知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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対策委員会編:第1・2章
初めての出張は遭難者探しになった。


「そういえば、君一人暮らしなんだっけ?」

 

「うん、今年からようやく。」

 

「しかしよ、お前バイトもやってるし、家事もやんなきゃだろ?大変じゃねえの?」

 

「家事は前からやってたから変わらないよ。一人なのがいい。自分の物いっぱいおけるし。」

 

「あー、お前はそうだよなー。んじゃ、週末でいいから俺に押し付けたグッズもってけよー。」

 

「そっちが勝手に預かってたんだろ。捨てるなり売るなりしてもいいって言ったのに」

 

「友達のモンを勝手に捨てるとか売るとかやらねえよ。いいから早く取りに来いよな。」

 

「‥‥‥‥‥‥…‥分かった。」

 

「それはそうと君達、次の授業、移動教室だけど大丈夫?」

 

「そうだっけ?…‥‥ってオイ?!あと3分じゃねえか?急ぐぞ眼鏡、○○○!」

 

「遅れたら君のせいですからね。何か奢ってくださいよ。」

 

「‥‥‥学食の一番高いヤツ。頼むよ。」

 

「お前もかよ?!ホラ、走れ!」

 

「あ、チャイム」

 

「ゴチになります。やったね、○○○君。」

 

「お前らああああァァアア!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんだ、夢か。そうだよ、な‥…」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おはようございます、先生。」

 

「ライ、おはよう。」

 

オレがキヴォトスに来てから数日。キヴォトスでの生活や先生との仕事にも慣れてきた。

 

自分の机に座る前に先生の机、正しくはその上に置かれたタブレット端末に近づく。

 

「おはよう、アロナ。」

 

『おはようございます、ライさん!』

 

画面に映っている水色の髪の幼女に挨拶をするが、決して何かの病気だとか特殊性癖だとかではない。

 

彼女はアロナ。”シッテムの箱”のメインOS兼先生の秘書であるが、その姿や声が分かるのは先生とオレだけらしい。かく言うオレも、端末の画面を見ながら、その場にいないはずの幼女の声と延々と話している先生を目撃してしまい、心配と恐怖を覚えた為に質問するまで気づかなかった。

 

「ところで先生、部員の件、どうするんです?」

 

ユウカの言った通り、ここ数日でシャーレの噂はキヴォトス全域に広がり、寄せられる支援要請などの手紙も増え続けている。

 

部費の増額やコーチはまだしも、新聞配達や河川清掃、猫探しといったものまであり、このままではキリがない。オレも先生と別行動することが増えるだろうし、先生がエナジードリンクを燃料にエンドレス過労マシーンと化す日も遠くはないだろう。

 

そこで、キヴォトスの生徒達を誰かしら部員にして人手を増やさないかという話になったわけである。しかし、先生が少し困ったような笑みを浮かべたのを見て察した。

 

「やっぱり、生徒をシャーレに加えるのはいいかな。生徒達を尊重したいし、大人がやるべきことだと思うし。」

 

「‥‥‥‥オレは生徒でも大人でもないから、巻き込んでいいってことですか?」

 

「私はライが何かやりたいなら、それを尊重するよ。‥‥‥‥あ、そうそう」

 

「‥‥何ですか?」

 

「私、今からアビドスに出張するから。しばらく留守番お願いね。」

 

「はい、分かり…‥‥‥はい!?いや、ちょっといきなりすぎるでしょ!?」

 

『大丈夫です!私が先生をしっかりサポートしますし、バリアでちゃんとお守りします!』

 

「そういう問題じゃ‥‥‥え?君バリアとかできるの?」

 

人間同然に見える人格と思考に(幼いが)トンデモ電子戦能力に、バリアと来たか。連邦生徒会長さん、先生だけ至れり尽くせりじゃない?防弾コートだって無敵じゃないんだからさ、オレにも何かくれよ。

 

「じゃあ、行ってくるよ!」

 

先生は止める間もなく、白い背広を翻してオフィスを出て行ってしまった。経験的にはオレの方が上だけども、本当に大人だろうか?まだ制服着てキャピキャピしていても違和感のない顔だが。

