知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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誕生!覆面水着団!(不本意)

 便利屋68の社長、陸八魔アルはブラックマーケットの闇銀行の窓口に座りながらかなりイラつき、気が落ちていた。

 

 先日、有り金をはたいて傭兵をどうにか雇ったのにも関わらずアビドス襲撃の依頼を失敗しただけでなく、クライアントに見栄を切って一週間以内に再度襲撃を行うと言ってしまったのだ。しかし、既に傭兵を雇うだけのお金どころか現在の事務所の家賃すら払えないところまで来ているので、苦肉の策としてブラックマーケットの闇銀行で融資を受けようとしたのはいいのだが‥‥‥‥

 

(何よ・‥‥零細企業だの会社ごっこだの‥‥‥‥挙句の果てに”より堅実な職についてみてはいかがでしょうか?”ですって!?私は、私たちは一流のアウトロー目指してるのよ?企業なのよ?)

 

プルプルと怒りと羞恥で体が震えるのが自分でもわかる。

 

(ムカつく‥‥‥もう大暴れして、銀行のお金をもちだしちゃおうかしら?)

 

やけっぱち気味とはいえ、ゲヘナ‥‥‥否、アウトローらしい考えが頭をよぎる。しかし‥‥‥

 

(…‥‥いや、それはダメね。ここからお金を持ち出せたとしても、ブラックマーケットから抜け出すのは至難の業。あちらこちらにマーケットガードがいるし…‥‥。)

 

良くも悪くも、彼女は根が真面目であり、頭が回る方である‥‥‥ポンコツだが。

 

(…‥‥でも、もしかすると、実は大したことない連中なのかもしれない。私達4人なら、全員叩きのめして逃げ切れそうな気も‥‥‥‥はぁ、やっぱ無理。ブラックマーケットを敵に回すなんて、そんな勇気無いわ‥‥‥。)

 

情けない。キヴォトス一のアウトローになると心に決めたのに、ついて来てくれる仲間がいるのに、融資だのなんだのと、つまらない事ばかりに悩まされる自分が、ただただ情けない。

 

望んでいたのは、何事も恐れず、何事にも縛られない、ハードボイルドなアウトロー。

そう、なりたかったのに‥‥‥

 

 

(…‥‥…彼なら、どうするのかしらね…‥‥)

敵対したばかりの自分たちに発信機をつけてまで料理と依頼に来た人なのだ。何かしらの行動を起こすのだろう。

 

「‥‥‥様!」

 

(そういえば、黒いコートにリボルバーってカッコいいわよね…‥‥)

 

「…‥‥様、アル様!」

 

物思いにふけっていた意識が、社員の呼ぶ声で現実に引き戻される。目の前には担当してくれている銀行審査官。

 

「わ、わわっ!?は、はいっ!?‥‥‥えっと、何か言った?」

 

「融資の承認は下りませんでした。お力になれず申し訳ありません。」

 

事務的で淡々とした、字面だけの謝罪‥‥‥もとい匙投げ宣言。

 

「え、ええっ!?ちょっと待ってよ!!」

 

先程の物思いとは違い、隠そうともしない焦りと不満をだしつつ、文句の一つでも言おうとした、その瞬間。突如として銀行の中の光が消える。パソコンから発せられるブルーライトの光もない。

 

「な、何事ですか!?停電!?い、いったい誰が!?パソコンの電源も落ちているじゃないか!」

 

停電ならほとんどの場合、誰のせいにしても意味がないのでは?少々いぶしかんだが、パニックになっているのは審査官だけではなく、他の利用者や行員も一緒だ。

 

「あ、アル様……ど、どうしましょう……」

 

「落ち着きなさい、ハルカ。もう何だっていうのよ‥‥‥」

 

不安げな声を上げる社員を宥めつつ悪態をついたその時、連続した銃声が暗闇から響き渡る。

 

「銃声っ!?」

 

 

「うわっ!ああああっ!」

 

「うわああっ!」

 

「な、何が起きて‥‥‥‥うああっ!!」

 

銃声と共に、誰かの悲鳴が一人、また一人と響き渡るのが聞こえてくる。

 

非常電源か何かが起動したのだろう。屋内の照明が灯り、明るさを取り戻した時、そこには

 

(ドドン!)

