さあてこっからだぞ!(更新遅くてごめんなさい)
「”楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか”。」
「…‥‥‥え。」
オフィスに入るや否や、先生が凄く詞的な事を呟きながら黄昏ている、だと‥‥‥?
あの先生が?あの先生だぞ!?一体どうした!?何があった!?過労か?過労なのか!?壊れてしまったのか!?業務の分担もしたし当番の手伝いもあったし休みもどうにか作ってたのにダメだったのか!?毎日のように可愛い生徒達と触れ合っていたのにか!?
「クッソ、何故だ…‥‥何故こんな‥‥‥」
「‥‥…あれ?おはようライ。なんでドアの前で止まってるの?」
オフィスに一歩踏み入れただけの中途半端な体勢で一人憤っていると、さっきまで黄昏ていた先生がいつも通りに見える笑顔を向けてきている。本当に大丈夫なのか、それともオレに心配を掛けまいと虚勢を張っているのか、どっちだ?
「…‥‥おはようございます、先生。その‥‥…ちゃんと寝れてますか?」
「お陰様でね。そっちこそちゃんと寝てる?通常業務以外に銃の整備とかトレーニングしてるんでしょ?私より大変じゃない?」
「寝てはいますよ。夢見は偶に悪いですけど。」
「ならいいんだけど‥‥‥そうそう、私も変な夢見たんだよね。宮殿っていうか、そういうザ・高級って感じのテラス?ベランダ?で金髪の獣耳の女の子が話しかけてくる夢でね。」
宮殿?金髪ケモ耳少女?新しい性癖開示か?もう変態教師なのは分かってるからさ、事案だけは起こさないでくれよ教師として大人として_______
「遠回しというか難しい話し方で
「…‥‥‥それ、詳しく。」
詳しくその夢の内容を聞いてみると、エデン条約についての情報はオレがスズミから聞いたものとほぼ同じであることが分かった。その他については”遠回し”、”難しい”というだけあって主観の入ったその少女の主観や皮肉らしい発言。なるほど、面倒そうな性格だな。相手によっては神経を逆撫でして事態を深刻化・複雑化させ敵を増やすタイプだ。実際にオレが話したら文句や罵詈雑言の一つくらい言ってしまいそうだ。それは一旦置いておいて、気になったのは”7つの古則”、その5目の質問についての話。
「”楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか”‥‥‥ね。」
さっき先生が黄昏ながら呟いていた理由ってこれかよ‥‥‥心配して損‥‥いや、違うな。これは目を逸らしてはならない。そうオレの直感が告げている。
先生曰くその少女は「”楽園”に辿り着けた者は楽園から出ることは無い。出たのならそこは真に”楽園”とは言えない。つまり楽園の到達者の存在の観測・補足は出来ない。よって5つ目の古則は初めから証明できない不可解な問いである」と言ったそう。問題はここからだ。その少女はその”証明できない真実の価値”について、楽園―――”エデン”がどこにも存在せず、探すことも敵わない場所を意味するのを理由に”甘い虚像”であると言った。
同じ言葉を付けられた”エデン条約”もそれと同じく、その先には希望や楽しみなんてものはなく、全てが疑わしく、不愉快で、気持ち悪くて…‥‥そんな”負”を重ねた、後味の悪いだけの話である。そう結論付けたようだ。
「そして、その”真実”を最後まで見るのが”先”を選んだ私の義務だって…‥それで目が覚めた。」
「…‥‥‥‥‥‥。」
「…‥‥ライ?」
「‥‥‥珈琲淹れてきますね。砂糖とミルク入れます?」
「あー‥‥ちょっと多めで。朝から難しい話したから疲れちゃった。」
「分かりました。んじゃあ、先に仕事始めててください。」
足早にオフィスから出て給湯室に向かい、水を入れたケトルを火にかける。その間に先生と自分のマグカップを出し、フィルターと粉を準備するがその手つきは普段より荒っぽい。理由は分かっている。分かっているが、抑えられていないの所に、オレという人間の程度が出てしまっている。
「…‥‥……っ。」
名前も顔も知らない少女に、いつかのクソガキに矛先を向けたってどうしようも無いというのに。とっくに沸騰しているケトルの中身に暫く気づくことも無いまま、オレは行き場のない、気持ち悪い衝動と熱をじっと抑える事しか出来なかった。
その翌日。シャーレにある招待状が届いた。トリニティ総合学園の生徒会であるティーパーティーのお茶会への招待状が。
