知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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臨戦トキカッコ良すぎ‥‥‥。で、中折れ式エネルギー銃のリロードみて思ったんですよ。
生身で中折れ式リボルバーで高速装填&高速精密射撃しまくってるライ君って、自分の認識以上に凄いのでは…‥‥?

今回滅茶苦茶長いです。


アビドス攻防戦(part2)

「‥‥‥‥‥‥ムツキ!!」

 

「おっけー!‥‥‥せぇの!!」

 

ムツキが鞄を振り回すようにして、爆弾をいくつか放り投げると、壁を作るように爆発する。

 

「そろそろ、戦車が次のポイントを通る‥‥‥‥ハルカ。」

 

「は、はい‥‥‥。行きます‥‥…!」

 

拳銃を撃ちながらカヨコが指示をするのとほぼ同時に、カイザーの戦車の履帯が地雷で壊れ、足を止める。そこにハルカが突っ込み、出てきた兵士に散弾を何発も撃ち込み、再び爆破。

 

「‥‥‥‥‥っ!!アル、ヘリ頼む!」

 

戦闘ヘリがこちらに攻撃をしようとしているのを確認してすぐに、アルが狙撃銃を片手で構え、発砲。

 

‥‥‥‥あれでちゃんと当たってヘリ堕とせるって‥‥‥やっぱ凄いんだな。

 

狙撃手のアルを警戒したのか、カイザーからの精密狙撃がアルを襲う。幸いなことに赤いコートがずり落ちただけだ。

 

「よくもアル様を…‥許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない‥‥‥‥うわあぁぁぁ!!!」

 

ハルカが凄まじい形相で突貫していく。小銃の被弾程度ではその足は止まらず、散弾を撃ち込み、腰の入った腹パンを叩き込み、ストックを鉄パイプのように振り回す暴行のオンパレード。

 

敵の増援が全くないわけではないが、便利屋の罠や爆弾、個々の高い戦闘能力、そして風紀委員会との戦いで身に染みついているのだと思われる逃げ隠れ、反撃するゲリラ戦法により、確実に敵を減らしつつある。

 

「‥‥‥‥言うだけ言っておいて自分は兵士に守られて穴熊なんてな‥‥。」

 

あのクソ理事‥‥‥先生を見ろ。アロナバリアがあるとはいえ、銃弾一発で死ぬ身で最前線で指とってるんだぞ。‥‥‥‥‥少しは下がってほしいんだけども‥‥‥‥‥ん?

 

ある物をもった兵士を見つけると、そこら辺に落ちていた小銃を拾って連射しながら接近し___

 

「‥‥…‥‥えいっ。」

 

撃ち切った小銃を脛にぶん投げて膝立ちにさせ、相手の膝を踏み台にした跳び膝蹴り(シャイニング・ウィザード)を食らわす。

 

意識が飛んだ相手事、勢い余って地面に転がりつつ、銃を奪って理事がいるであろうオートマタの少し上方に狙いをつける。

 

銃ではなく、銃身下部に取り付けられたランチャーの引き金を引くと、ポンっと気抜けする可愛らしい音と共に榴弾が撃ちだされて、炸裂。

 

 

「ぐあああぁぁっ!?」

 

 

お、吹っ飛ばされた理事が何か叫んでる。適当に狙ったにしては良い当たりだ。

 

 

「貴様ら、飼い犬の分際でよくも‥‥‥っ!」

 

 

「うるさいわね、そんなの知ったこっちゃないわよ!あなたなんかよりライの方が仕事をしやすかった!それだけの話!」

 

「あはっ!雇い主を裏切るくらい、悪党としては当然でしょ!そんなことも予想できなかったの?」

 

「‥‥‥オレ、裏切られんの?」

 

「ええー、どうしよっかなー‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥大丈夫、あなたには恩がたくさんあるし‥‥」

 

「勘弁してくれよ本当に‥‥‥‥‥ん?」

 

対策委員会が何かを決心した表情で歩いて来る。

 

「やりたい事、あったみたいだな。」

 

「ええ。‥‥‥お陰様で目が覚めました。私たちに今、迷っている時間はありません。」

 

「ホシノ先輩を取り戻す!非公認だか何だか知らないし、不法組織だって構わない!そんなことは今、何の関係もない!」

 

「ホシノ先輩を助ける。それが今やりたい事。大事なのはそれだけ。」

 

