知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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久しぶりの投稿になります。


虚勢

「真道ライ、話には聞いている。連邦捜査部シャーレ、だったか?そこの女性は先生だろう?」

 

やはり、シャーレの事は知っているようだ。この雰囲気、堅気のそれではない。反射的にホルスターに手が伸びるが、囲まれた状況では先生たちが危ないので睨みつけるだけにとどめておく。

 

「‥‥‥アビドスが、借金をしている相手…‥。」

 

「か、カイザーコーポレーションの‥‥‥。」

 

「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ。今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている。」

 

「‥‥‥…へえ。思ったよりいい立場みたいだな。」

 

理事兼任しすぎだろ‥‥‥…PMCに銀行にコンストラクションだから‥‥‥建築系?そんなに兼任しているのは果たして企業としてどうなのだろうか?

 

「あなたが、アビドスを騙して、搾取してきた張本人‥‥‥‥!」

 

「コイツの、コイツのせいで、アビドスは‥‥‥!!」

 

「やれやれ‥‥‥…最初に出てくる言葉がそれか。君たちは私に借金をしている上に、勝手に私有地に侵入し、善良なるPMC職員たちを攻撃し、施設を散々破壊しておいて‥‥‥‥」

 

わざとらしい物言いのPMC理事。くっそ撃ちてぇ‥‥‥

 

「何を言うのかと思えば‥‥‥‥面白い。だが、口の利き方には気を付けた方が良い。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。君たちは不法侵入者だという事を理解すべきだ。それに、アビドス自治区の土地は合法的な取引の下買ったものだ。記録もある。まるで、私達が不法な行為でもしているような言い方はやめてもらおうか。わざわざ挑発をしに来たわけではないのだろう?」

 

そこまで言うんならこっちだって考えがあるぞ?とっておきのヤツが。

 

しかし、オレが口を開くより先に先生が毅然とした態度で前に出る。

 

「私が同伴している以上は立派な公務扱いだよ。私たちは、あなた達カイザーコーポレーションには違法行為を働いている疑いがある上に、このアビドス砂漠で何かを企んでいる疑いがあるから調査に来た。それをあなた達は警告も威嚇射撃もなしに撃ってきた。言っている意味、分かる?」

 

シャーレはキヴォトスにおいて絶対的存在…‥らしい連邦生徒会長から権限を付与されている超法規的機関。あらゆる規約や法律による規制や罰則を免れることが出来る。そして、それはシャーレの先生もしくはそれに相当する人物からの許可を受けた人物がその場にいるだけで適用される。

 

カイザーコーポレーションが何を言おうが、先生がこの場でこう言った以上は彼らは公務の妨害をした、とすることが出来る。やはり先生、上手い。

 

「‥‥‥‥‥。しかし、そこのアビドスが借金をしているのは私達だ。生徒が大切なら下手なことは言わない方が良い。」

 

「‥‥‥‥‥この兵力で、アビドスを占領する気か?」

 

「たった5人しかしない学校の為にこれだけのものを用意するとでも?これは、宝探しを妨害された時の為のものだ。ただそれだけだ、君たちの為に用意したものではない。」

 

‥‥‥‥‥‥え、マジか。聞いてもないようなことを言っちゃったよ。なんか‥‥‥‥焦ってる?

 

「宝探し?それがアンタらの目的ってわけ?」

 

「‥‥‥…それだけの為にここまでするメリットがあるんでしょうか?」

 

「大よそ、希少資源だとかオーパーツだとかじゃない?それでも大将の、市街地の方まで買い上げる必要はないはずだ。」

 

「‥‥‥…アビドスのどこにあるか分からないからな。念入りに調べるためにも必要なのだよ。」

 

「じゃあ、何でこの兵力を直接送ってこなかったんだ?」

 

これだけの兵力と装備ならばアビドスの校舎だって簡単に制圧で来たんじゃないか?それこそ、数を活して物資の枯渇を狙えば‥‥‥…

 

「‥‥‥‥そんなに部下たちがコテンパンにやられるのがイヤなのか?」

 

「‥‥‥君たち程度、いつでも、どうとでも出来るのだよ‥‥‥例えば、こんな風にな。」

 

PMC理事が片手を上げると、オレ達を取り囲んでいたオートマタ達が小銃を構える。他の皆は動揺しているが、ホシノは妙に落ち着いている‥‥‥‥成程。

 

「アンタ、ホシノが怖いのか?」

 

「!!」

 

ロボット顔でよく分からねえけど、なんか図星な感じがする。

 

「そもそもおかしいんだ。わざわざヘルメット団で弾切れになるまで追い込んだり、今になって便利屋を雇ったりさ。本当にアビドスが欲しいなら、この兵力を使ってさっさと攻めた方が手っ取り早いはずなんだ。でもそうはしなかった。土地の買取や現金で利子払わせたり…‥‥まわりくどすぎる。」

 

「‥‥‥‥どういう事?」

 

