知らない天井は独房だった。   作:鋼蛙

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今回は短めの二部形式です。
後、久しぶりの設定解説あります。


閑話:はじめての冒険(前)

「どう?キツイところとかある?」

 

「むしろピッタリだ。直接の採寸はしてないからある程度はって思ったけど‥‥‥」

 

ミレニアムプライスの後、オレはエンジニア部の元を訪れていた。ミレニアムプライスに提出する作品を優先してもらった為に一時中断となっていた、以前からの頼み事の為だ。

 

「してないというか、ライが嫌がっただけでしょ。」

 

「…‥‥コートとサスペンダーは別にいい、ホルスターも全然いい。でもさ、

絶対にシャツひん剥いてベルト外そうとしたのは違うだろ?」

 

「だ、だって脱がないと正確なデータが取れないから‥‥‥それにライ、結構筋肉あるから体の凹凸が‥‥‥」

 

「…‥‥お互い恥ずかしくなるからよせって言ったのに。」

 

顔を真っ赤にしたケモ耳美少女から服を脱がされるって何処の同人誌だよ。危なかったぞ‥‥‥‥‥…色々。まあ、ボタンとベルトは外されたから秒読みだったが。

 

「…‥‥話を進めてもいいかい?」

 

「ん?ああ、頼むよウタ「では、私が説明しましょう!」‥‥コトリ。」

 

「はい!ではまず___________」

 

 

 

 

 

‥‥‥うん…‥‥うん‥‥‥‥うん。

 

 

 

 

 

 

真に申し訳ないのだが分からん。専門用語が多すぎる。

 

オレもそっち方面は全くの無知ではない。だが余りに専門的すぎるというか高度過ぎるというか…‥‥。

 

以前からの注文。それはオレの新しい防弾コートだ。キヴォトスに来る前からだいぶ使い込んでいたのもあって各所の摩耗・劣化が激しく、この先の事も考えて新調しようと思って前々から頼んではいたのだが、ミレニアムプライス等々により一時中断にしてもらっていた。もういい加減に限界を感じつつあったし、綺麗な真っ白い背広の先生といるからには小奇麗かつ実践的な装いが良いと思うので悪くないタイミングだったという訳である。

 

見た所、

ヨークやバックベルトが付いて先生の背広や連邦生徒会の制服に近いデザインになったから、先生と並んだ時の違和感が少なくなったかもしれない。弾薬や小物用のポケットが増えたし、ポーチやベルトも付けやすくなっている。文句の付けようは無いだろう。実戦における防弾性は…‥‥‥‥まあ、多分大丈夫だろう。どうせ撃たれ続けたら生地が劣化して貫通するし、衝撃は普通にあるから骨や内臓が持たないし。即死しなきゃ問題ない。

 

にしても、これ似合ってるんだろうか?彼女たちのセンスを疑っているわけでは無いが、何せオレの顔が別に良くないし身長も大して高くないしな。今更伸びるとは思えないし、ヒールを履いていなくても先生の方が高いのだ。普段から着るものだからちょっと心配_______

 

「――――――つまりですね!「悪い、電話出てきてもいい?」…あ、はい。どうぞ。」

 

話を遮って悪いとは思いが、先生からの電話だ。緊急事態かもしれないので出来るだけ直ぐに出る必要があるのだ。‥‥まあ、これ以上説明してもらっても分からないから丁度良かったかもしれない。3人から少し離れて、先生に掛けなおす。

 

 

「‥‥‥もしもし。何かありましたか?」

 

『いきなりごめんね、ライ。まだミレニアムにいる?』

 

「はい。新しいコートを受けとった所ですけど‥‥」

 

『実は、アリスから”いよいよ冒険に出ます”って連絡が来てね。”はじまりの村周辺でレベル上げ”って言ってたからミレニアムで散歩だと思うんだけど‥‥なんだか心配になっちゃって。』

 

