知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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砂漠にあったもの

 ヒナの情報を確かめるべく、シャーレと対策委員会はアビドス砂漠に行くことになった。

各々が万全の準備を行い、明朝に行けるところまで電車に乗っていく。そして終点駅で降りてから再度装備の点検を行う。

 

「ここから先は徒歩での移動になります。少し進めばもうアビドス砂漠…‥元々砂漠だった場所です。普段から壊れたドローンやオートマタ、警備ロボットなどが徘徊しているので、危険な場所なのですが‥‥…今は強硬突破するしかありません。皆さん、火器の動作チェックはしましたか?」

 

アヤネの確認に全員が頷く。弾もローダーもたっぷりと用意したし、万が一遭難したときに備えて最低限の備えもしてきているし、さして問題はないだろう。

 

「アビドス砂漠でカイザーコーポレーションが何をしているのか。この目で実際に確かめることとしましょう。」

 

「‥‥‥けどさ、アヤネちゃん。よく考えると、その情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。それってなんかおかしくない?いくら風紀委員長とはいえ、どうして他の学園の生徒が、うちの自治区のことをそこまで知ってるわけ?」

 

セリカが疑問をこぼす。アビドス(自分達)が知らないことを、ゲヘナ

(余所者)が知っているのが不思議なのだろうか?

 

「うーん、あくまで推測に過ぎないけど‥‥‥ゲヘナの風紀委員長はかなり情報収集能力に秀でてるって聞いたことが‥‥…。だから、アビドスみたいな小規模の学校では考えられないような情報網を持っている、とか…‥?」

 

「ま、そういう事もあるのかもね~。」

 

「委員長という立場なら、風紀委員会が把握してる情報を集約してるだろうし、アコたちは紫関ラーメン周辺が既にアビドスの物じゃないと分かっていたし、そういうのが他にあっても不思議じゃない。」

 

「あの時はてっきり苦しい言い訳かと思っていましたが‥‥‥‥多分、実際は‥‥……・」

 

アヤネはアコに侵犯行為だと言っていたからな。実際は自分たちが知らなかっただけだから、何か思う所があるのだろう。

 

「‥‥…けど、あの時の風紀委員会には明らかに侵犯行為だと取れる言動が多々あったし、あのアコの行為は明らかに違法行為。それだけで十分。あの時のアヤネの判断は間違ってない。」

 

「‥‥‥はい、そうですね。ありがとうございます、シロコ先輩。」

 

「ま、行ってみれば色々わかるでしょ。セリカちゃんが言っていた通り、直接この目で確かめればいいんだしさ~。」

 

色々分かる、ね。‥‥‥‥‥そうだ。

 

「‥‥‥‥‥先生。」

 

彼女らから少し離れていた先生に近づく。

 

「ライ、どうしたの?」

 

「‥‥…シロコから、話は聞きましたか?」

 

先生に小声で聞いたのは、ホシノの退部届の事。

 

「‥‥うん。よく分からないことが多いから、一旦保留ってことにしたよ。」

 

まあ、そうなるよな‥‥…個人の問題に下手に踏み入る訳に行かないし‥‥‥分からない事が本当に多すぎる。先頭であるっているホシノをチラッと見る。

 

「‥‥…正直、今回の調査、嫌な予感がしてます。」

 

「‥‥‥杞憂だといいね。」

 

「‥‥‥…はい。」

 

「何話してるの?」

 

気になったのか、セリカが内容を聞いてくる。しかし、まだ話すわけにはいかない。

 

「‥‥…シャーレの仕事の話だ。書類がたっぷりあるからどうしようかなーって。」

 

「あー、そうだったね‥‥‥‥」

 

誤魔化す為に言ってみたが、本当にどうしよう…‥‥?またユウカに頼まなきゃダメか…‥‥

しかし、これ以上オレ達の仕事を頼むわけにもいかないし‥‥‥

 

「「‥‥‥‥‥‥はあ。」」

 

「‥‥‥大変なのね、シャーレって。」

 

「‥‥‥‥‥一段落したら、アビドスのみんなも当番に来て欲しいなぁ。」

 

「‥‥‥‥‥‥情けない話ですけどね。」

 

 

_________

 

