紫関ラーメンでの昼食後、アビドスを出来る限り歩きまわってみたが、案の上店も人もD.U.と比べれば格段に少ない、少なすぎる。いくら電車の本数が少ないとは言っても、これなら郊外に出稼ぎに行った方がいいし、少ない住民と話してみるとそれ以上の問題が浮かび上がってくる。
砂嵐。数十年前から頻発・大規模化した自然災害による被害。仮に、アビドス高校が借金を返済したとしても、人口を増やして産業を活発にする町おこしを行って成功したとしても、アビドスという場所そのものに不安を持っている人が多い。言いたくはないが、かなり絶望的だ。
‥‥‥‥というか、借金を返済できずにアビドス高校が廃校になった場合、彼女たちはどうなるのだろうか?連邦生徒会が他の学校に転校させるのだろうか?そうなれば、他の自治区でこれからの学生生活を送ることになり、ここに戻ることはほとんどなくなるだろう。
シャーレが出来ることにも限界はあるし、シャーレの力で出来たとしても学園としての体裁やメンツに関わってしまう。
「せめて、毎月の利子分だけでも安定して返せるようになれば…‥‥」
いっそ定期的にみんなで郊外に出稼ぎに行くとかどうだろうか?セリカだってバイト頑張ってるんだし、みんなでそういうのやって……‥‥るんだろうな。アヤネが掘り出し物の売却だとか言ってたし。ヘルメット団の武器とか弾薬、壊さずにうっぱらえば良かったかな。
‥‥‥待てよ。
夜道を歩く足が止まり、ちかちかとしている電柱の下でふと思い出す。
「‥‥‥‥‥そういえば、ヘルメット団の子が」
えーっと、オレの事を勘違いして報酬だとか言ってたな‥‥‥。つまり何らかの目的を持った第三者に雇われていた‥‥?
「…‥‥‥今からは、さすがに遅いか。」
明日も会議するはずだから、そこで話してみるか。案外、誰かの陰謀があったりして__
「こんばんは。月の綺麗な夜ですね。」
‥‥‥‥真後ろっ!?
半ば反射的に、再び歩を進めようとした足が真後ろに向き、
「はじめまして、シャーレの真道ライさん。」
黒い。丁寧で落ち着いた声色と物腰、スーツは紳士と言えるだろうが、肌も、気配も、何もかもが黒い。眼と亀裂のような白い光が走り、暗くてよく見えないが靄のようなものを出している
「…‥‥‥‥誰だ、アンタ。」
オレが問いかけると、ソレはニっと広角を挙げて、まるで磨かれた歯のように白い光を口からのぞかせる。
…‥‥
久しぶりだ。こんな感覚。
「私は‥‥‥”黒服”と呼ばれている者です。結構気に入っているので、よろしければそのようにお呼びください。」
「その銃、何時抜かれたのですか?こちらに体を‥‥いや、私の声が聞こえた瞬間、でしょうか?全く分かりませんでした。ただの人間が‥‥いや、
「‥‥‥‥‥‥師匠に死ぬほど鍛えられたんでね。速さだけじゃないってとこも、見せてやろか?」
‥‥‥‥‥鉛玉をお前のド玉に一発ずつ___
「何故?」
「…‥‥‥‥は?何言って・‥‥」
「何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故‥‥‥‥」
「どれほどの修練を積み重ねれば、それほどの速さを?どれだけの経験を積めばそれ程の反応を?ああ、きっと精度も素晴らしいのでしょうね。気なります。気になって仕方ない…‥‥」
黒服の右手がゆっくりと銀色の銃身に伸びる。
震えが徐々に大きくなっていくのを必死に左手で抑え込むが、心音が酷く、重く、大きくなっていく。
・‥‥しかし、寸での所で黒いその手は止まり、思い出したようにひっこめる。
「これは失礼。今日は挨拶だけのつもりでしたが、つい。」
ゆっくりと黒服が近づき、電柱の反対側‥‥‥‥オレの真横で立ち止まる。
「先生と会う日もとても楽しみです。彼女には、いずれは私の
では、また会いましょう
「っ!!待っ…‥‥!?」
直ぐに振り向いたが、そこに黒服の姿はなかった。先程まで感じていた不気味さが無いのを認識すると、フラフラ電柱にもたれかかり、座り込んでしまった。
‥‥‥‥‥黒服、か‥‥‥‥
(プルプルプル‥‥)
「!!‥‥‥‥って、アヤネ?」
なんでこんな時間に‥‥‥
「はい、もしもし。どうしたの?」
『ライさん!お昼の後、セリカちゃんを見かけませんでしたか!?』
「セリカ?知らないけど…‥」
『セリカちゃんに連絡がつながらないんです。数時間も‥‥』
「‥‥‥‥‥家には?」
『今来てますけど、帰った様子が無くて‥‥‥今まで、こんな事一度もなくて…‥‥‥』
「‥‥先生に連絡したか?」
『は、はい。ホシノ先輩とセリカちゃんの居所を探してもらっています。』
「‥‥‥‥すぐに行く。校舎か?」
『はい。みんな集まっています。』
「‥‥‥‥また後で。」
‥‥‥‥誘拐。相手は誰だ?ヘルメット団か?それとも、
「…‥‥‥‥黒服。」
さっき会ったばかりの不審者という事も会って、直ぐに思い浮かぶが、オレと話しに来たという事は、そんな時間、いつ?いきなり姿を現した以上は只者ではないのだろうが。
「…‥‥‥無事でいろよ、セリカ。」
お前の態度も割とキレたかったが、
校舎に向かって、暗闇の中を黒い男が駆け抜ける。まるで、獲物を探す、猟犬のごとく。