我が身が至高の宝なり   作:残念G級

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第2話

「ウル!ルミル!帰ったのか、おかえり!」

 

「グリスか。あぁ、今帰った」

 

「おかえり、ウル」

 

「ああ、ただいまトウム」

 

ウルたちの帰還を笑顔で迎えたグリスたち。この中で付き合いの長い方であるグリスに無表情で目を合わせて答えるだけのウル。だがグリスと同じサポーターで女性のトウムが彼に近づいて同じような言葉をかけたら、ウルは彼女の頭をポンポンっと優しく撫でて微笑む。

明らかに態度が違うウルの様子を黙って眺めていたルドは、どこか冷めた視線を彼に向けていた。

その視線に気づいたウル、その綺麗な瞳が光り輝くと突然ルドが自分の首を抑えてもがくと、ゆっくりとその身体を浮かしていく。ルドの目の位置がウルと同じ所まで上がる。

ルドの目を見た後、視線はゆっくり下へと移動し、ルドの身に付けていたグローブで止まった。

 

「見ない顔だな。…なるほど、エンジンが言っていたのは貴様か」

 

「そうそう、名前はルド。今日は見学で来たんだ」

 

ウルの言葉に答えるように隣のリヨウがルドを紹介する。

と言ってもリヨウ自身もルドと出会って間もないため、紹介できるほどのことは知らない。

そのためルドの紹介が一瞬で終わったことに、周囲に聞こえる音がルドの苦しむ声だけになる。

 

「う、ウル!ルドが苦しそうだから、もうそろそろ話してやってくれ!」

 

「ああ、忘れていた。それで、この仕事はまだあるのか?」

 

「んーん、ウルが倒しちゃった奴でおしまい!もう帰れるよ」

 

グリスに指摘されてルドを下ろしたウル。よほど苦しかったのだろう、急いで酸素を取り入れるルドだがそんな彼に見向きもしないウルは、周囲の様子を確認する。

生きている斑獣は見当たらないことからリヨウの言った通りもう仕事は終わったのだろう。

するとウルの袖がクイッと引かれ、そちらに視線を移すとルミルが見上げるようにウルを見つめていた。

 

「…お風呂入りたい」

 

「そうだな、我も良い加減風呂に入りたい。ゴミの中を歩くのはいつまでも慣れん。臭いが付く」

 

「え、そう?今もだけどウルっていつも甘くて良い匂いがするよね。好きだよ私はこの匂い。凄い落ち着く」

 

グイっとウルの首に手を回すリヨウ。身長差からウルの身が屈むと、リヨウは彼の首筋に顔を埋めて肺いっぱいに匂いを吸い込んだ。グリグリと頭を擦り付けるその彼女の様子に、見ていた全員が猫を連想した。

身を無理に屈めていたウルは腰の限界がきたのか、リヨウの背中とお尻に手を添えると、そのまま彼女を抱きかかえる。

 

「ち、ちょっとウル!?」

 

「腰が痛い。ここで話すのはあまり好かん、話すなら家だ」

 

「王様、ルーも」

 

「…はぁ。リヨウ、左側に来い。んでお前はこっちだ」

 

「やった」

 

「わぁ!片手でって、重くない?」

 

「どっちも軽いな。細いのは綺麗で好きだが、無理な食事制限は体調を壊しやすくなる。多少肉を付けてもお前らの愛らしさは変わらん。食べれるうちは食べろよ」

 

「ウルはそういう嬉しいことをすぐに言ってくれるよね」

 

「なら王様のご飯食べたい」

 

「あ、いいね。久しぶりに食べたい」

 

「まずは風呂。その後なら軽く作ってやる」

 

ウルの承諾を得て上に乗る二人は嬉しそうにきゃっきゃと騒ぐ。

そんな彼女たちの声を聴いて、僅かに口元が緩んだのだった。

 

「ゲホッ!はぁ…はぁ…なんだよアイツ!何しやがった!?」

 

遠くなる三人の後ろ姿、特にウルの背中を睨むルド。そんな彼の背中を摩って落ち着かせようとするグリスは、苦笑いを浮かべながらその疑問に答えた。

 

「アイツの名前はウル。俺よりも前から掃除屋にいる古株メンバーの一人。俺も詳しくは知らないんだが、なんていうか、少し変わったやつでな」

 

「変わりすぎだろ、あの女好き野郎!」

 

「し、知ってたのか?」

 