「…‥‥‥‥なら、私は責任をもって、それを手伝うよ。先生としてね。さて、と。」

 

満足そうな笑顔から一転して、厳しい目つきで理事の方を見る先生。

 

 

「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を‥‥‥!よくも…‥!」

 

小綺麗な格好や余裕のある態度は何処に行ったのか、お怒りの理事。人間の顔だったらすす汚れたストールに負けない勢いで真っ赤になっていただろう。

 

「‥‥‥‥よくも、私の大事な生徒達と同僚を。」

 

「!!」

 

静かに怒りを滾らせる先生に、理事が一歩退く。

 

「‥‥‥‥ホシノのこと、返してもらうよ。」

 

「ふ、ふざけるな!ポッと出の先生の、貴様にそんな権利が____」

 

理事の言葉は、生徒達の殺気と獰猛な敵意でかき消されるように止められる。

 

「知らないのか、理事。女の子は怒らせると怖いし、理屈を分かった上でぶん投げてぶん殴ってくるんだぜ?」

 

「‥‥‥‥ライ。ちょっと言い方考えよっか‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥言い方以前の問題じゃない?」

 

「経験上そうなんだよ‥‥‥‥‥あ、待って思い出したら手が震えて‥‥‥」

 

ま、不味い……‥リボルバーが右手から落ちそうだ。左手も震えて‥‥‥‥あ、弾落としちゃった。落ち着け…‥落ち着くんだオレ。あれから何年たったと‥‥‥‥‥やっぱり怖いんですけど。女の子怖ぁ‥‥‥‥‥。

 

「‥‥‥一体なにがあったのよ‥‥‥‥‥。」

 

「緊張感が無くなって来たわね‥‥‥‥」

 

「ええー‥‥‥‥アルちゃんがそれ言う?」

 

「‥‥‥‥‥‥‥はあ。」

 

 

「貴様ら‥‥‥‥一体どこまで私を‥‥‥‥‥!!」

 

 

あ、ごめん忘れてた。だってお前別に怖くはないし‥‥‥早くくたばらないかなーとしか思ってなくって‥‥‥‥‥‥。

 

 

「こうなったら徹底的に思い知らせてやろう‥‥‥!!」

 

 

「‥‥‥‥!?理事、あれはまだ調整中で___」

 

「黙れっ!!コイツらを消し飛ばすには十分だ!何も問題はない!!」

 

部下のオートマタが何かを止めるように意見したが、理事はそれを跳ねのける。それと同時に、どこからともなく、輸送ヘリが飛んできて何かを落とす。

 

 

「黒い‥‥‥‥」

 

「ロボット‥‥‥‥?」

 

「うわ~おっきい~♪」

 

それは大きな音と共に砂埃を巻き上げて着地する。砂埃が晴れるとその全貌が明らかになる。

 

黒い大きな人型。頭にあたる部分に乗っかっている大砲、両腕に3砲身の大口径ガトリングガン。そして、いつの間にか乗り込んでガチャガチャと何かを操作している理事。

 

「見るが良い!我々の技術の粋を集めた超強化外骨格!最高純度の素材で組成した装甲とアクチュエーターを搭載した、最新兵器‥‥‥”ゴリアテ”だ!!」

 

ゴリアテ‥‥‥‥確か、何かに出てくる巨人兵士のことだったか?

 

想定外のものに度肝を抜かれたが、両腕のガトリングガンが動き始めるのをみて、先生をコートで覆い隠すように抱きかかえて走り出す。

 

「全員散開!!」

 

ゴリアテのガトリングガンが、ノノミのミニガンとは比べ物にならない大口径の弾をバラまき始め、建物や道路を削り取っていく。

 

「こんのぉ!!」

 

遮蔽物に向かって走りながらセリカやシロコが撃ち返すも、小銃では黒い装甲に傷一つつけられない。

 

二人に注意が向けられ、ガトリングガンの砲口がずれたのを狙って、今度はノノミとムツキがミニガンと機関銃と言うこちらでは比較的高威力の装備で集中砲火を行うが、効果はないに等しい。

 

 

「そんな豆鉄砲で‥‥‥。食らえ!!」

 

 

ゴリアテの両肩の装甲が開き、無数のミサイルが発射される。数も攻撃範囲も、散開しているオレ達全員を十分に巻き込めるだろう。

 

「…‥‥っく!!アル手伝え!!アヤネ、先生頼む!!」

 