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駅から出発して暫くは、襲い掛かってくるオートマタやドローンを突破しながらひたすら歩き続けた。こうしてみると、全員先生の指揮下での連携に慣れたのか、経験を積み成長したからか、無駄な消耗をすることなく戦えているのがよく分かる。そして遂に、現代的な建物が跡形も見えない一面が砂と岩しかない、正真正銘の砂漠にたどり着く。

 

「ここから先が、捨てられた砂漠‥‥‥。」

 

「砂だらけの市街地になら行った事はありましたが、ここから先は私も初めてです‥‥‥。」

 

「まさか、こういう形で初めて砂漠に来るとはね‥‥‥。」

 

「いや~、久しぶりだねえこの景色も。」

 

本物の砂漠に初めて足を踏み入れたホシノ以外のアビドス生徒達と先生。どこか感慨深そうだが、ここから先は遭難でもしようものなら本当に迷って死にかねない。全員を逐一確認しながら歩かなければ………。

 

「先輩は、ここに来たことがあるの?」

 

「うん、前に生徒会の仕事で何度かね~。もう少し進めばそこにはなんと、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」

 

「え、オアシス?こんなところに?」

 

「うん、まあ今はもう全部干上がっちゃったんだけどね~。元々はそんじょそこらの湖より広くって、船を浮かべられるくらいだったとか。ま、私も実際に見たことはないんだけど~。」

 

「砂祭り‥‥‥私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人達が集まるって。」

 

「そうそう、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前の事だけど。」

 

「それって、アビドスがキヴォトス最大の学園として君臨してた頃か?」

 

「そうなるね。前まではこの辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ~。その時はこんな砂漠もなかったし。ところでアヤネちゃん、まだ目的地は通そう?」

 

「ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少しかかりそうです。」

 

アヤネが端末を確認しながら答える。見たところは何もなさそうだが、一体何があるというのだろうか?まあ、市街地からこんなに離れた所で黒そうな企業がやりそうな事なんて限られてくるけど。

 

「先生、遭難したら今度こそ不味いですから、はぐれないで下さいよ?」

 

「分かってるよ。ちゃんと水も地図もあるし大丈夫だよ。」

 

何をもって大丈夫なんだろうかこの大人。砂漠なのにスーツで来る遭難経験者が言っても説得力がまるでない。まあ、服装に関しては先生以外もコートだとかブレザーだとかマフラーだとかで似たようなものだが。

 

「‥‥‥‥ついでに銃も持ってくれると嬉しいんですがね。」

 

「私は銃の使い方が分からないし、人に向けて撃てる気がしないからいいよ。」

 

先生もオレも、連邦生徒会から自動拳銃を支給されているので持ってはいる。しかし、先生は持ちもしなければ練習もしない。今頃はオフィスのどこかにしまい込んでいるのだろう。

 

「先生は、銃が撃てないんですか?」

 

「うん、いつもコレだけ。」

 

先生はノノミにシッテムの箱を見せつけるように上げて見せて答える。まあ、秘書(アロナ)もバリアもあるんだけども、護身の備えくらいはしっかりして欲しいが‥‥‥‥。

 

「‥‥‥支給品じゃなくても、小さいのでもいから持ちません?いざって時一発でもあるといいですよ?」

 

「いや、そもそも先生は非戦闘員ですし持っていなくてもさして問題ないのでは?」

 

「そうそう、だから大丈夫だってば。」

 

「それは‥‥‥‥!」

 

呆れた顔で先生に何か言おうとした瞬間、何かを話しかけた口は瞬時に塞がり、代わりに先生の方に銃口を向けて発砲する。

 

「……‥えっ!?ちょっ、うわあっ!?」

 

いきなりオレに銃を向けられているように見え、銃声が響くと先生は腰を抜かして砂の上に尻元を着く。慌ててシロコが駆け寄るが、先生に怪我はない。それもそうだ、狙ったのは先生の背後から近づいてきたオートマタなのだから。瞬時に頭を撃ちぬかれたオートマタは力を失ってばたんと砂の上に倒れこむ。

 

「‥‥‥‥大丈夫か、先生?」

 

「大丈夫じゃないよ!?いきなり怖いってば!!」

 

先生が涙目で訴えてくる。ああでもしないと先生が危ないだろ?