なーるほどね。好奇心旺盛なのは良いけど、何せアリスの基本言語及び知識をRPGゲームで学んだから心配にもなるだろう。オレも不安になって来た。

 

「‥‥分かりました。ちょっと様子見てきます。」

 

『うん、よろしくね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________

 

先生からの連絡を受けてその辺を少し歩いていると、長髪とデカブツ(レールガン)が目立つのもあって、ぽてぽてと歩いているアリスが直ぐに見つかった。

 

「‥‥‥‥ライ。」

 

少し距離があったのに気付けたのは偶然か、それとも搭載されているセンサーのスペックの賜物なのか。オレの顔を見て直ぐに、アリスは早歩きで近づいてきた。

 

「やぁ、アリス。冒険の方は「パンパカパーン!」‥‥!?」

 

挨拶する前に唐突なファンファーレ。状況と性格から見てこれは‥‥‥

 

「ライが合流しました。勇者は仲間を手に入れ、パーティーになりました。」

 

冒険のお誘いか。旅は道連れとかいうし、似たようなものだろう。オフィスに戻ってデスクワークするより、勇者との冒険の方が楽しいだろうし、付き合おう。

 

「出会い頭にパーティー勧誘して大丈夫か、勇者様?」

 

「大丈夫です!ライは戦闘で回避タンクとしてもサポーターとしても役立つガンマンです。」

 

回避タンクって要は囮だよな?キヴォトス基準だとHPとDEF低くて受けタンクなんて出来ないから、間違ってはいない。先生が攻撃されないようにはしてるし。

 

「因みに、先生のジョブは?」

 

「マスコットです。」

 

「ま、マスコット?バッファーとかのサポート役じゃなくて?」

 

「はい。先生は戦闘では役に立ちません。武器も装備してないですし、体力も1くらいです。ですが、仲間としてはすごく助かる存在です。パーティーにいることで仲間の士気を上昇させる役割でです。」

 

「‥‥‥それだけ?」

 

「はい、それだけです!」

 

曇りなき笑顔でなんて事を言ってるんだこの子。オレより役に立つ指揮能力も権力もあるんだぞ‥‥‥‥。士気が上がるのに異論はない。あの人タラシだし。君の近くにもいると思うよ、先生にお熱な生徒。

 

「オレより、先生の方が役に立ってるからさ。余り言わないでやって…‥‥‥。」

 

「確かに、先生は素晴らしいです。先生がいるとアリスもみんなも幸せな気分になって高揚します。‥‥ですが、アリスはライといる時、とても安心できます。」

 

「は、はぁ‥‥?」

 

安心感ある…‥?結果的に毎回ボロボロでギリギリだし、君らの方が頑丈で強いし‥‥‥いざって時盾になれるかも怪しいんだけども。

 

「パーティーへの登録完了です。さあ、冒険に出発する時が来ました。」

 

‥‥‥取り敢えず、嫌われてはいないだけ良しとしよう。

 

「これから何をするかと言いますと‥‥‥。」

 

今は、勇者の初めての冒険を共に楽しみ、サポートすることを考え____

 

「‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥取り敢えず、前進します。」

 

「ノープランかい。」

 

「そんなことはありません。とにかく前進です。勇者の冒険はまず前進することから始まりますので。」

 

「‥‥‥んじゃあ、のんびり行こうか。」

 

 

 




〈連邦捜査部 情報アーカイブ:新型防弾コート〉
・ライがキヴォトスに来る前から着ていたコートの劣化に伴って、エンジニア部が新たに作成した防弾コート。
・黒いフード付きロングコートの形は引き継ぎつつ、軽量な特殊繊維の使用、ヨークやベルト、弾薬・小物用ポケットや特殊装備の追加により機能性と総合的な防御力を強化しつつ、抜き撃ちや激しい運動への影響が最小化されている。特に、ヨーク・フードに覆われる後頭部・胸・背中や盾代わりにして被弾しやすい左腕の耐弾・耐衝撃性は極めて高いが、それ以外は最低限となっている。

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