「うん、大体こんなもんかな。」
「わっ、屋台も良い感じじゃん!」
「お嬢ちゃん達か。元々、紫関ラーメンは屋台から始めたこともあってな。懐かしい気分だよ。」
「わ、私のせいでしょうか?そうですよね?‥‥‥‥‥し、死にましょうか?死んでもいいですか?死にますっ!!」
「まあまあ。それにしてもやめるって聞いたけど、またお店を開くことにしてくれて良かったよ~。」
「ああ、ちょっと前にどっかの誰かさんが、お店の前にお金を置いて行ってくれたこともあったからな。」
「…‥‥‥‥。」
「本当なら引退して、ゆっくりしようと思っていたんだが…‥‥営業して欲しいと言われちゃあ仕方ない。‥‥‥‥‥嬢ちゃん達、腹減ってるだろ?ラーメン、食うかい?」
「580円の紫関ラーメン4杯、お待ち!」
「これ、また量を間違っている気が‥‥‥‥?」
間違ってないぜ?前のおつりが、少し多かったからな。その分ってことだ。
「あはっ、まあ良いじゃ~ん。」
「「「「 いただきまーす! 」」」」」
「あー、美味しかった。さて、じゃあそろそろ行く?」
「‥‥‥‥‥社長、本当に行くの?この戦い、私たちには何のメリットもない。彼は出ても出なくてもいいって言ってたし…‥‥‥‥」
「…‥‥‥‥ふん。」
「カヨコちゃん、よく見てみなよ。」
「ん?」
「アルちゃんのその顔を見れば分かるでしょ、”依頼料なんて、このラーメンが味わえただけで十分よ”って今にも言いだしそうじゃん!」
「…‥‥‥。」
「な、なるほど!さすがアル様です!多くは語らず、一杯のラーメンで地獄へと赴くその姿、まさにハードボイルドです!わ、私も真のアウトローになる為に頑張ります!今度こそ、ちゃんと全部消して見せますっ!」
「…‥‥‥‥‥ふふっ。さあ、私と一緒に地獄の底までついて来る覚悟はできたかしら?」
「くふふっ…‥‥‥!」
「ほら!じゃあ行こ!」
「じ、地獄の底までお供します!」
「はぁ…‥‥‥まあ、仕方ないね。」
「じゃあ、取り敢えずお会計‥‥」
「ああ、それなんだがな。もう払ってあるんだ。」
「‥‥え?」
「そういうこった!仕事か何かあるんだろ?頑張ってきな!」
〈悪いな、坊主。忙しいのに屋台の修理に組み立てまで手伝わせちまって…‥‥〉
〈いいですって。またこの味を食えるってだけで嬉しいんで。むしろ手伝わせてくれてありがとうございます。‥‥‥‥‥‥ぷはぁ‥‥。〉
〈本当にいい食いっぷりだな…‥‥流石、若い男は違うな!〉
〈まあ、どうも……‥‥‥あ、そうだ。大将。〉
〈なんだい…‥‥‥って、銭が多いぞ!?〉
〈近いうちに便利屋‥‥‥‥店が吹っ飛ばされたときの子たちがくるので、これはその分です。〉
〈は、はあ…‥‥‥?〉
〈でも、オレの分はツケておいてください。また後で払いに来ます。〉
〈いや、それは構わないが‥‥‥どういう‥‥?〉
〈……‥‥まあ、決意表明ですかね?必ず帰ってくるっていう。〉
〈坊主‥‥‥?〉
〈今度は、先生と対策委員会皆と来ます。絶対に、皆で食って、金払いにきます。だから‥‥‥‥またラーメン作ってくれて、ありがとうございます。…‥‥‥ご馳走様でした。〉
「‥‥‥‥そうだったな。‥‥‥‥ダメになったんなら、またやり直せばいい。大事なのは、ラーメンを食べに来てくれる人の方だ。お客さんがいる限り、店は消えないそういうもんだ。だから‥‥‥
‥‥‥行ってこい、対策委員会、坊主。皆で帰ってきて、最高のラーメンを腹いっぱいに食べてくれ。」
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(ドカアァン!!)
