知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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気が付いたら知らない天井だった

(ダダダダダダ!!)

 

絶え間なく装甲に叩きつけられる弾丸。しかし、無慈悲にもそれは重々しい歩みを進めて火を噴く。ある物は遮蔽物に身を潜め、ある者は盾で受け流し、ある者は全速力で射線を切る。

しかし、これはあくまでも時間稼ぎ。もとより、戦車を銃弾で倒そうなんて考えていない。

 

 

「先生、ドローンに爆発物の積載、完了しました!」

 

 

「よし、ノノミとシロコ、随伴しているヘルメット団を片づけて。ホシノとライは戦車の注意を引いて足止め。セリカ、アヤネ、頼んだよ!」

 

先生の指示が飛ぶと、ノノミがミニガンの連射速度を最大にしてヘルメット団を薙ぎ払い、ホシノとオレが戦車の周りを駆けまわりながら射撃で牽制する。ホシノは盾で受け、オレは全力で跳躍して射線をを切る。

 

敵側の注意がオレたちに向いている間に、爆発物を抱え込んだドローンがアヤネの操縦で、戦車直上に移動する。

 

対戦車戦の基本戦術、トップアタック。本来は専用のランチャーやミサイルを用いるが、奇襲の際にシロコのドローンのミサイルは打ち切ってしまったため、あるだけの爆発物をアヤネのドローンにギリギリまで詰め込んで爆発させることで代用とした。

 

ただし、起爆装置は無い為、セリカの狙撃で爆破するのでドローンは当然お釈迦になるし、

オレが戦車に取り付いてやったほうが早いと提案されたが、無理無茶無謀だとして却下された為このような形になった。経験あるのに。

 

因みにドローンはシャーレの経費で落とすことにした。(頼むよ連邦生徒会の方)

 

まあ、どの道みんな怪我なく帰れるからいいか‥‥‥‥って、不味い!?

 

セリカが集中して狙撃しようとしているが、あの位置は()()()。セリカの位置取りは決して悪くはないが、経験不足だ。

 

‥‥‥‥もし、直撃したら。ヘイローがあったとしても

 

 

砲塔が僅かに動くのが見えてしまった瞬間、嫌な予感は確信に変わり弾を瞬時に再装填し、目にも止まらぬ勢いで跳躍する。誰も気づいてない。気づいていたとしても駆け付けられるのはオレだけだ。

 

酷く長く感じる数秒間。体は宙を舞い、右手一本での射撃。大胆すぎる動きの中で撃鉄を落とす。

 

瞬間、一発の弾丸にドローンの爆発物が撃ちぬかれて爆発。振動や圧力で砲口がぶれるも吐き出される8.8㎝弾。

 

ツインテールの少女を左手で押し倒すように抱えながら、銃口を僅かにずらす。

 

更に5発。弾としては大きな、しかし高速で飛翔してくるそれに寸分の狂いもなく叩きつけられる一回り以上も小さな弾丸。しかし、その火力は折り紙付き。数度だけでも射線をずらしてやるだけならやってやれないことはない。

 

少女を砂の上に押し倒しながら倒れこむように着地すると、鼻先に鋭い風圧が通り過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…‥‥‥‥え!?いや、え!?」

 

「何がどうなって‥‥‥」

 

「…‥‥はっ、セリカちゃん、ライさん!お怪我は!?」

 

「…‥‥多分、砲撃のショックに掠ったのかも。セリカちゃんはぐったりしてるだけだけど、ライ君はわからない。急ごうか。」

 

「急ごう。アヤネ運転お願い!シロコとホシノは荷台で警戒と索敵!」

 

 

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‥‥‥‥‥また、知らない天井だ。

 

頭と目だけをだけゆっくりと動かして状況を確認する。

 

清潔で実用的な寝具に青いカーテン。病院‥‥‥いや、にしては人気(ひとけ)がない。

となると…‥‥

 

「保険室…‥‥」

 

ベッド近くの椅子に銃がめられたホルスターベルトやハーネスが掛けられており、コートは綺麗にたたまれている。

 

無意識に銃を取ろうと手を伸ばすが筋肉痛のような痛みが体を走る。あれだけの跳躍と早撃ちに加えて、砲弾のショックにさらされたのだろう。防弾コートと言えどもむち打ちになるし、無防備な頭は揺さぶられてしまう。まあ、それだけなのだからラッキーだったといえるだろう。

 

…‥‥‥セリカは、どうなった。

 

 

