ヒフミの案内でブラックマーケットを歩き回って既に数時間。それが違法なもの、または非正規品だと分かっていてもそれぞれが銃、爆弾、食べ物、金運が底上げされるという胡散臭い置物、電子機器、フィギュアに目を輝かせたり、聞き込みをしたりするも、目当ての戦車やパーツは何一つ見つかっていない。そもそも見つかったとして、それを買ったり調べたりできるかは別問題だが。
「はあ……しんど。」
「これはさすがに、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴を上げてるよー。」
「えっ‥‥‥ホシノさんはおいくつなのですか‥‥‥?」
「ほぼ同年代っ!」
ホシノのおじさんムーブはさておき、先の見えない探し物に流石に疲れてきているようだ。
「あら!あそこにたい焼き屋さんが!」
「丁度いい、休憩しよう。ってことで先生ご馳走になります。」
「別にいいけど‥‥‥みんな何にする?」
「待ってください、今回は私がご馳走します!」
「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「ノノミちゃーん、ここは先生の”大人のカード”で出してもらおうよー。」
「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ねっ?」
なんか圧が凄い‥‥‥‥まあ、先生もオレも最近誰かしらに奢ってるし、甘えさせてもらおうか。
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「おいしい!」
「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー。」
たい焼きを金ぴかのカードで買う人初めて見たな‥‥‥時代かねぇ…‥‥
柄にもなく爺臭いことを考えながら、紙袋から自分の分のたい焼きを頭からかぶりつく。
…‥‥‥美味い。やっぱり久しぶりに食べるものと言うのは格別に味が良く感じられる。あんこと生地の甘さが程よく、洋菓子とはまた違った楽しみがある。
「ほら、ヒフミちゃんもどうぞ!」
「あはは‥‥‥いただきます。」
「先生も。」
「いただきます。」
ノノミとシロコがヒフミと先生にも紙袋を差し出す。二人とも違う学校の生徒、子供に買わせてしまった事に引け目があるのだろう。気持ちは分かるが、遠慮しない方がいい事もある。だってこれ美味いし。
「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私達だけでごめんなさい‥‥‥。」
『あはは。大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし…‥。』
とは言っても、後方支援というのも中々神経を使うものだ。もう一つ残しておいてあげよう。オレはカロリーメイトあるし。
そうして、しばらくたい焼きや飲み物をいただきながらのブレイクタイムとなった。対策委員会とヒフミでお互いの学校生活について話したり、モモフレンズの布教活動が始まったり、良さげな売り物や興味を持ったものについて話したり…‥‥雑談に花を咲かせる女子高生達を微笑ましく見守りながら先生と仕事の話やアビドスの状況について話したり…‥‥‥
「にしても、ここまで情報がないなんてありえません………妙ですね。お探しの戦車の情報‥‥‥絶対にどこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきませんね…‥‥。」
「…‥‥確かに。販売ルートも保管記録も残っていない、噂すら出てこない。いくら何でも不自然すぎる…‥‥」
「どういう事ですか?」
「物事には必ず理由がある。できない理由、見つからない理由、たどり着かない理由が‥‥‥
何も出てこないって言うこと自体が不自然なんだ。不自然なまでに分からない理由があるのだとしたら…‥‥誰かが分からなくしたって事じゃないかと思う。」
「ライさんの言う通りだと思います。すべて何者かが意図的に隠しているような‥‥‥いくらここを牛耳っている企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制するこてゃ不可能なはず‥‥‥」
「そんなに異常なことなの?」
「異常と言うよりかは‥‥普通ここまでやりますか?という感じですね…‥。ここに集まっている企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に変に隠したりしないんです。例えば、あそこのビル。あれがブラックマーケットに名をはせる闇銀行です。」
「闇銀行?」
「あれはブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです。」
「15%…‥‥‥」
「横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に帰られてまた他の犯罪につかわれる…‥‥そんな悪循環が続いているのです。」
「‥‥‥そんなの、銀行が犯罪を煽っているものじゃないですか‥‥‥」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです…‥‥。」
ヒフミの説明を聞いたほとんどは暗い表情を浮かべ、ホシノはどこか遠く冷たい眼をして、先生は己の不甲斐なさと事の重大さに顔を歪めている。きっとオレも、余り良くない顔をしているのだろう。
「ひどい!連邦生徒会は一体何をやってんの!?…‥‥あ、」
「…‥‥‥ごめん。」
「先生が謝る事じゃないよ。理由は色々あるんだろうけどねー、何処もそれなりの事情があるだろうからさ。」
自分の不甲斐なさにうなだれる先生をホシノがフォローする‥‥‥いや、諦めているのか。
