影が斬る!   作:おおもり

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こっちは基本的に短くいく方針で行こうと思います。


遭遇を斬る

「帝国郊外の偵察、ですか?」

 

 ハヤトが聞き返すように言うと、ハルノは何でもないことであるかのように頷いた。

 

「うん。新しい兵器の試験運用も兼ねて、ハヤトと……うん、後三人くらいで偵察ついでに革命軍の……できたら帝具使いがいいかな。いなかったらそこら辺の危険種でいいからさ。適当に試してきて」

 

 ハルノの命令にハヤトは溜め息を吐く。

 

「あの、ハルノさん。まだ訓練場で慣らすくらいでいいんじゃないかな? ほら、これだって、俺達は報告されてから大分待って、一週間前にようやく届いたっていうのに」

 

 そう言って、ハヤトは腰に差した鞘に収まっている状態の剣を示す。

 

「そうは言ってもね、オネスト大臣達が早く結果出せって釘指してきたんだよね。それに、ついこの間……誰ちゃんだっけ? 帝都警備隊の子で“ナイトレイド”のシェーレを仕留めたの」

 

「セリュー·ユビキタスさんだよ。“魔獣変化ヘカトンケイル”の所有者の」

 

 ハヤトに言われて、ハルノはそうだったねと、わざとらしく言う。

 

「セリューちゃんみたいな優秀な子もいるわけだしさ、こっちも負けてられないでしょ?」

 

 問いかけるように言っているが、ハヤトにはわかっていた。自分に拒否権などない、と。

 ハヤトはハルノの執務室を後にすると、自分の部下の下へと急ぐ。

 彼は、宮殿内の談話室の一室の扉を開ける。そこには、五人の男女がいた。

 

「お、ハヤトくん。やっと、将軍の話終わったん? 何の話だったの?」

 

 軽い調子で聞いてくるチームのムードメーカー、カケル。

 

「……新しい任務か?」

 

 がっしりとした体型とゆっくりとしたしゃべり方で、圧倒的な安定感のあるヤマト。

 

「ま、どっちにしろ、俺達は言われたことだけやってりゃいいし、ハヤトくんもいるし、大丈夫だろ」

 

 小柄でいつも誰かと一緒に戦うことを得意とするためか、楽観的なオオオカ。

 

「に、任務……また、男同士が汗を流して、一緒に戦って、いつしか友情は愛へと……キ、キマシタワー!」

 

 若干、人と感性が変わっているものの、実力はこの中でもハヤトに次ぐヒナ。

 

「ちょ、ヒナ!? 擬態しろし!」

 

 見た目のせいで、人に高圧的な印象を与えるものの、面倒見のよいユミコ。

 ハルノの実家のユキノシタ家と親交の深いハヤマ家の長男であり、最年少で将軍となったハルノの側近の副将軍。それが彼、ハヤマ·ハヤトであり、この五人がハルノの部下であるハヤトに彼女から一任された彼の部下である。

 ハヤトは、ここに来るまであった不安を、みんななら大丈夫だと言い聞かせ、胸のうちに押し込めて口を開いた。

 

「ハルノ将軍からの命令で、この間渡された新型兵器の実践的な試験運用として、俺とカケル、ヤマト、オオオカの四人で郊外の危険種を相手にする。あくまで慣れるために経験を積むくらいの気持ちでいてくれればいい」

 

 言われたカケルたちは、口では「ヤッベー、緊張する」など、心にもないことを言いながら、新しい武器を試せることに対する期待感を隠せていない。

 

「私達は?」

 

 ヒナが聞くと、ハヤトははしゃぐカケル達に苦笑しながら答える。

 

「ユミコは新しい武器の扱いに慣れてないし、ヒナのは扱いが難しいから、俺達がフォロー出来るようになるまで待ってほしいんだ」

 

「うん、わかった。頑張ってきてね」

 

「ああ。良い結果が出せるように頑張るよ」

 

 ハヤト達が楽しそうに話す中、執務室のハルノはとある報告書を読んでいた。

 

「『“第二世代型帝具”。その名の通り、千年前に造られ、四百年前に量産化が計画され失敗した古代の超科学と魔術、希少素材を用いて造られた“帝具”を、当時は加工不可能だったため、価値がないものとされた現在の希少素材や、千年の間に進化を遂げた危険種を最新の技術と魔術を用いて造り上げられた最新の帝具である。その性能は従来の帝具に並ぶものである』か。いつかはできると思ってたけど、まさか、私の時代に出来るなんてね」

