我が身が至高の宝なり   作:残念G級

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ガチアクタ大好きなのでのんびり気ままに書いていきます


第1話

世界はゴミに埋め尽くされていた。

空からは、天界という遥か高い世界から奈落という漆黒の穴へと落とされたゴミが、まるで雨のように降り注ぎ、

大地は、その無限に降るゴミたちで埋め尽くされ、大部分がひどく汚染されていた。

その汚染レベルはひどく、専用のマスクなしで呼吸をすればほとんどの者が15分で死に至る。

そんな地獄とも言えるこの世界は、上の世界を天界というなら、この世界は下界と言える。

大気中の空気はどこか薄汚れており悪臭が漂い、見渡す限り存在するのはゴミのみ。

もはや死界と成り果てた汚れた世界に、一筋の光が差していた。

 

その中心には、一面ゴミだらけのこの汚れた世界には浮いて視える、とても綺麗な恰好をした二つの人影が歩いていた。

背丈の差が目立つその二人組は慣れた足取りでそのゴミの大地を直接歩く…のではなく、なんとゴミの大地から1mほど上の位置を歩いていた。まるでそこに普通の地面があるかのように、空を踏んで歩いている。

 

「はぁ…エンジンの奴、何が『逸材見つけたから来い』だ。この(オレ)に命令とは、いつからアイツはそこまで偉くなった?男に帰って来いと言われても気色悪いだけだ。久しぶりに会いに行ってやったのにすぐ帰る羽目になりダダを捏ねられるこっちの身にもなれんのか」

 

背の高い人影が、明らかに不機嫌ですというような声音で話す。黒一色にまとめられた服装に映える、空を歩くたびに揺れる長い金色の髪が光に反射してキラキラと輝いていた。宝石のように綺麗な赤い瞳、そして声を聴かなければ男とわからないだろうほどの美しく整ったその容姿は、まるで物語に出てくる王子様のように美しかった。

 

「…王様、おこ?」

 

対して、背の低い人影が首を傾げる。高い方とは対照的な銀髪の髪を靡かせ、王様と呼ばれた人物と同じ赤い双眼が上目遣いで隣の人物を見上げる。こちらもまた人形の様に整った容姿を持っているため、二人並んだ姿はまるで一枚の絵画のような神秘性があった。

 

「当たり前だ。たかがそこらで見つけたのだろう人通者(ギバー)を、そう簡単に逸材だと断言してしまっているあいつの頭がうざい。例えどんな能力だろうと我に並ぶ者は居ない。それが分かり切っているのになぜ帰らなければならん」

 

「…きっとエンジンは王様に会いたがってるの」

 

「…想像したら気持ち悪すぎて思わず胃の中をばらまきそうになった。バツとして、帰った後のシャンプーは自分でやれよ、ルミル」

 

ルミルと呼ばれた小柄な少女は王様の発言に絶望という言葉が似合うほど顔を真っ青にして落ち込んでいる。

このままでは不味いと悟ったのか、ルミルは手を合わせ拝むようにして王様を見つめる。

 

「…王様は優しいから、きっと慈悲をくれるはず」

 

「なら、道中の雑魚はお前が掃除しろ」

 

「…ん。頑張る」

 

なんとか最悪の罰は免れたか、と安心し一息吐くルミル。それから王様の腕に抱き着くように絡めると、そのまま二人はゴミの世界を歩き進んでいった。

 

 

 

────────────

 

 

 

「があっはっはっはっはっはっはっ!」

 

街を走る一台の車から笑い声が響く。

 

「お前らっウンコ飛ばして勝負してたってっ!そんなん聞いたこともっ…ぐっぶわぁっはっはっはっはっはっ!」

 

車内で絶え間なく笑い声を響かせる男─エンジンは後ろの席にいるザンカとルドに視線を移しては先ほどまでの二人のやり取りを聞いては思いだし吹き出していた。

ザンカは自分の宝物を勝手に使ったルドに怒り街中で戦闘。ルドが武器として使った物がトイレで使用するスッポンで、そのスッポンから溢れるウンコを飛ばすルドとひたすら逃げるザンカという構図が完成し、決着がついた時にちょうど二人を迎えに来たエンジンが出くわした、という感じだ。

 

"ウンコで戦う”という幼稚でおかしい戦いがエンジンのツボに入ったらしく、二人を回収した後もしつこく笑い飛ばしていた。

それからエンジンは、掃除屋の新人になるルドの教育担当になるザンカを改めて紹介し、話は次へ進んだ。

 

「んでよぉ、いつの間に来てたんだよ、リヨウ」

 

エンジンたちは視点をザンカたちが座る席のさらに後ろのトランクルームへと移す。すると、ムクッと起き上がる赤毛の髪の少女がいた。

 

「んー、ちょっと気になったってのもあるんだけど、エンジンさ、ウルとルミルにも連絡したんでしょ?」

 

「おーそういやしたな。…あーそれでか」

 

「そー。ウルたちが帰ってくるなら早く帰って綺麗にしたいからさ、ウル潔癖じゃん?」

 

「アイツの潔癖って別にお前らには…まぁいいか」

 