 

「どっちも危ないでしょ!?」

 

「先生、心読めるようになったんですか‥‥‥?」

 

「二人とも、そんな事を言ってる場合じゃないですよ!オートマタ、多数接近しています!」

 

「‥‥‥‥ですって。んじゃあ、指揮お願いしますね。」

 

「覚えててよ‥‥‥‥‥みんな戦闘準備!」

 

 

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____

 

 

「‥‥‥‥‥‥周辺オートマタの制圧を確認。取り敢えずは大丈夫でしょう。」

 

「はあ……‥‥本当にいつまで動くのよ‥‥‥‥。」

 

取り敢えずはオートマタを退けることが出来たが、気のせいだろうか?進めば進む程、オートマタやロボットとの遭遇・戦闘が増えているような‥‥‥‥?

 

「‥‥‥‥砂埃が酷くなってきた。」

 

「一旦、周辺を索敵しませんか?」

 

「それじゃあアヤネ、周辺索敵お願い。他の皆は警戒態勢。」

 

先生の指示で、アヤネが端末を操作してドローンを飛ばしている間、他はアヤネと先生を囲むように武器をもって周囲に気を向ける。確かに、砂埃がさっきより酷く、視界が悪い。オートマタとの戦闘で多少ルートから逸れたのもあって本当に何かあっても分からない。

 

「アヤネちゃん、どう?なんか見える?」

 

「いえ、今のところは何も‥‥…」

 

「映画だったら、砂埃が晴れて大きな基地が見つかるね。」

 

「あー…‥‥そういうのあるよな。トンチキな戦争映画とかSFにありがちな奴。ま、そうあるもんじゃないけど。」

 

「それ、何かフラグ立ててない?」

 

「考えすぎだろセリカ。そういうのは基本フィクション‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥っ!?皆さん、現在のルート上前方に何かあります!」

 

「へっ!?」

 

「砂埃でよく見えないのですが、巨大な町…‥いえ工場、或いは駐屯地‥‥‥?と、とにかくものすごい大きな施設のようなものが…‥‥?」

 

「こんな所に施設!?何かの見間違いじゃなくて?」

 

「今の所、干からびたオアシスしか見えてないよ。」

 

「恐らく見間違いではないと思います‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥ライ、あんたって‥‥‥」

 

「オレ!?オレが悪いのか!?先生じゃなくて!?」

 

「と、とにかく!肉眼で視認できるところまで行ってみる必要がると思います。」

 

「ん、賛成。」

 

「よ、よし。じゃあ、みんな慎重に行くよ!」

 

 

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________

 

_____

 

「‥‥‥‥‥マジかよ。」

 

一同の目前にあるのは、数km先まで張り巡らせているのであろう有刺鉄線、様々なコンテナや車両、倉庫や格納庫のような建物や複数の小ビルが集合したような建物、それを囲んでいる壁。そして巡回・警備しているオートマタ。捨てられた砂漠と呼ばれている場所にはありそうもない何らかの施設があった。

 

「工場‥‥?石油ボーリング施設‥‥、ではなさそうな‥‥」

 

「こんなのは、昔は無かった。」

 

ホシノが知らないという事は、ここ1,2年で作られたという事。単眼鏡を取り出して覗き込んでみると、小銃をもったオートマタが複数見える。

 

「これは___」

 

軍事施設かもしれない。そう言おうとした瞬間、複数の銃撃が離れた所から放たれる。対策委員会や先生からではない視線を感じてコートの陰に入れるように、先生の頭を下げさせて裾を伸ばす。幸いな事に誰にもあたることは無かったが、小銃をもったオートマタの集団が走ってくるのが見えた。

 

「うわっ!?なになに!?」

 

「前方から、正体不明の兵力が攻撃を仕掛けてきています!」

 

 

 

「侵入者だ!」

 

「逃がすな!」

 

 

 

「オレ達、何時の間に他人家に上がってたみたいだな。」

 

オートマタ達が大変お怒りだ。なんか警報なってるし‥‥‥

 

「よく分からないけど、歓迎の挨拶なら返してあげた方がよさそうだね?」

 

「そうだね。このまま引き返しても追いつかれるし、遮蔽物がない‥‥‥‥中に入って応戦しつつ撒くよ!」

 

「え、ええっ!?」

 

「いや、その方が都合がいい。ついでに可能な限りの情報を持ち帰れる。」

 

「じゃあ、決まりだね。‥‥‥派手にいこうか!」

 

 

 

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