知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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教え、夢、会話のレベルアップ

(ピツ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ‥‥‥‥‥。)

 

アリスの会話の仕方の勉強…‥‥もとい、ゲーム開発部による布教とゲームが始まって数時間以上が経過した。

 

アリスのRPG調の会話は目に見えて上達していき、テキストを読む速さも、会話が出力されるとほぼ同時に読み終えている程になった。まあ、正体不明のアンドロイドだから、それくらいは出来るのだろうが‥‥‥‥‥そんな超高性能なアリスにエラーを吐かせまくったテイルズ・サガ・クロニクルのクソゲーっぷりがより際立った気もするな。

 

ミドリがターン制バトルの面白さを教えたり、ユズが初見でもマニアックだと分かる程のマニア向けと思われるゲームを共にプレイしたり、先生と時折、意味が分からない単語などについて説明したり、またまた才羽姉妹がゲーム機をぶん投げようとするのを阻止したり、みんなでゲームを楽しんでいると、あっという間に日は暮れ、アリスとオレ以外は睡魔に負けてそのまま寝てしまった。

 

 

「…‥‥‥しまった。」

 

仕事の事なんて綺麗さっぱり忘れて全力で遊び呆けてしまった。これがゲームの魔力…‥‥。

 

 

「Zzz‥‥‥」

 

「…‥‥‥ふにゃ。」

 

「すぅ‥‥すぅ‥‥‥」

 

「んん‥‥‥‥リンちゃん…‥‥これ以上の書類は…‥‥私…‥‥」

 

(ピッ、ピピッ、ピッ、ピッ、ピッピッ‥‥‥…。)

 

 

みんな遊び疲れたらしい。グッスリと床やソファで眠っている。この時間に先生を起こして帰るのも可哀そうだし面倒だし、オレ共々ここで朝を迎えさせてもらうとしよう。水もカロリーメイト(フルーツ味)もある事だし。それはそうと‥‥‥‥

 

 

「アリス、眠くないのか?」

 

「大丈夫です。今のアリスにはスタミナ強化のバフがかかっています。それに、まだゲームをしていたいです。」

 

「…‥‥‥そっか。」

 

まあ、元々睡眠の必要が無い可能性もある。そこら辺はおいおい確かめていくしかないだろう。

 

(ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……‥)

 

 

今はただ純粋にゲームをするのが、知らない別の世界を旅するのが楽しくて仕方ないのだろう。あんなに無機質に見えたのに、今では座椅子に座って目を輝かせて画面を見ている。きっと、自分が今どんな目をしているのか、どれだけ口角が上がっているのかも分かっていないだろう。

 

本当なら、年長者として直ぐにでも寝かせるべきだろうが、早急に上手く会話できるようになる必要性と、微笑ましく見えてくる少女の姿もあってその気は一切起きなかった。まあ、今回は特別ということで。

 

なるべく物音を立てない様にそっと立ってアリスの隣に腰を下ろす。ついでに、モモイ達のゲーム機やスマホを充電器に挿しておく。

 

「…‥‥‥…。」

 

「…‥‥‥クリア。」

 

もう何本目か分からないが、また一つアリスの冒険が終わる。エンドロールを終えると、カセットを交換して新しい冒険に進もうとするが、何故かカセットをいれる手が止まる。

 

不具合か規格の違うカセットを挿れようとしてしまったのかと思ったが、アリスはオレに純粋な質問をしてきた。

 

「‥‥‥‥ライは眠くないのですか?モモイも、ミドリも、ユズも、先生も回復中ですが、ライの体力は残っているのですか?」

 

「大丈夫。でも、もう少ししたら寝させてもらおうかな。」

 

「分かりました。…‥‥‥‥ところで、アリスは先程のゲームで気になったことがありました。」

 

「ん?どうした?」

 

「”師匠”と”先生”は何が違うのでしょうか?」

 

「…‥‥‥それは予想外だ。」

 