 

 嬉しそうに言いながら、ハルノはもう一枚の紙を読む。

 

『以下の本件は、一切他言無用とする。帝国より離反したシズカ将軍、指揮官ユキノによって、第二世代型帝具一号“一撃粉砕クランチフィスト”、同二号“呪詛刻印ブックカースト”が持ち出されてから、再び何者かによって、試験運用前の完成した第二世代型帝具と帝具(ここでは第一世代型と呼称する)が数点持ち出された。持ち出された帝具は、“呪血回帰カーストブラッド”と呼ばれる“デモンズエキス”のような血液型の帝具であること以外は資料がないため不明である。これは、今まで適合者がいなかったことが原因と思われる。持ち出された第二世代型帝具は、“伝音遠聴ラビットイヤー”、“万物創造クリエイター”、“堅牢鉄壁キュクロプス”のし三点である。以降も、武器庫から帝具、臣具の盗難未遂が起きているが、本件のみは、調査の結果、持ち出しから推定一週間以上誰も盗難に気づかなかった。よって、これは宮殿内部をよく知るものか、次元操作、隠密の帝具使いによるものと推測される。これらが敵の手にある場合、可能ならば、使用者の死体ごと持ち帰ることが望ましいが、不可能な場合は、これを破壊すること。』

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 “シャドウ”アジト

 

 

 

「危険種の調査ですか?」

 

 シェーレが殉職してしばらくが経ち、どこか暗い雰囲気がアジトから消えてきた朝、シズカから出された指令に、ハチマンは怪訝そうな顔をする。

 

「なに、大したことじゃないさ。最近、帝国の郊外で出現する危険種に偏りが出ているらしい。もしも、生態系を壊すような新種の危険種が出てきていれば、被害が出るかもしれないからな。すまないが、ヨシテルと一緒に調べてきてくれ」

 

「えっと、今日はラバックのところでバイトする予定が……」

 

 ハチマンは回避をした。

 

「それなら、サイカから君は今日はバイトの予定は入っていないと聞いている」

 

 しかし、回り込まれてしまった。

 

「いや、ほらあれですよ。俺、今日の飯の仕込みをですね」

 

「大丈夫だ。何なら私がやる」

 

「いや、シズカさんの料理って、男飯っていうか、独身の男の手抜きめ……ぐはぁ!?」

 

 言っている途中で、シズカのボディーブローが入る。

 

「いいから行け」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

          ◆

 

 

 

 

 

 その日の昼、ハチマンは帝都郊外を歩いていた。

 

「ふははははは! ハチマン!」

 

「はぁ……。シズカさんもなんだってこんな仕事を。生物調査ならユキノとかユイとかメグリ先輩の方が向いてるだろ。せっかく部屋で一日中寝られると思ったのに」

 

「ふははははは! ハチマン!」

 

「今からいっそサボるか? いや、そんなことをすればただじゃすまないな。どうする……」

 

「あの……ハチマン? もしもし!?」

 

「あー、今すぐ郊外の危険種全滅しないかな。そうすりゃ、働かなくていいのに……」

 

「ジャアッスタモーメンッ! ドンッリリィ!」

 

「うおっ!? んだよ、ヨシテル。何か用か?」

 

 ハチマンが心底面倒そうに言うと、ヨシテルは途端に態度を変える。

 

「ふむ……。何と言われれば、まずは我の存在証明からせねばなるまい」

 

「いや、そういうのいいから。言っとくが、もうプロットじゃなくて完成原稿持ってこいよ」

 

「なにぃ!? 今度のは設定だけでも白飯三倍だぞぉ! とくとご覧じろ!」

 

 異様なテンションで懐から紙束を取り出すヨシテルに、ハチマンは冷めた視線を送る。

 

「いや、拝見したくねえよ……。ああ、そうだ。ほらよ」

 

 ハチマンはハイドゴーストのポケットから小瓶を取り出すと、ヨシテルに放った。

 

「む……。これは?」

 

「ある程度保存が出来るようにメグリ先輩に改良してもらったアレだよ」

 

「ほう……。これが万物の秘薬エリクサーか」

 

