考えてみると、ユウカへのお礼や謝罪、ゲーム開発部の件はもちろん、オーダーメイドの特殊実包やアーバレストのメンテナンス等、ミレニアムに足を運ぶ機会はかなり多かったが、殆ど生徒会室やエンジニア部の工房、ゲーム開発部の部室であり、こうして街をゆっくりと歩いたことは無かった。
昔の映画に出てくるようなサイバーシティじみたものでこそないが、随所に最先端・先鋭的なテクノロジーが当然の様に用いられており、三大校の一つという事を改めて認識させる。
「~~~♪」
オーパーツ級の理解しがたい程のテクノロジーの塊が、眼をキラキラさせながらそれらを見ているというのもよく考えれば不思議な光景ではある。しかし、記憶のないところからゲームでコミュニケーションや感性を学んだこの少女にとっては、全てが新鮮で、魔法の様に不思議なのだろう。それが少しだけ羨ましいと感じてしまう。
「…‥‥‥まだまだ、何も分かってない癖にな。」
「何か言いましたか?」
「いや、何も。」
キョトンとした顔で聞いて来るアリスに素っ気ないように返す。いつも人当たりの良い先生と比べれば年長(?)としては良くはないのだろうな‥‥。はぁ、まだ”大人”にはなりきれないなぁ…‥‥
「あの…‥‥」
いかんいかん。今は勇者様のパーティーとして初めての冒険中なのだから、楽しくしないとね。
「ああ、どうした?」
「アリス、あそこに入ってみたいです。」
「あそこは‥‥‥ゲームセンターか?」
恐らくアリスは入った事がないだろうし、オレも最後に入ったのは随分前だ。何故かシャーレの居住区にもゲームセンターはあるが、普段の業務量では中々機会が無かった。パッと見ではレトロな筐体が並んでいたあちらとは違って、ミレニアムのとなるとキヴォトスにおいて一般的なものから独自のものまで色々あるだろう。普段から財布に硬貨を多めに入れているので十分に楽しめるだろう。
「オレもやりたくなってきたし‥‥‥とことん遊ぼっか。」
__________
ピロリーン
「・・・・・・・・むう」
レッツゴー! キアイ イレテネ!
「・・・・・・・・・っ。」
シンチョウニー・・・・ストップ! ツギ ジュウヨウダヨー!
「…‥‥‥‥‥。」
アセラナイデ! ・・・・イッケー!
「ドキドキ‥‥‥‥!」
コノシュンカンガドキドキダネー!
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・‥あっ」」
ザンネーン!
リョウガエキープヲオコナイマスカ?
「ミスったああぁぁっ!?」」
「これがクレーンゲーム‥‥‥相当な難易度です‥‥!」
「うーん‥‥変な所で引っかかってしまった‥‥‥あ、すみませーん!位置リセットお願いしまーす!」
「所で、この変な鳥のぬいぐるみはなんですか?」
「ペロロ様な?絶対にキモイ鳥とか呼ぶんじゃありません。」
「?」
「へっ‥‥へくちっ!!」
「ん、大丈夫?」
「‥‥‥今どこかでペロロ様の話をしている人がいた気がします…‥!」
「…‥‥アンタ本当に大丈夫?」
____________
「うわあん!全然コンボがつながりません!」
「いきなりハードモードにするからだ…‥‥っぶなっ!?」
「これもしっかりレベル上げしなければ…‥‥!」
「おう頑張あぁぁああ!?なんだよその譜面ッ!?」
てか指先熱っつ…‥‥‥‥‥ガチるなら手袋いるなこれ。
______________
「うぅ‥‥壁にぶつかって上手く曲がれません!」
「挙動がリアルだ‥‥‥すげぇ‥‥‥」
キヴォトスだと学生でも車乗ったり戦車乗ったりするからだろうか?オレもキヴォトスの免許取った方がいいかな‥‥‥‥おっとアリスが右に!?いつの間に、しかもアウトからだと!?
「くっ‥‥!」
アリスの車に押し込まれてラインからズレて‥‥これでは‥‥‥
いや、まだだ。溝に落として速度を稼げば、立ち上がりで並べる‥‥‥!