師匠と先生の違い‥‥‥‥‥オレの師匠と今後ろで寝ている先生の違いなら結構あるんだが、アリスが聞きたいことではないだろう。

 

生徒なり弟子なりを教え導くのは同じ‥‥‥‥だよな。でも、勉強を教えるかとか、そういうのでもないだろう。師匠は座学もしっかりとやる人だったし。

 

 

「ごめん、直ぐには答えられなさそうだ。‥‥‥でも、どうしてそんな事を?」

 

「さっきの冒険では、たまに師匠が出てきて技の伝授やクエストの依頼をしてくれて、経験値を得ることが出来ました。ですから、アリスもにも師匠がいれば、もっと経験値を獲得したり、技を覚えられると思ったのですが‥‥‥‥。」

 

そういう事だったのか‥‥‥少なくとも、先生からは戦闘に役立つ技は教えてもらえなさそうだけど。しかし、質問の意図を察せずに普通に答えてしまったが為に、アリスの期待に応えることはできず、非常に残念そうな顔をさせてしまった。どんどん会話が上達して表情豊かに、人間味を帯びてきた証拠なのでそこは喜ばしいのだが、この状況は喜ばしくない。どうする真道ライ‥‥‥‥。

 

 

「‥‥‥あ、そうだ。代わりに、オレの師匠の話とかをするっていうのはどうだ?」

 

「ライの師匠、ですか‥‥?」

 

「ああ。オレも師匠の元で修業したり、色々なクエストをこなしてレベルアップしたんだ。役に立つかは分からないけど、経験値の足しにはなると思うんだけど‥‥どう?」

 

「…‥‥アリス、ライの師匠の話を聞きたいです!」

 

コントローラーを置き、目を輝かせながらオレにグイっと近づくアリス。思った以上の食いつきで良かったが‥‥‥‥何なら話しても大丈夫だろうか?ゲームの時間を余り奪いたくはないし、教育に悪い事はあんまりなぁ…‥‥。

 

取り敢えず、師匠の教えを一つ、オレからアリスに伝える事にしよう。ついさっき思い返したものが丁度いいな。

 

「師匠はこう言っていた。”人は何か、たった一つでもやり通す事で要領を覚える”。」

 

「???」

 

「アリスは今日‥‥じゃなくて昨日からゲームを始めただろ?最初はモモイ達に教わりながらRPGをプレイしていたよな?」

 

「確かに、その通りです。」

 

「でも今は1人でもクリアできるようになっているし、RPG以外のジャンルやシステムのゲームもプレイできている。それはどうしてだと思う?」

 

「‥‥‥‥アリスが、色々な世界でクエストや戦闘をして経験値を積んだことで、他の世界でも使えるテクニックやスキルを習得していたから、でしょうか?」

 

「そうだ。それが要領を覚えるって事なんだ。でも、それだけだとレベルは伸びなくなっていくし、技も覚えられないし、新しいクエストも受けられなくなっていくんだ。」

 

「ど、どうしてですか?」

 

「目指すものを決めていないからだ。」

 

「目指すもの…‥‥。」

 

「世界一の剣豪になる、一番綺麗な美人さんになる、世界一のお金持ちになる。取り敢えず、何か目指すものを自分で決めるんだ。ゲームでも、お姫様を救い出すとか最終ステージまで攻略するとか、図鑑をコンプリートするとかあるだろ?そういうのを自分で決めるんだ。」

 

今のうちは悩んで迷って、たまに相談すればいいとも付け足しておく。

 

「‥‥‥‥ライの目指すものは何ですか?」

 

「…‥‥‥教えて欲しい?」

 

もちろんアリスはコクリと頷いたが‥‥‥‥‥。

 

 

「‥‥‥‥教えてあげない。」

 

「!?」

 

悪戯っぽく笑って見せながら、答えるのを拒否する。

 

「どうしてですか?」

 

「レベル不足で、フラグが立ってないからかな。」

 