遮蔽物に隠れたアヤネに先生をぶん投げる。

 

「え、ええええ!!??」

 

悲鳴が聞こえたが大丈夫だろうと考え、上から迫るミサイルに照準を合わせて迎撃する。

 

アルと共にミサイルを可能な限り撃ち落とす。いくつかはあえてギリギリの高度で爆発させて目くらましとして__

 

「はい、プレゼントっ!!」

 

「そこぉ!!」

 

ムツキが爆弾をゴリアテにぶん投げ、それをセリカが撃ちぬいて爆発させる。

 

コクピットはむき出しだった。破壊は出来なくとも、理事にダメージ___

 

「…‥‥‥これでもダメなのっ!?」

 

「ええー‥‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥マジかよ。…‥‥‥っ!?」

 

隠れようとした瓦礫の影にオートマタが!?

 

直ぐに頭と武器に全発撃ち込む。オレが先に撃ち込んだので一発も貰わなかった‥‥‥が、そのまま倒れこむ。すると、先程オレの頭があった部分がはじけ飛ぶ。

 

「‥‥‥‥‥あれ絶対人に向けるのじゃないだろう!?」

 

遮蔽物ごとガトリングガンでぶち抜こうとしてくる理事に若干の恐怖をとトリガーハッピーを感じながら、倒れた状態で見える範囲のオートマタを狙い撃つ。

 

「先生!!無事かっ!!??」

 

ガトリングによる猛烈な爆音に負けじと声を張り上げて先生に呼びかける。

 

「大丈夫だけど‥‥もっと丁寧に扱ってほしいな‥‥」

 

「腹に風穴空くよりいいだろ!!」

 

「どうすんの先生!!オートマタも増えて来てんだけど!!」

 

「恐らく、私たちを一気に無力化する気なんです!」

 

「でも、こんな所で…‥‥!」

 

「弾も罠も無限じゃない。このままじゃ押し切られる‥‥!」

 

「‥‥‥先生、作戦ありますか?‥‥‥‥‥そろそろ、不味い。」

 

スピードローダーが無くなった。弾自体はまだバラであるが、総弾数の少ないリボルバーで一瞬でもリロードが遅いと自動拳銃(オートマチック)以上に命取りになるし、余り数もない。かといって、オレのリボルバー(アーバレスト)で使える弾を持っているのはいない。予備の武器もあるが、弾を共有しているのであまり意味がない。

 

「考えはある。でも、時間を稼ぎながらオートマタをどうにかしないと…‥‥。」

 

普通の武器はゴリアテには聞かず、倒すには準備が必要。その為に誰かが囮になる必要がある。

 

オートマタは普通の武器、最悪格闘でも倒せるが、数が多い。

 

出来る限り早くオートマタを倒し準備をするに必要な役割り。何より、囮という最も危険で重要な役割を考えると…‥‥‥やるしかないな。

 

「…‥‥‥‥ゴリアテを、理事を引きつけていればいいんですね。」

 

「そうだけど‥‥‥‥まさか‥‥!?」

 

「先生は作戦と指揮だけ考えてください。

 

 

 

 

 

 

 

 ‥‥‥‥‥囮、行きます。」

 

 

_____________

 

 

________

 

 

_____

 

 

「ふふふっ、ふははははっ!!見たか!このゴリアテの圧倒的な力を!!だがまだだ、まだカイザーの技術は、こんなものではない!!さっきまでの威勢はどうした!?さっさと出てこい!!」

 

 

「…‥‥‥いい年してるだろうに。良い玩具貰ったからって調子乗りやがって。流石はカイザーPMCの理事。いいご身分で羨ましいぜ。」

 

わざとらしく堂々と歩きながらゴリアテの前に出る。

 

まあ、いい年して玩具買って喜んでるのは先生も似たようなもんか。

 

「‥‥‥‥‥ほう、随分と言ってくれるじゃないか。どうだね?カイザーの技術の結晶は?素晴らしいものだろう?」

 

「ああ。乗ってるのがアンタじゃなかったら最高だったよ。てか未調整中なんだろ?いいのかよ、そんなもん持ってきて。」

 

「心配には及ばんよ。貴様らを叩きのめしたデータをもって完成とさせてもらうからな。土地の件とあわせて、感謝しなければな。」

 

「はあ‥‥‥‥もう勝った気でいるのか?まだここからだってのに。」

 

