知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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お久しぶりです。
大変お待たせしました、3か月ぶりの更新になります。


脅威の予兆

決意を新たに、G.bible無しで”テイルズ・サガ・クロニクル2”の開発を始めたゲーム開発部。残された時間は一週間もなく、ゲームを作るには素人でも難しいと分かる厳しい条件の中だが、彼女たちはそれぞれの分野で奮闘し、意見を交わし、指摘しあい、一つのゲームを急ピッチで形作り上げてていく。先生とオレも協力したが、もちろんゲーム開発に関するスキルは何も持っていないので、誤字の指摘やライトユーザー視点からの意見、買い出しといった半ば雑用のような形だ。つまり、オレ達二人はゲームそのものを作ってないし、内容もよく分かっていない。先生としては下手に大人が手を出すより全然いいんじゃない?といった様子で、オレも似たような意見だ。

 

「‥‥‥とはいっても、いざって時は、なぁ…‥‥。」

 

、ミレニアムプライスの受付が間に合わなかった時、そして受賞出来なかった時の事を考えてしまっているからだ。ユズはともかく、アリスはミレニアムに居られなくなるかもしれない。そうなれば、シャーレの権限を用いて部員としてアリスを所属させるという建前で保護。転校先なり、ミレニアムに編入させるなりする準備をしなければならないだろう。

 

「もし、そうなっても…‥‥」

 

ゲーム開発部のみんなと一緒に入れるようにしたい。‥‥‥はぁ。オレって意外とネガティブだな。男だからとかそういうのはご時世的に言わない方がいいかもしれないが、情けない話だ。きっと、アリスの目指す”勇者”や、先生がそうであろうとしている”大人”とは生徒以上にほど遠いところに、オレはいるのかもしれない。勿体ぶったみたいになったが、いつかアリスに”オレの目指すもの”を話すとき、何て言えばいいんだか‥‥…。

 

「…‥‥今は今やる事、やらなくちゃな。」

 

まずは缶詰している彼女達にこの差し入れを届けなくては。だからさ、

 

「…‥‥‥誰だか知らないけど、邪魔しないでくれるか?」

 

ここ最近、ミレニアムにいる時に妙な視線を感じていた。いつもの男珍しさとかそういうのではない。素人ではないし、むしろ上手いつけ方だが露骨すぎる。普通の生徒として見ていれば良かったものを、そういう仕事としてやってしまっている。顔を見に行っても良いが、あっさり出てくる訳はないし、追いかけるつもりもない。ここはあえて、振り向かない。が、来るなら‥‥‥抜く。

 

「遊びたいなら付き合うけど‥‥‥彼女らの邪魔は、させない。」

 

ホルスターに手を掛け、親指をコッカ―に付けた瞬間、微かな音と共に、近くの気配が減った。

 

「分かってくれた、のか‥‥‥‥?」

 

アリスと隠れた時に聴こえてきたネルと思われる人物とアカネの会話。彼女は任務失敗の報復というよりはゲーム開発部とシャーレ‥‥‥特にアリス、先生、オレの実力を直接確かめたいのだろう。ここ最近の奴はそれの為の情報収集だろう。でも今のはなぁ。

 

「そういうのじゃ無い気がするが‥‥‥ま、受けて立つさ。」

 

一応皆には共有済みしてあるし。まぁ、対策らしい対策はほぼ出来ないわけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…‥‥こちらコ(・)ー(・)ル(・)サ(・)イ(・)ン(・)・(・)ゼ(・)ロ(・)フ(・)ォ(・)ー(・)。目標に気付かれました。姿は見られていませんが、どうしますか?‥‥‥了解しました。そちらに戻ります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

________

 

_____

 

 

「お姉ちゃん!まだ!?」

 

「ま、待って、急かさないで!あとこれだけ入力すれば終わりだから…‥‥!」

 

「あと2分だよ!?急かさずにはいられないって!」

 

「正確には96秒です、そう言っている間に92秒‥‥」

 

「わ、分かった分かった!もうできたから!はい、ユズ!」

 

「こっちは簡単なテストだけやって……うんっ。エラーは出てない、モモイ!」

 

「オッケー!ファイルをアップロード、完了まで予想時間…‥15秒!アリス、あと何秒!?」

 