「おい、勝手に変な名前つけんな」

 

「それこそ、今さらだろう。我がどれだけの名をつけたと思う。失楽園パラダイス·ロスト、無間の牢獄タルタロス。どれも我がつけたものだ」

 

「勝手につけただけだろ。俺は使う気ねえからな」

 

 ハチマンが素っ気なく言うと、ヨシテルはにやりと笑う。

 

「ハチマンよ、そう言っていられるのも今のうちだぞ。革命が成功し、我の本が売れれば我に感謝することになるだろう!」

 

「いや、別に革命が成功したからって、お前の本が売れる保証はどこにもないぞ」

 

「え? マジで? 印税でウハウハ出来んの?」

 

「いや、知らんけど。ていうか、素に戻んなよ……ッ!? ヨシテル!」

 

 ヨシテルに呼びかけると同時に、ハチマンは後方に跳躍した。その途中で姿がバレないように、被っていたハイドゴーストのパーカーを目深にし、顔が見えないようにする。

 

「来るがいい、キュクロプス!」

 

 ヨシテルも自身の鎧の帝具を呼び出す。その次の瞬間、何かが飛来し、土煙が立ち上る。二人は静かに敵の追撃に備える。

 

「っべー! すみませーん、だいじょーぶ? って、あれ? もしかして、革命軍だった? ラッキー!」

 

 マジかよと、ハチマンは内心舌打ちする。どうやら、今のはただの流れ弾だったらしく、自分達はむざむざ敵に自分の姿を晒したことになる。

 自分だけなら、まだよかっただろう。最悪なのは。

 

「しかも、一人だけ? 俺ら四人なら楽勝じゃん!」

 

 ハイドゴーストのせいでこっちが認識できていないため、ヨシテルに攻撃が集中することだ。

 集団戦ならともかく、一対多戦では、高い防御力を誇る帝具とはいえ、あまり分のいい勝負とはいえない。

 こうなったら、敵がヨシテルの鎧の高い防御力に手を子招いている間に帝具の能力で奇襲をかけて、それに乗じてヨシテルを回収しようと、敵の背後に回り、敵に奇襲をかけようとハチマンは一気に近づく。

 

「させないよ」

 

「……なっ!?」

 

 横からの攻撃に、ハチマンは咄嗟に回避行動をとり、敵の攻撃を凌ぐ。

 

「凄いな。今のを防ぐのか」

 

 感心したように言った人間を見る。

 ヨシテルの堅牢ながらも無骨な鎧とは違い、高速化のためか、無駄を省いたような洗練された近代的な鎧だ。

 その後ろに、彼と似ているが、コンセプトはヨシテルの鎧に近い重厚な鎧の大男がいた。

 

「帝具使いか」

 

「そっちもそうみたいだな。一応聞くけど、君達は帝国に来る気はないかい?」

 

 どうやら、リーダー格らしい男は、積極的に戦う気がないのか、ハチマン達を勧誘してきた。

 

「生憎、自分の仕事に手一杯なんだ。こっちば危険種の調査に来てるだけで、別にそっちに用はないんだ。ここはお互い見なかっことにしないか?」

 

「そうしたいんだが、帝具の回収が俺達の通常業務なんだ。実験中の今でもそれは変わらない。帝国に来てくれないんなら、無理矢理にでも連れていかなきゃ行けない。悪いけど、そこの鎧の君は特にだ」

 

 どうやら、ハチマンのハイドゴーストは帝具だとバレていないらしい。だが、これで少なくともヨシテルは完全に目をつけられた。こうなったら。

 

「……やるしかないか」

 

「……残念だよ」

 

 相手も戦闘態勢に入る。

 

(目標は迅速な現場からの離脱。そのためには、リーダー格の無力化が必要か)

 

 先ほど、、どういう理屈かわからないが、敵はハチマンを認識していた。その彼をどうにかしないことには、ここからの脱出は困難だろう。

 しかし、ハチマンは知らない。彼らが使っているのはただの帝具ではないことを。




 『ぼっちが異世界から来るそうですよ?』ですが、現在大体真ん中ぐらいまでで10000文字を超えました。まだ書きかけとはいえ、かなり長くことが予想されるため、まだ時間がかかると思われますが、できるだけ早くかけるよう頑張ります。
 活動報告の方で本編のアンケートを行っていますご協力をお願いします。
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