「す、すみません!助けに来るのが遅くなりました…‥‥!私のせいで‥‥‥!全部台無しに‥‥‥!し、死んでもいいですか?死にますっっ!!!」
向こう側で暴れまくりながら謝罪と自決宣言を叫ぶハルカ。頼むから死なないでくれよ?あの分だと風紀委員の方が死にそうだが。
「いつの間にあんな所に…‥‥」
「…‥‥やるね。」
呆れ半分感嘆半分と言った様子のセリカとシロコ。
「結構いいタイミングだったみたいだね。」
「カヨコ‥‥‥。多分アイツらの目的は…‥‥」
「分かってる。この状況も偶然なんかじゃない。でしょ、アコ?」
『‥‥‥‥面白い話をしますね、カヨコさん?』
しばし無言でにらみ合う両者。なにか因縁でもありそうな感じだが‥‥‥‥まあ、色々あるだろう。年頃だしね。
「…‥‥最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、どうして私達を他の自治区まで追ってくるのか、理解できなかった。こんな非効率な運用、風紀委員会のやり方じゃない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない。」
「…‥‥‥。」
「それに、彼が言った通り、余りにも多すぎるこの兵力。他の集団との戦闘を想定していったとすれば、説明がつく。とはいえ、アビドスの全校生徒は5人しかいない‥‥‥‥なら結論は一つ。
‥‥‥アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまで来たんだ。」
「!?」
「な、なんですって!?」
「先生を、ですか‥‥!?」
「私?どうして‥‥‥‥」
うーん、アビドスのみんなの反応は分かるけど、先生はさ、もっと自分が大物だって自覚もとうよ?
『‥‥‥‥ふふっ。ああ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。吞気に雑談なんてしている場合ではありませんでしたね…‥‥。まあ、構いません。』
思いのほかあっさりと認めたと思えば、道路のむこう側から…‥‥いや、あらゆる方向から行軍しているかのような足音が聞こえる。
「風紀委員会のさらなる兵力が四方から集結しています…‥‥!まだいただなんて‥‥、それに、こんなにも数が‥‥‥‥!」
『うーん‥‥‥少々やりすぎかもと思いましたが‥‥‥シャーレを相手にするのですから、これくらいあっても困らないでしょうし…‥‥…大は小を兼ねるといいますしね☆』
「包囲は抜けたかと思ったけど‥‥‥二重だったか…‥‥。」
『それにしても、さすがカヨコさんですね。先程のお話の半分くらいは正解です。真道ライさんも見事です。確かに私は、シャーレと衝突するという最悪のシチュエーションも想定していました。しかし、この状況を意図的に作り出した訳ではありません。それだけは信じて…‥‥いただけませんよね。』
「そもそもだ。何で先生を狙う?今の所、ゲヘナどころか学園に対して何の害も与えていないはずだ。説明しろ。」
『仕方ありませんね。事の次第をお話ししましょう‥‥‥きっかけは、ティーパーティーでした。もちろんご存じですよね、ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会の事です。』
なんでやたら偉そうなんだ?
『そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている‥‥‥と。そんな噂が、うちの情報部からあがってきまして。当時は私もシャーレとは一体何なのか、全く知りませんでしたが‥‥‥ティーパーティーが知っている情報となれば、私達も知る必要があります。それで、チナツさんが書いた報告書を拝見しました。』
国家間の情報戦みたいなものか?だとしたら結構まずいだろ‥‥‥‥だって、トリニティでシャーレについての情報を最速で手に入れたのって多分ハスミだぞ?その時チナツも一緒にいたから、報告忘れか確認ミスじゃないのか?
『連邦生徒会長が残した正体不明の組織‥‥‥大人の先生が担当しており、キヴォトスにおいいて非常に珍しい男性が属する超法規的な部活。どう考えても怪しい匂いがしませんか?シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません。』
同感です。初めてリン行政官から説明された時、正気をうたがいましたもんオレ。
『ですからせめて条約が締結されるまでは、私達風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに、同僚もまとめて保護して居合わせた不良達も処理した上で…‥‥と言った形で。』
無茶苦茶だ。要はトリニティにかすめ取られたり、出し抜かれたりするのが嫌なだけだろ?