「エンジンから聞いたぁ!くそ、マジでさっき俺になにしたんだよ!?」

 

ルドは自分の首を抑えて先ほどの出来事を思い出しては理解できない現象に戸惑いと怒りが混ざり合っていた。

今度はそれを観ていたトウムが、膝を折って座ると、ルドに水筒を差し出した。

 

「ウルがごめんね。私はトウム。ウルとは時々仕事の話を聞いてもらったり、斑獣との戦闘においてのアドバイスなんかを聞いてもらったりしてるの。よろしくね」

 

ルドはトウムが渡してくれた水筒をおずおずと受け取り水を飲む。一気に高まった緊張感からか喉が渇いていたルドは一気に中の水を飲み干していく。

 

「あ、ありがと……お前は、あっち行かねえのかよ」

 

「どういたしまして。私はこの後もやることがあるから今は行かないかな。後で顔は出しに行くと思うけどね」

 

「なんなんだよアイツ」

 

「なんなのか、か。私もウルと本格的に関わるようになったのは最近だから詳しくはわからない。それこそ人器も」

 

「なんだ、トウムはウルの人器を知らないのか?」

 

「前に聞いたことがあるんだけど、正直よくわからなくて…」

 

「まあ確かにウルとルミルの人器は他と違いすぎるからな」

 

「ルミル?あの横にいた女か」

 

「そうだ、名前はルミル・ロロルロイ。いつもウルの隣にいる」

 

「…なあ、あいつらの人器…宝物ってなんだ」

 

「それは本人に聞いた方が、「そうだな、あの二人の人器は」…え、教えるの?!」

 

サポーターは人通者ではない。そのため、自分のものではない他人の人器を他に教えて良いものか、そこらへんの感覚が人によってかなり差がある為、トウムは悩んでいた。

だからか、二人の人器を聞いたルドにトウムが他人が教えて良いものかと悩んでいると、横からグリスが普通に答えようとしたことに驚いた。

 

「前にあいつの話になって言ってしまったことがあるんだが、特に何も言われなかったからな。それに今回は初対面であんなことをしたウルが悪い」

 

「まあそれは…確かに」

 

「なにかあったら俺が責任取るさ。それでルド、二人の人器だったか?」

 

「あ、ああ。でもそれであんたがあいつになんかされるなら…」

 

「大丈夫だ。ウルはそんなに悪い奴じゃない。と言っても、俺もあの二人とそんなに関りが多いわけじゃない。二人が行く仕事は基本あの二人以外に同行者はいないからな。まだ見かける回数が多いのはリヨウとギータ。次にエイシアか」

 

「けッ!やっぱ女好きじゃねえか」

 

「あはは…本人曰く、綺麗なものが好きだからそうだ。まあそんなことは今はいい。それで二人の人器なんだが」

 

グリスは右手を自身の胸を指さした。二人の人器の話をしていたことから指した場所が彼らの人器なのだろう。

ルドは先ほどウルたちの服装を思い出すも胸にアクセサリーなどはなかった。

ならば一体なんなのか。人器とは簡単に言えばその人の宝物だ。ずっと大切にしていた物に力が宿る。

なのにその物が無いのに人通者になることはできないはず、人通者となって間もないルドでもエンジンからざっくりと説明されたから少しは理解していた。

ならあの二人の人器は一体なんなのか。いつまでたっても答えが出ないルドは諦めてグリスに答えを求めてた。

すると、グリスはわからなくて当然だと笑って答えを告げた。

 

「あの二人の人器、それは…自分自身(・・・・)だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウー、気持ちいい」

 

「当たり前だ。我がやっているんだからな」

 

「ウルってホント上手いよなー。一回やってもらっちゃうともう自分でじゃできなくなる」

 

「いや、やれよ」

 

「まあまあ、ルミルの終わったらやってあげるからさ。前にきもちいいって言ってくれてから自信でてきたんだよね」

 

「ならそのまま自分で…わかった。そんな嫌な顔するなリヨウ。いるときならしてやる。だから我のを頼むぞ」

 

「まっかせてよ。たくさん気持ちよくしてあげんね」

 

「ウー、浸かりたい」

 

「なら流すぞ。目瞑っとけ」

 

「…ん」

 

シャンプーで泡だらけになったルミルは両手で自身の目を覆い隠す。するとその泡だらけの髪をシャワーで流すウル。そんな二人の様子を目を細めて気持ちよさそうに眺めるリヨウ。現在三人はウルの家で仲良く風呂に入っていた。

