〈アリスは、誰が何のために生み出したのだろうね。〉
〈‥‥‥ウタハ?〉
〈戦艦用のレールガンを難なく持ち上げ推定1トン以上の握力を出せるだけの出力、反動でブレることない安定した体幹バランスに強度、加えて肌に傷一つないことからナノマシンによる自己修復も可能だと思う。…‥‥明らかに、過酷な環境での活動を想定されている。〉
〈そんでもって、ぱっと見の外見と日常生活は人間と変わりない上にヘイローつき‥‥‥ね。〉
〈彼女と同等‥‥いや、近いスペックの機体を作ることは恐らく今のキヴォトスでは不可能だ。それが廃墟で相当な期間眠っていた…‥‥‥オーパーツ、というやつだ。〉
〈て言ってもどうするんだ?オレはもう、アリスを唯のロボットとして見ることは出来いそうにない。〉
〈私もだよ。新しい、可愛い後輩だ。出来る限りの事はするさ。〉
〈‥‥‥優しいんだな。わざわざアリスが好きそうな言い回しとかしちゃって。〉
〈興が乗ったのさ。それに、先輩としては後輩は可愛がってあげたいものだろう?〉
〈違いない。とりあえず先生にも共有しておくから、皆で見守るとしようぜ。〉
〈ああ。所で、君も何か用があったんじゃないのかい?〉
〈そうだった…‥‥。前に作ってもらったのと同じ実包頼む。あと________。〉
〈…‥‥‥なるほど。それならヒビキにも手伝ってもらうとしよう。後で連絡するよ。〉
〈‥‥‥変な機能は付けないでくれよ?〉
〈大丈夫さ、心配しないでくれたまえ。〉
〈…………‥‥。〉
____________
_________
______
「確か、午後からだよね?ユウカのアリスの資格検査。」
アリスが光の剣を手に入れた翌日、オレは先生と共に再びゲーム開発部の部室に向かっていた。アリスが入ったことでゲーム開発部の部員が4人、つまり部の資格要件に揃った事をユウカに連絡した所、早速その検査を行うとのことでそれに立ち会うためだ。
「ええ。もう少し会話の練習をさせてからにしたかったんですけど、昨日ミレニアムを歩き回ったから噂になってるはずですし、モモイが連絡しちゃったんで‥‥‥‥。」
「さすがに練習はしてるんじゃない?部の存続がかかってるんだし。」
念押しはしておいたが…‥‥‥ついでにアリスに光の剣は簡単に使うなと言っておいた。下手したら建物や罪なき第三者が被害を受けかねない。
「だと良いんですがね…‥‥。」
「ところで、光の剣だっけ?アリスのレールガンってどんな感じなのかな‥‥‥!」
「まあ‥‥‥その‥‥(サイズも反動も威力も)大きいです。」
「楽しみだな~‥‥‥私も持ち上げたりできないかな?」
「拳銃も撃てない人が何言ってんですか。支給された拳銃、手入れくらいはしましょうよ。貰ってから引き出しに仕舞ったままって聞いた時は引きましたよ…‥‥。」
せめてマニュアルくらい教えてやれよ連邦生徒会の誰か。素人に渡すだけって何考えてんだ?
