知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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気づいたら廃墟にいました。

「出たな、生徒会四天王の一人!”冷酷な算術使い”の異名を持つ生徒会の会計、ユウカ!」

 

「勝手に変な異名を付けて、他人をモンスターか何かみたいに呼ばないでくれる?失礼ね。そこの二人とは色々と話したいけど、それはまた後にするとして…‥‥モモイ。」

 

部屋に入って来たユウカに指を指してちょっと面白‥‥失礼な事を言うモモイだが、ユウカはそんな事を意に介すことなく、不機嫌そうに口を開く。

 

「本当に諦めが悪いわね。廃部を食い止めるために、わざわざシャーレまで巻き込むだなんて。けど、そんなことをしても無駄よ。例え連邦生徒会のシャーレだとしても‥‥いえ、あの連邦生徒会長が戻って来たとしても!部活の運営については概ね、各学校の生徒会に委ねられてるんだから。ゲーム開発部の廃部はもう決まったことなの、これはもう誰にも覆せない。」

 

「そ、そんなことはない!言ってたでしょ、部員が規定人数に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果を出せば…‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥それが出来れば良し。もし出来なかったらは廃部、部費はもちろん部室も没収する。私、そこまでちゃんと言ったわよね?あなたたちは部員数も足りない上に、部活としての成果を証明できるようなものも無いまま、もう何か月も経ってるんだから‥‥‥‥。廃部になっても異議はないはずよ?」

 

モモイによると、この場にいないのを含めても部員は3人。部活としては成立するか大分怪しい人数ではある。そもそもこの人数でゲーム開発って難しそうだが…‥‥。

 

「異議あり!すごくあり!私たちだって全力で部活動をしてる!だからあの、何だっけ‥‥‥上場閣僚?とかいうのがあっても良いはず!」

 

「それを言うなら”情状酌量”でしょう。それより、今なんて言ったかしら?全力で活動してる‥‥‥?笑わせないで!」

 

「校内に変な建物を作ったと思ったら、まるでカジノみたいに装飾してギャンブル大会を始めるし、レトロゲームを探すとか言いながら古代史研究会を襲撃するし‥‥」

 

「学校で、カジノ…‥‥?」

 

「襲撃‥‥‥‥?」

 

生徒会(セミナー)じゃなくてお前らが襲撃したのかよ。

 

「おかしいでしょう!?全力かもしれないけど、部活動としては間違ってるわよ!それに、これだけ各所に迷惑をかけておいて、よく毎度のように部費なんか請求できるわね!?真っ当な言い訳くらいしたらどうなの!?」

 

「と、時には結果よりも、心意気を評価してあげることも必要‥‥‥‥‥‥」

 

「負け犬の言い分けなんて聞きたくない。」

 

「聞きたいのか聞きたくないのかどっちなのさ!」

 

「無意味な言い分けは聞きたくないって事よ。ミレニアムでは()()()()()。」

 

 

大規模な研究機関みたいなものだし、当然と言えば当然だな。しかし、16ビットのゲームを作ってたとか言ってたわけだし、どれだけ小さくとも結果はあるのでは…‥‥‥?

 

 

「け、結果だってあるもん!私たちも、ゲームを開発してるんだから!」

 

「そ、そうですよ!”テイルズ・サガ・クロニクル”はちゃんと、あのコンテストで受賞、も‥‥‥。」

 

「「 テイルズ・サガ・クロニクル? 」」

 

非常に聞き覚えがあるような無いようなタイトル‥‥‥字面だけなら面白そうだが‥‥‥‥。

 

 

「…‥‥そうね。確かに受賞、してたわ。その反応を見るに、先生とライ君はご存じないみたいなので、説明します。テイルズ・サガ・クロニクル…‥‥‥このゲーム開発部における、唯一の成果です。ゲームそのものもさることながら、レビューが大変印象的でした。」

 

おお‥‥‥!何だ、ちゃんと評価されて‥‥‥‥

 

「わ、私たちのゲームは、インターネットの悪意なんかには屈しな‥‥‥‥・」

 

…‥‥‥‥お?風向きが怪しくなってきた。

 

「たとえユーザー数が無限にいたとしても、たくさんの評価が収束すれば、それは真実に一番近い結果よ。それに、あなたたちの持ってる結果はその”今年のクソゲーランキング1位”だけでしょう?」

 

そっちの評価か‥‥‥ある意味凄いとは思うが‥‥‥それを部の成果と言うのは‥‥‥‥うん。

 

「そ、それはそうだけど‥‥‥‥‥っ!」

 

「1位!?すごい、そのゲーム気になる!!」

 

「「 先生ぇ~…‥‥。 」」

 

「クソゲーマニアだったんですか‥‥‥‥?」

 

