知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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その店の味は懐かしい味がした

校舎の砂掃除を手伝った後、ホシノの案内で来たのは、アビドス高校近くの唯一と言っていい飲食店だという「紫関ラーメン」。

 

ラーメン。日本人の国民食といっても過言ではないそれを、キヴォトスで再び食べられるというのか‥‥‥。泣けてきたな・‥‥ニンニクと醤油の香りのせいだな、うん。

にしてもすごい看板だな。犬のラーメン職人のオブジェが木札の看板にくっついている。キヴォトスの一般自民が獣人的なものなのでおそらくは、店主がモデルなのだろう。

 

 

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…‥‥わわっ?」

 

ノノミがガラガラと引き戸を開けると、ラーメン屋の制服そのものを着た猫耳ツインテール従業員がいたが、来店したお客さんが知り合いであることに驚いて語っているようだ。

 

「あの~☆6人なんですけど~!」

 

 

「み、みんな‥‥どうしてここを‥‥‥‥!?」

 

「うへ~。やっぱここだと思った。」

 

「どうも。」

 

「せ、先生まで…‥‥やっぱりストーカー!?」

 

まじで警戒されてるじゃねえかよアンタ。

 

「お疲れセリカ。ユニフォーム似合って…‥‥」

 

「やめて気持ち悪い!まさか先生の同僚のアンタもストーカーなの!?」

 

普通にショックだ。そんな目で見なくていいじゃないか‥‥褒めただけじゃん。これと一緒にしないでくれよ、オレは紳士だぜ?

 

「うへ、二人は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの。」

 

「ホシノ先輩か…‥!‥‥ううっ!!」

 

「アビドスの生徒さんか、いらっしゃい。セリカちゃん、おしゃべりはそれくらいにして、注文受けてくれな。」

 

厨房からセリカを注意したのは看板のオブジェまんまの犬のラーメン職人。その体でラーメン作るのか?てか左頬の十字傷が気になる。

 

「あ、うう‥‥はい、大将。それでは、広い席へご案内します‥‥こちらへどうぞ‥‥。」

 

セリカよ、接客業は笑顔だよ。ほらもっと…‥‥睨まないでください。

 

思ったよりも広めのテーブル席に案内されるが、ある事に気が付いて立ち止まる。

 

「先生、先に座ってくれませんか?」

 

「え?どうして?」

 

ただ一人の野郎が先に座ったら色々と不味いからですよ。ただでさえセリカの視線とこの状況がキツイんです。これ以上信用を失う訳にはいかないのです。

 

 

「…‥‥どうしたんですか?先生でもライさんでも私の隣、空いてます!」

 

「…‥‥ん、私の隣も空いてる。」

 

「…‥オレ、カウンター席いきますね。なんか、野郎が一人いても邪魔でしょうし」

 

「ん、そんな事ない。一緒に食べよう。ほら。」

 

 

結局腕を引っ張られてシロコの隣に無理矢理座られてしまった…‥‥‥。

 

「ふむ。」

 

「狭すぎ!シロコ先輩、そんなにくっついてたらライが窮屈でしょ!もっとこっちに寄って!」

 

ち、近い!ノノミほどダイナマイトな訳ではないが、この距離はまずい。なに?男子いなかったから距離感分かってねえの?あ、ノノミは先生が隣で嬉しそう‥‥‥絵になるなぁ‥‥‥

 

「いや、私は平気。ね、ライ?」

 

「‥‥‥席空いてるからさ、離れた方がいいと思う。」

 

「そうよ!席たくさん空いてるじゃない!?ちゃんと座ってよ!」

 

「セリカちゃん、バイトのユニフォーム、とってもカワイイです☆」

 

「お、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームで決めちゃうタイプ?」

 

「ち、ち、違うって!関係ないし!こ、ここは行きつけのお店だったし‥‥‥」

 

オレもさっきユニフォーム褒めたのに、反応が露骨に違う…‥‥‥。まあ、仕方ないよな、部外者だしね。うん。

 

「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだねー。」

 

「変な副業はやめてください、先輩…‥‥‥。」

 

 

ホント楽しそうだな。とても借金返済に勤しんでいるとは思えない。

 

「‥‥‥‥‥…ふふっ」

 

「‥‥‥‥‥‥?どうした先生?」

 

滅茶苦茶朗らかな顔だ‥‥‥。すごくいい顔してる‥‥‥‥

 

