主の使い』がエリア解放祝いの宴会を主催
宴会中はカードの奪い合い禁止
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貢献度1位のマクトアが死者の弔いで『大蟒蛇の薬酒』を25本ふるまう
つられて何人かのプレイヤーも供出する ←いまここ
***
「まあなんかあったらまた組もうぜ!よし、こんなうまい酒がまだまだあるんだ、また乾杯しようぜ!」
「「「「「かんぱーーい!」」」」
こうして歓喜の宴会は夜通し行われ、『グリードアイランド』で初めてのエリア解放をプレイヤー達は盛大に祝ったのであった。
なお宴会の後
振る舞い酒では足らずに、自分の『大蟒蛇の薬酒』を飲み始める者が続出
美味しいがアルコール度数が高くて次々にプレイヤーがつぶれる
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翌日二日酔い多数
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【アントキバ】の月例大会にプレイヤーが全然来ない
来れても体調が悪くて本調子が出ない