ガヤガヤと騒がしく賑わう路地。雑踏の上や中に並ぶ蛍光板や看板。生徒だけでなく動物やロボットの姿をした者も多くいるが、見るからにガラが悪かったり、ボロボロだったり、どこか血走っていたり、胡散臭かったりと、
そんな所に、オレはそこに似つかわしくない少女達と大人と共に来ている。
「ここがブラックマーケット‥‥‥。」
「わあ☆すっごい賑わってますね?」
「本当に。小さな市場をそうぞうしていたけど、街ひとつぐらいの規模だなんて。連邦生徒会の手の及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった。」
セリカ、ノノミ、シロコがそれぞれ呟いているが、こういうのには縁がなさそうだし無理もないだろう。ちなみにアヤネは校舎でお留守番している。オペレーターとして後方支援をしてもらうためと言うのが主な目的だ。いくら行政が頑張っても、人の欲や悪意をなくすことは不可能だし、むしろ抑えられた分だけどこかで広がる‥‥‥故に永遠のユートピアもディストピアも存在することはできない。いずれ綻びが生じる。故に人は時に弾けなければならない‥‥‥師匠の受け売りだけど。
「うへ~普段私たちはアビドスにばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー。」
「ホシノはここに来たことがあるの?」
「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー。ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!」
アクアリウムって水族館を英語でいっただけでは?てかホシノが
「今度行ってみたいなー。うへ、魚‥‥‥お刺身…‥‥」
水族館で魚食いたくなる人だったか…‥‥昔の友達にもいたよ同じタイプ。
『皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起こるか分からないんですよ。何かあったら私が‥‥‥』
「…‥‥大丈夫だよアヤネ。こういう所は堂々と急がずに歩いて、無駄にキョロキョロせず、手をなるべく隠さない様にすればいい。」
「‥‥‥なんでそんなに慣れてるわけ?」
「確かに、いつもよりライさんが雰囲気に馴染んでますね……」
「ん、いつもとは逆。」
「え、オレいつも浮いてたの?何で?」
「ライは男の子だし、女子高生の中で黒いコートって結構目立つしね…・」
「いやいやいや…‥‥本当に目立つのは黒より白ですって。ほら、あんな風に白い制服着て走ってるのとか…‥‥‥‥‥ん?」
こっちに向かってくるあのブロンドのおさげの制服…‥‥トリニティ!?推定お嬢様が何故ここに!?てかチンピラから逃げてるしこっち来る!?
「待て!!」
「う、うわああ!まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!!」
「そうはいくか!」
人多いのに撃っちゃってるよ!?てかこっち来てる!?
「わわわっ、そこどいてくださいー!!」
ここから動くと流れ弾が先生に当たりそうだし、避けて被害が出るのは避けたい。受け止めるかぁ‥‥‥
後ろに軽く飛びながら、少女がぶつかって来た衝撃を軽減しつつ、右手で抱くように抱えながら体勢を微妙に変えながら受け身を取る。アスファルトの上に叩きつけられて数十センチ滑るが大したことはない。少女がオレの胸にうずめる形となった顔を上げて、ほんの一瞬固まったが状況を理解すると、顔を赤くしながら急いでオレの体から立ち上がって涙目で頭を下げ始めた。
「ご、ごめんなさい!だ、大丈夫ですかって、男の人!?す、すみません!」
「気にしないで。それよりあなたは大丈夫?…‥なわけないか、追われてるみたいだし。」
おいシロコ、オレの心配は?って、言ってる場合じゃないか‥‥‥
砂埃を払いながら立ち上がると、二人のチンピラがおさげの少女を睨んでいたので、シロコと共に立ちふさがる。
「何だお前らは。どけ!アタシ達はそこのトリニティの生徒に用がある。」
「あ、あうう……、わ、私の方は特に用はないのですけど‥‥‥。」
「君やっぱりトリニティの生徒か…‥ハスミとツルギさんは元気?」
「し、知ってるんですか!?」
「最近行ったんだよね。トリニティ。」
「そう!そして、キヴォトスで一番金を持っている学校でもある!だから拉致って身代金をたんまり頂こうってわけさ!」
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろう?くくくくっ。」
え、マジで言ってんの?あの妖怪とデッ……じゃなくて裸眼スナイパーを相手取る気か?オレだって怖いのに君ら凄いね‥‥‥蛮勇だと思うけど。あとその笑い方やめろ。あの気色悪い真っ黒野郎を思い出しそうでヘッドショットしたくなる。
「どうだ?おまえらも興味があるなら計画にのるか?身代金の分け前は…‥‥ん?」
不良の言葉が分け前を言おうとした時には、真顔のシロコと笑顔のノノミが銃を構えたことで遮られる。
「悪人は懲らしめないとです☆」
そうしてチンピラの後頭部に叩きつけられる銃床とミニガン。銃弾より痛そうに見える打撃によってチンピラコンビはその場に崩れ落ちた。