そもそもアンタの筋力じゃバッテリー外しても無理だと思う。危ないからやらないで欲しい。
「それは後でしっかり教えるとして「えっ」準備は進んでるか____。」
「…‥‥あっ、アリス!それブレス攻撃の予備動作!危ない!」
「危険を察知、バリアの魔法を展開します!」
「今は現実の方が危険だよ!資格検査って何!?そんなの初めて聞いたんだけど!?」
「「‥‥‥‥‥。」」
_____________
________
____
「何でミドリに言ってないんだよ、準備はどうしたんだオイ‥‥‥」
部の存続の危機がまだ間近にあるってのに、何で呑気にレイドバトルしてるんだこの桃姉‥‥‥。
「し、心配しすぎだって!アリスの準備については完璧なんだし‥‥「へえ?」アリス、自己紹介を!」
「私の名前はアリス・ザ・ブルーアイ、ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス”火竜の牙”、出身地は鋼鉄山脈。幼い頃、魔物の襲撃により家族を失って、燃え上がる鉱山の中へと単身入りこみ‥‥‥」
ふむふむ、種族とか武器とか色々ありそうだし面白そうだ。オレも初めて見るかな…‥‥じゃなくって、
「いやゲーム内アバターのプロフィールじゃなくて、アリス自身の!」
「あ、理解しました。私の名前はアリス、ミレニアムサイエンススクールの1年生。最近転校してきたばかりで受講申請のタイミングを逃してしまったため、まだ授業の登録ができていない状態なのですが、来月から正式に授業へ参加する予定です。授業にはまだ参加できなくても、部活動への参加は可能とのことでしたので、ゲーム開発部に入部しました。」
「あ、結構それっぽい。」
「ゲーム開発部で担ってる役割は、タンク兼光属性アタッカー‥‥‥」
「違う違う、役割はプログラマー!」
「ぷ、プログラマ―です!生まれた時から、母国語より先にjavaを使っていまして‥‥‥」
「ロボット的にはあり得るかもしれないけど、人間的にはあり得んよ‥‥‥‥。」
「ううっ、本当に大丈夫かな…‥‥!?」
ゲームで学習させてしまった弊害がここにきて裏目に出てしまった…‥‥。
「もう時間もないぞ…‥‥先生どうします?」
「もう時間も無いし、詰め込んでも余計混乱するだろうから、いっそアリスが思った事を話せばいいんじゃないかな?」
「ええ…‥‥。」
「‥‥‥‥‥あり得ないわ。」
「ゲーム開発部に転入部員が入ったなんて、あり得ない‥‥‥!‥‥あ、先生とライ君、こんにちわ。」
「…‥‥こんにちわ、ユウカ。思ったより早かったね。」
「残念だけど、事実だよ!」
「ユウカ‥‥‥。」
「…‥‥‥?」
「あなたが噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った、4人目のメンバー。…‥ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握してると思ったけど…‥‥‥私がこんなに可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね。」
「ゆ、ユウカ‥‥‥?」
アリスを見る目が怪しんでる感じから、別のものになった気がするんだが…‥‥‥。なんか、先生が時々する目に非常に近いものを感じる…‥‥‥ついでに言い方も。
「‥‥‥‥???」
才羽姉妹と先生、ピクピクすんな。余計に怪しまれる。
「よ、」
「?」
「妖怪が出現しました…‥‥!」
「!!??」
「い、今この子、私のことを”妖怪”って言ったわよね!?」
モモイぃ!?お前何か変な事吹き込んだだろっ!?
ギロリとモモイを軽く見ると、彼女は冷や汗をかきながら必死のフォローを試みる。
「か、勘違いだよ!”妖精”って言ったのを聞き間違えたんでしょ、もう、アリスは嘘がつけないんだからー。」
いきなり人の事を妖精とも言わないが!?声が明らかに動揺しているが!?
「くっ‥‥‥悪役には慣れているとは言え、まさか初めて会う子に妖怪扱いされるだなんて。いい度胸してるじゃない…‥‥!」
クソっ、ダメか‥‥!さっき謎に好感もたれてたのに帳消しになっちまったよ!?しかも地味に効いている!いかん、ユウカの額に青筋が…‥‥。
「落ち着いてくれ、生徒会だろ?ここは割り切ってくれ‥‥‥‥!」
「そ、そうだ____んんんっ!?」
再び余計な事を口にしようとしたモモイの口を瞬時に塞ぐ。流石オレ、早撃ち頑張ってきて良かったぜ‥‥‥。
「と、とにかく、部の規定人数は満たしてるから、これでゲーム開発部は存続って事だよね?」