「青春してていいなーって思ってさ。だから、私は先生やってるんだなーって。」

 

 

‥‥‥‥‥心の底から先生なのかこの人。ドンパチに巻き込まれる以外は天職ってことか。

オレはそういう訳じゃないけど、笑ってるっていうか、幸せに満たされてる人は好きだよ?余程の下種野郎でなければ。

 

 

「‥‥‥‥‥ライも青春しなよ?まだ若いんだから。」

 

「え?でもオレ‥‥‥‥」

 

 

「も、もういいでしょ!ご注文はっ!?」

 

 

「私はチャーシュー麺っでお願いします!」

 

「私は塩。」

 

「えっと‥‥‥私は味噌で……」

 

「私はねー、特性味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」

 

「二人とも遠慮しないで、じゃんじゃん頼んでねー。この店、めちゃくちゃ美味いんだよー!アビドス名物、紫関ラーメン!」

 

いつの間に注文してるし。というか、借金返済してるのにお金大丈夫なの?特に一番高そうな注文の最上級生の小鳥遊ホシノさん。

 

「…‥‥‥ところで、みんなお金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩におごってもらうつもり?」

 

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら、限度額までまだ余裕ありますし。」

 

ノノミってお金持ちなのか?まさかとは思うが、実家が太いからって出汁にされてるわけじゃないよな?‥‥‥‥‥考えすぎか。

 

「いやいや、またご馳走になる訳にはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね、先生?」

 

「初耳なんだけど!?」

 

「‥‥‥え?あはは、今聞いたからいいでしょ!」

 

「…‥‥‥ホシノ、最初からその気だったのか。」

 

「先生としては、カワイイ生徒たちの空腹を満たしてやれる絶好のチャンスじゃーん?」

 

…‥‥‥あれか?私たちの飯代も奢れないくせに借金問題に首突っ込むの?って感じで試してるのか?

 

知ってるか?それ、()()()()()()()()()使()()()()()()()()()

 

 

「グぬぬヌ……‥‥ようし、今日は私の奢りだああああ!!…‥‥あ、私特製ラーメンね。」

 

 

大人のカードを天高くつきあげて、やけくそ気味に宣言する哀れな同僚の姿。ま、こういうのって舐められたら終わりな節あるし、これでいっか。

 

 

「ライも今日は私の奢り「特製ラーメン特盛、フルトッピングで。」…‥‥え?」

 

 

「‥‥‥‥奢ってくれるんだろ?」

 

 

捜索の準備代、これでチャラな。

 

 

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___________

 

 

「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」

 

「ご馳走様でした。」

 

「うん、お陰様でお腹いっぱい。」

 

「久しぶりのラーメン、美味かった…‥‥あざす。」

 

本当に感謝してるよ先生。昔、友達と通ってた店に滅茶苦茶似てる気がしたのもあってか、思わず泣きそうになったよ…‥‥。

 

会計は結構な額になったが、ノノミのカードを断り、自分の現金のほぼ全てを使って支払ったのはカッコよかった。大丈夫、帰りの電車賃くらいは貸してあげるから。オレ、鬼じゃないし。

 

 

「早くでてって!二度とこないで!仕事の邪魔だから!」

 

「え?オレ暫くアビドスにいるから通う気なんだけど‥‥‥ダメ?」

 

次はメガ盛りだな。魔法の言葉、半チャーセットも唱えるとしよう。

 

「ダメに決まってるでしょ!!出禁よ!!」

 

仕方ない。セリカがいない時間を見つけ出してこっそり食うか。オレの全品完食までの道は遠ざかったな…‥‥。

 

「あ、あはは…‥‥セリカちゃん、また明日ね‥‥‥。」

 

「ホント嫌い!!みんな死んじゃえ―!!」

 

可愛く言うんじゃないよ、そんな言葉。学生特有の冗談だろうけど。

 

 

「…‥‥‥そっか。じゃあ、死なない様にしないとね。んじゃまた。」

 

 

右手を軽く上げてその場を離れる。この後はフィールドワークをする予定だ。どこに何があるのか、どんな店がどんな所にあるのか等。実際に足で稼ぐ情報の価値は極めて高い。

 

今日は夜の街も歩くとするかな。たまたま賞金首と会えるかもしれないし、もしそうなったら匿名で寄付でもするかな。

 

 

 

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