「な、なんだっ!?」
「正門が…‥‥!」
「敵襲、敵襲っ!一人も通すな!」
突如とし門が爆発し、砂埃や煙が舞い上がる。一瞬動揺したものもいたが、流石はPMCの兵士達。アラートと共にそれぞれの任務を全うすべくせわしなく、迅速に、規律よく動いている。
「アビドス高校の生徒達に違いない。理事に報告、探せ!」
「まだ見つからないんですか!?」
「だからさっさとお前も____」
「それは良かった。」
振り向いたオートマタと周囲の兵士たちの顔面にリボルバーを速射、沈黙させる。制式配備されている小銃とは違った銃声に気付いた兵士達が目にしたのは、あっという間に再装填を追えて此方に銃口を向けた黒いコートを着た青年。
「お仕事ご苦労様。じゃあ…‥‥‥くたばれ。」
四方八方から小銃を向けられるが、致命傷待ったなしに放たれるであろう弾道を予測し、姿勢を下げながら回転するように移動回避し、近くのオートマタから順に速射して倒していく。
体勢を下げたことによる上下差や弾切れの隙を埋めるべく、足払いを掛けながら兵士の一人に背後から組み付いて盾にする。
直後、絶え間なく銃弾の雨が降り注ぐが、少しづつ動きながら片手で排莢・再装填を終えると、盾として我が身を守ってくれたオートマタを蹴飛ばしながら、僅かに出来た死角と動揺を狙って容赦なく脳天に撃ち込んでいく。
「…‥‥‥‥‥これで取り敢えず___」
殺気。下ろした銃を半ば本能的にノールックで背後に向けて一発。音と気配で倒れたのが分かると、再装填しながら周囲を確認する。‥‥‥‥‥大丈夫だな。
「先生、アヤネ。出てきていいぞ。」
「‥‥‥‥‥とりあえず、第一関門突破だね。」
「やっぱり大胆ですね、この作戦…‥‥‥」
「玄関から入るのがマナーだからな。問題ない。」
「そうだね。ちゃんと
まあ、単純に真正面から突っ切るのがホシノの所までの最短距離であり、
「アンタ達なんてっ!!」
「ん、楽勝。」
「~~♪」
うん。思ったより大丈夫そうだ。ただ、張り切りすぎてヘマしない様にフォローしないとな。
「アヤネ、敵戦力はどうなってる?」
「はい…‥‥‥どうやら、私たちがいる東側と、風紀委員会がいる北側に戦力が分散しているようです。」
「上手く行ったみたいですね、先生。」
ドローンの映像を見る限りだと、北側に向かう兵士の方が多い気がしなくもない。きっとあの身丈に合わない機関銃でハチの巣にしているのだろう。
「
「え?一体何をしたんですか?まさか、風紀委員会のやつらに何か___」
「ち、違う!違うから!別に傷つけられたとか不当な要求されたとかじゃないから!?」
「本当ですか?少し、心配なんですけど…‥‥」
「それよりほら!早くホシノを助けに行かないと!囲まれる前に急ごう!」
それはそうなんだが、上手く誤魔された気がする。
「‥‥‥‥‥まあ、それは追々聞くとして、」
「ええ…‥‥‥」
「指揮は頼みますよ。まだまだ、ポイントまで距離がありますからね。」
戦車や大柄な盾持ちがそろって来た。意地でも通さないってことだろう。それぞれはどうとでもなるが、流石に数が多い。
「先生、最短最速のプランで頼みます。」
「うん、任せて。」
「んじゃあ…‥‥‥‥行くぞ。」
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カイザーPMC基地指令室。アビドス砂漠に基地が作られて以来、初めてと言っても良い程の喧騒と緊張感に包まれてる中、理事は徐々に苛立ちと焦りを募らせていた。
「何をしている!さっさと片付けろ!!北方と東方の部隊はどうした!?」
「北方に、少数ですが兵力を確認!」
「む?北方だと!?」
「数は3人‥‥あ、あれは…‥!ゲヘナの風紀委員会です!」
「何!なぜゲヘナがこんな所に‥‥‥」
「な、なあ…‥‥‥アレもしかして、ゲヘナの風紀委員長じゃないか?」
「あのキヴォトス最強って噂のか!?本当なら、我々は‥‥‥‥‥」
「おい、北方の対デカグラマトン大隊はどうした!?」
「そ、それが‥‥‥装備の不調で時間がかかると…‥‥」
「急がせろ!このままでは押し切られる!」
「西方と南方の部隊も回せ!」
アビドス高校の生徒達とシャーレが来るのは想定内だった。先日は便利屋68の存在やゴリアテの調整不足といった理由で一時撤退にまで追い込まれたが、ここは基地だ。兵力も装備も環境も必要以上にある上にゴリアテも先日のデータを元に調整された機体が数機ある。
例え攻め込まれてもそのまま返り討ちに出来るはずだったが、想定外は起きた。
易々と中に入られてしまったばかりか、想定以上の速さで攻め進めている。