「…‥‥‥‥とにかく。あなたたちのような部活がこのまま活動していても、かえって学校の名誉を傷つけるだけよ。それに、その分の部費を他に回せば、きちんと意義のある活動をしてる生徒達の為にもなる。だから…‥‥もし自分たちの活動にも意味があるのだと主張したいのなら‥‥‥証明して見せなさい。」

 

「証明、って‥‥…?」

 

「何度も言ったでしょう。きちんとした功績や成果を証明すれば、廃部は撤回するって。」

 

「例えば、何かの大会で受賞するとか?」

 

「そう、スポーツならインターハイに出るとか、エンジニア部なら発明品を公表するとか、そういう類の物よ。どうせなら、お互い楽な形で済ませましょう?今すぐ部室を空けて、この辺のガラクタも捨てて。」

 

「…‥‥ガ、ガラクタとか言わないで‥‥‥!」

 

…‥‥‥‥‥なんかしんどくなってきたな。覚えがあるというか、心の傷が疼くというか‥‥‥。

 

「じゃあ、なんなの?」

 

「そ、それは‥‥‥‥‥‥っ‥‥‥。」

 

モモイの顔に焦りや悔しさが強く表れる。少しあたふたした様子から一転し、黙り込んで俯いてしまう。が、

 

「…‥‥‥分かった。実力で示す。」

 

「へえ…‥‥?」

 

再び口を開きながらユウカを見る目には、諦めの色はなく、決意、覚悟に満ちていた。

 

「その為の準備だって、もう出来てるんだから!」

 

「「え?」」

 

「そうなの?」

 

「何でミドリが驚くのさ!?・‥‥とにかく、私たちには切り札がある。その切り札を使って、今回の”ミレニアムプライス”に私たちのゲーム‥‥TSC2‥‥‥”テイルズ・サガクロニクル2”を、出すんだから!」

 

「!?」

 

く、クソゲーの第2弾‥‥‥!?新作じゃなくてか!?何か、名前で負けないかそれ!?と言うか、

 

「ミレニアムプライス‥…‥って何?」

 

先生と同じく、オレも全く知らない単語が出てきた。ミレニアム絡みなのはわかるけども‥‥‥‥。

 

「ミレニアム中の部活が各々の成果物を競い合う、ミレニアムでも最大級のコンテスト!ここで受賞さえすれば、いくら何でも文句は言えないでしょ!」

 

「…‥‥まあ、そうね。受賞できたなら、の話だけどね。けどねモモイ、今あなたが言ってるのは運動部がインターハイに出場するとか、そういうレベルじゃなくて…‥‥高校球児がいきなりメジャーリーグに出る、みたいな雲を掴むような話よ。」

 

オレでもわかる。最先端の高度なテクノロジーや研究、発明を発表、評価する場でゲームを出そうというのだ。しかも賞狙い。

 

「‥‥‥‥まあいいわ。何でだろ、私もちょっと楽しみになってきたし。…‥‥‥分かった、じゃあそこまでは待ちましょう。今日からミレニアムプライスまで二週間‥‥‥この短い期間でどんな結果が出せるのか、楽しみにしてるわ。」

 

あ、思ってたよりユウカが優しい。そもそも、潰そうと思えば紙一枚でどうとでもなりそうな所をわざわざ通告に来るくらいだし、その辺は彼女も甘いのだろう。

 

「‥‥‥‥ふう。まさか先生とライ君の前でこんな、可愛くないところを見せてしまう事になるなんて…‥‥。」

 

「「そんなことないよ(ぞ)?」」

 

 

「も、もうっ!二人してなんですか!?」

 

ほら、やっぱり可愛い。

 

「‥‥‥つ、次はもっと違った、落ち着いた状況で会いましょうね。それではまた。」

 

顔を赤らめながらユウカが部屋を出ると、その場の全員は暫く閉じたドアを見ていた。

 

 

「…‥‥‥。」

 

「お姉ちゃん…‥‥どっちも確率は低いだろうけど‥‥‥今から私たちがゲームを作るより、部員を募集する方がまだ良いんじゃないの?」

 

「それならこの一か月、散々やってみたでしょ…‥‥結局、誰も入ってくれなかったし。”ぷーっ!VRですら古いのに、何がレトロ風ゲームだよ”ってバカにされるのは、もううんざり。」

 

最先端が売りのミレニアムでは異端、という事‥‥‥‥え、待って。VRが古いってどういう事だ!?まさか、ミレニアムには完全感覚同調型のフルダイブ技術が!?