「現実は、思った以上に汚れているんだね。私たちはアビドスばかりに気を取られすぎて、外の事を余りにも知らなさ過ぎたかも‥‥‥」
「‥‥‥シロコ、」
『お取込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中!気づかれた様子はありませんが‥‥‥まずは身を潜めた方が良いと思います‥‥‥。』
「う、うわぁっ!?あれは、マーケットガードです!」
「マーケットガードって、さっき言ってた治安機関のこと?」
「それの最上位の組織です!急ぎましょう!」
シロコにかけようとした言葉を飲み込み、近くの物陰に隠れる。様子を伺うと、オレ達を追って来たというより、パトロール…・‥‥いや、トラックを護衛している?あの車種、まさか‥‥‥
「あれ、現金輸送車だね。」
「あれ…‥‥あっちは‥‥‥闇銀行に入りましたね?」
現金輸送車が闇銀行の門付近で停車し、運転席から
「見ました?あの人‥‥‥‥」
「あいつは毎月うちに来て利息を受け取っているあの銀行員‥‥‥?」
「え、ええっ…‥‥!?」
「…‥‥どういう事?」
『ほ、本当ですね!あの車もカイザーローンのものです!今日の午前中に、利息を支払ったあの車と同じようですが‥‥‥なぜそれがブラックマーケットに‥‥‥!?』
「カ、カイザーローンですか!?」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンといえば、かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です…‥‥。」
「それは知ってるけど…‥‥マズいところなの?」
「あ、いえ‥‥‥カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません…‥‥しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手くふるまっている多角化企業で‥‥‥カイザーはトリニティのの区域にもかなり進出しているのですが、生徒達への影響を考慮し、”ティーパーティー”でも目を光らせています。」
「”ティーパーティー”……あのトリニティの生徒会が、ね。」
「ところで皆さんの借金とはもしかして…‥‥アビドスはカイザーローンから融資を‥‥‥?」
「借りたのは私達じゃないんですけどね‥‥‥。」
「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入っていった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください…‥‥ダメですね。すべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません。』
「すべてオフライン…‥‥まさか!」
そのまさかだよ、先生。見つけたぞ、分からない理由。
「対策委員会が支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた‥‥‥そういう事になる。」
「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供していたって事!?」
「…‥‥‥ちょっと電話してくる。」
一同と少し距離をとり、イヤホンを装着して電話を掛ける。
(プルルルル、プルルルル)
「よし…‥‥もしもし?」
『はい、便利屋68です。現在取り込み中でして‥‥‥』
「オレだよ。追加依頼を頼みたい。」
『!!え、ええ!それで、何かしら?』
「アビドスにおけるカイザーの動向を知りたい。集金の情報とか。出来るだけ急ぎで頼みたい。」
『ええ、構わないわ。』
「分かった。追加報酬は‥‥‥決まったら連絡する。」
『任せなさい!‥‥‥あ、呼ばれた?はーい、今行きまーす。』
「取り込み中悪かったね。んじゃあ、頼んだよ。」
…‥‥‥呼ばれたって、何かの手続きだろうか?そもそも金ないはずだから、前金渡した方が良いな。明日以降渡して改めて渡す方針で…‥‥って、
「‥‥‥‥‥‥何してるの?」
対策委員会の面々が被っているのは、シロコが用意していた銀行強盗用の覆面?何故‥‥‥
「はい、これライの分。」
「えっ、なんで?」
アオイ覆面を被ったシロコに手渡されたのは、額に白いRが書かれた黒い覆面。オレのってこと?どちらかというと、RじゃなくてLなんだけどね…‥‥
「ライさんは、5号です♪」
「うん、分かった……‥‥じゃなくって!?」
「ら、ライさん!止めてください!大変です!」
ど、どうしたんだヒフミ‥‥‥って紙袋!?なんでそんなスプラッター映画の犯罪者みたいな‥‥‥ん?覆面、犯罪者…‥‥
「ま、まさか‥‥‥」
「ん、銀行を襲う。」
「おい!?アヤネ、何とか言って‥‥」
『こうなったら聞く耳持たないでしょうし…‥』
諦めてる!?こうなったら先生‥‥‥‥
「分かってるよ、ライ。」
流石だぜ先生!それでこそオレの同僚、子供たちを導く大人‥‥‥
「集金書類以外は取らせないし、市民に被害が及ばない様に指揮するから。」
「先生まで!?」
「せっかくのチャンス、そして私の計画が役に立つとき。」
「悪い銀行をやっつけましょう♪」
「とことんやってやるしかないわ!!」
「あ、あううう…‥‥」
「それじゃあ皆、銀行を襲うよ!」
『「「「「 おおー!!! 」」」」』
「わ、私、もう生徒会の人達に合わせる顔がありません…‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥もうどうなってもいいや」
『では覆面水着団、出撃しましょうか!』
「え、それなんかダサ」
「何か言いましたかー?」
「‥‥‥‥‥‥いえ、なにも。」