師匠、というか昔の事は話せない事、話したくない事も多い。何より、アリスの会話能力のレベリングを優先したい。

 

「アリスのレベルが上がったら、もっと話してくれるんですか?」

 

「ああ。約束するよ。」

 

「では‥‥‥‥アリス、再開します!」

 

気合を入れなおして再びコントローラーを握って、画面に向き合うアリス。モチベーションにもなったみたいだし、ひとまずは大丈夫そうだ。

 

その後しばらくはアリスを見守っていたが、何時のまにかオレの意識は微睡の中に落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________

 

________

 

_____

 

 

〈‥‥‥…そこまでだ。二人とも収めろ。〉

 

〈グヌヌヌ………はぁ、ありがとうございました。〉

 

〈……‥‥まあ、悪くは無かったぞ?〉

 

〈ボコボコにした癖に慰めるのやめてくれます!?すごいムカつきます!〉

 

〈実戦ならお前は死んでるんだぞ?うるせェぞ死人のメス弟子。〉

 

〈痛ア‘‘ッ!?‥‥‥‥師匠と先輩の意地悪ぅ…‥‥。〉

 

〈お前が死なない為にやってるんだが?〉

 

〈それはそうだが、てめェは少し手加減をしろ。メス弟子が何処まで出来るか確認出来ねェだろうが。〉

 

〈プププ~先輩も言われてやんの~。〉

 

〈お前なぁ‥‥‥‥‥。〉

 

〈……‥‥メス弟子、てめェちょっと酒‥‥‥はダメか。んじゃあ、お茶買ってこい。てめェのセンスと財布でな。遅かったり半端もん買ってきたりしたら…‥‥‥。〉

 

〈ヒイィィ!?い、行ってきます!!先輩、今日の夕飯はオムライスでお願いしまぁぁす!!〉

 

〈お、おい待っ…‥‥‥行っちゃったよ。てか、確か今日の当番って師_____〉

 

〈もう何品か追加しとけ。あとソースはトマトな。メス弟子如きに好き嫌いは許さん。〉

 

〈…‥‥‥‥‥了解。〉

 

〈それはそうと、てめェ‥‥…最近メス弟子と仲良しみてェだな。〉

 

〈ああ…‥‥‥前の仕事でお互いに理解を深めましたからね。いい距離感を掴めたんですよ。〉

 

〈ふーん…‥‥‥‥メス弟子の事好き?寝たい?ねえねえどうなんだてめェ?〉

 

〈いきなりなんですか‥‥‥‥‥まあ、魅力はありますけど、オレはそういうの別にいいですかね。〉

 

〈へーそっかそっかー。じゃあどう思ってんの?妹弟子っていったって師匠は私だけども。〉

 

〈どうって…‥‥‥後輩か‥‥‥‥妹、かな?〉

 

〈なんで疑問形なんだよ。〉

 

〈だってオレ…‥‥‥‥‥いや何でもないです。〉

 

〈…‥‥‥‥スマン。何か聞いちゃ不味かったかもな。〉

 

〈いえ、気にしないでください。個人の問題なので‥‥‥‥。〉

 

〈そういう訳にもいかねェよ。てめェは私の‥‥‥‥‥‥弟子だからな。でも気になるからいつか聞かせろ。いいな?〉

 

〈師匠‥‥‥‥。〉

 

〈はい、この話終わり。メス弟子が帰ってくるまで私とやるぞ。ほら、抜け。〉

 

〈‥‥‥‥冗談ですよね?〉

 

〈実弾じゃなくてゴム(弾)使うから問題ねェぞ?〉

 

〈いや、そういう事じゃなくて‥‥‥‥。〉

 

〈んじゃあ‥‥‥‥始め。〉

 

〈ちょ、まっ‥‥‥‥‥‥‥あ。〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(チュンチュン…‥。)

 

「…‥‥‥‥懐かしいな。」

 