「なあエンジン、誰なんだよ、そのウルとルミルって」

 

リヨウとエンジンの会話に気になったルドが、エンジンにその人物たちの事を聞く。

ウルとルミル、話の流れ的にエンジンたちと同じ掃除屋というのはなんとなく理解していたルドは、これから会う人物たちの情報収集をしようと試みたのだ。

ルドの質問を受けたエンジンは渋った顔で唸りながらも二人の特徴を思い出しながら説明し始めた。

 

「あ~簡単に言えば、王様とメイド(・・・・・・)だな」

 

「は?王様とメイド(・・・・・・)?王様が掃除屋にいんのか?」

 

「いや、自称王様なだけだ。自身を王様だと疑わないナルシストで超潔癖の超女好き。んでメイドはそのまんま常に王様の隣にいる口数が少ない王様ラブな大人しい女だ。どっちも癖が強いんだよ」

 

「…大丈夫か、ソレ」

 

エンジンの説明を聞いたルドは、頭の中で二人の人物像を想像しては微妙な顔を浮かべるルド。

その顔を見て、リヨウはクスクス笑い、ザンカは頭を掻いてはルドに視線を移した。

 

「エンジンの言ったことは概ね当てはまっとるが、あまり舐めん方がええ」

 

「あ?どういうことだよ」

 

「確かにふざけた奴らじゃが、実力は本物じゃ」

 

「そーそ。あの二人は本当に強いよ。二人がケガしてる所、あたしは見たことないし」

 

「…掃除屋って何人かいるんだろ?その二人はどれくらい強いんだよ?」

 

ザンカとリヨウの話を聞いてどれぐらいの強さか気になったルドは率直な疑問を溢した。掃除屋が複数人いることはエンジンから聞いていたルドは、その二人の実力が気になっていた。

先ほどのザンカとの戦闘で、痛いほどザンカの実力を知った。自分の武器がウンコだったからザンカが逃げて偶然勝てただけで、あのまま面と向かって戦っていたら手も足も出なかったことをルドは理解していた。

それ程、強いと思ったザンカが強いと認めた二人が一体どれほどの実力を有しているのか気になったのだ。

そんなルドの真っ直ぐな眼に、エンジンはふざけずに答えるかと頭を掻いてはミラー越しにルドへ真剣な眼差しを送った。

 

「俺が実力を知っている中でだが、そうだな。…冗談なしで言えば少なくとも、掃除屋最強(・・・・・)。これが当てはまるだろうな」

 

「…掃除屋、最強(・・)

 

「会えばわかるが、癖が強い以上にあいつは強い。が、まあ後はほんと会えばわかる。ただ、一つ忠告すると、最初は不敬だけは働かない方が良いぞ」

 

「ふ、不敬?どういうことだ?」

 

「さっきの気色悪い顔とかじゃ。ルミルはともかく、ウルは醜いものと男には容赦がないんじゃ。今のお前が会えば即ぶっ殺されると思っとけばええ」

 

「誰の笑顔が気色悪いだクソ野郎…」

 

「やめろルド。言い方はあれだが、ザンカの言ってることは正しい。アイツは自分が認めた相手には甘いが、認めるまでは心底ぶっ飛んでる。最初から認められた奴は、俺の知ってる限りだとそこにいるリヨウとか他の女子組だけだ。男は漏れなく最初はツンケンしてくるから、まあ気にするだけ無駄だ」

 

「女好きすぎだろ…」

 

ぼそりと呟くルド。

一気にその王様がいる本部に行きたくなくなり、ぐったりしたのだった。

 

 

 

それからしばらく車を走らせると、目的地に着いたのか各々が降りる支度を進める。

 

「おっしゃ、着いたぞ。…ようこそ掃除屋へ」

 

目的地である掃除屋本部へと到着したルドたちは、車を降りて本部入口へと向かう。

ルドは初めて見る本部に「おお!」と目をキラキラさせていた。

すると、本部の後ろに浮いている豪華な扉を見つけたルドは、驚いた表情で指さした。

 

「お、おいエンジン!なんであの扉浮いてんだ!?秘密の空間に繋がってんのか!?」

 

「あーあれはさっき話してた王様の家に入るためのドアだな。能力で消えてるが、あそこには王様の家が建ってんだよ。王様が許可した奴しか入れないし、何なら見ることもできない。まあ気にしなくていい、あそこに入れるのは王様と女子連中が主だ。まあまあ付き合いの長い俺でも数回しか入ったことねえ」

 

「空中に浮く透明な家…すげぇ!」

 

「ほら、さっさと行くぞ」

 

スタスタと歩くエンジンを追ったルドは、その後、受付にいるセミュと話した後、掃除屋のボスと会う予定だったが、現在ボスは出張中とのことで掃除屋のボスとの挨拶は空振りに終わった。

そうして手持無沙汰になったルドたちだったが、ルドたちのもとへ来たリヨウの提案で、掃除屋見習いとして掃除屋の仕事を見学することになったのだった。

 