「ふん!貴様たちに何ができる?それに…‥‥一人だけノコノコ出てきて何のつもりだ?まさかとは思うが、貴様を囮にして逃げたのか?それとも、くだらん偽善か?」

 

「囮も偽善も否定はしない。でも‥‥‥‥‥そんな事はどうだっていい。‥‥‥‥さあ、かかってこい。前にも言ったけど、指はいつでもトリガーにかかってる。」

 

見せつけるように軽く銃を上げて見せながら下手な作り笑いをしてみる。

 

「その手には乗らんぞ。他の連中が何を企んでいるのかは知らないが、貴様ごとき、オートマタに任せておけば_____」

 

「折角の玩具を使わないで人任せか?…‥‥残念だよ。まさか、()()()()にすら勝てないのか?‥‥‥‥‥ははっ、見掛け倒しで残念だよ。大したことないんだな、カイザーの新兵器。いや‥‥‥アンタが腰抜けなだけか?」

 

「貴様‥‥まに身体を震わせているような気がする。にしても、本当に余裕がなさそうと言うか‥‥‥意外と肩身が狭いのだろうか?

 

「言わせておけば好き勝手‥‥‥。私はカイザーPMCの理事だぞ!何様のつもりだ!?」

 

「そうだな‥‥‥‥唯のガンマンかな?」

 

「そうか‥‥‥‥‥ならば、唯のガンマンとして、死ねぇっ!!!」

 

理事は怒声を上げながら両腕のガトリングガンをこちらに向ける。無論、そんな事は予想済みだ。

 

既に足はアスファルトを蹴り、近くの建物に窓ガラスを割りながら跳びこむ。

 

窓ガラスが落ちる音とほぼ同時にけたたましい銃弾のドラムロールが鳴り響き、壁を削り、撃ちぬいていく。

 

弾も少ない、そもそもあんな物を全て防ぐのは普通出来ない。

 

「‥‥‥‥‥‥っ!!」

 

結局いつも、姿勢を低くして死ぬ気で走る事になる。キヴォトス人ほど頑丈ではないが、全速で走り続けることに関しては最早日常。機械越しとはいえ、理事からの殺気や狙いも何となく分かる。だが、それでも人間と言うのは素直なものである。

 

「クッッソ怖いんだよっ!!!」

 

しかし泣き言は言っていられない。壁を蹴って窓の反対に方向転換。ある程度距離を取ったら外に飛び出して回り込み、()()()()()()()()()()

 

もちろん、このままでは普通に死ぬ。銃火器と言うものは近ければ近い程当たりやすいものだから。しかし‥‥‥‥‥近すぎてもダメだという事は、案外失念されがちだ。

 

そのでかい図体では、死角から入られても照準までラグが生じる‥‥…!

 

勢いを乗せてスライディングでゴリアテの股下を潜り抜けながら、股関節を狙って攻撃____

 

「…‥‥‥‥は!?」

 

()()()()()()

 

()()()。ゴリアテの黒い巨体が十メートル以上跳躍した。

 

「冗談だろっ!?」

 

このままでは撃ち下ろされてゲームセットだ。アスファルトを滑る身体をブレイクダンスばりの回転で起こしながら予想される射線から片手ロンダートで移動して、ガトリングガンの直撃を避ける。

 

火力も装甲も機動性も高いとは…‥‥これで未調整って冗談だろ!?

 

着地したゴリアテの両肩が開き始めるのが見えた。しかし、今ミサイルを迎撃することは困難。できたとしても弾が無くなる。だから…‥‥‥

 

両膝で着地して両手で銃を構え、精度を最大限まで高める。開いた装甲からミサイルの弾頭が見えた瞬間、全ての弾丸をゴリアテの両肩に3発ずつ撃つ。

 

弾丸は発射されたばかりのミサイルの後部の噴射口付近に着弾し、内部の推進剤か炸薬が誘爆する。発射された直前と言う事も会って、隣り合っているミサイルも巻き込んで爆発し、ゴリアテの体勢が崩れる。

 

しかし、制御系が優秀なのか、直ぐに体制を立て直してしまう。見た所、誘爆したことによるダメージも大してなさそうだ。最新兵器なだけはあるという訳か。

 

「貴様ァァァ!!!」

 

オレを轢くのか踏み潰すつもりか、自動車並みの速度で疾走するゴリアテ。しかし、銃弾よりは確実に遅い上に、真正面から殺気を放つデカブツにやられる程、オレは遅くはない。

