「‥‥‥‥‥なるほど、だいたい把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい…‥‥と。」
「いきなりで悪いんだけど、大丈夫か?」
「もちろん。そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だ。ミレニアムにおける勝敗と言うのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうからね。」
アリスの武器を調達すべく、早速エンジニア部の作業室に向かい、部長のウタハに大方の事情を説明したところ、快く手助けしてくれることになった。
因みに、先生は急用が入ってしまった為、この場には居ない。先生もギリギリまで一緒にいようとしたのだが、折角二人いるんだし、オレは出来ない事だという事で行ってもらった。
「そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。そこにあるものであれば、どれを持って行っても構わないよ。」
「やった!ありがとう、先輩!」
「やあ…‥‥‥1年生のヒビキだよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる…‥‥。」
「変な機能が付いてないのがあるといいんだけど‥‥‥‥。」
「ん?何か言ったかい?」
「いえ何でも‥‥‥‥。」
「この拳銃はBluetoothをつうじて、音楽鑑賞やファイルの転送まで可能な…‥‥‥。」
あれは噂のスマホ並みの機能を内蔵した拳銃か‥‥‥‥‥?い、いらない‥‥。
まあ、アリスはまだスマホ持ってないから‥‥‥いや今必要なのは武器だからそんな機能はいらんん。‥‥‥ん?
「…‥‥ウタハ、アリスが見てるあれって何?」
「ん?あれは…‥‥‥。」
「これは。……。?」
「ふっふっふっ。お客さん、お目が高いですね。」
あのふしだらなシルエットのだらしない身だしなみは‥‥‥‥‥。
「え。えっと‥‥‥‥。」
「説明が必要なら、いつでもどこでも答えをご提供!エンジニア部のマイスター、コトリです!あなたがアリスですね。ゲーム開発部の4人目のメンバー!…‥‥って、あれ!?」
「‥‥‥‥元気そうだな、コトリ。」
「コトリちゃん、久しぶり。ところで、アリスちゃんが見てるこの大きいのは何?」
白を基調としたSFチックな外観が特徴的だが、何よりも
「”大砲”‥‥‥なのか?」
「流石ライさん、ご名答です!これは下半期の予算、その内約70%近くをかけて作られた‥‥‥‥‥エンジニア部の野心作、”宇宙戦艦搭載用レールガン”です!」
「レールガン?ミレニアムにはそんな物まで‥‥‥。」
「宇宙戦艦って…‥また何かとんでもないことを‥‥‥‥。」
「前にも、確かコールドスリープしようとして、”未来でまた会おう”って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」
「…‥‥‥その”未来直行エクスプレス”なら今でもよく使っているよ。」
「コールドスリープってそんな頻繁に使うもんか…‥‥?」
「だって冷蔵庫として使っているからね。食べ物をもっと先の未来にまで送れるようになったから、失敗ではないさ。」
「ポジティブだなぁ‥‥‥‥‥。」
「話を戻しますとエンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業用ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!このレールガンはその第一歩です。大気圏外での戦闘を目的として開発された新兵器!これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「かっこいい‥‥‥聞いたわけでワクワクしてくる!」
「さすがミレニアムのエンジニア部!今回は上手くいってるんだね!?」
「ふっふっふっ、もちろんです!」
「「おおおっ!」」
宇宙戦艦‥‥‥‥その単語に心惹かれない男はいないだろう。どうするんだ?16万8千光年先の惑星まで往復一年以内の大航海でも…‥‥‥‥。
「と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして‥‥‥‥。」
「…‥‥‥‥。」
「えええっ!?なんで!期待したのに!」
「いつものことながら技術者の足を引っ張るのは、いつの世も想像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです‥‥‥。このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら‥‥‥。」
「そんなの計画段階で分かることじゃん!どうしてこのレールガン、完成までもってちゃったのさ!?」
「愚問だね、モモイ。…‥‥‥ビーム砲はロマンだからだよ。」
ドヤ顔で言われても、そこの二人に同意されていても大変愚かな気がするが?