「行けえぇ!!」
「曲がってください‥‥‥アリスのロクハチ‥‥‥!」
「パンパカパーン!アリスの勝利です!」
「うそーん」
____________
「パンパカパーン!アリスのレベルが上がりました!」
「おめでとさん…‥‥ふぅ‥‥‥。」
ゲームセンターを満喫したアリスとオレは休憩がてら近くのファミレスに立ち寄った。部室でするゲームとはまた違ったゲームを存分に楽しみ、
「‥‥‥‥何か追加で頼む?」
アリスがメニューをじっくり見ていたので聞いてみる。一応、昼は食べたし夕飯には早すぎる時間なのでドリンクバーとフライドポテトしか頼んでいないが、アリスのわんぱく具合だと少し物足りないのかもしれない。
「このプリンサンデーを食べたいです。」
「了解。んじゃあ‥‥‥ついでにこれも。」
備え付けのタブレット端末に番号を打ち込んでアリスご所望のプリンサンデーと、自分用のガトーショコラを注文。時間的にも店内が空いている事もあって、あっという間に配膳ロボットによって注文のデザートが運ばれてきた。アリスのプリンサンデー、意外とデカいんだが‥‥‥まあ、大丈夫だろう。
「…‥‥甘っ。」
切り分けたガトーショコラを口に入れた瞬間、予想以上の甘味に驚いて咀嚼し終えて直ぐにアイスコーヒーを一口飲む。
ちらっと前を見ると、アリスが幸せそうにプリンや盛り合わせのフルーツを次々と食べ進めている。しかも飲み物はコーラという、砂糖の塊同然の炭酸飲料。一気に自分が年を取ったかのような錯覚を覚え、ほんの少し遠い目になる。これが若さか…‥‥‥。
「‥‥…あ、思い出しました。」
アリスが突然スプーンを止め、オレを真っすぐ見てくる。
「…‥‥何かあったけ?」
あれ、オレ何かアリスと約束したようなしてないような…‥‥う~ん…‥‥‥。
「アリスがレベルアップしたら、ライの”師匠”の話をしてくれるという約束です。」
‥‥‥‥‥うん、してた。すっかり忘れてた。でも思い出したから良し。
「そうだな…‥‥少しだけ話すから、ゆっくり食べながら聞いてくれ。」
フォークを置き、喉を潤してからオレはほんの少しだけ、過去の情景に思いを馳せながらアリスにも分かりやすいように言語化し始める。
「なんて言えばいいのかな‥‥‥師匠はオレの__________」
「…‥‥って感じかな。」
「…‥‥‥‥。」
「あれ、どうした?」
「‥‥‥アリスにはよく分かりませんでした。まだ知識のステータスが足りていないようです…‥‥。」
「あ、あれ‥‥…?」
まだアリスには早かったようだ…‥‥それ以前に、オレが口下手すぎるのだろうけど。分かりやすく話すって難しいよ先生‥‥‥。
「ま、まぁこの話はまた今度ってことで。」
時計を見ると思ったより時間が経っている。テーブルの上にあったポテトもデザートもドリンクも既に空だし、頃合いだろう。
「そろそろお開きにしようか。送ってくよ。」
____________
手早くテーブル決済という便利で合理的な支払いを済ませて外に出る。行きとゲームセンターから出た時はアリスと話している時間が少し多かったが、今は遊び疲れたのか少し静かだ。楽しそうなのは変わらないけど。
「‥‥‥ライ、今日はありがとうございました!」
「こちらこそ。初めての冒険はどうだった?」
「はい、楽しかったです!”師匠”の話もしてもらえて、アリスのレベルは一気に上がりました!」
「そっか‥‥‥それは‥‥あー…良かった、な‥‥。」
あんな意味の分からなかった話で良かったのか?
今度分かりやすく説明できるようにまとめておこう…‥‥。
「アリスはこれから、ユズと格闘ゲームをするのですが、ライも一緒にどうですか?」
「ユズと?それは楽しそうだ。」
モモイだかミドリだかが、ユズはゲーム開発部の中で一番ゲームが上手いとか言ってたしな。格ゲーは余りやった覚えがないが、見ごたえはありそう…‥‥いやでもいい加減に戻ってデスクワークしないと‥‥‥
「‥‥‥鳴ってるぞ?」
「鳴ってるのはライの携帯ですよ?」
「えっ‥‥‥あ、失礼。んじゃあ…‥‥‥はい、真道で…‥はい‥はい‥‥‥場所は?…‥了解。直ぐに行く。」
「どうかしましたか‥‥?」
「…‥‥シャーレに緊急クエストが入った。行かないと。」
場所がミレニアム近くであるのなら、そしてそれが荒事であるのなら、オレが行くべきだ。
「あ、アリスも手伝います‥‥‥!」
「ユズと約束してるんだろ?友達を待たせるんじゃないよ。」
「そうでした………。うぅ、分かりました………。」
「…………また冒険しよう、アリス。」
「………!…はい!」
「さて………行くか。」
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