シャーレは形式上、連邦生徒会の下部組織にあたる。そっちの生徒会からの要請どころか連邦生徒会からもそういった話は一切ない。どう考えても、独断による戦力の私用だ。
「‥‥‥‥‥‥公私混同じゃねぇか。そんなのは認められないし、民間人を吹き飛ばすような連中に先生は任せられない。」
『…‥‥‥そうですか、ご理解いただけなくて残念です。しかし、ゲヘナの風紀委員会は、必要でしたら戦力を行使することもあります。私たちは一度その判断をすれば、一切の容赦をしません。』
うん、話して分かった。多分コイツ、思い込みが激しいタイプだ。この感じだと、どの道力づくでも先生を捕まえようとするだろうから、こうなるのは避けられなかっただろう。
「社長、逃げるなら今しかない。戦闘が始まったら、もう逃げられない。アビドスが引き付けてくれている間に‥‥」
「・‥‥ふふっ、ふふっ、ふふふっ。」
「社長?」
カヨコが冷静にアルに判断を求めるが、アルは何故か笑っていた。愉快そうな笑い方でも、ごまかすような笑い方でもない、結構悪い笑い方。
「言ったでしょう。こんな所で背を向けて逃げるなんて三流みたいな真似はしないって。それに‥‥‥
あの生意気な風紀委員会に一発食らわせないと気が済まないのわ!」
クッソカッコイイ‥‥…これが便利屋68の社長、陸八魔アルなのか‥‥‥ムツキも良い顔してるしハルカは恍惚としている。今ならハルカの気持ちがちょっとだけ分かるわ・‥‥カリスマ凄いもん。便利屋68‥‥‥思っていたより凄いのかもしれない。尊敬するぞ陸八魔アル。
「よし、一緒にアイツらぶちのめすぞ!!」
「ええ!追加報酬頼むわよ!」
「‥‥‥‥それはいいけど、あの兵力と真っ向勝負するつもり?アビドスと力を合わせてもギリギリだと思うけど…‥‥‥そもそもアビドスが私達に協力してくれるとは思えないし‥‥‥」
「よっし、便利屋っ!挟み撃ちするわよ!!この風紀委員会、コテンパンにしてやらないと!!」
「先生の盾になってもらう。」
「!?」
「みんなで先生を守りましょう!」
「便利屋のみんな。私の指揮下に入ってね。」
「話が早いな…‥‥‥」
カヨコの心配とアルとオレの不安は杞憂に終わった‥‥…というか切り替えはやっ。
「ふふっ‥‥‥あははははははっ!」
あ、かっこよかったのに面白いに戻っちゃった。残念だけど、こっちの方が何か安心感あるな‥‥
「当り前よ!この私を誰だと思ってるの?心配は無用!信頼には信頼で報いるわ!それが私たち、便利屋68のモットーだもの!」
「はい!ライさんには色々とお世話になりましたので!絶対に成功させます‥‥‥!」
あ、オレいつの間にハルカから信用を得れていた‥‥‥‥なんか嬉しい。
『うーん‥‥‥まあ、これはこれで想定していた状況ではありましたが‥‥‥‥それにしても、ここまで意気投合が早いとは‥‥‥その点は想定外でした。』
オレもだよ。思ったより合理的っていうか‥‥‥‥こだわらないというか‥‥‥‥
『では‥‥‥‥風紀委員会、攻撃を開始します。対策委員会と便利屋を制圧して、先生を安全に確保してください。先生と真道ライはキヴォトス外部の人間なので、十分に注意を。』
風紀委員会が再び包囲陣形を組み、銃を構える。もう逃げ道はない。出来る限り動いて、出来る限り倒す。弾切れになったら銃を奪うなりナイフで突っ込むなりすればいい。
「よし、ハルカ先頭で突破するよ。戦闘開始!!」