アビドス自治区・カタカタヘルメット団前哨基地。
12ゲージ散弾が、5.56mmが、7.62mmの雨が次々とヘルメットをたたき割られていく。
相手も負けじと小銃を乱射するが事前に分かっていたかのように射線を切られ、挟み撃ちをしようとも、盾や遮蔽で身を守り、ドローンのミサイルで吹き飛ばされ、重々しいマグナム弾が銃を的確に破壊する。
必死の抵抗むなしく、徐々に押し込まれていくヘルメット団。容赦なく攻めたて、拠点を破壊していく対策委員会と黒コートの姿は、きっと悪魔か何かに見えたことだろう。
‥‥‥ん?あの赤服のヘルメットは…‥‥
「お前は、さっきの!アビドスのスパイだったのか!?」
いや、拠点の場所はバレてたみたいだし、そもそも道を聞いただけだし。
「あらかた拠点も壊しつくしたみたいだし、お仲間もボロボロだよ?降参しない?」
「畜生がぁ!!!」
善意の忠告虚しく、怒りに任せて乱射してくるが、弾は逸れるように自分の周りを通っていく。感情任せの射撃なんて照準もあったこっちゃない。
相手が弾を撃ち尽くし、リロードをしようとした瞬間に銃の横っ腹に一発撃ち込むと、手から銃が離れる。要修理だろう。多分バレルが逝った。ごめんね。
「あっ!?ま、待って、ちょ」
続きを遮るように右わき腹に一発。いくら体が頑丈でも肝臓に強烈なショックを受ければ、激痛と不快感に襲われてきついだろう。
「撤退だ!撤退!覚えてろ!!」
『カタカタヘルメット団の退却と弾薬庫、補給所、アジトの破壊を確認。』
「これでしばらく大人しくなるはず。」
「よーし、作戦終了。みんな、先生、ライ君、お疲れー。」
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先生の指揮の下、カタカタヘルメット団の拠点を潰すことに成功したオレ達はアヤネの運転で校舎に戻っているが、残党や他の拠点があることを懸念して遠回りしている。荷台は行きと変わらず、ホシノとオレになったので目を凝らして索敵しているがそれらしきものは見当たらない。
まあ、この機会にアビドスの地形や道をある程度把握できるのでオレにとっては無駄ではない。
「そんなに真面目に探さなくてもいいよー。しばらく奴らも大人しくしてるだろうし。」
狭い荷台の中を振り向くと、すぐ隣で自分の散弾銃の状態をチェックしているホシノが言った。
「もう彷徨いたくないからね、道を覚えてるんだよ。そういう君だって、真面目に点検してるじゃないか。」
「いくらおじさんでも、武器は大事にしないとだからねー。」
…‥‥‥どこまで本気でどこまで冗談なんだろう。今すごく真顔だし。でも自称がおじさんだし。
しかし、だ。
彼女の散弾銃は色こそ可愛らしいが、エクステンションにシェルキャリアと、割と実践的なカスタムと丁寧な整備、そしてそれでも残ってる細かい傷や跡、古い銘刀のように発している独特の圧が、
小鳥遊ホシノの確かな実力と人柄、覚悟を現している。
「…‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥にしてもいい銃だな。見た感じ操作性も良さそうだし、慣れれば片手だけでも十分扱えそうだ。
「そんなにジッと見られると、おじさん照れちゃうな~。」
「‥‥‥ああ、ごめん。いい銃だと思って。」
「‥‥え、そっち?それはそれでどうなのさ‥‥‥」
そりゃあ銃は気になるだろ。男の子なら大抵そうだと思うし、命を預ける武器に人柄
は映ると師匠も言っていた。
‥‥‥そうか。愛銃は自分の体の一部だしな。まじまじと見られたくないのかもしれない。キヴォトスって銃が当たり前だから、一種のセクハラ・‥‥なのか?考えすぎだろうが、気を付けておこう。
「‥‥‥君の銃は、結構変わってるよね。余り見たことないや。」
勝手にまじまじと見たからお前も見せろって事?