リヨウは先に身体を綺麗にして浴槽に浸かって待機し、ウルはルミルの髪を洗う。それが終われば今度はリヨウがウルの髪を、と順番にやるのはこの三人で風呂に入る時のお決まりだ。

ウルとしては時には一人でゆっくり入りたいと思うのだが、どうしてもウルが入るタイミングになるとこの二人は何かを察知するのか乱入してくる。今は仕事でいないが、チャイルド所属のギータも乱入率は高い。というか、ウルたちがいない時でも彼女はこの家でくつろいではウルの部屋で生活していることが多い。

もはや自分ひとりの時間というのが無いウルだが、その相手もルミルやリヨウやギータなどといった綺麗なもの達ならなんら苦ではないのだろう。

この時間もそれはそれで落ち着くためウルは気に入っているのだ。

 

「身体は自分で洗えるな?」

 

「ウーがやってくれるなら待つ」

 

「お前は我に仕えているんじゃ…はぁもういい。風邪を引くからそのまま一旦お湯に浸かっていろ。リヨウの髪を洗ったら交代だ」

 

「ん。わかった」

 

ルミルは軽い足取りで大きな浴槽へと向かった。よっぽど嬉しいのだろう、鼻歌まで歌っている。

そして交代でリヨウが出てくると二人の話を聞いて明らかにショックな顔を浮かべていた。

 

「え、じゃあ私もやってもらえばよかった」

 

「リヨウは自分でやってくれ」

 

「なんでよ。ルミルはよくてこっちはダメって酷いじゃん」

 

「ルミルはもうずいぶん前からこれで慣れてる。だがお前は違うだろ…」

 

「今更な気がするんだけど?」

 

「それとこれとじゃ話が違う。我も男だ、わかれ」

 

「それはもう深く(・・)知ってるよ」

 

ウルの髪を洗うために後ろに座ったリヨウは、そのままウルの背中に抱き着いた。

肌同士が密着し、一切の隙間が無くなる。

 

「変な言い回しはやめろ」

 

「ねえ、ウル」

 

「…なんだ」

 

「この首の後ろのヤツ、なに?」

 

リヨウはウルの長い髪をかき分けうなじを曝け出すと、そこにある赤紫色の痕を見つけて語気が強くなる。

 

「まあまあ最近のやつだよねこれ。それだけでエイシアとギータじゃないことはわかった。それにこの大きさは前に見た時と一緒だね。良い加減外で会ってる奴教えてくれない?」

 

それに対し、ウルは特に隠すこともせず、話し始めた。

 

「教えてどうする。前にも言ったが、我は誰の物になるつもりはない。この世界で我より上の存在は無く、我を縛るものはない。今のお前に教えると、なにか危ない気がすると我の勘が言っている」

 

「…そんなことないよ。ちゃんと仲良くするよ」

 

「リヨウは嫉妬してるだけ。これはウーが悪い」

 

「ちょ!ルミル!?変なことは…」

 

「隠しても事実は事実。確かに外でウーはその子と身体を重ねてた、それもまた事実」

 

「…へえ?」

 

「リヨウのスイッチが入った」

 

「お前が入れたんだろ。…わかった、もうそろそろ頃合いだろう。今度会わせる」

 

ウルの脇の下から手を回し、肩に頭を押し付けるリヨウ。何か納得してないのか小さく唸っている。

 

「足らないなー。まだ当分機嫌は直らないかも」

 

「はぁ…。一つだけだ、出来ることをしよう」

 

「んー、もう一声!」

 

「おい」

 

「一声!」

 

「お「こえ!」…二つ」

 

「わーい、交渉成立」

 

悪戯な笑みを浮かべて喜ぶリヨウ。ウルは思わず自分の身が一体どうなってしまうのだろうかと一瞬不安に思うが、相手がリヨウということもあって彼女が喜ぶならまあ別にいいだろうと切り替える。

するとよっぽど嬉しかったのか再度背中から抱き着くリヨウに、ウルは彼女の頭を撫でる。

ニシシッっと耳元で笑うリヨウはそのまま真横にあったウルの形のいい耳をパクっと口に咥えた。

一瞬ウルの身体が跳ねたことに気づいたリヨウは目を細め追撃と言わんばかりに舌で耳の形をなぞった瞬間、ウルの身体が黒と金の混ざったオーラに包まれると、リヨウの頭に見えない衝撃が降り注いだ。