カーテンの隙間から朝日がオレの顔を照らす。悪くない夢を見たからか、胡坐をかいて寝た割には良い眼覚めだ。さて、朝食がてらカロリーメイト(フルーツ味)でも____。

 

「‥‥‥‥‥あれ、結局ずっとゲーム____」

 

「しまった、準備しなきゃ、あああっ!?」

 

「イ‘‘イ‘‘ッッダァ!!??‥‥‥く、ない…‥‥。」

 

「痛た…‥‥あ!ライさん大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫だ。問題ない…‥‥‥。」

 

おでこが…‥‥‥。爆風とかプライステーションとか食らってばかりだとオレがバカになってしまう‥‥‥‥‥。こけてオレの上に倒れこんだミドリは…‥‥まあ、キヴォトスの生徒だし、大丈夫かな。

 

「‥‥‥‥‥。」

 

あれ、いつの間にかアリスに見下ろされている‥‥‥‥。

 

 

「ようやく気が付いたか‥‥‥‥。」

 

「え?」

 

「無事に目を覚ましたようで何よりだ、君達は運がいいな。」

 

「え!?」

 

「あ、アリスちゃんか…‥‥調子はどう?色々覚えられた?」

 

突然のRPG風の台詞に驚いたが、アリスだと気づいて立ち上がるミドリ。オレもゆっくりと体を起こす。

 

「君の言葉を肯定しよう、必滅者よ。」

 

「な、何か偏った台詞ばっかり覚えてない‥‥‥‥!?」

 

「まあ、徹夜でゲームやって覚えたからな…‥‥。」

 

 

「ふぁ‥‥‥みんな、おはよう…‥‥‥。」

 

「んん‥‥‥‥背中がバキバキ‥‥‥。」

 

ユズと先生も起きたようだ…‥‥‥‥あれ?

 

「モモイは何処に‥‥‥‥‥。」

 

 

「ここだよ!おはよう!」

 

まるでタイミングを見計ったかのように、モモイが勢いよくドアを開けて入ってくる。

 

「アリス、これ。」

 

モモイがアリスに手渡したのは、首掛けの紐が付けられたカードホルダー。透明なプラスチックかな何かのカバーの中には、ミレニアムの交渉とバーコードが印刷された白いカードが入っている。

 

「…‥‥‥?アリスは”正体不明の書類”を獲得した。」

 

「おっ、またさらに口調が洗練されているね。これは学生証だよ。」

 

「洗練っていうか、レトロゲームの会話口調そのものだけどね…‥‥。」

 

「学生証‥‥‥?」

 

「この学生証は、私たちの学校の生徒だっていう証明書。生徒名簿にもヴェリタスがハッキ‥‥‥いや、登録してくれたから、もうアリスも正式に私たちの仲間だよ!」

 

「仲間‥‥‥なるほど。理解しました。

 パンパカパーン、アリスが”仲間”として合流しました!」

 

「なあ、今ハッキングって言わなかったか?」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

「大丈夫なのかな‥‥‥‥‥。」

 

「さて、服装と学生証、それに話し方!この辺は全部解決できたから…‥‥‥。」

 

「無視するんじゃないよ。」

 

「あとは武器、だね。」

 

「武器、ですか‥‥‥?」

 

「ミレニアム‥‥‥ううん、キヴォトスの生徒は、みんあそれぞれ自分の武器を持ってるの。だから、アリスにも武器を見繕ってもらわないとね。調達する方法は色々あるけど、このミレニアムで一番手っ取り早く、ちゃんとした武器が手に入る場所と言えば……‥‥」

 

真っ先に思い浮かぶのはガンショップ。キヴォトスではコンビニにもプラスチック拳銃くらいは売っているが…‥‥‥‥いや、待てよ?あったな。ミレニアムで一番手っ取り早く武器が手に入る場所。しかもオレも使った事あるじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥エンジニア部か。」

 

「あれ、知ってるの?」

 

「ちょっとな。」

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