 

色とりどりの覆面を被った6人がいた。よく見ると、複数人のマーケットガードが倒れている。

 

 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」

 

「言う事を聞かないと、痛い目にあいますよ☆」

 

「あ、あはは‥‥みなさん、怪我しちゃいけないので‥‥‥伏せてくださいね‥‥‥‥。」

 

銃を構えながら武装解除を要求してくる覆面集団。これはまさしく、

 

「ぎ、銀行強盗!?」

 

さっき頭をよぎったものの、結局振り払った考えを思い出す。まさか自分がまきこまれるなんて‥‥‥

 

「非常事態発生!非常事態発生!」

 

「うへ~無駄無駄ー。外部に通報される警備システムの電源はおとしちゃったからねー。」

 

「ひ、ひいっ!」

 

審査官は助けを呼ぼうとするも、ピンクの覆面が笑顔で散弾銃を突きつけながら残酷な事実を告げられて、ただ悲鳴を上げるしかない。

 

 

 

 

 

 

「ほら、そこ!!伏せてってば!下手に動くとあの世行きだよ!?」

 

「みなさん、お願いだからジッとしていてください…‥‥あうう‥‥‥‥。」

 

「Get down! Don't make me shoot! I'll blow your brains out!!」

 

「うへ~ここまでは計画通り!次のステップに進もうー!リーダーのファウストさん!指示を願う!」

 

「えっ!?えっ!?わ、私ですか?リーダーですか?私が!?」

 

「リーダーです!ボスです!ちなみに私は…‥‥覆面水着団のクリスティーナだお♧」

 

「うわ、何それ!いつから覆面水着団なんて名前になったの!?それにダサすぎだし!」

 

「うへ、ファウストさんは怒るとこわいんだよー?言う事聞かないとおこられるぞー?」

 

「Year! Our boss is no devil! Tremble in fear!」

 

「さっきから何言ってんのよアンタ…‥‥」

 

「あう…‥リーダーになっちゃいました‥‥‥これじゃあ、ティーパーティーの名に泥を塗る羽目に…‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ‥‥‥あいつら…‥‥。」

 

「あ‥アビドス‥‥と、ライ‥‥…?」

 

「だよね、アビドスの子たちとライ君だよね?知らない顔もいるし、何か英語ではっちゃけてるのもいるけど。…‥‥‥ここで何やってるんだろ?それも覆面なんかしちゃって。」

 

「ねっ、狙いは私達でしょうか!?それなら返り討ちにしちゃいましょうか!?」

 

「いや、ターゲットは私達じゃないみたい…‥‥あの子たち、どういうつもり?まさか、ここを…‥‥?」

 

「もー、アルちゃんは何してるのさ…‥‥‥アルちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、すべて頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと。さあ、そこのあなた、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の‥‥‥。」

 

「わっ、分かりました!何でも差し上げます!現金でも、債券でも、金塊でも、いくらでも持てってくださいっ!!」

 

「そ、そうじゃなくて…‥‥‥集金記録を‥‥‥。」

 

「ど、どうぞ!これでもかと詰めました!どうか命いだけは!」

 

「あ‥‥‥う、うーん…‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

(や、ヤバーイ!!この人たち何なの!?ブラックマーケットの銀行を襲うなんて!英語で脅すなんて映画みたい!どう逃げるつもりなのかしら?いや、それ以前に、こんな大胆な計画を立てちゃうアウトローが、未だ存在するなんて!!滅茶苦茶手際良いし、超プロフェッショナル。まるでこのためだけに生まれてきたみたい。ものの5分でやってのけたわ!かっ、カッコイイ…‥‥!!シビっれる!憧れるっ!これぞまさに真のアウトロー!うわぁ…‥涙でそう!)