「あ‥‥‥えっ?えっ?」
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「あ、ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学園に迷惑かけちゃうところでした‥‥‥それに、こっそり抜け出してきたので、何か問題を起こしたら……あうう…‥想像しただけでも…‥‥。」
例のごとくお手本の様な捨て台詞を吐き捨てて走り去っていったチンピラコンビを見送ったあと、トリニティの生徒、阿慈谷ヒフミはオレたちに自己紹介とお礼を言った。
「いいっていいって。それにしても、トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」
「あ、アハハ‥‥それはですね‥‥実は、探し物がありまして…‥。」
お嬢様ならブラックマーケットに来るまでもなく、欲しいものは大抵買えそうだし、探し物もどうとでもなる気がするものだが…‥‥‥
「もう販売されていないので買うこともできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて…‥‥。」
「もしかして‥‥‥戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学兵器とかですか?」
「もう生産されていないパーツとか?」
『どこかで秘匿されていた情報データとかですか?』
「絶版してる金属フィギュアとか?」
「えっ!?い、いいえ‥‥えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです。」
各々が思いついたものを上げるも、ヒフミが探していたのは何かのキャラクターだと思われるもの。
「ペロロって何?オレまだキヴォトスの事よく知らなくて…‥‥」
「いや、私も聞いたことないんだけど‥‥」
セリカも知らないという事は、マイナーなやつか?幻のアニメと化したふもふもしてるネズミだか熊だかよく分からん主人公みたいなやつ…‥‥
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ!」
そういってヒフミが笑顔でリュックから取り出して見せてきたのは、チョコミントアイスを口にぶち込まれた眼が逝ってしまってる白い鳥。なんか思ってたのと違う。ほら、なんか、もっとさ…‥‥‥か、可愛らしいファンシーなものを想像してた。よく見たらリュックも同じ奴じゃん。キm、ユニークだね…‥‥
「ね?可愛いでしょう?」
「先生、オレ男の子だからよく分かんないかも。」
「私もちょっと……‥‥で、でも流行ってるんじゃない?…‥‥‥界隈で。」
「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねえ!私はミスター・ニコライが好きなんです。」
何ィ!?これ仲間いるの!?てか君そういうの好きだったんだ…‥‥ゆ、ユニークですね、はは‥‥‥‥。
「わかります!ニコライさんの哲学的な所がカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!」
「‥‥‥‥いやぁー何の話だか、おじさんにはさっぱりだなー。」
「ホシノ先輩はそういうファンシー系に全く興味ないでしょ。」
「ふむ。若いやつにはついていけん。」
「歳の差ほぼないじゃん……」
「というわけで、グッズを買いに来たのですが、先程の人達に絡まれて‥‥‥みなさんがいなかったら今頃どうなっていたか…‥‥」
「グッズの為に闇市来る人初めて見たよ…‥‥」
転売とか流出品なら結構見たことあるけど、闇市はまずいって。正実もここは知ってるみたいだし危ないよ?
「ところで、アビドスの皆さんはなぜこちらに?」
「私達も似たようなもんだよ。探し物があるんだー。」
「そう。今は生産されていなくて手に入れにくいものなんだけど、ここにあるって聞いて。」
「そうですか。似たような感じなんですね。」
まあ、オレ達はもっと物騒なブラックマーケットらしいものだけどね。
『皆さん、大変です!四方から武装した人たちが向かってきています!』
「何っ!?」
「…‥‥‥‥まさか、」
アヤネからの通信が入り、ホルスターに手を掛けながら四方を見渡すと、中々の数が殺気立ちながら走ってきている。
「あいつらだ!」
「よくもやってくれたな!痛い目に合わせてやるぜ!」
「倍返しだぁああ!!」
『先程撃退したチンピラの仲間の様です。完全に敵対モードです!』
「望むところ。」
「まったく、なんでこんなのばっかり絡んでくるんだろうね?私達、何か悪いことした?」
「愚痴は後にしようか…‥‥総員戦闘態勢!」
先生の指示が聞こえた瞬間、先生を囲むようにそれぞれがフォーメーションを組む。しかしあの数に囲まれてるんじゃなぁ…‥‥
「…‥‥‥‥。」
「え、ええ!?何ですか!?」
「よし、手伝ってくれヒフミ。オレの援護だ。」
「私も戦うんですか!?」
「いや、君も原因の一因だからね?ほらいくぞ。」
リボルバーを抜きながら走り出すと、ヒフミも小銃を構えてついて来てくれた。
「ほら、ペロペロ?の力みせるよ。」
「ペロロ様です。間違えないでください。」
「あ、はい。」