「どの面下げて来たんだよ君らさあ!?」
「誰かと思えばあんたたちだったのね!!ラーメンも特盛にしてあげたし、ライが奢ってくれたのに、この恩知らず!!」
オレとセリカが集団に向けて怒声を上げる。キレちまったよ久しぶりに…‥‥
「ぐ、ぐぐっ‥‥‥。」
何なんだよクソッタレ!!
校舎に戻ってすぐに、校舎から15km地点で日雇いの傭兵と思われる大規模な兵力を確認したというアヤネの報告を受けて、先生からの出動命令が下されて、食後の運動がてら迎撃しにいったらさぁ!!ラーメン屋で別れたばっかりの貧乏会社じゃねえかよ!?
「そりゃあ飯代なくなるわな!もっと計画的にやれよ!!ちゃんと飯を食え!傭兵雇う前に社員にちゃんと食わせろ!!」
オレの眼に狂いはなかった。貴様はアホだ赤毛社長!!
「そ、そっちなの!?もっとあるでしょ!」
「え、だって仕事なのは仕方ないじゃん。」
経験積んだら分かるよセリカ。
「そういうこと♪それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だし、本当に申し訳ないけどね。公私はキッチリ区別して、受けた仕事はキッチリこなす。」
「‥‥‥‥なるほど。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ。」
「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」
「ちょっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!私は社長!」
白いサイドテール、黒パーカー、紫帽子を順に指さしながらどこか必死に、何故か誇らしげに紹介し始める。
「あっちが室長で、こっちが課長…‥‥」
「はあ…‥‥社長。ここでそういう風に行っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ…‥‥・」
ほんとだよ。初めて見た時の威厳はどこ?そして君本当に大変そうだね‥‥‥‥
「誰の差し金?‥‥‥‥いや、答えるわけないか…‥‥‥力尽くで口を割らせるしか。」
「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ?‥‥‥‥‥総員!攻撃!」
アホ社長の指示で、後ろに控えてた傭兵の集団が銃を構えて隊列を組み始めると、オレはバックステップしながらわざと狙いをつけずに
傭兵達が小銃を連射し始めるが、咄嗟に前に出たホシノの盾と防弾コートでそれを防ぎながら、弾をバラまいて遮蔽物まで後退する。これまでの不良達とは違い、今回の相手は傭兵。戦いを生業にしている云わばプロの端くれだ。便利屋もかなりの粒ぞろいとみた。ホシノとオレが遮蔽物に入ってからも、シロコとセリカが撃ち返すも余り効果はない。なんせ数もそうだが、先生程じゃないにせよ統率が執れており、火力をしっかり集中させてくるからだ。
「今までとは数も質も違う…‥‥。」
「本当に恩知らずね!」
「よし、ホシノ、ノノミ、セリカで正面を死守。ライとシロコは遊撃して各個撃破。アヤネは私とここで支援するよ。」
成程。守りが固く最も実力のあるであろうホシノと最大火力のノノミ、射撃精度の高いセリカで足止めしつつ徐々に削り、ドローンや格闘、小銃など手数の多いシロコと、精度・速度で勝るオレで便利屋をはじめとした腕利きを倒し、アヤネのドローンで爆撃や情報収集、補給を行うことでこちらの隙を少しでも潰す。
数で劣る分、先生の存在や個々の実力が高く弾薬の心配は少ないという利点を最大限に発揮することで、数で勝るが攻めて来ている為に持ってきている弾薬に限りがある便利屋側を確実に削っていくという訳か。こっちの体力と集中力がもつか、あっちの弾が持つかの持久戦じゃないのかそれ?まあ、校舎と生徒を守るにはそうせざるを得ないか…‥‥…食後にやるにはきついな。
「ん、こっちから行く。」
「‥‥‥‥うん、お好きにどうぞ。」
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傭兵達による弾幕がやみ、辺りを静寂が包む。そして、1人の甲高い___否、嬉しそうな笑い声がそれを破る。
「あははっ!どうよ。これが私たちの力よ!」
「…‥‥‥社長、油断しないで。何かおかしい…‥‥」