「存続‥‥確かにそうですね‥‥‥‥」
よ、よし!これなら______
「この子が本当に、自分の意志でここに来た部員だったら、の話だけですけど。」
「‥‥‥‥!」
「本来は部員の加入を申告すれば、それだけで良かったのだけれど‥‥‥最近は部活の運営規則も少し変わって、もう少し厳しくする必要が出てきたの。だから、アリスちゃんに簡単な取り調べ…‥‥あら、思ってもない言葉が‥‥じゃあ、いくつか簡単な質問をするわね。」
「思いっきり本音が出てた気がする…‥‥。」
絶対わざとだろ、口角上がってるし。ああ、アリスはすごく不安そうになっている‥‥。
「そんなに時間はかからないわ。」
「せ、選択肢によっては、バッドエンドになることもありますか?」
「バッドエンド‥‥‥‥まあ、そういう事もあるかもね。それじゃあ‥‥アリスちゃん。質問を始めるわ。‥‥‥‥もしゲーム開発部に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして。」
「‥‥‥‥?」
「聞こえてるんだが…‥‥?」
「そんなことしないって!!ほら見て、この眩しい学生証を!ミレニアムの生徒だっていうまごうことなき証明!」
モモイは反論しつつ、アリスの学生証を指さす。しかし、
「ふーん…‥‥確かに、生徒名簿にアリスちゃんが登録されていることも確認したけど‥‥‥‥。私は、そんな簡単に騙される女じゃないわ。」
そうだよな、全校生徒ほぼ全員把握してるんだもんな。ヴェリタスって所のハッキングに気付いてなくても違和感とか感じるよな。てかさっきからずっと笑ってる‥‥‥‥悪役楽しんでるだろ君。
「さて、それじゃあ取り調べを再開しましょうか。」
「もう隠すつもり無いじゃん…‥‥。」
「アリスちゃん、あなたがゲーム開発部に来たキッカケは何?」
「気が付いた時にはここに、ではなく…‥‥‥‥。」
「モモイ、何でそんなにアリスちゃんを睨んでるわけ?やめてあげなさい?」
「…‥‥‥。」
「…‥‥‥はい。」
「えっと、”魔王城ドラキュラ”をやりたくって…‥‥それで、ゲーム開発部の存在をしって‥‥‥‥。」
「ふーん…‥そうなの。」
いいぞ!ユウカの反応をそんなに悪くない。
「でもここはレトロゲーム部じゃない、あくまでもゲーム開発部。つまり、あなたもゲーム作りに参加するという事よね?何を担当するの?」
プログラマー、プログラマーだぞ?絶対にタンク兼光属性アタッカーとか_____。
「タンク兼光属性アタッカー‥‥‥‥」
「えっ?」
「じゃなくて、えっと、ぷ、ぷ、プログラマスです!」
「…‥‥‥はい?プログラマー、じゃなくて?」
「あ、はい。そうです、その通りです。間違いなく私は完璧なプログラマーです。」
あ、ヤバイ。アリスの焦りが顕著になって来たし、ユウカが明らかに困惑している。
「プログラマーね…‥‥すごく難しい役割だと聞くけれど。」
「はい、そ、そうです。ぷ、プログラマーは大変です。たまに過労で意識を失ったりもします。」
「な、なんですって!?」
間違っていない、間違ってはいないが‥‥‥‥‥てかそれ先生では?
「それでも大丈夫です!」
「いや、大丈夫じゃないでしょ‥‥‥ちゃんと休みなさいよ‥‥‥‥。」
ユウカさん、それ
「宿屋で寝て起きるか、聖堂にお金を払えば、仲間達と一緒に復活できます!」
「そっ、そんなわけないっでしょ!?」
(そんなわけないだろっ!?)
「そんなわけないのですか‥‥‥?常識のはずですが…‥‥もしかして、”英雄神話”や”聖槍伝説”をご存じないのですか?
本当に”神ゲー”ですよ。」
「「「「‥‥‥‥‥。」」」」
「終わった、全てが…‥‥。」
満面の笑み、しかもなぜか上から目線のアリス。真顔で微動だにしないユウカ。絶望に満ちたその他一同。
「…‥‥‥ありがとう、分かったわ。短い時間だったけれど、アリスちゃん。あなたのことについては概ね理解できた。」
し、死刑宣告が間近に迫っている‥‥‥‥。
「ちょっと怪しいところはあるけれど…‥‥」
さーて廃部ってことならアリスをどうするかだな‥‥‥。このままミレニアムに通ってもらうか…‥‥転校先が決まるまでシャーレで預かりの身にするか‥‥‥‥。
どの道教えることはちゃんと教えよう。経験大事、練習大事。はっきりわかんだね。
「ゲームが好きだって事。それに、新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは、十分に伝わってきた‥‥‥」
‥‥‥‥‥あれ?
「そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは、何も不思議なことじゃないわ。」
「え…‥‥?」
「っていうことは!?」
「規定人数を満たしているので、ゲーム開発部を改めて正式な部活として認定…‥‥部としての存続を承認します。」
「やったぁ!」
「良かったぁ!」
「ふぅ‥‥どうにかなったね…‥‥‥。」
「そ、そしたら部費も賄えるし、このまま部室を使っても良いんだよね!?」
「ええ、もちろんよ。
「わーぃ…‥え?」
「な、な、なんで!?」
「規定人数を満たすか、何か実績を挙げれば良いんじゃなかったのか?」
「そっか、ライ君は知らないわよね。今は部活の規定人数だけじゃなく
「へ‥‥‥‥‥?」
「もちろん、最近急に変わった要件だから、猶予期間はあるけど…‥‥その期間は今月末まで。今月中に結果を出せなければ、ゲーム開発部がたとえ4人いても400人いても、廃部になるのよ。」
「そうなの‥‥‥?」
「嘘だ、あり得ない!」
しかし、モモイの声にユウカは全く動じない。
「あり得るのよ!この間、全体の部長会議でちゃんと説明した内容なんだから。ただ、あなたたちの部長、ユズはそこには参加してなかったけれど。」
「!?」
「つまり、あなたたちの責任よ。」
「くっ‥‥‥卑怯者め!」
「鬼とかならまだ分かるけど、規則通りに事を運ぶことの何が卑怯なのよ…‥‥‥。正直なところアリスちゃんの正体も怪しいし、本当なら今日すぐに退去を要請しようかとも思っていたのだけれど…‥‥。」
「!?」
「…‥‥‥正体はさておき、ゲームが好きっていう純粋な気持ちは本物だと思った。猶予を与えたのは、その気持ちに相応しい成果がきちんと出せることを期待しているからよ。モモイ、あなた言ったわよね?ミレニアムプライズで、びっくりするぐらいの結果を出してみせるって。」
「そ、それはそうだけど‥‥‥‥。」
「新しいメンバーも増えたことだし、前よりちゃんと面白いゲームが作れるんでしょうね?それじゃあ、楽しみにしてるわよ。じゃあね~。」
「ちょっ、待って!詐欺師っ、杓子定規っ、もおぉぉぉっ!」
「行っちゃった……‥‥。」
「…‥‥‥存続の危機は脱せず、か。」
「でもこんなの、そう考えても詐欺だよ!謀略だよ!!」
「落ち着いてモモイ、ユウカだって意地悪したくてやってるんじゃないんだから…‥‥。」
「…‥‥‥ごめん。私が、部長会議に参加できなかったせいで‥‥‥‥。」
「ゆ、ユズちゃんのせいじゃないよ!こういう場合って、お姉ちゃんが代わりに参加することにしてたはずでしょ?」
「‥‥‥仕方なかったの。だってその時は、アイテムドロップ率2倍のキャンペーン中で‥‥。」
「やっぱりお姉ちゃんのせいじゃんっ!今すぐそのゲーム消して!」
なんか‥‥…怒りとかそういう感じですらないな。何だろ、この行き場のない感じ。
「もう、ミレニアムプライズで受賞できるゲームを作るしかないんじゃないかな…‥?」
「ってことは、結局G.bibleが必要なんじゃん!またあの廃墟に行くの!?やだぁ!!」
「落ち着け落ち着け。また一緒に行くから‥‥‥‥‥。」
「…‥‥‥責任、取らないと。」
「え、ユズちゃん?」
「G.bibleを探しに、また廃墟に行くなら……わたしも、一緒に行く。」
「え、え!嘘!?」
「ユズちゃん、もう半年近く校舎の外に出てないのに。授業もインターネット受講だけだし…‥‥‥。」
「逆に校舎内で生活できるのか‥‥‥‥‥。」
なんかそういうアニメだか漫画知ってる気がする‥‥‥‥忘れたけど。
「…‥‥‥元々は、私のせい‥‥だから。それに、この部室は‥‥‥‥もう私だけのものじゃない。‥‥‥‥一緒に守りたいの。」
「ユズちゃん‥‥‥‥。」
「パンパカパーン、ユズがパーティに参加しました。」
「…‥‥‥うん、よし!やるしかない、行こう!」
「アリスちゃんも、武器とか装備もって!」
「アイテムを選択、”光の剣:スーパーノヴァ”を装備しました。」
「おおおっ!カッコイイ!」
「先生もやる気ばっちりだね!よし、行こっか!今度こそG.bibleを手に入れる為に!」
「うん。みんなで、部室を守ろう!」
「先生、ライ、キャリーよろしくね!」
「先生とオレ、ハードモードなんだが?」
「二人は縛りプレイをしてるという事ですか?」
「そういう事になるのかな‥‥‥‥?」