「ずっと前から思ってたんだ。ホシノだけ、他の対策委員と比べて動きが良すぎる。間違いなく、強い奴特有の空気がある。それが怖いから、直接攻めてこなかったんじゃないのか、理事?」

 

「ふん、この状況でよくもそんな事が言えるな…‥シャーレの二人(お前ら)は外の人間、弾丸一発で簡単に殺せるというのに‥‥‥」

 

 

 

 

「なら、撃って来いよ。」

 

「は、はぁ!!??」

 

「‥‥‥‥…ライ君?」

 

「‥‥‥…‥‥正気か?」

 

そんなびっくりしなくたっていいだろ…‥…だって、

 

「先生は”大人の力”があるし、オレはこういうのを何回も切り抜けてるし、ホシノはどうにかしてくれる。他は‥‥‥…気絶するくらいで済むか。」

 

「ちょ、ちょっとライさん!?さっきから何を言ってるんですか!?」

 

 

「それでどうにかなっても、この数を前に何ができ___」

 

「アンタ1人くらいは余裕をもってやれると思うけど。」

 

「強がりを‥‥‥‥」

 

結構マジで言ってるんだけどな…‥…オレの事知ってるなら早撃ち得意って知ってると思ったのに。ノコノコ出てきちゃって撃たれる心配とかしてないのかね?

 

「自分が死んだらどうなるか…‥‥とか言うなよ?少なくとも、()()()()どうにかなるし、相応の手段を考える時間は少しくらい稼げる。それに‥‥‥‥‥実は結構上からドヤされてんじゃないの?この兵力や装備にヘルメット団や便利屋に払った金、けっこうしただろ?そこにオレ達シャーレが首突っ込んで余計やりづらくなっるだろうから…‥‥‥結構厳しいんじゃない?」

 

「‥‥‥‥‥‥‥貴様。」

 

おおー怒ってる怒ってる。割と出まかせだけど案外あたるもんだな。ま、よくある手口だし、やるやつも皆似たり寄ったりだからねー。

 

「‥‥‥‥アビドス高校の首の紐が、今この場のお前たちの無事は、誰の手にあるのか分かってるのか?」

 

「…‥‥‥‥オレの指は、いつでもトリガーにかかってる。」

 

「‥‥‥‥…‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥。」

 

 

 

「‥‥‥‥‥どうなるか、覚悟しておくんだな。高くつくぞ。」

 

「‥‥‥‥…アンタもな。アビドスも、先生も、オレも、アンタらが思ってるよりずっと強いぞ。」

 

「‥‥‥‥…ふん。」

 

面白くなさそうに車に戻り、走り去っていく理事。それに続くかのように、カイザーPMCのオートマタも基地に戻っていく。

 

「‥‥‥‥‥‥え?」

 

「‥‥‥‥‥助かったんでしょうか?」

 

「‥‥‥‥おそらく、この場は…‥…」

 

「‥‥‥‥‥‥。」

 

急にどっと疲れてその場にへたり込む。や、やばかったぁー…‥‥‥。

 

「いやぁ‥‥‥どうしよ?」

 

あれこれ言いまくったが、よくよく考えたら被害被るのってアビドスだから‥‥‥オレやらかした?

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥。」

 

 

「‥‥‥‥‥ライ、何してるの?」

 

「‥‥‥‥‥土下座。」

 

「な、なんでですか?」

 

「物凄く適当な事を適当にぶちまけて企業の偉い人に喧嘩ふっかけてごめんなさい多分借金とか保証金とか利子とか増やされてるかもしてないからごめんなさいそもそも部外者みたいなもんなのに勝手に話を進めちゃったみたいでごめんなさい…‥‥」

 

「で、でも!ライのおかげであの場は助かったんだし!あ、ありがとね!」

 

「セリカが素直に礼を‥‥‥やっぱオレやっちゃったんだぁ…‥…」

 

「失礼ねアンタ!?」

 

「でも、ライのおかげなのは本当。気になる反応もあったし、もしかしたらあっちからわかりやすいアクションを掛けてくれるかもしれないから‥‥‥‥」

 

「そ、そうですよ!帰って色々確認しましょう!ほら、立ってください!」

 

ノノミのパワーで半ば無理矢理立たされると、ため息が漏れてしまう。

 

「先生…‥…すみません。なんか、その‥‥‥」

 

「いいんだよ。どの道、何かしらは仕掛けてくれるだろうし、むしろライのおかげで何かぼろを出してくれるかもしれないし…‥‥‥」

 

「‥‥‥‥とりあえず帰ろっかー、おじさん疲れちゃったからさー。」

 

「‥‥‥‥‥ホシノも、ごめん。で、でも!強いって言うのは嘘じゃないからっ、だから、その‥‥‥な?セリカ?」

 

「な、なんで私!?」

 

「その…‥‥‥適当に?」

 

「は、はぁっ!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

「いや、ちょっ!?お前、何を、うわぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ…‥‥すごいなぁ‥‥‥‥」

 

 

 

_______________

 

__________

 

______

 

 