「ねえ、ライ。お茶会ってドレスコードとかあるのかな?」
「いつも通りの格好で良いと思いますよ。フォーマルではありますし。」
「ライは「これで行きますけど?」だよね…‥‥。」
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トリニティには何度も訪れているが、この先に入るのはアビドスの一件以来。先生は恐らく初めてだろう。それに、もういい加減にこの物珍しい視線も、高貴な造りの建物にも慣れてきたと、そう思いながら案内の生徒に続く形で先生と廊下を歩く。
「ティーパーティー直々の依頼って何だろうね…‥‥。」
「さぁ‥‥‥でも、オレ達ティーパーティーに借り一つありますからね…‥‥」
それもホシノ救出作戦への協力を頼みこみ、課外授業という建前でカイザーの基地に榴弾砲による火力支援をしてもらったというデカい借りが。それもオレとヒフミの独断によるものなので、今のうちにこちらで処理しておかなければ、アビドスとヒフミに何があるか分からない。相手は三大校の一つだ。余り面倒ごとにならなければいいのだが…‥‥‥どうせ今回も思い通りにはいかないんだろうが。
「…‥‥こちらです。どうぞ。」
案内の生徒が扉を開けると、そこは宮殿の一角のような白無垢のテラス。ここに来るのは2回目であり、奥には以前と変わらない優雅な所作で紅茶を飲んでいるあの少女。だが隣に座っているピンク髪の天使みたいな少女は初見だ。以前の自分の様にキョロキョロして落ち着かない様子の先生を、肩を軽く叩く事で落ち着かせ、警備担当の生徒にリボルバーとナイフを渡しながら真っすぐ見据えていると、冷たさを瞳の奥に隠しながら、どっかの誰かの様に品定めをする目つきで朗らかな顔を見せつけてくる。
「お久しぶりです、ライさん。そして初めまして、先生。」
「…‥‥久しぶり、ナギサ。」
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「へー、これが噂の先生とエージェント君かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね?」
先生とオレが席に着くと、まじまじと見ていたピンク髪がそんな事を言いだす。一体どんなのを想像していたんだか。まあオレもケモ耳や羽はともかくみんな
「なるほどー、ふーん…‥‥うん、私は結構いいと思う!ナギちゃん的にはどう?」
「…‥‥ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね。」
「うぅっ、それはまあ確かに…‥‥。」
ナギサに窘められているのを見るに、普段からこんな感じなのだろう。思ったよりゆるふわと言うか、普通の女の子っぽい。てか愛って何?キュートアグレッションとかじゃないよな?
「先生と、ええっと…‥‥‥」
「ああ、申し遅れた。連邦捜査部シャーレの
「私は先生だよ。」
「私は聖園ミカ!その…‥ごめんね?まあとりあえず、これからよろしくってことで!」
「ミカだね。こちらこそ、よろしく。」
「…‥‥‥ふふっ。」
自己紹介と挨拶を流れで済ませたピンク髪もといミカがナギサに向かってドヤ顔をみせつけると、ナギサは呆れたような関心したような複雑な表情になる。そして軽く咳ばらいをして話を進め始める。
「…‥‥‥トリニティの外の方が、このティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶ではお二人が初めてです。普段は、トリニティの一般の生徒たちにも簡単には招待されない席でして…‥‥」
前回オレが訪れたのはヒフミの仲介あってのものだからそういう事になるのか。…‥‥‥ヒフミさんってやはり凄いのでは?もしや時期ティーパーティーのホスト候補とか派閥の重役だったりする?
「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい!恩着せがましい感じー!」
「…‥‥失礼しました。そういった意図はなかったのですが…‥‥それがさておき、ミカさん?」
「あー‥‥‥ごめん、大人しくしてるね。できるだけ。」
ナギサに睨まれたミカはバツの悪い顔で少し縮こまる。というか、さっきの話だとこの子も一般生徒じゃないはず。ティーパーティーのホストの内の一人なのか?