そうだ。何のためにこうなってしまったのか忘れるところだった。飛び起きて彼女の姿を探そうとするも痛みでつい悶えて息が荒くなる。本当にまだまだだなオレ。

深く息を吐きながら再び寝転がってぼーっと天井を見ていると仕切っていたカーテンが開かれる。

 

 

「おはよう、ライ。調子はどう?」

 

先生と‥‥‥セリカか。二人とも心配そうな眼でオレを見てくるが、見たところ大した外傷はなさそうだ。

 

「良かった。二人は無事だったんですね…‥‥」

 

「うん。今日の負傷者はライだけ。といっても、骨が折れてたり意識が混濁してる様子はないね。一応、明日病院行く?」

 

「‥‥‥‥いや、寝れば治りますから。気にしないで先生も休んでください。」

 

先生は少し怒ったような顔になるが、諦めたように息を吐く。

 

「…‥‥‥分かった。私はこれで失礼するね。ライはこのまま寝ててもいいってアヤネ達が言ってたから今日はお泊りしな。…‥‥セリカはどうする?」

 

「私は、もう大丈夫。アヤネちゃんや他のみんなに顔を合わせてから帰る。…‥‥バイトにも行かなきゃだし。」

 

「分かった。じゃあ、二人とも無理しないでね。」

 

「あ、あの!ええと‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

「そういえば、先生にまだお礼言ってなかったなあって、思って…‥‥。あ、ありがとう‥‥色々と。」

 

ふむ。ツンデレって素直になった時のギャップがすごいな。まるで別人のような可愛さだ。

 

先生は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、直ぐに穏やかな笑みを浮かべて保健室を出ていった。

 

「あ、あんたも…‥‥、ありがと。」

 

「…‥‥‥大した事はしてないよ。」

 

「そ、そりゃそうよ!勝手に助けようとして怪我しちゃって!!頼んでないし自業自得なんだからっ!!ヘイローもないのに、バッカじゃないの!?」

 

「‥‥‥…そうだね。バカみたいだ、オレ。」

 

「…‥‥‥‥ほんとに、」

 

「え?」

 

「本当に、大丈夫なの?」

 

「‥‥‥‥あーそうだなー。紫関ラーメン食べたら全快するかもなー」

 

「なっ、なんでそんなに棒読みなのよ!?分かった!分かったからっ!?勝手にきて食べてよ!!」

 

「‥‥‥‥言質、ありがとさん。」

 

「え…‥‥‥はめたわね!?もう、知らない!!またね!!」

 

セリカは顔を真っ赤にして出ていった。

 

 

…‥‥からかいすぎたかな。

 

 

そうして、オレはアビドス高校の保健室で一夜を明かした。

 

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「あ!ライさん、おはようございます!怪我の具合はどうですか?」

 

翌朝。保健室で目を覚まして対策委員会の教室に行くと、すでに先生以外の面々がそろっていた。

アヤネが心配そうに声をかけてくれるが、問題ない。

 

「平気平気、()()()()怪我のうちに入らないよ。手足も付いてて動くしさ。」

 

「そういう問題なのでしょうか‥‥‥‥」

 

「おー、流石だね~。やっぱり、おじさんと違って男の子はじょうぶだね~」

 

盾があったとはいえ、諸に食らってピンピンしてたチビがなんか言ってらぁ。

 

「セリカちゃんを助けてくれたのは嬉しいのですが、無理はしないでくださいね?」

 

‥‥‥‥‥スンマセンでした。

 

「‥‥‥‥ところでライ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

「答えられるヤツならいいけど…‥‥何?」

 

「どうして戦車がセリカを撃つってわかったの?ライ以外は誰も気づいていなかった。」

 

「先生も気づいてはいましたけど…‥‥‥」

 

「ライさんの方が明らかに早かったですね。」

 

「そりゃあ、経験と研鑽の賜物だよ。」

 

別に嘘ではない。師匠のしごきに耐えぬき、幾度もの死線を潜り抜けてきたからな。

 

「…‥‥‥‥ふーん。」

 

まーだ疑うか。大抵は経験と努力でどうにかなるの!

 

「…‥‥みんな、おはよう。」

 

先生、丁度いいところに。心にもない追及されそうで困ってたんですよー。

 

「それじゃあ、先生もいらっしゃいましたし、ライさんもいることですし、今日こそまともにできるかもしれません」

 

今日こそはまとも‥‥‥?何すんの?

 

「‥‥‥それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。」

 

会議、ねえ…‥‥。これ、真面目にやるべきだよな?

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