「バカだ!頭良いのにバカの集団がいる!」
オレの銃の整備とかアビドスの時に作ってもらった強装弾とかって、結構奇跡的なものだったんだな‥‥。
「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は‥‥。」
「”光の剣:スーパーノヴァ”!」
「また無駄に大袈裟な名前を‥‥‥」
「まあ、凄いものなのは分かった。今はそれよりアリスの武器を「ひ、光の剣‥!?」‥‥アリス?」
「アリスの目が輝いてる‥‥‥!?」
「わぁ、うわぁ‥‥!」
「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも。」
「いかにも
「…‥‥え?」
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ。」
「ちょっと待ちなさい!?」
予算の話とかアリスにはまだ難しかったのかだろうか。予算の70%突っ込んだ戦艦用の新兵器なんて貰えるわけが…‥‥‥
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど…‥‥‥。」
「申し訳ないですが、それはちょっと出来ないご相談です!」
「何で!?この部屋にあるものなら何でも持って行って良いっていったじゃん!」
「そこまで言ってないし無理を吹っ掛けるのはやめような?」
「もしかして、私のレベルが足りてないから‥‥‥装着可能レベルを教えてください!」
「もっと現実的な問題じゃないのか?それこそお金とか‥‥‥‥。」
「心配しないでアリス。私がミドリのプライステーションを売り払ってでも…‥‥‥。」
「絶対に足りないし可哀そうだからやめなさい。」
「‥‥‥‥いやお金の問題でもないんだ。…‥‥この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる。」
「なんと、基本重量だけで140㎏以上です!更に高額照準器とバッテリーを足した状態で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」
「これをカッコイイと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけど‥‥‥‥。」
いくらロボットの体とはいえ、そのスペックか…‥‥‥。下手に試しても怪我するかもしれないし、今必要な武器は戦艦用なんてものではなくても、自衛さえできればいいはずだ。変なリスクを負わせたくもない。
「‥‥‥‥アリス。気持ちは分かるけど、今は他の武器を探さないか?こんな代物、当分は誰も持って行かないだろうしさ。」
「…‥‥‥汝、その言葉に一点の雲りも無いと誓えるか?」
「ん?この子また喋り方が‥‥。」
「た、多分ですが本当なのかって聞いてるんだと思います。」
「もちろん嘘は言っていないが‥‥それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」
アリスは頷くと、そのままレールガンに近づき、少し身を屈めて両手で触れる。
「この剣を抜く者…‥‥此の地の覇者となるであろう!」
「ふふふっ、なるほど。意気込みは素晴らしいですね!」
「ふっ…‥‥!」
「無理は、しない方がいい…‥‥クレーンでも使わないと持ち上がらな___」
渾身の力を込めて踏ん張りながらレールガンを持ち上げようとするアリスに、ヒビキは純粋な善意と心配故の言葉をかけようとしたのだろう。しかし、それが言い切られることは無かった。
「んんんんっっ‥‥‥!」
「‥‥‥‥まさか。」
「えぇぇっ!?」
「‥‥‥‥マジかよ。」
そして‥‥‥‥。
「…‥‥‥も、持ち上がりました!」
「嘘‥‥‥信じられない‥‥‥。」
ヒビキがそういうのも無理はない。だが、現にアリスは身丈に合わない大きさのレールガンを…‥‥否、光の剣を見事に引き抜き、その手に持ってみせている。
「えっとボタンは…‥‥。」
「アリス?一体何を‥‥‥‥まさか‥‥‥!」
「…‥‥これがBボタンでしょうか?」
まさか、撃とうとしている?作業室の中で?宇宙戦艦搭載用の新兵器を?それに、持てたとはいえ、まだ反動に耐えられるのか、それだけの威力があるのかオレには分からない。
「ま、待って‥‥‥!」
「アリス______。」
「‥‥‥‥‥っ、光よ!!!」
(ドカアアァァァァン!)