 

さて、行ってしまったものは仕方ない。いやでも慣れてきたデスクワークを始めるとしよう。この位の量なら一人でもできる。先生のサインや確認が必要なものもあるが、帰って来た時に頑張っていただこう。

 

 

 

 

 

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「…‥‥‥…珍しいな、まだ来てない。」

 

次の日、いつもオレより早く来ているはずの先生が来ていなかった。昨日は業務が早く終わったので、先生に業務連絡のモモトークを送って帰ったのだが、先生の机は昨日見た時のままなので、オフィスに戻らずにそのまま帰ったか、泊りがけなのか。モモトークの既読はついているので生きてはいるだろう。

 

「アビドスって、D.U.から遠いのかな…‥‥」

 

キヴォトスは無数の学園とその自治区で構成された超巨大な学園都市。先生は車を持っていないし、格納庫のヘリもそのままだったので恐らくは電車を使ったはずだ。泊りがけになることも不思議ではない。…‥‥というか、アビドスってどこ?そもそも、キヴォトスの事あんまり知らないや

 

こういう時はとりあえずインターネットに限る。先日購入した久方ぶりのスマホをとりだして検索する。

 

「キヴォトスでも長い歴史をもち、かつては最大規模の学園として名をはせていたが、大規模な砂嵐が頻発し始めたことによって、学区の砂漠化が急速に進行。」

 

キヴォトスって砂漠あるんだ‥‥‥。オアシスも枯れてるって、ただの灼熱地獄では?

 

「現在は、広大な学区と環境の変化により、街の中心だとしても遭難する可能性が高い‥‥‥‥」

 

・・・・・・・・先生って、シッテムの箱(アロナ)しか持っていってなくないか?

 

「いや、でも途中で何か買っていったりしただろ…‥‥アロナもいるし……‥‥」

 

いや、いきなり砂漠に出張しに行く人だぞ?その秘書は、「いちごミルクは・‥‥ばななあじ・‥‥」とか寝言で言う幼女だぞ?

 

心配と嫌な予感が膨れ上がって来た時、スマホが振動する。まさかと思い、恐る恐る電話を取ると、

 

「…‥‥‥‥‥‥‥もしもし」

 

『もしもし、おはようライ。』

 

「‥‥‥‥おはようございます。先生、今どちらに?」

 

『今?アビドス自治区なんだけどね、ええーと‥‥‥‥…』

 

「…‥‥‥‥‥…」

 

『遭難、しちゃったみたい…‥‥助けてください……‥‥』

 

「‥‥‥‥‥‥‥先生、昨晩はどこでお休みになられましたか?あと、朝は何食べた?」

 

『公園のベンチ‥‥‥‥…昨日から、水も飲んでなくて‥‥‥‥』

 

「‥‥‥‥‥‥地図は?位置は?」

 

『…‥‥‥‥‥新しいので数年前のしかなくて‥‥‥‥』

 

「‥‥‥‥‥‥すぐに行くから大人しくその場で生きてやがれよ?」

 

『ハイ・‥‥‥‥‥‥‥ありがとうございm』

 

…‥‥・・・何してやがるあの人?そして仕事しろよ秘書?

 

「…‥‥‥‥とりあえず電車…‥‥‥次の発車まであと三時間!?」

 

 

 

 

 

 

 

…‥‥‥…取り敢えず急ごう。弾も水も持てるだけ買って、経費で落ちなかったら先生に請求してやる。

 




〈連邦捜査部 情報アーカイブ:真道ライ(さなと らい)〉
・身長:172㎝ ・性別:男性 ・年齢:10代後半から20代前半と推定 ・誕生日:4月1日
・所属:連邦捜査部シャーレ  ・趣味:読書(特に拘りなし)  ・武器:アーバレスト(HG)
・外見的特徴:癖毛っぽい黒い黒髪と灰色の眼。基本的に黒い防弾コートとシャーレの腕章、革のホルスター・ベルトを着用。


他に気になる情報ありましたら感想お願いします。設定や展開に関する裏話などでもウェルカムです。   
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