「…‥‥では、改めて。こうしてお二人をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして。」
「お願い?」
やっぱり。お偉いさんがただお茶しばいてお話ししましょう、なんていう訳がない。それも直々に伝えようというのだ。それは一体______
「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!?もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの?ちょっとした小粋な雑談とかは?天気が良いですねとか、昨日は何を食べたのですか、とか。そういうの挟まないの?ほら、ティーパーティーって、基本的には社交界なんだし?」
「…‥‥‥‥」
「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメ―!きちんとしないと!」
「ミカさん、そういったことはあなたがホストになった際に追求してください。今は
「…‥‥‥まあ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではない事は確かですね。…‥‥そうですね。ミカさんの言う通り、少し話の方向を変えましょうか。」
「…‥あなたが、トリニティの生徒会長なんだよね?」
2人の”論争”が一段落した所で先生が話を切り出す。こういう所は流石だと思う。オレは苦手だ。
「おお、先生の方から空気を呼んでくれた!ほら、ナギちゃん見た!?これが大人の話術だよ!自然な会話への誘導!」
「…‥‥‥はい。仰る通り、私たちがトリニティ総合学園の生徒会長
「たち?」
「トリニティは代々複数の生徒会長と行政官らで生徒会を運営している、でいいんだっけ?」
「その通りです。昔……”トリニティ総合学園”が生まれる前、各分派の代表たちが紛争を解決する為に
「あれ、ナギちゃん無視?もしかして無視かなー?おーい?ちょっと傷つくんだけどー?」
「パテル、フィリウス、サンクトゥス…‥それら3つの学園の代表を筆頭にティーパーティーを開き、和解への流れが生み出されたのです。」
ここら辺はある程度調べたり聞いたりした通りだな。にしてもキヴォトスの歴史か‥‥そういえばトリニティには大きくて古い図書館があるんだったか。今度行ってみようかな。
「ひぃ‥‥‥ぐすん。ナギちゃんが本当に無視した……嫌がらせだぁ…‥‥ひどくない?私たち一応十年来の幼馴染だよ?こんなこと今までに…‥‥結構あったかもだけど…‥‥。」
「…‥‥‥それがきっかけで、トリニティの生徒会は”ティーパーティー”の呼ばれるようになったと。」
「はい。そして各派閥の代表たちが順番に”ホスト”を…‥‥‥ああもう、五月蠅いですね!?」
「ひぇっ‥‥‥。」
ナギサが丁寧に説明している横でずっと小言を言い続けているミカに、とうとう痺れを切らしたらしい。
「今、私が説明をしているんですよ!?」
「それなのにさっきからずっと!横でぶつぶつぶつと‥‥‥!」
「どうしても黙れないのでしたら、その小さな口に‥‥‥
ロールケーキをぶち込みますよっ!?
」
「「「…‥‥‥‥。」」」
「‥‥‥あら。私ったら、何という言葉遣いを…‥失礼しました、先生、ライさん…‥‥ミカさんも。」
「いやー、怖い怖い…‥‥。」
「…‥‥‥ふっ。」
「ライ?」
「…‥‥ロールケーキをぶち込みますわよって…‥‥んくくくっ!!」
ユニークすぎるだろキレ方と制裁がさぁ…‥‥!
「ライがツボってる!?嘘!?」
「こんなの、笑うしか……ふ…ふっ、はっ…‥‥!」
「わーお……ビビるどころか笑い始めるなんて…‥‥‥」
「…‥‥‥‥…‥‥‥ふっ。」
「…‥‥ナギちゃん?」
「…‥…いえ、何でもありません。ライさん、大丈夫ですか?」
「ふふははっ!‥‥‥ふぅー……すみません、醜態を‥‥‥。」
…‥‥どうしよう笑いすぎた。普通に失礼なことしちゃったよどうし……‥‥
「いえ……‥そろそろ本題に入りましょうか。」
ん?何か今、ナギサの顔が緩んだような……え、何だ?…‥‥いや、後だ。今は仕事だから。切り替えよう。
「私たちが先生にお願いしたいのは、
「簡単だけど、
「はい、そうですね。」
「簡単で、重要な事?」
「…‥‥‥‥”補習授業部”の、顧問になっていただけませんか?」
・ライ
意外と情緒不安定気味。自他共に普段から大笑いすることはないと思っているが、今回
は謎のツボに入ったのと精神的な揺らぎがあったため堪えきれなかった。本当にごめんなさい。
・先生
大笑いしている同僚が珍しくかなり動揺。でも子供っぽいところを見れてちょっと嬉しい。意外と可愛いかもしれない。因みに紅茶の作法についてライに前日に叩き込まれた。
・ナギサ
つい大声でキレてしまった自分がはしたないと思っていたら、突然笑い出した男の人にびっくり。でも嫌な気はしなかったし、むしろ何故か安心した自分を不思議に思っている。
・ミカ
キレた幼馴染を前に突然笑い出した男の人に驚きとある種の尊敬を覚えた。恐らくナギサとミカはこれまでの生徒達とは明らかに異なった第一印象をライに持つことになった。