「残り19秒です…‥!」

 

「お、お願い‥‥!」

 

「‥……‥‥転送完了。」

 

 

[ミレニアムプライスへの参加受付が完了しました。]

 

 

「ま…‥間に合ったああぁぁああ!!!」

 

「ギリギリ…‥心臓止まるかと思った‥‥。」

 

 

「やあ。提出の「みんなミレニアムプライスの提出は!?」…‥間に合ったか?」

 

「先生、ライ!」

 

「どうにか間に合いましたよ。あとは、三日後の発表を待つだけ、です。」

 

「そっか‥‥‥一旦良かったって、言っておくべきか?」

 

「うん。でも、まだ決まったわけじゃない。3日後には、この部室にいられるか、そうじゃないのかが決まる。」

 

「そっか…‥‥取り敢えず良かったよ。」

 

先生と急いで様子見に来たが、取り敢えずは勝負の場に出れそうという事で、深く息を吐きながらソファに腰を下ろす先生にどことなくおっさん味を___

 

「ん?なぁに?」

 

「さあ?」

 

この人なんか鋭いな…‥‥大人の女の勘てヤツ?別におっさん臭い事なら割と普段から____

 

「ん”ん”ー?」

 

「に、にしても3日って結構間あるけどさ!その間どうするんだ?」

 

「何かよく分からないけど、誤魔化した…‥‥?」

 

「?まあ、ライの言う通りなんだよね。そこで提案なんだけどさ‥‥‥先にweb版の”テイルズ・サガ・クロニクル2”をアップロードしてみるのはどう?」

 

「!?」

 

「なるほど…‥‥事前評価、だね。」

 

「そう!それに、審査員の評価より先にユーザーの反応を見たいからね!」

 

「うーん、でもちょっと怖いかも。低評価コメントも心配だし。」

 

「何言ってるのさ!そもそも、ミレニアムプライスに出品するためだ(・)け(・)に作ったゲームじゃないでしょ!自信をもって見てもらおうよ!私たちはベストを尽くしたんだからさ!」

 

「それは、そうだけど…‥‥。」

 

何となく分かってはいたし、理解は出来るがミドリはまだ、前作の事もあって引け腰のようだ。

 

「‥‥‥ユズとアリスはどう?」

 

これは才羽姉妹だけではなくゲーム開発部として決定する必要があるので、それとなく二人にも聞いてみるが、アリスはアップロードに肯定的だろう。ユズは‥‥

 

「うん、アップしよう。」

 

「!?」

 

「作品って言うのは‥‥‥見てくれる人、遊んでいる人がいてこそ、完成されると思うから。わたしは…‥わたしたちのゲームを、完成させたい。」

 

少しくらいは躊躇ったりするかと思ったが、随分とあっさりと答えた。

 

「…‥‥‥二の舞って事もあるかもあるかもしれないぞ?」

 

「ちょっとライそれは‥‥…!」

 

「大丈夫。もし前みたいに、低評価コメントのオンパレードになったとしても、全力で頑張ったから。それに…‥みんなが一緒だから、きっと受け止められる。もう、大丈夫。」

 

「‥‥‥意地悪な事を、言うまでも無かったな。ごめん。」

 

「いいんです。ライさんは優しい人だって、分かりましたから。」

 

「‥‥‥そうか。」

 

「それじゃあ今すぐアップロードー!」

 

「ああっ!ま、待って!心の準備が…‥!」

 

そう言っている間にモモイはコンピューターを操作し、TSC2をネットに、世界に解き放った。

 

「転送完了!プレイして感想が貰えるまで少なくとも2,3時間はかかるだろうし、後はしばしの休憩ってことで!」

 

「‥‥‥‥はあ、そうだね。」

 

姉の強引さにか、TSC2の反応が心配なのか、投げやり気味に言うとミドリはため息を付きながらソファに背を預けた。

 

「一応、一段落したね‥‥。」

 

そう、一(・)応(・)。

 

あくまでもこれは提出。テイルズ・サガ・クロニクル2はこれから公正で厳格な審査を受け、それが賞を付けるに値するのか見定められる。そして三日後の発表でそれは白日の下にさらされる。緊張するだろうし不安だろうに。まあ、待ってるだけってのも落ち着かないし、銃の点検でもしておくかな。リボルバーとはいっても構造上自動拳銃(オートマチック)とまではいかなくてもパーツは多い。普段からハードワークだし出来る事はしておかないと。