依頼内容は、汚染域というゴミで汚染され斑獣(はんじゅう)という化物が生息している地域付近にある町の住民から、小型の斑獣が町を守るバリケードに接近しているから掃除してほしい、というものだった。

汚染域に入るには有害物質を吸い込まないようにマスクを付けなければいけないということで、セミュからマスクを受け取ったルドは、リヨウと掃除屋の中で非能力者で構成された数人のサポーターたちと共に依頼の見学に行った。

 

「な…なんだよ。このゆるさは…。命がけ仕事なのでは…」

 

見学に行ったルドが見た掃除屋の仕事風景、それは斑獣たちがバリケードを破壊しようと攻撃している中、のんきにルドの歓迎会の話や好きな食べ物などの話をしていた。

のほほんとした空気が周囲を包むこの光景に、ルドは驚き言葉も出ないでいたのだ。

 

「下界で生きるには、心の余裕も大事なのだよ!!」

 

そんなルドの気苦労も気にせずに陽気にふるまうリヨウ。

”心の余裕“その言葉がルドに衝撃を与えた。

ルドが下界に降りてから出会ったエンジンからも心の余裕を感じていたルドは、下界で生きていくのに大切なものがなんなのか気付けたのかもしれない。

 

そんなリヨウの言葉に衝撃を受けていたルド、その時、ルドたちの前に他の斑獣よりも何倍も大きな斑獣が豪快に現れ、簡単にバリケードを破壊した。

いきなりの出来事に驚くルド、だがしかし、先ほどリヨウから下界で生きるために大切なことを学んだばかり。

 

「心のよゆう…こころのよゆう…だよな!」

 

これは先達者であるリヨウの様子を見ようと視線を移した。

 

「ヤバだね!」

 

リヨウの開口一番の発言はルドが求めていたものとは違うものだった。

心の余裕とは?とリヨウに問いただしくなるルドだったが、不意を突かれて言葉も出ない。

 

「ヒヒっ。あのでかいの掃除する前に細いのから片した方がいいね」

 

リヨウは腰のポーチからハサミを取り出すと自身の頭上へと放り投げる。

それはオーラを纏うと、巨大なハサミへと姿を変えた。

 

「…大掃除ぃぃ」

 

降ってくる巨大ハサミを片脚にかけると、まるで踊り子のように洗練された動きでハサミを振るう。

大量にいた小型の斑獣を狙って縦横無尽に刃先で切り裂いていくリヨン。

 

「うんうん、だいぶキレイになったな!あとは…」

 

あらかた小型が片付き、リヨウは次の標的へと向き直る。巨大な斑獣が口を大きく開けてリヨンを襲う。

 

「でっかいの!!」

 

巨大斑獣の攻撃を躱しながら反撃を繰り出すリヨウ。だが、どれだけダメージを与えてもしばらくして再生していくことに思わずため息を溢すリヨン。

 

「ん~さっきの光ってる部分が怪しいんだけど、どうしよっかn…ん?」

 

リヨウは再度巨大斑獣に向かおうとしたその瞬間、巨大斑獣に微かな違和感が生まれると、そのまま斑獣の巨体が綺麗に真っ二つになった。

そして斑獣の肉体がまるで王が歩む凱旋のように左右にその巨体が崩れ落ちる。

そしてその真ん中から歩いてくる二つの影。

 

「なぜこうもお前が選ぶ道はゴミが多いんだ…」

 

「…さっきセミュから連絡が来て、帰りながら依頼手伝ってって」

 

「…良い様に使われているではないか」

 

「そういうときもある」

 

「はぁ、もういい。物を回収しておけ」

 

斑獣の死骸から何かを拾い上げる美しい銀髪の少女─ルミルはとてとてと一緒に来ていたもう一人の隣へと戻っていく。

 

「今度はカッターだった」

 

「別に物はどうでもいい。それよりさっさと「ウゥ~ルゥ~!!」ん…ぐばっ!?」

 

 

突如、リヨウがもう一人の方へと頭から飛びついた。

そのあまりの衝撃に飛びつかれた者は一瞬仰け反るもなんとか耐えてリヨウを抱き留めた。

 

「おかえり~!ウル!早かったね!」

 

「ただいま、リヨウ。あのバカが生意気にも急かしたからな。灸を据えてやる」

 

「あはは!エンジンらしいね。ルミルもおかえり!」

 

「ただいま、リヨウ。…凄い笑顔」

 

リヨウの突撃にも似た抱き着きを受けとめたウルはそっと地面に降りると、その流れでリヨウも降ろしたのだが、流れるようにウルの腕に抱き着くリヨウ。

そんな彼女の事を観ていたルミルは、リヨウの表情の変化に気づき特に深い意味合いもなくツッコむと、ビクッと身体を跳ねさせる、そして僅かに頬を染めて意味深に微笑んだ。

 

「…そりゃあ、ね?」

 

「…今は譲る」

 

「おお!さすがルミルだね。やっぱ持つべきものは囲み仲間だな!」

 

「当然」

 

グッ!とサムズアップするルミルとリヨウ。そんな二人のやりとりを見届けながらも早く帰ろうと歩むウル。すると三人の下へサポーターたちとルドが合流した。

 

 

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