 

あえてゴリアテに向かって走っていき、歩幅と足の回転速度を元に、あえて足元に滑り込む。

 

目と鼻の先をゴリアテの足裏が通り抜けていく光景に冷や汗をかく。

 

ゴリアテは急制動を掛けると、左腕のガトリングガンの銃身を近くの車に突き刺して器用に持ち上げ、恐るべきパワーでアンダースローでぶん投げる。

 

避けられはする。しかし、投げた左腕はこちらに向いたまま。右のガトリングガンも動き始めている。オレの逃げ道を潰してハチの巣にする気と言うわけだ。

 

()()()()()()()()()()()()

 

左右のどちらにも逸れることなく、真後ろに走り勢いをつけて跳び、反転。

 

身体を宙に投げ出し、猛スピードで迫る車のルーフを両足で受ける。

 

「ぐうぅぅっ!!‥‥‥‥‥ッォラァァッ!!」

 

後ろに跳んだ勢いと全身の関節を連動させて衝撃を受け流しつつ、ルーフに一瞬張り付く。

 

左右を弾丸が通り抜けたことを音で確認すると、失速して回りながら地面を滑ろうとする車にギリギリまでしがみつき、アスファルトと車の僅かなスキマに体が上手く入り込んだ瞬間、背中をアスファルトに押し付けながら右足を振り上げて車から体をはがす。車はそのままオレの頭上を通って転がり、爆発する。流石に車の爆発から逃げることはできず、そのまま別の方向に吹き飛ばされる。

 

「…‥‥‥‥っ!?‥‥‥クッソいてぇ…‥‥‥ぐぅっ!!??」

 

身体が軋む。少なくともどこかしら内側はやっただろう。歯を食いしばりながらよろよろと立ち上がろうとするが、フラっときて転んでしまう。

 

「…‥‥‥やばいかも。」

 

そんな状態でも無意識に弾の再装填を行う自分の体は大したものだ。しかし、今のでポーチがちぎれ、弾の殆どが吹き飛んだ。コートの内側に入り込んだものと近くに落ちた弾を左手でかき集める。その数____6()()

 

「‥‥‥‥っ、ハハッ。十分、だな…‥‥。」

 

まだ生きてる。体も動く。全発装填できる。十分だ。

 

ゆっくりとゴリアテが歩いて来る。腕のガトリングガンを撃ってくる気配もない。まるで、挨拶でもしてくるかのように、オレを見下ろすように止まる。

 

理事、アンタの顔、見えなくてもわかるよ。

 

笑ってるんだろ?

 

新しい玩具で、自分が傷を負わせ、いつでも止めを刺せるように見える獲物を、舌なめずりしながら見てるんだろ?

 

分かるよ。アンタは、そういう奴だ。

 

 

「…‥‥‥‥さっさと止めを刺さないのか?今がチャンスじゃないのか?」

 

 

「いや‥‥‥‥‥貴様が思った以上に楽しませてくれたのでな。最後のチャンスをくれてやろうと思ってな。‥‥‥‥‥‥カイザーへ来い、真道ライ。貴様のその高い能力を、私の下で存分にふるってはみないか?」

 

 

「‥‥‥‥‥‥そんな事言う為だけに…‥‥‥くだらない。」

 

 

「まあそう言うな。それなりの地位を約束してやるし、もしかしたら小鳥遊ホシノとも一緒に働けるかも知れんぞ?それに、そんな古臭い骨董品(リボルバー)ではなく、最新の装備を___」

 

「…‥‥‥オレはこれが好きなの。それに、アンタの下なんて、死んでも御免だ。」

 

「そうか…‥‥‥‥ならば、ここで死ね。」

 

両腕のガトリングガンではなく、頭にあたる所に乗せられた主砲がオレに向けられる。紫色のエネルギーが収束し始め、眩しく怪しい光がオレを照らす。

 

「‥‥‥‥‥さらばだ、真道ライ。自分の選択を悔いて終わるがいい。」

 

「‥‥‥‥‥‥ふふふっ、ハハハハハっ!!!」

 

「どうした?気でも狂ったか?」

 

「オレはいたって正気だぜ、理事。まさか…‥‥‥こんなに上手く付き合ってくれなんてな‥‥‥‥‥‥‥皆!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…‥‥‥‥‥ん。」

 

 

 