決して痛くはないが、思わず不意に痛いと言ってしまうぐらいの衝撃。

流石にやりすぎたか、とウルから離れて彼の髪を洗うためにシャンプーを手に取ろうとしたとき、リヨウの視界端に真っ赤になったウルの耳が映った。

それを見て再び悪戯な笑みがリヨウに蘇った。明らかにウルの赤みはお風呂による血行がよくなってのものじゃなく、先歩の行為により起きたもの。

それをリヨウは瞬時に察知したのだった。

 

「ウ~ルゥ?」

 

「…なんだ」

 

「耳、赤いけどどうしたの?」

 

「…何でもない」

 

「っ…ウルってさ、攻めるときはちょっと意地悪でクールだけど、受け身になるとただひたすらに可愛いよね」

 

リヨウはシャンプーボトルではなく隣にあったボディソープボトルを手に取るとそのままその綺麗な手にたっぷりと塗りたくり、ウルの背中に密着するよう抱き着いては後ろからウルの胸へと手を伸ばす。

ソープでぬるぬるになったリヨウの柔らかい手がいやらしい手つきでウルの身体を撫でていく。

 

「相変わらず綺麗な肌だよな。男の肌とは思えないや」

 

その肌の感触をじっくりと味わうように胸から腕、指先へとソープで包んでいく。

よっぽど上質なものなのか、塗っていく傍からいい香りがしている。

 

「着瘦せするタイプだってのは知ってるけど、やっぱウルも男だね。服着てたらわからないけど凄いがっしりしてる」

 

腕が塗り終わったら肩から背中にまわり、全体が終わるとリヨウはまた密着してはその身体を擦り付けるように動かしながら、手がウルの下へと移動していく。

徐々に息を荒くするリヨウの手は、ウルのすべすべな太ももの外から内側をなぞって良き、やがてその手は中心へ「…長い」行くことはなかった。

突如、リヨウとウルの頭上から大量のお湯が滝のように降り注いだ。

 

「あばばば…なにするのさルミル」

 

「…」

 

髪をかき上げてルミルの方を見るリヨウ。

そして右手で顔を覆い隠すウルは何を考えているのか分からない状態だった。

二人の頭上にお湯を降らせた張本人であるルミルはジト目で二人を眺めていた。

黒と銀の混ざったオーラを纏って。

 

「そろそろのぼせそう。ここで二人が始まると干からびる」

 

「…ごめんって。ちょっと夢中になっちゃった」

 

「リヨウはねちっこい。あと興奮すると周りが見えない」

 

「ああもうごめんてば!確かに盛ってたって反省してるよ」

 

「ウー?」

 

「…我まで巻き込む必要あったか」

 

「射程範囲内だった」

 

「…絞れ、未熟者」

 

それから火垂った感情をなんとか抑えてリヨウはウルの髪を洗う。

そして交代でリヨウの髪も洗うと、今度はルミルの身体を洗っていくウル。

立場的にだいぶおかしな絵面だったが、もう何年もこんな感じなため深く追求はしない。

目を瞑って気持ちよさそうにしているルミルを見て思わずウルは笑みがこぼれた。

そのまま全身ピカピカのして三人仲良く浴槽に浸かり、風呂を終えた。

 

「お風呂上りに食べるウルの手作りアイスは格別だね」

 

「至福の瞬間」

 

ご満悦そうにアイスを頬張るリヨウとルミル。そんな二人の頭を能力で温風を当てながら櫛で梳かすウル。

これもお風呂を終えた後のお決まり。長い髪を乾かすのはめんどくさい、これは髪の長い全人類が共感することではなかろうか。そしてそれはリヨウとルミルも同じ。そこで毎度白羽の矢が立つのは王様であるウルだ。

髪は女の命であり、そう安々と他人に触られたいものではない。

だがその相手がこの世界で一番大好きな想い人なら話は別である。

触られても別に気にしないどころかむしろもっと触れてほしいと思う相手がいるのなら甘える以外の選択肢はない。

しかも相手はちゃんとお願いすれば、表面上はめんどくさがりながらもしっかりやってくれるのだ。

それもまるで大切な宝物に触れるかのように優しく丁寧に、深く重い愛を込めて。

そんな扱い方を知ってしまったらそれ以外なんて考えることは難しいだろう。

 

「はい、あーんしてウル」

 

「んぁ」

 

