「ハスミ久しぶり。」
「はい、お久し振りです、ってライさん!?どうしてここに!?」
立てこもり現場に到着して直ぐに現場にいる
「別件で来てたからついでにな。で、状況は?」
「…‥‥現在、ある生徒があちらの倉庫で正義実現委員会を相手に籠城中です。既に2時間以上経過していまして…‥‥」
にしては随分手こずってるな。催涙弾1トン爆破されたとは聞いたけど。
相手は一人かつ倉庫という閉所だ。ハスミの狙撃能力が十分に生かせないとしても物量でどうにかなりそうだが。そんなに強い生徒なのか‥‥‥?
「で、その生徒はどんな子?強いんだろうけどさ。」
「最近転校してきた生徒なのですが、強い‥‥というより手練れや巧いと言いたいところですね。ブービートラップや
ゲリラ戦法とは一般的に劣勢かつ少数の戦力で戦う為の非正規戦術。正面戦闘を避け、奇襲や待ち伏せ、地の利を生かした消耗戦・神経戦を仕掛け、無駄な事を強いさせるという、ダーティであり合理的な戦い方だ。弱者・卑怯者の戦術、と揶揄する者もいるが実際は優れた知識・判断力・精神力を求められる奥の深い戦い方だ。アビドスでの戦いでもしばしば似たようなことはしたが、こちらはより本格的。あちらより
「へぇー‥‥トリニティのお嬢様でゲリラ戦ねぇ‥‥」
「まあ、
「…‥‥転校生?」
キヴォトスにおける学校は”外”での国家に相当する故に転校はかなり珍しいと聞いたのだが。まあそれは後程聞いてみるとしてだ。
「…‥‥今、中に入ってる正実は?」
「先程離脱したのでいませんが…‥…あなたまさか……」
「…‥‥よし。」
驚きを通り越して呆れたようにオレを見るハスミと意味を分かっていない周囲の委員たち。
「ちょっとお話してくるからさ、暫く撃たないでくれない?」
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「シューッ、シューッ‥‥‥」
この倉庫に籠城し正義現委員会に対するゲリラ戦を開始してから2時間以上、もうしばらくすれば3時間が経つ。
倉庫の地形や物資を利用し、
とはいえ、だ。
ゲリラ戦は突き詰めれば如何にして相手の不意・弱点を突いて疲弊させることが出来るかだ。いくらこちらの方が強ても物資は有限、時間は過ぎる一方。必ず底は見えてくる。弾が無ければ銃は使えない、武器や罠がなくても不意はつけるがそれだけ。あっという間に物量で圧倒されるだろう。
だがそれは、諦める理由にはならない。最後まで死力をつくし、1人でも多く道連れにする。それが今、自分がすべきことだとこの胸にしっかりと刻みこみながら、合間に小銃の点検をしようとすると違和感に気付く。
「…‥…‥静かすぎる。」
正義実現委員会が突入したり外からの牽制や降伏勧告、銃声や爆発音も、自分以外の誰かが近くにいる音もしなくなっている。静かすぎるのは不自然なのだ。街中でも、学校でも、そして
「…‥‥‥…。」
感覚を研ぎ澄ませて周囲を警戒しながら手の感覚だけで弾倉や薬室を確認し、即座に撃てる状態であることを確認する。
「…‥‥‥まさか、倉庫ごと爆破する気「こんにちは。」……!?」
真後ろから聞こえた声に驚きながらも長年の訓練により半ば反射で体が動き、遮蔽物に身を隠す。
遮蔽から少し顔を出すとそこには黒いコートを着た人間が武器を構えずに立っていた。音も気配も無く、あっという間に背後を取られた事、そして聞きなれない男の声である事にも驚きながら小銃を男に向ける。一体どうやってここまで…‥‥‥
「いやぁ、キヴォトスに来てからこんなにしっかり仕掛けてるのは初めて見たよ。あの人数相手とこの時間でやったにしては上出来も上出来。すごいね。」
その考えにタイミングよく男が
男が手に持っているのは私が作った即席爆弾とワイヤーによるブービートラップだったもの。それは、至る所に仕掛けた罠をあっさり解除しながら来たという証拠であり、この男が只者ではないという証明である。
「正義実現委員会、ではないな。何者だ?目的は?」
「オレは真道ライ。君と話しに来た。所で名前聞いても良い?」
「…‥‥‥白洲アズサ。話す事なんてない。私は最後まで戦う。」
「オレは戦いたくないね。ほら、オレヘイロー無いんだよね。一応このコート防弾だけど割と痛いんだ。…‥‥んで、何で正実とドンパチやってるんだ?」
「先に仕掛けたのはあいつらだ。やられたたらやり返す。前からこの倉庫の構造と保管物資は使えると思っていたが、思わぬ所で役に立った。偵察と地形把握は重要だ。」
「一体どっから…‥‥‥‥‥前の……じゃないんだから…‥‥‥」
何やら頭を抱えてブツブツ言っているがよく聞こえないし、ここまで来た、来れたという事は放置しておいては面倒になるし弾も少なくなってきている。早急に対応するべく、私は小銃のセレクターを
「頭じゃないんだ。優しいんだね。」
僅か数m前の男が倒れる代わりに、男の前で金属音がなり火花が散った。
「!?」
今、何が起こった?何をした?この男は、いつ拳銃を抜いた?