そうなのか?んじゃあ、点検がてらホルスターから抜くか。
全長30㎝近い銀色のリボルバー。下部銃身の重厚なバレル、フィンガーチャネル付きのグリップ。ハンマーじゃなくてコッカ―。
‥‥‥確かにゲテモノの類かも知れない。普通に使う分には持て余す代物だ。たまにオートマチックが羨ましくなるけど、それでも。
「‥‥‥…良い銃だろ?」
見せつけるように持って、わざとらしく笑ってみる。オートマチックの方が利点は多いし便利だ。それでも、オレはコイツがいい。独房で目が覚めた時、コイツが無くてどれだけ焦ったことか。
「…‥‥‥そうだね。」
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「ただいま~。」
「みんなお疲れ様。」
「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです。」
対策委員会の教室に戻ってきて安心した様子で座る面々。オレも安心したよ。先生は無傷、弾も余り使わなかったから出費も実質的に抑えられたし。でも帰ったら書類たまってるだろうな・‥‥。
「先生、帰ったら…‥分かってますね?」
「…‥‥‥‥‥‥‥うん。帰ったら、部員の件も思いついたことがあるから、それについても準備するよ。」
遭難中に考えてくれたのかな?まあ、人手が増えるならありがたいし、是非とも。
「これでやっと、重要な問題に集中できる。」
ただでさえ人がいないところだ。ヘルメット団のせいで当分できていなかったことも山ほどある訳だろう。頑張れ対策委員会。先生とオレはデスクワークを頑張るよ。
「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!
ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」
おいセリカ、ナチュラルにオレを省くな。まあ、大したことはしてない……‥‥ん?
「「…‥‥‥借金返済って?」」
「‥‥あ、わわっ!」
わわっ!じゃねえよ?デスクワークより過酷かつ大事じゃねえかそれ。先生の口がふさがらないじゃねえかよ!
「そ、それは‥‥‥」
「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし。」
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?ライ君も、さっき私たちを手伝ってくれたし、いいんじゃなーい?」
「ホシノ先輩の言うとおりだよ、セリカ、二人は信頼していいと思う。」
「そ、そりゃそうだけど、先生もライも結局部外者だし!」
その部外者に助けを求めてきたんだろ?いきなりなんだこの子。ホシノは表向きだけでも友好的なのに、取り繕う気もないのか…‥‥。さすがにどうなんだそれ。
「確かに先生達がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は先生くらいしかいないじゃーん?悩みを打ち明けてみたら、何か解決法がみつかるかもよー?先生が駄目ならライ君だっていいわけだし、それとも他にいい方法でもあるのかなー、セリカちゃん?」
「う、うう‥‥‥で、でも、さっき来たばかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことあった!?」
「でも、シャーレに支援要請を送ってくれたよね?それなら‥‥」
「私たちの学校の問題は、ずっと私達だけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更‥‥」
「私は認めない!」
「セリカちゃん!?」
「私、様子を見てきます。」
「えーと、ごめんね?いつもは、あんな感じじゃないんだけどね?」
「…‥‥‥どういう事だ。説明してくれよ。」
「私も、詳しく説明してほしい。」
「えーと、簡単に説明すると‥‥‥‥この学校、借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ。」
オレは聞いたことないが?
「で、ぶっちゃけいくらなの?」
「その、実はそれが問題で‥‥‥‥」
「ホシノ?なんか冷や汗かいてるけど大丈夫?」
「‥‥‥うん。その金額なんだけど、」
「‥‥‥‥‥‥‥‥9億円ぐらいあるんだよねー。」
〈連邦捜査部 情報アーカイブ:アーバレスト〉
・ライがキヴォトスに来る前から愛用している銀色の大型リボルバー。下部銃身という変わった構造をもつが、ライの技量もあってその名に違わない威力で正確に目標を撃ちぬく。
・トーラス・レイジングブルとキアッパ・ライノ マッチマスター6を組み合わせたようなデザインで、シリンダーは円型のノンフルート。操作系はライノなので、ハンマーではなく、コッカ―。