 

 

「…‥‥。」

 

「ん?アリス?なんでコンピューターの前に座ってるの?」

 

「待機します。みなさんがダウンロードを始めたようです、気になります。」

 

「これからゲームをプレイするのにまた時間がかかるだろうし、待っててもそんなにすぐには来ないと思うよ?」

 

「はい、それでも待ちます。」

 

「わ、私も‥‥どっちにしろ、緊張で眠れないし‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥うん。ダメ、私もドキドキしてきちゃった。」

 

「私は心配でドキドキが止まらないよ‥‥‥うぅっ、自分で言いだしたのに緊張でおかしくなりそう!」

 

 

結局、プレイ前のTSC2についてのコメントを読むゲーム開発部と、それを片手間に見守るオレと先生。”クソゲーランキング1位だったやつの続編?”とか”懲りないなw”といった予想通りやってもいない上でのよろしくないものが多いが、”新鮮味があったから楽しみ”、”振り切った体験がしたい”、”ついダウンロードしてしまった”といった期待のコメントも確かにあるなど、思ったより好感触な気がする。怖い物みたさのような感覚をもっているのが殆どではあるが、期待されていない、見向きもされていないよりかは遥かに違う。

 

 

「うわあぁぁ‥‥‥!無関心じゃなければ良いな、くらいに思ってたのに!ここまで買うが増えると急に怖くなってきた!」

 

「‥‥‥ドキドキします。」

 

 

「ねえ、結構いい感じじゃない?」

 

先生が嬉しそうにオレの方を小さく揺さぶっているが、オレははまだそういう気にはなれない。

 

「そうですね。まだ油断できませんけどね、色(・)々(・)と(・)。」

 

色々やらかしてしまった割に、メイド部(C&C)や生徒会(セミナー)からの動きが不気味なくらいに無い。無事に提出は出来たという事は、他の手段で妨害ないし制裁を加えに来るのだろうか…‥‥ユウカがそんな事をするとは思えないがメイド部は‥‥‥‥。

 

「うぅっ!期待と不安で、心臓が爆発しそう!」

 

いやぁ、本当に爆発したら困るんだけど_____

 

 

 

 

「ドカアアァァァン!」

 

 

 

 

 

「!?」

 

「ほ、本当に心臓、爆発しちゃったんですか?」

 

「ち、違う‥‥‥私の心臓じゃない!」

 

「いったい何の‥‥!ゲーム機が爆発!?」

 

「えっ、長時間やりすぎたかな…‥‥?」

 

「そんなスプラッターでもなんでもないだろ!?」

 

いつも通りにボケる3人にツッコミつつ、即座に銃を抜き戦闘態勢に切り替える。いまの音は聞き覚えがある。ならば、次の着弾は‥‥‥!

 

先(・)日(・)の(・)経(・)験(・)と直感を当てにして窓に向かって構えてタイミングを計り、引き金を引く。

 

 

 

「ドゴオォォン!」

 

 

 

「ひゃっ!?」

 

部屋の外で迎撃できた、という事は‥‥‥‥

 

「この砲撃、カリン先輩の‥‥!」

 

「遠距離攻撃を確認、部室正面に対して11時の方向!距離、約1㎞…!」

 

約1㎞から部室の中に…‥良い腕してるよ本当に‥‥‥!

 

「ぜ、前回の仕返し!?」

 

「分からないけど、ここで撃ち合うのは不味いね。」

 

「先生の言う通りだよ!部室が壊れちゃう!」

 

「そ、外に生徒会の人達も…‥!”鏡”の件の報復・‥‥!?」

 

「ちょ、ちょっとは申し訳ないと思ってたけど…‥!」

 

「ひぃっ、また来る!」

 

「落ち着いて。リロードしてるうちに、とにかく外に出よう。アリス、ユズ、前。アリスとユズは私の横。ライは‥‥‥」

 

「殿だろ?撃ち漏らしは任せてください。」

 

「うん、お願い。」

 

「よし、行くよ!」

 

 

 

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