「確かに。なーんか静かだよねー。一回爆発しとく?」
「ア、アル様、あれを!」
ネガティブな社員が何かに気が付き指をさしながら社長を呼ぶ。どこか抜けた顔で見上げると、そこには何かを抱えたドローン。
「…‥!みんな散開!」
「え?」
マヌケな声を出す社長を引っ張りながら声をはる課長。ほぼ同じタイミングでドローンが抱えていた荷物を降ろす。地面に着く瞬間、爆ぜる。傭兵の何人かが吹き飛ばされるも、室長のおかげで社長は無事。
「なんなのよいきなり、痛ったぁ!?」
荒事には慣れているはずなのに突然の爆発に驚きあたふたしているその顔に、弾丸が当たる。
「恩知らずの人達には、お仕置きです!」
「食らいなさい!」
敵陣を薙ぎ払う様に弾をバラまき、一人一人を正確に撃ちぬいていくノノミとセリカ。それでも相手は傭兵。不良とは比べ物にならない練度の持ち主たちなので何人かは潜り抜け、小銃を連射しながら接近していく。が、
「ごめんねー、ここは通さないよー。」
正確無比な散弾と大盾がそれを許さない。不良と傭兵の練度が違う様に、傭兵とホシノの練度も違う、と言うよりも隔絶している。
それを見てか、傭兵の何人かが手榴弾でいっきに制圧しようと、ピンを抜いて振りかぶるが、
左右の家の屋根の上からシロコとライが狙撃。数発、或いは一発で手榴弾や手が狙い撃たれ取り落としたり、壊されたりして阻止されていく。
そしてシロコが敵陣のど真ん中に飛び込み、殴り、蹴り、撃つ。
予想外の光景に、社長は唖然とし、室長は笑い、課長はため息をつき、社員は顔が青くなる。
「…‥‥…‥‥」
「社長。どうする?」
「あはは!せっかく見栄張って雇ったのにね、これじゃあ報酬もらえないよー?」
「ああもう!ぶちのめしてやるわ!!ハルカ!」
「はい!アル様の為なら!全員、排除してやります!」
自棄気味になった社長の指示で、ハルカが嬉々として突撃すしていく。真正面から弾を受けているにも関わらずそれをものともせず、ショットガンを撃ちながら接近していく。
「くふふ!じゃあ、私も・‥‥食らえー!!」
それに楽しそうに加わり、鞄の中身____ぎっしりと詰め込まれた数々の爆弾をぶん投げてあた辺りの遮蔽物や住宅を破壊しながら爆炎をまきちらし、機関銃で無数の弾をバラまくことで、正面の陣形を崩し、傭兵を援護する形になる。
「あれは爆弾だったのか…‥‥!」
「先生!傭兵の隊列に変化あり!便利屋の4人それぞれに付いて行くように分かれています!」
「各個撃破に来たか…‥ライ!」
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「…‥‥‥了解。」
多分、黒パーカーの課長。彼女が便利屋の参謀。おそらく傭兵への指示役も彼女だろう。だって一番それっぽいんだもん。てことで、速攻で押さえる。
便利屋の後ろの遮蔽から飛び出して邪魔になる傭兵を数人まとめて気絶させる。さすがに不良とは違い、一発では倒れてくれない。急所に当てなければ。
課長は社長をかばう様に前に出て拳銃を連射して来たため、急所に当たりそうな弾だけを弾き落とし、他はコートで受け流すように回避する。社長もライフルで狙撃しようとしてくるが、高射砲と比べればさした問題ではない。銃口がこちらを向きトリガーを絞るまでの間にスピードローダーでリロードを終え、射線を予測して体を捻り、開脚するように体制を低くして発砲。ライフル弾を弾き、構えている片手に2発を叩き込む。
「痛ァ!?ハンドガンであんなに正確なの!?」
「ん、よそ見。」
二人の注意がオレに向いている隙にシロコが社長を奇襲する。社長も小銃を何発か食らいながらもシロコの胸を的確に狙撃する。スナイパーがあの距離で応戦できるとは…‥‥唯のアホではないらしい。そのままシロコを援護__することはなく銃を左脇に抱えるようにして後ろに適当に発砲。
後ろに回りながら跳んでそのままリロード。拳銃を構えたままつ突っ込んでくる課長のストレートキックを足を抱え込むようにして受けてそのまま投げる。
…‥‥‥黒、じゃなくて女子高生相手に格闘するの何か、その、色々ダメだ。
「‥‥‥‥‥‥噂には聞いてたけど、予想以上だね。」
「へえ‥‥…オレ、有名人?」
「‥‥‥新しい組織シャーレと外から来た大人の”先生”、そして男の人。しかも黒いコートとリボルバー。社長が好きそうだね。」
