『指輪』と『本』の存在はかなり衝撃的だった。
忠夫は混乱のさなかにあったが、そこはおじさん。
(落ち着け、落ち着け)
(ここがハンターハンター世界でも、そうじゃないとしても)
(判断するために色々な情報は必要だ)
(現在環境や状況、自分の手札、相手の手札)
(そのほかいろいろ確認して)
(とりあえずの短期的な目標を立てよう)
無理やりだがなんとか心を落ち着かせようと努力する。
(そうだ、その前に)
(まずは何かを腹に入れよう)
そういえば早朝から起きて行動していたし、気を失って?から何時間たっているかもわからない。忠夫の経験上、トラブル時は少しでも何か飲食をしてひと息入れて切り替えたほうが、結果的に良い効果があることが多かった。
忠夫は脇に転がっていたバックパックの中から、バンダナに包まれたメスティン(キャンプ用のアルミ製飯盒みたいなやつ)と水筒を取り出した。メスティンからラップに包まれたおにぎりを取り出し水筒のお茶とともにいただく。
(おにぎりのお米も硬くなってないし)
(お茶もまだ熱いままだな)
(ということはそこまで長く気絶してはなさそうだ)
無理やりにでもおにぎりを食べてひと息いれたところで、やっと周りを観察する余裕がでてきた。やはり視野が狭まっていたらしい。
(ここはどこなんだろうな)
(部屋の内装は洋風だけど・・・)
窓のない8畳ほどの部屋に3人掛けのソファーが2台、ローテーブルを挟んで配置してある応接室のような部屋だ。床や壁、天井はすべて木製でところどころアーチのようなデザインが施され、天井には灯りがついていた。
(ドイツとかスイス、オーストリアあたりに近いデザインかなあ)
旅行が趣味で海外もそこそこ行ったことがある忠夫は、そんな印象をうけた。
(とりあえず、ハンター×ハンターの世界)
(しかも『グリードアイランド』だと仮定して行動しよう)
(もし違ったとしても笑い話で済む)
(本当に異世界転移的なことだったとしたら)
(慎重に行動しないと取り返しがつかない可能性があるからな)
改めて自分の所持品を確認してみる。
:::バックパック:::
防水仕様。容量35L。中身は
750ml水筒(熱いお茶入り→少し飲んだ)
メスティン(空)
メスティンを包むバンダナ
スマホに付けれる撮影用単眼鏡三脚付き
100均で買ったアウトドア座布団
速乾タオル
雨具(ズボン)
:::服装:::
速乾Tシャツ
ミドルレイヤー用の薄手の長袖
フード付き防水ジャケット
トレッキングストレッチパンツ
手袋
下着類や靴下
登山靴
アナログ文字盤の腕時計(日付もわかるタイプ)
(スマホがあればなあ)
(電波が届くかどうかでいろいろ判断できたんだけどな・・・)
腕時計は10時15分、日付は25日を指していた。
(高尾山に行こうとしていたのが10月25日)
(ホームで電車を待っていたのが6時ごろだったはず)
(ということは4時間くらい記憶がないことになるな)
まあ本当にハンター×ハンターの世界だったとしたら、日付も時計も合っていない可能性が非常に高いが。
(それよりさっきのアナウンス)
(あの時はなんて言ってたっけ・・・)
忠夫は必死にアナウンス内容を思い出す。
(たしか・・・)
(1週間後の午前10時からプレイヤーがゲーム内にログインする)
(ゲームマスターはキャラクター役をどっかに連れていく、だったか?)
(演技指導がどうとかイベント配置がどうとか・・・)
(そうだ「カセ」とか言ってたな)
(リリース当日9時にカセを外すとか言ってた)
(それでそのあと衣装に着替えるとか)
(ちゃんとロールプレイをしないと罰則があるとか)
そこまで思い出してみて忠夫はふと気づく。
「あれ?ということは・・・『グリードアイランド』がこれから始まるってことか・・・?」
貴重な食料をすぐに全部消費する。冷静になろうとしてもやっぱり少し動揺しています。