 

「全然気づいてないみたいだけど…‥。」

 

「むしろ目なんか輝かせちゃって。」

 

「はあ…‥‥。」

 

「わ、私たちはここで待機でしょうか?」

 

「…‥‥‥あの子たちを手助けする理由も、銀行に助太刀する理由もない。それに社長があんな状態だから‥‥‥とりあえず隠れていよう。」

 

「は、はい‥‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、シロ‥‥‥い、いや、ブルー先輩!ブツは手に入った?」

 

「あ、う、うん。確保した。」

 

「それじゃあ撤収ー」

 

「アディオ~ス☆」

 

「け、怪我人はいないようですし…‥‥すみませんでした、さようならっ!!」

 

「Goodbye everyone! 」

 

 

「や、奴らをとらえろ!!道路を封鎖!マーケットガードに通報だ!一人も逃がすな!!」

 

 

_______

 

_____

 

___

 

「はひー、息苦しい。もう脱いでいいよね?」

 

追手を振り切りながら銀行から大分離れてきた覆面水着団もとい、対策委員会とヒフミとオレは覆面を脱ぎ一息つく。先生もちゃんといるが、今回も急ぎだったのでオレが抱えて走った。意外と重くないんだよなー…‥‥いえ、何でもないですはい。

 

「のんびりしてらんないよー、急げ急げ。追手がすぐ来るだろうから―。」

 

「できるだけ早く離れないと…‥…間もなく道路が閉鎖されるはずです……‥。」

 

「ご心配なく。万全の準備を整えておきましたから☆」

 

シロコがな。マンホールとか廃棄された地下通路とかどうやって調べたんだろ?凄いけど褒めたくはない。

 

「こっち、急いで。」

 

「あの、シロコ先輩‥‥‥覆面脱がないの?邪魔じゃない?」

 

「天職を感じちゃって言うか、もう魂の一部見たいなものになっちゃって、脱ぎたくないんじゃなーい?」

 

「シロコ先輩はアビドスに来て正解だわ…‥‥他の学校だったら、もの凄いことをやらかしていたかも……‥‥」

 

「‥‥‥シロコ、今度先生とお話ししよっか?」

 

先生がマジで心配してる…‥‥‥オレも今度相談に乗ってあげよう。色々とオレが学んできた教訓を伝えて、少しでも犯罪への道を…‥‥‥もうやっちゃったじゃん。てか、オレも結構ノリノリじゃなかったか!?シャーレの腕章も外して喋り方も変えて出来るだけ身元がばれない様にするロールプレイだったはずなのに…‥‥‥。

 

 

「そうかな‥‥‥。ライも結構楽しそうだったよ?」

 

ロールプレイだからな?。別に楽しくは…‥‥‥‥なかった。

 

「…‥‥‥‥‥ライ、」

 

止めろ先生、オレをそんな目で見ないでくれ。恥ずっ、恥ずかしいんですけど…‥‥

 

「…‥‥‥落ち着いたら、休暇とってね?」

 

「‥‥‥それなら先生も取ってくださいよ。過労ですって。」

 

「私は大人だから」

 

「だからこそ休暇取ってほしいんですよ。…‥‥じゃあ、オレも休みません。」

 

「私結構本気で心配してるんだけど!?いつも真面目なのにあんな‥‥‥」

 

「うるせえ!!じゃあ一緒にお休みします!?文句ないですよね!?」

 

「ええ‥‥‥‥まあ、ちゃんと休んでくれるならいいか…‥‥」

 

 

 

 

 

 

「…‥‥‥‥シャーレって大変なんですね。」

 

「‥‥‥‥それはそうかもしれないけど、あの二人がそもそも変人なのよね‥‥…」

 

「癒してあげないとですね☆セリカちゃんも一緒にお二人をいやしてあげましょう!」

 

「ええっ!?いや、私は別に…‥‥‥」

 

『そ、それは…‥‥あんなことやこんなこと、でしょうか‥‥

 

「‥‥‥‥‥‥アヤネちゃん?」

 

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