瞬間、目の前で青白い閃光が天井の向こう側へと、咆哮しながら駆け上がる。
数秒。光が消えると、天井‥‥‥
「あああああ!私たちの部室の天井がぁっ!?」
「…‥‥‥すごいです。」
膝から崩れ落ち、その惨状を嘆くコトリとは対照的に、静かに武器の力に唖然としているようで驚いているアリス。
「…‥‥‥!アリス、怪我とか痛いところはないか?」
ハッとして、アリスに小走りで駆け寄って確認を取る。オレの声で彼女もハッとしたのか、オレの方をキョトンとした様子で見返すが、直ぐににこりと笑みが浮かぶ。見た所肌も綺麗なままだし、揺れることも無く光の剣を持っているのを見て大丈夫だと判断して、安堵の息が漏れる。
「アリス、この武器を装着します。」
「ほ、本当に使えるなんて‥‥で、ですがそれだけは、その…‥‥!予算とか諸々の問題で、できれば他ので、できれば他のでお願いしたく…‥‥!」
「‥‥いや、構わないさ、持って行ってくれ。」
「ウタハ先輩‥‥本当に良いんですか?」
「ああ、どちらにせよ、この子以外には扱えないだろうからね。」
なんと器の広い先輩なのだろうか。そこらの高性能ライフルくらいじゃ張り合えないくらいだろうに…‥‥‥。
「ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ。」
「分かった。‥‥‥前向きに考えると、実践データを取れるようになったのはありがたいかも。」
「うわ、何だかものすごい武器をもらっちゃったね!ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「いや、お礼にはまだ早いさ。」
「え?」
「さて‥‥‥ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボットを全機出してくれるかい?」
「‥‥‥‥うん。」
処分要請受けたって事はヤバいやつだよな…‥‥?しかもその言い方結構あるだろ。
「えっと…‥‥ウタハ先輩?なんだか展開がおかしいような…‥。」
「これってもしかして、”そう簡単に武器は持って行かせない!”みたいなパターンじゃない!?」
「その通りさ。」
「その武器を本当に持って行きたいのなら‥‥‥」
「私たちを倒してからにしてください!」
「!?」
「いや
「えええっ!?そんな、ウタハ先輩どうして!?」
「ぶ、武器一つの為にここまで‥‥?」
「武器だからこそ、じゃないか?”資格”があるか見たいってところか?」
命を預け、仲間を守る事になる道具だ。性能の理解、整備、訓練、信頼、心構えは欠かせない。エンジニアとしては、それを使うに値する資格があるかどうかは気になるのだろう。流石マイスター____
「いや、他の武器なら喜んで渡したんだろうけどね…‥‥。」
そういやここ
「でも彼の言う通り、資格の確認はさせてもらおう。」
ウタハがヒビキにアイコンタクトを取ると奥のシャッターが開き、多数のロボットやドローンが現れる。
「前方に戦闘型ドローン及びロボットを検知、敵性反応を確認。‥‥来ます!」
「ああもうっ!?」
「ライ助け____。」
「危なくなったら援護するから頑張ってなー。モモイとミドリで仲良く援護してねー。」
「えええっ!?」
才羽姉妹はともかく、オレまで手伝ったらダメだろ。この先の事を考えると戦闘にある程度は慣れて欲しい。もちろん心配だが…‥‥‥。
「いざって時、オレは居ないかもしれないしな。」
オレは1人しかいない。しかし、守らなければならない人達、助けなければならない人達はたくさんいる。その場にいたとしても、あえて助けないという選択肢を取ることも無くはないだろう。
オレよりヘイローを持ってる生徒の方がなんだかんだで生きやすいだろうし、自分の身は自分で守れるに限る。
「何か言ったかい?」
「‥‥‥‥いや、何でもない。‥‥‥もう初めて良いんじゃないか?」
「そうだね。では‥‥‥‥ヒビキ。」
「‥‥‥‥戦闘プログラム起動。交戦開始。」
「さて、取り敢えずは高みの見物といこうか。」
「‥‥‥‥コトリ?何だそのミニガン?」
「こ、これはですね!______」
「ところでヒビキ、相談があるんだけど…‥‥」
「ほう‥‥‥これは……‥‥」
「‥‥‥‥‥。」