突如、ゴリアテの足元や頭に数個の手榴弾が投げられて爆発し、主砲のチャージは中断され、機体が大きくよろめく。

 

「な、何!?」

 

 

「残念だったな。アンタが戦ってるのは()()じゃなくて…‥‥‥()()()だ。」

 

 

四方からありったけの銃弾がゴリアテに叩きつけられる。もちろん効きはしないが、注意を逸らすのには十分だ。

 

「待たせたわね!!カヨコ!!」

 

「…‥‥‥ライ!」

 

「ライさん!」

 

カヨコとアヤネが心配そうな表情で駆け寄ってきたので頑張って立ち上がる。

 

「準備できたみたいだな。」

 

「アンタの無茶のおかげでね。オートマタも大方倒した。」

 

「ライさん、その怪我‥‥!」

 

「大丈夫。見た目ほど酷くないから…‥‥それより、誘導するんだろ?場所は?」

 

「この先の曲がり角。先生とムツキが待ってるから行くよ。走れる?」

 

「もちろんだ…‥‥‥行こう。」

 

身体に鞭を打ってアヤネの案内で再び走る。やはり、理事はオレを狙っているようだが、皆の攻撃で上手く狙いを逸らしながら誘導出来ているようだ。

 

 

「…‥‥‥‥‥‥!!ライ!!」

 

「先s___」

 

「もう無茶して‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥まだ終わってないんで、離れてください。」

 

「え?…‥‥あ、ごめんね?」

 

「嫌ってわけじゃないんでいいですよ。‥‥‥‥‥‥ムツキ、ハルカ。行けそうか?」

 

「ありったけ仕掛けたからねー!ハルカちゃんも手伝ってくれたし、大丈夫!!」

 

「そっか。…‥‥‥‥‥来た。」

 

 

「ようやく全員出て来たな…‥‥‥‥‥ここで終わらせてくれるわあっ!!」

 

曲がり角から現れ、こちらに疾走してくるゴリアテ。

 

「3,2,1‥‥‥みんな離れて!!」

 

先生の指示で全員がある場所から離れる。数秒後、ゴリアテの足がそこをふんだ瞬間___

 

「えいっ!」

 

ハルカがスイッチを押し込む。

 

オレが時間を稼いでる間に仕掛けてくれた、ありったけの爆薬を使った特製巨大地雷。

 

強烈な閃光と共に、爆炎と衝撃がゴリアテを包み込む__!!

 

 

(ドガアアアァァァァァァン!!!!!!!!)

 

 

「や、やりました!!」

 

「ふふっ、はははっ!!やったわ、やってやったわあっ!!」

 

「…‥‥‥‥ハルカ、社長。それフラグなんじゃ‥‥」

 

 

「まだだ…‥‥‥‥」

 

爆炎による煙から聞こえてくる怨嗟の声。所々ボロボロになりながらも、未だ立っているゴリアテの、理事の姿が現れた。

 

「嘘でしょっ!!??」

 

「ええー‥‥‥‥‥‥まじか~‥‥‥‥」

 

「これでも倒れないなんて‥‥‥‥‥‥」

 

 

「ふははははっ!!!‥‥‥‥‥‥‥‥くたばれえぇぇっっ!!!!!」

 

再びエネルギーが収束する主砲。内部にも少なくないダメージを受けたせいか、あちらこちらから火花が飛び散り、スパークしているが、理事はそんな事はお構いなしだ。それにあれだけのエネルギーを、あんなボロボロの状態で‥‥‥‥クソっ!!

 

「シロコ!!ドローン上げろおっ!!」

 

痛みを振り切ってゴリアテに向かって、もう何度目かになるか分からない突撃を行う。

 

「っ!!??…‥‥‥‥‥‥ん!!」

 

オレの意図を理解してくれたのか、後ろからシロコのドローンが飛んできて急上昇する。

 

「…‥‥‥‥‥っ!!!」

 

オレはジャンプしてドローンの着陸部に捕まり、自力では不可能な高さに急激に上昇する。

 

すぐ目の前に主砲と_____ボロボロのキャノピーが見える。

 

ドローンから残った数発のミサイルが発射される。。ミサイルが命中し、キャノピーの残骸が煙の中から吹き飛ぶ。瞬間、大きく足を振ってドローンからゴリアテのコクピットに目掛けて、跳ぶ。

 

着陸とかそういうのは考えない。銃口を煙の中の理事に向けて、発砲。

 