 

‥‥…いかんいかん。勝手に興奮して冷静さを失う所だった。まずはこっちの問題を優先‥‥‥やっぱ気になるー…‥‥。

 

「‥‥‥‥。」

 

「ユウカの卑怯者め!私たちみたいなオタクは友達が少ないってことを利用するなんて!許せない!」

 

「いや…‥‥‥それはユウカじゃなくて、100%私たちの自業自得だと思うけど。」

 

オタクだって友達はいるだろ‥‥‥なあ、先____先生?冷や汗が出ているが…‥‥あ、オレもだ。

 

「とにかく、これ以上部員の募集をしても明るい未来は見えない。それに、まだ他に希望はある。」

 

「あ、そうだ。さっき言ってた”切り札”って何のこと?」

 

「それはもちろん、先生とライの事だよ。」

 

「…‥‥‥私と・‥‥」

 

「オレ…‥‥?」

 

ニッコニコな笑顔を向けられはしたが、オレはもちろん、先生もゲーム開発の経験は無いのだが…‥‥。

 

「あ、廃墟って結局何の事?」

 

「あ、そうだったね。話を戻すと、私たちの目的は”廃墟”にあるの。廃墟っていうのは‥‥‥元々は連邦生徒会が出入りを制限してた、ミレニアム近郊の謎の領域。出入りを制限してたのは、危険な地域だからって言われてたけど、実際のところ、具体的に何がどう危険なのかを誰も知らない。誰も入ったことが無いのか、そもそも入ることが出来ないのか、それとも戻ってきた人が誰もいないのか‥‥‥それすらもよく分からない。‥‥‥‥そういう、謎に包まれた場所があるの。」

 

「何でそんな所に‥‥…?」

 

「良いゲームが作りたいから!‥‥‥‥私は証明したいの。たとえ、今の私たちのレベルは”今年のクソゲーランキング1位”に過ぎないとしても。私が大好きな‥‥‥私を幸せにしてくれた、このゲームたちが決してガラクタじゃない、大事な宝物なんだってことを!」

 

「…‥‥お姉ちゃん。」

 

ゲームが幸せにしてくれた。

 

普段からやらない人達にとっては戯言だろうし、バカらしいと思うのだろう。しかし、それで救われた人も、決して少なくはない事を、オレはよく知っている。

 

何より、モモイの真っすぐな目の輝きと言葉は、オレの心を動かすには十分すぎる。

 

「その為には、どうにか廃墟に入ってあれを見つけないと。」

 

「あれ?」

 

「あ、順番が良くなかったかも。今度は、この話をしないとね。先生、ライ、

 

 

 

 

 

 

 

 

G.Bibleって、知ってる?」

 

 

________________

 

__________

 

______

 

今にも崩れそうな建物。ひび割れたアスファルトや外壁。元の形を失い、自然に帰ろうとしている無数の瓦礫。妙に涼しく、不気味なほどに生気のない雰囲気。

 

明かりの一つもなく、ただただ虚しくそこに在る寂れた形。

 

「‥‥■■■ ■■■…‥‥。」

 

「‥‥‥■■■。■■■■ ■■。」

 

徘徊する奴らから発せられる意味不明の言葉。それらから身を潜め、息を殺す。

 

いやー懐かしい。身に染みついた感覚が蘇ってくる。そうそう、廃墟っていうのはこういう物だった。

 

 

「‥‥‥‥行ったぞ。取り敢えず大丈夫そうだ。」

 

「よし、じゃあ行こう!」

 

「よし、じゃない!一体ここは何!?あんな謎のロボットが、数えきれないぐらい歩き回ってるし!」

 

「何って…‥‥もう何回も言ってるじゃん。”廃墟”だよ。」

 

涙目になったミドリに対して、眼をキラキラさせてあっけらかんと言うモモイ。

 

「出入り禁止の区域っていうからまあ、ある程度の危険は覚悟してたけど。いやあ、冷や冷やすりるね‥‥‥‥。」

 

「あのロボット、いったい何なんだろ…‥‥?ううん、それより、あんなのが幾つも徘徊してるこの廃墟って‥‥‥一体なんなの?」

 

「そんなんじゃ、廃墟を歩きまわる事なんてできないぞ。常に状況に注意して、冷静に行動しないと足元を掬われる…‥‥‥。」

 

「ねえ、お姉ちゃん。さっきからライさんが変‥‥‥‥‥。」

 

「ねえねえ‥‥ここはどこ‥‥‥私は誰‥‥?」

 

「先生も変だよ!?」

 

「どうしたんですか?ここは‥‥‥‥え、ここ何処?廃墟?え、何で?」

 

確か、モモイが説明して‥‥‥真っ先に部室から走っていって…‥‥追いかけて…‥‥それで廃虚を見て…‥‥‥体が勝手に‥‥‥。

 

「え、何それ?慣れって怖‥‥‥‥‥。」

 

 

 

 

 

「二人ともステータスが混乱状態だし、もう一回説明しよっか?」

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