「くっ!!」
狼狽えながらも後退しながらセレクターを
私は身を屈めて全速でその場を離脱し狭い通路へ場所を変える。一見すると逃げ道も隠れる場所もないが、実際は配管や鉄骨を利用する事で思わぬ方向からの奇襲や罠の使用ができるゲリラ戦にはもってこいの地形だ。男は抜いた銃を撃つ様子もなくただ真っすぐこちらを追いかけている。少々気がかりではあるが、ここで落とさせてもらう。
「…‥‥3‥‥2‥‥1‥‥!」
男が通路の中央に近づいたタイミングで振り向き、スモークグレネードを転がしながら小銃を連射。予想通り身を屈めたり銃を射線上に置いたりして防がれたが、妨害されることも逃げられることも無く煙幕が広がり視界が悪くなる。その隙に柵や鉄鋼を伝って通路の下に潜り込みつつワイヤーを引いて簡易的な罠を設置、瞬時に回り込む。これで…‥‥
「はい、そこまで。」
小銃を構えた先に男の姿はなく、代わりに後頭部に固いモノ、恐らく銃口が当たりこの場にそぐわない穏やかなな男の声が聞こえる。煙幕で視界を遮っても、ワイヤーで逃げ道を塞ぎ行動を妨害しても、背後を逆に取ったとは…‥‥。
やはりゲリラ戦術を駆使してもこの男を倒す事は難しいようだ。だが、この距離・この閉所ならまだ接近戦で道連れまで持って行けるかもしれない。しかし、銃弾を軽々と銃身で弾くこの男がそんな事をさせてくれるのか?一か八か…‥‥
「取り敢えず武装解除しろ。一旦丸腰で話し合おう。」
後頭部に突きつけられた銃口が離れた瞬間、私は半歩引いた足を軸に回転し、その勢いで銃床を男に突き出すように振りかぶる。予想通り男は半歩下がり回避するが、僅かな距離と時間を得ることが出来た。銃床から突き出した小銃を回転させて胸に引き付ける様に構え、重心を僅かに下げる。
「…‥‥!」
先手を取ろうと動く寸前で互いに動きがほぼ同時に止まる。小銃か拳銃かという違いはあれど、互いに全く同じ体勢を取っているのだ。同じ組織、集団、枠組みに属しているのなら訓練内容や想定、戦術の観点からも似たような動きになりやすい。私はトリニティの転校生という事にはなっているが、私の戦闘技術はあそこで
「シューッ、!!」
まずは、この状況を切り抜ける‥‥…!
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何だ、これは。この生徒の動きは、なんだ?
ガスマスクで顔は見えないがこの生徒とは初対面のはずなのに、この構え、視線、射撃タイミング、足捌き。一挙手一投足に覚えがある。予測するまでもなく、その銃撃を、拳を、肘を、脚を、組み技を、フェイントをどうすればいいのか直ぐに分かる。
それもそのはずだ。オレはこの動きを知っている。幾度となくこの目に焼き付けこの身体に刻み付けた、
何でこの子がそれを知っている?偶然にしては余りにも似すぎている。今こうやって接近戦をしているが、あっちは必死で真剣だろうに。オレは懐かしいと思ってしまっている。
色々と聞きたいことが増えてしまったようだ。この後は正実に任せるつもりでいたが、もう少し首を突っ込ませてもらう事になりそうだ。
流石にオレとこの子では練度に差があるのか、籠城戦による疲労なのか徐々に綻びが見え始めている。
「悪い、な…っ!」
一瞬の隙を突いて腕を絡めとり、足に蹴りこんで回しながら体勢を崩させる。その間に拳銃をトンファーの様にも使えて鳩尾に拳とバレルを叩き込む。意識は奪えないにしろ、それによって生まれる確かな隙にコートの左手首辺りに組み込まれたワイヤーを射出し瞬時に拘束。ついでに小銃からマガジンを外し、薬室からも弾丸を抜いてキャッチ。
「ふぅー…‥‥‥こちらライ。対象を拘束。倉庫左の壁を伝って上から入ってきてくれ。まだ罠があるはずだから気を付けてくれ。」
待機してもらっている正実に連絡をとりながら抵抗を続けるガスマスクを関節技とワイヤーの併用で抑え込む。一応服の上から使っているから切り傷などは心配ない。にしても、思いのほか使いやすいなコレ。必然的に左腕に負担があるのは仕方ないとしても、まだまだ使い道がありそうだ。
「…‥‥‥‥‥はぁ。」
ちょっとだけ、楽しくなってしまったな。同時に寂しさも。
「面白い事になりそうだよ…‥‥。」