校舎に戻って色々と確認していくと、来月以降の利子は9130万円、一週間以内にカイザーローンに対して3億円の保証金の支払いなど、アビドスはより厳しい状態になり、このままでは一週間、いや、それより早くアビドス高校はカイザーの物になりかねない事、はるか昔にアビドス砂漠にかお金になりそうな地下資源は何一つ残っていないという調査結果が出ていることが分かった。

 

「やはり、でたらめでしょうか‥‥‥‥。」

 

「だとすると、どうして‥‥‥」

 

「いやいや、今はそれより借金の方でしょ!変動金利が3000%とかじゃなかった!?」

 

「保証金も要求してきましたし‥‥‥あと一週間で、3億円だなんて‥‥…」

 

「‥‥‥‥行ってくる。あそこで何をしているのか、調べないと。」

 

「し、シロコ先輩!?行くって、一体どこへ‥‥‥?」

 

「PMCの施設。徹底的に準備すれば、何とか潜入できると思う。行って、何をしているのか確認する。」

 

「待って!今は借金が優先でしょ!?」

 

「‥‥‥‥‥‥借金はもう、真っ当なやり方じゃ返せない。何か、別の方法を‥‥‥」

 

「で、でもそれじゃ…‥!」

 

「‥‥‥私はシロコ先輩に賛成!学校が無くなったら全部終わりなんだから、もうなりふり構ってられない!!」

 

「せ、セリカちゃん‥‥!」

 

「そんなことしたら、あの時と同じだよ!?」

 

「そ、そういう意味じゃない!でも、それでも…‥‥‥」

 

「あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自分から進んで犯罪者になるの!?」

 

「わ、私は‥‥‥‥」

 

「ほらほら、みんな落ち着いて~。頭から湯気が出てるよ~?」

 

「ん‥‥‥‥。」

 

不味い方向にエスカレートしていこうという時に、それをいつも通りに見える態度で宥め、とめるホシノ。

 

「はい、すみません‥‥‥‥」

 

「‥‥ごめん、こんな風にしたいわけじゃなかった。」

 

「うん、みんな分かってるよ。シロコちゃんも、いい子だからね。」

 

「‥‥‥‥‥ごめん、オレが下手な事言ったから‥‥‥」

 

「ライ君は何も悪くないでしょ~?」

 

「それでも、オレにも責任がある。清算しなくちゃな…‥…」

 

もうこうなったら仕方がない。トリニティの正実経由で連邦生徒会にカイザーローンの件を連邦生徒会に告発してもらって金利を下げる…‥いや、間に合うか?伝手はハスミか、ヒフミか…‥・

ゲヘナからもやってもらえないだろうか?先日の清算として‥‥・・・いや、風紀委員長が頭下げただろうが。これ以上は流石に…‥…こうなったらオレがどうにか…‥

 

 

「‥‥‥‥じゃあ今日は解散しよっか。」

 

「え!?でも…‥」

 

「一回頭冷やして、また明日集まる事にしようよ。これは委員長命令ってことで。」

 

「‥‥‥‥そうだね。とりあえず、みんな一旦帰ろう。」

 

 

____________

 

________

 

_____

 

ホシノとシロコ以外の対策委員は家に帰り、二人と先生とオレは残った。

 

「ん~?みんな何かまだやることがある感じ?」

 

「‥‥‥ん。先輩、ちょっといい?」

 

「うへ~、おじさんとお話したいことがあるの?照れるな~。」

 

「私も。」

 

「実はオレも。」

 

「‥‥‥うへ、おじさんモテモテだ~。でもさ、今日は疲れたし、色んな事があったじゃん?また明日話そう。大体どんな話かは分かってるから。」

 

「でも‥‥‥」

 

不安げな顔を先生やオレに向けうシロコに、先生は無言で頷く。

 

「ん、じゃあまた明日‥‥…。」

 

「どこも襲わないで真っすぐ帰るんだぞー。」

 

教室を出ていくシロコの力ない背中を見送る。強盗もそうだが、メンタル面の心配が今は勝る。少しでも横に慣れれば多少は落ち着くだろう。

 

「うへ~、先生やるねえ?私の可愛いシロコちゃんと、いつの間に目と目で意思疎通ができる仲になったんだ~?いやいや、やっぱり先生は侮れない大人だな~。おじさんは流れに付いていけなくて何だか寂しいよ。」

 

「‥‥‥ホシノ。」

 

先生がホシノに近づいてある紙を懐から出して見せる。

 

 

「退部・退会届、小鳥遊ホシノ…‥‥どういう事なの?」

 

「それは…‥うへ~、何時の間に…‥!これ、盗ったのはきっとシロコちゃんだよね?全くシロコちゃんったら、いくら何でも先輩の鞄を漁るのはダメ___」

 

「‥‥‥勝手にいなくなろうとしてるのもどうなんだ?」

 

「‥‥‥‥!」

 

「シロコは後で叱っておくから、今はこの事について聞かせてくれない?」

 

 

 

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