加えてゲヘナの風紀委員会、それもキヴォトス最強格と噂される風紀委員長が別方向から来た。僅か3人とはいえ、その噂に違わぬ実力でオートマタも戦車も蹴散らされていき、否応なく戦力を分散せざるを得なくなった。
「何故だ‥‥‥何故こうも私の邪魔ばかり……‥‥!!」
腹立たしく、目障りで、鬱陶しくて、邪魔で、仕方がない。
「アビドスとシャーレ、第51地区に真っすぐ向かっている模様!」
「何!?」
第51地区は小鳥遊ホシノが拘束され、これから実験される場所だ。目的が彼女なのはわかってはいたが、何故居場所が‥‥‥‥。
「‥‥‥‥黒服か。」
小鳥遊ホシノの居場所を知っていて、それを教えかねない人物は奴しかいない。
一体何の為なのかは知らないが、元よりカイザーの所属ではなく単に利用しあっていた関係だ。裏切ったとかそういう事を言うつもりはないが…‥‥面倒な事をしてくれたものだ。
「戦車とゴリアテをアビドスに回せ!何としても食い止めろ!!」
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「みなさん、大丈夫ですか?」
「ん。」
「全っ然大丈夫!」
門から堂々と突っ込んで、そのまま真っすぐホシノの所まで向かっていたが、流石に簡単な装備点検と小休憩の為に足を止める。かつてない程の士気がある為か、対策委員会はもちろん先生も含めて問題は無さそうだ。弾薬も十分に残っており、コートも被弾していない‥‥‥‥‥というか流石にボロボロすぎて当たると不味い。
「先生に教えていただいた座標はもう目の前なので、もう少しの辛抱です‥‥‥!」
「まだまだ行けますよ~!」
「…‥‥‥。」
敵陣のど真ん中に突っ込んでいる最中とは思えない空気感につい気が抜けかける。
殺し合いでないとはいえ、日常的に銃を持ち歩き、撃ち合うキヴォトスの生徒との違いに今更ながら困惑する。
少しは慣れたと思っても、今まで見聞きして体験してきたものとは違うことが、よく見知っているつもりの風景や文化の中で良く起こるのだから、自分もまだまだ、キヴォトスの水に馴染めていないと感じる。まあ、根本的・本質的な部分は変わらないだろうが。
「…‥‥‥っ!前方に敵を発見しました!!戦闘ヘリや盾持ちが多数!!」
小休憩は終わりの様だ。直ぐに対応をすべく先生の指示とタイミングを伺っていると__
(ドゴオォォン!!)
「!?」
轟音と衝撃と共に、敵兵力がまとめて爆ぜ飛ぶ。カイザーからの攻撃ならまだしも、明らかにカイザーに向けられた攻撃であることに、対策委員会が動揺する。
「‥‥‥‥‥支援砲撃。」
「‥‥‥‥L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!」
アヤネが分析している間に、ある人物からの通信が入る。誰なのかは察しがついていたのでそのまま応答する。
「もしもし、連邦捜査部シャーレです。現在、取り込み中でございまして___」
『あ、あぅ‥‥…私です‥‥‥。』
「あ、ヒフ___」
『ち、違います!』
どこか弱弱しい声で話す人物がだれか分かったセリカが名前を呼ぼうとするも、打って変わって力強く否定される。
『私はヒフミではなく、ファウストです!』
「…‥‥‥‥。」
この場で名前を呼ばれたくないのは分かったが、自分で言ってしまっているという事に、アヤネと先生が”ええ‥‥”っていう表情をしている。
「わあ、ファウストさん!お久ぶりです!ご自分で名前を言っちゃってましたが、そこはご愛嬌という事で☆」
『あ、あれ!?あぅぅ‥‥‥!』
ノノミに指摘されて初めて気が付いたようだ。
『その、このL118はトリニティの牽引式榴弾砲ですが‥‥‥と、トリニティ総合学園とは一切関係ありません!射撃を担当している皆さんにも、そう伝えておきましたので‥‥…』
…‥‥‥この子、嘘苦手なんだな。そういう所は普通の人より普通の女の子してるっていうか…‥いやだからこそだな。中々の傑物に見えるぞ。
『す、すみません、これくらいしかお役に立てず…‥‥。』
「ううん、すごく助かった。」
「はい!ありがとうございます、ファウストちゃん!」
「本当にありがとう、ヒフ___、ファウスト。」
「射撃担当にも礼を伝えておいてくれ。ありがとう、リーダー。」
『あはは…‥‥‥えっと、みなさん、が、頑張ってください!』
心からの感謝と、応援の言葉を交わしあうと通信は切れた。元々は屋外授業だったらしいから、これ以上の砲撃も無理だろうからな。だが、道は開けた。
「火力支援の直後に突撃、定石道理だね。」
「はい!敵は砲撃により混乱状態です!今のうちに、」
「突破、だな。んじゃあ‥‥‥‥走れ!!」