5発の弾丸が通ったことで煙が晴れ、理事の姿が直接見える。そこにキャノピーはない。

 

「ぐあっ!!??」

 

5発の弾丸をまともに食らい、苦悶の声を漏らす理事。

 

「ウオォォォラアっっっ!!!!」

 

コクピットの縁に足が乗った瞬間に、勢いを乗せたまま体重移動し、腰を捻り、抉りこむように

理事の顔面目掛けて、全力でぶん殴る。操縦席に理事の体がシート叩きつけられた勢いで握られた操縦桿が後ろに下がり、ゴリアテは後ろに大きく傾く。ついでに、ダメ押しとばかりに最後の一発を理事の手に撃ち込んで操縦桿から手を離させる。

 

黒い巨体が仰向けに倒れる。むき出しのコクピットから、オレと理事は外に放り出される。加えて、ダメージが蓄積した機体に、強い衝撃が加わったためか、ゴリアテは爆発。ロボットの身体の理事より遠くにオレは吹っ飛ばされる。

 

「‥‥‥‥っ‥‥‥拘束、しないと‥‥」

 

理事は最悪な事にまだ生きているようだ。流石キヴォトス人。なら、まだ聞きたいことも利用価値もある。拘束を____

 

 

 

「‥‥‥‥!!理事!?‥‥…そこのお前!理事に近づくな!!」

 

起き上がったのか、増援か。カイザーPMCのオートマタ数体が理事に駆け寄りつつ、オレに銃を向ける。

 

身体はボロボロ、武器は弾無しのリボルバーとナイフのみ。ここは大人しく倒れておくしかなさそうだが、増援だとしたら、まだ起き上がっているヤツがいるのなら‥‥‥今度こそ不味いかも。

 

 

「理事!傷が‥‥‥直ぐに治療を‥‥!」

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥一度退却だ!」

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥え?」

 

「聞こえなかったのか!!兵力の再整備に入れ!」

 

「は、はいっ!!」

 

オートマタは理事を支えつつ、こちらに銃を突きつけながら下がっていく。

 

「覚えておけ、この代償は高くつくぞ‥‥‥‥‥!」

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥ライ!」

 

PMCと入れ替わるように、先生たちが走ってくる。

 

「‥‥‥‥‥‥アヤネ、敵は‥‥?」

 

「…‥‥退却しているみたいです‥‥‥‥‥・」

 

「そっか‥‥‥‥はぁ。」

 

「ふぅ‥‥‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥ん。」

 

「‥‥‥‥理事には、逃げられたよ。”覚えておけ”、だってさ。」

 

「くふふっ!正に本物の三流悪党の台詞って感じだね。」

 

「想定通り‥‥ってわけじゃないけど上手くいった。風紀委員会相手でも通用するといいけど‥‥…。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥でも、まだ終わってない。」

 

「はい。きっとこの次は‥‥今までで一番大きな戦いになると思います。」

 

そう。今回は、カイザーPMCを返り討ちにしただけ。

 

小鳥遊ホシノの救出。それが何よりの目的だ。

 

「帰って、ホシノを助ける方法、探さないとな。でも、疲れ___」

 

あ、ヤバイ。意識が…‥‥、もう…‥‥

 

 

 

「…‥‥イ!?‥‥‥ラ‥‥!」

 

 

 

すみま、せん、いま、なん、て‥‥‥?

 

 

こんなに、うごいたの、ひさしぶ______

 

ガクっ。

 

「ら、ライ_____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ZZZ…‥‥‥」

 

「…‥‥‥‥え?寝た?」

 

「まあ‥‥‥頑張りましたから‥‥‥」

 

「…‥‥‥一応病院に連れて行ったほうがいいんじゃない?」

 

「ん、それなら私が…‥‥」

 

「あなた達、やらなきゃならない事があるんでしょう?私たちが責任をもって連れていくわ。」

 

「‥‥‥‥じゃあ、頼んだよ。」

 

「そ、それでは私が背負います‥‥‥。」

 

「ZZZ…‥‥ししょー‥‥‥やめ‥‥‥いや…‥‥う‘‘う‘‘っ!!??‥‥‥ZZZ‥‥」

 

「なんか、魘されてるんだけど…‥‥」

 

「…‥‥‥本当に大丈夫かしら?」




ようやく先が見えてきましたね。
あと数話アビドス編書いたら、閑話をいくつか書くので、ご意見などありましたら感想でお願いいたします。
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