二人の髪を慣れた手つきで手入れしてくウル。時折二人からアイスのおすそ分けを貰いながら、その綺麗な髪たちを丁寧に磨き続けていく。

 

「楽しい?」

 

「…なわけあるか」

 

「…嘘だ」

 

「フッ、どうだかな」

 

言葉ではぶっきらぼうな対応をするウルだったが、その表情は外では見れないほど優しいものになっていることをリヨウとルミルは知っている。なぜなら、リビングにあるテレビに反射して視えているから。

ウルに髪を乾かしてもらうとき、決まってテレビは点いていない。

それはなぜか、髪を梳いているウルの表情が暗い画面に反射して視えるからだ。

いつも自信に満ち溢れ威厳があり、王としての絶対的な風格を纏ったウルが、誰にも見られないだろうとその表情を緩ませる瞬間。

それをある日に偶然見つけてから、彼女たちの暗黙のルールになっている。

自分たちが愛されているのだと、大切にされてされているのだと目に見えてはっきりとわかるあの表情がたまらなく好きなのだ。

その証拠に、ウルの姿をテレビの反射越しに眺めているリヨウとルミルの顔はほのかに赤く染まっていた。

 

「ほれ、終ったぞ」

 

二人の頭の上からそんな言葉がかけられた。

ウルによって手入れされた髪はまるで最上質の絹の様につやつやと輝き、人撫ですれば一本一本が指の間を通りサラサラしていた。

自分たちの髪を愛おしそうに撫でるリヨウとルミルを見て、ウルは笑みを溢すとそのままキッチンへと脚を運びお酒をグラスに注ぎ一杯。

これがウルが秘密にしている至福の時。

自分が愛でる美しい者達を肴に最上級の酒を嗜む。

誰に言えない、ウル自身すらも気づいていない至福。

この家にあるもの全て、ウルの好きなものが集まっている。

家具もインテリアも書籍も玩具もなにもかも、この部屋にいる人さえも。

それは決して統一性があるわけではない。

だがその全てをウルは気に入り、大切にしている。

この家にやってくる者が勝手に持ち込んだ私物も、その持ってきた者がウルにとって大切な相手なら気にしない。

大切な者の全てを大切にしたいから。

自分が好いている者の全てを好いていたいから。

だからこの家にあるもの全てがウルの宝物なのだ。

その中でも、こうして言葉を交わし、肌に触れ、温もりを感じさせ、自分の全てを受け止め、自分のことを見続け、己の力で輝き続ける人をウルは愛している。

 

【天上天下唯我独尊】

 

この世で己だけが最も尊い。この言葉はウルそのものだと言っていい。

この世界でウルよりも尊いモノは存在しない。

それはウルの目の前にいる彼女たちも例外ではない。

だが、ウルは彼女たちを尊んでいる。

それはなぜか。

彼女たちはウルそのもの(・・・・・・)だからである。

ウルは彼女たちを他人だとは思っていない。

ウルは彼女たちを自分そのものだと認識している。

だから大切にするのだ。

 

【天上天下唯我独尊】

 

この世で尊いのはウルだけ。

ならば自分そのものも、尊び大切にしなければいけない。

だから彼女たちを大切にするのだ。

何者よりも、どんな物よりも、例え何を犠牲にしても。

彼女たちはもっとも尊ぶべきもの(ウル)なのだから。

 

「やはり美しいものはいつ観ても良いものだな」

 

上機嫌な王様はがぶがぶと酒を呷る。

自分の好きなものに囲まれ、そのなかでも最も好きなものを眺めて、触れて楽しむ。

心地良い温かさが肌に直接感じられるこの瞬間がたまらない。

耳に残る美しい鈴の音を奏でさせながら、込み上げてくる熱に従って戯れる。

脳を誘う、どんな香水よりも甘ったるい香りが部屋を満たしていく。

先ほどのアイスより何倍も甘美な蜜を味わいながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…エンジンを殴り飛ばすのを忘れていたか。…まあ明日でいいか」

 

やがて来る睡魔に従う王。両手にある数多の赤花を眺めながら、明日一番にすることを決めて。

 




テスト期間などでなかなか更新できませんでした!

描いてく内にどんどん怪しい方向に行ってる気がしますが、まあ表現的にセーフということで、へたくそな文章表現やキャラ崩壊など凄いですかお許しください!

次は原作の話に入っていけたらと思いますのでよろしくお願いします!
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