「ちょっとカヨコ!?」
「そんなことより‥‥…なんでアビドスを狙うのか教えてくれない?」
「そんなこと!?」
「それはできない。言ったでしょ?公私の区別も仕事もキッチリやらせてもらうって。」
「んじゃあ、オレもキッチリやらせてもらうよ‥‥…」
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その後も、便利屋の連携や傭兵の物量に押されたり、セリカが室長に爆弾で遊ばれながらブチ切れたり、社員ちゃんに死んでくださいだとかどいてくださいだとか連呼されながらストックで殴られたり腹に散弾貰いかけたり、クレイモアをゼロ距離で食らう所だったり…‥‥‥‥
そんなこんなで気づけばもう夕暮れ。膠着状態になって大分時間が経っていたのを頭で理解したのは、校舎から流れるチャイムの音が流れた時だ。そして、それは長く続いた膠着状態にピリオドを打った。
「‥‥あ、定時だ。」
「今日の日当だとここまでね。あとは自分達で何とかして。みんな、帰るわよ。」
「は、はあ!?ちょっと待ってよ!!」
傭兵の一人の呟きにより、さっきまでの戦意は嘘のように消え去り、傭兵達は次々と帰る準備をしていく。
「終わったってさ。」
「帰りに蕎麦屋でも寄ってく?」
ラーメンじゃなくて蕎麦なんだ…‥‥そこ詳しく聞きたい。
「こらー!!ちょっ、どううことよ!?ちょっと!帰っちゃダメ!!」
「‥‥‥‥…」
「こりゃヤバイね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて……アルちゃん?どうする?逃げる?」
「あ‥‥‥うう‥‥‥。」
便利屋の面々の顔に、焦りや困惑が浮かんでいる。
「…‥‥‥‥ドンマイ。」
「いつの間に!?」
「アル様に気付かれずに肩に手を置くなんて…・‥‥許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない…‥‥‥」
え、怖…‥‥‥これセクハラ?厳しい時代になったな‥‥‥
「こ、これで終わったと思わない事ね!アビドス!!あと…‥‥えっと‥‥」
「あ、真道ライだよ。」
「ああ、よろしくお願いします‥‥‥‥じゃなくって!」
「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ。」
「うるさい!逃げ‥‥‥じゃなくて、退却するわよ!」
「じゃあねー!」
「待って!‥‥あ、行っちゃいましたね。」
「うへ~逃げ足早いね、あの子たち。」
『…‥‥詳しいことは分かりませんが、敵兵力の大金‥‥‥いえ、退却を確認。困りましたね‥‥‥妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます‥‥‥一体何が起きているのでしょうか‥‥‥。』
「まあ、少しずつ調べるとしよう。まずは社長のアルって子からの身元から洗ってみたら。何か出てくるよ、きっと。」
「…‥‥ああ、それはオレがやるよ。アヤネは残骸の解析してもらってるし、
『では、お願いします。皆さん、お疲れさまでした。一旦、帰還してください。』
「‥‥‥‥‥‥ちょっと用事思い出した。」
「」
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「ただいまー…‥‥あああ…‥‥」
「アルちゃん、どうしたのー?帰って早々に倒れこんじゃってさー。」
「アル様…‥‥どうしましょう…‥‥」
「とりあえず、今日はもう休みましょう…‥‥‥何も考えないわ‥‥‥」
「…‥‥‥お昼代の600円、一応余ってるけどどうする?」
「でもさー、もうお店やってなくない?あのラーメン屋ならどうにかなるかもよ?」
「さっきあんな事あったのに行けるわけないでしょ!?」
(ピーンポーン)
「こんな時間に?いや、まさか…‥」
(ピーンポーン)
「…‥‥聞き間違いじゃ、ない?まさか依頼?」
「!!!依頼しだいなら‥‥‥いや、前金を貰うことが出来れば‥‥!!!」
「アルちゃん‥‥‥その前金を使いすぎちゃったからこうなってるんでしょ?」
「ぐぬぬ…‥‥でも、背に腹は代えられないわ!」
「‥‥‥‥‥‥‥なんか嫌な予感がする。」
「ようこそ!お金を貰えるならどんな依頼でも遂行する、便利屋68で‥‥‥」
「んじゃあ、とりあえず名刺交換しない‥‥‥‥‥…社長?」