進撃の巨人2 名もなき英雄の軌跡   作:なげすて

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第14話 自信

 

─1─

 

「ベルトルト。話ってなんだ?」

「ああ。あれから狩りには行けてるのかなって?」

「それか。うーんと、」

 

初めて狩りに出かけて以降、定期的にベルトルトに射撃のコツを教えてもらっていたものの、

 

「実は、あまり芳しくない。」

「それはどうして?」

「ひとえに時間がない。一年経ってやることが増えたし、もう少し悠長にやればいいだろうと思っていたけど、甘かった。最近は本当に忙しくなった。」

「ああ。僕たちがここに来て、一年と半年が経ったからね。もう折り返しだ。」

「もう、そんなに経ったんだな。」

 

訓練を始めてから一年半。学科も、実戦の訓練もますます過酷になり、今になって脱落者が増えている。この半年で、事故死は二件、開拓地送りはおよそ五件となった。私も、週末にある休暇の二日間の内、少なくとも一日は念のため外に出ず休んでいた。訓練兵たちの士気は不安定になり、一年目のような穏やかさは減り、すこしずつ、カリカリし始めていた。

 

「あーあ。金も結構余ってきた。もう何度か狩りに行けるくらいには貯まったのに。」

「日帰りではだめなのか?」

「それが、サシャ曰く、『成功率を上げるために、事前に罠を置いたり、獲物を誘導するための地形の操作をしたいです!』って言い出してね。到底一日では準備ができない。」

「やっぱり、やるからには大物を狙いたいだろうからね。」

「ああ。彼女も肉が手に入らないからか、相当焦り始めてる。まぁ、銃の腕については休日にも練習してるし、もう私はヘマをしない自信はあるけどね。」

「自信・・・あ、そうだった。ものは相談なんだけど。」

 

忘れていた。ベルトルトは相談があって私を呼んだんだった。

 

───────

 

「・・・自分に自信が無い?」

「そうなんだ。僕には、なんだかやりたいことが無くて・・・。」

「君のやりたいことは、故郷を取り戻すことなんじゃないのか?ライナーと同じで。」

「それはそうなんだけど、その先のこととか、その前のこととか考えてしまうんだ。」

「故郷を取り戻すことを一番優先するなら、調査兵団に入って、それから・・・って感じだろ。」

「うん。・・・でも、このまま成績を維持できれば憲兵にもなれそうだし、本当、どうすればいいのか・・・。」

「今のところ、ライナーと並ぶ実力を持つ君がそんな不満を吐露したら、同期たちはいきり立つだろうね。『じゃあそこまで頑張れていない俺たちはなんなんだ!』ってね。」

「そ、そんなつもりは───」

「ごめん。冗談だ。・・・ともかく、自信をつけたいってことでいいんだよな?」

「うん。何かいいアイデアは無いかな?」

「それじゃあ、とりあえず普段の訓練を一緒にやってみてもいい?」

「わかった。」

 

 

訓練地の森の中、一緒に立体機動の練習を行った。あの時、私を助けてくれた時と、

 

「・・・相変わらずすごいな。まったく迷いが無い。」

 

変わらず完璧だった。ジャンのような強い癖があるわけでもなく、ミカサのような神がかり的なものでも無いが、素直で、模範的な機動だった。

 

「ありがとう。でも、何かアドバイスはあるかな?」

「・・・しいて言うなら、無難、なのか?」

「無難?」

「でも、それが悪いことだとは思えない。さっきやった筆記や巧術や馬術、兵法講義も、満点ではなかったけど、いずれも並みの成績とは比べ物にならないくらい、優れているように見えたし。」

「そうか。」

ベルトルトは納得していなさそうだ。

「特徴は無いにせよ、欠点は一切無いわけだし。うーん・・・。」

「やっぱり、無理を言ってしまったかな?」

「これで自信ないのか、って思うくらいには立派だと思う。」

「立派って、いやあ、そんなことは・・・。」

 

ベルトルトは、長身の頭を、長い腕で搔いている。誰でもやる照れ隠しの所作。彼がやると、体躯の大きさからかよく目立つ。

 

「なにか、別のことをやってみよう。兵士に関係すること以外でなにかないかな?」

「じゃあ、次は───」

 

叫び声が、聞こえた。大きさからしてそこそこ距離がありそうだが、装置があればすぐに届くだろう。多分、森の反対方向か。

 

「ベルトルト、聞こえたな。」

「うん、行こう!」

 

二人で急いで立体機動を飛ばす。

 

「何が起きたんだ。誰か、崖から滑り落ちたとか。」

「まさか、巨人が現れたんじゃ。」

「そんなバカな。こんな内地にいるわけないだろ。」

「あれは・・・アルミン?」

 

木々が少し開けた先の金髪の頭。叫び声の正体はアルミンのものだった。なにか重大なことが起きたのだろうか。

 

「アルミン、何が───」

「僕の役立たずーーっ!うわあああーーーーっ!」

「!?」

「あ、ちょっと!」

 

思わぬ言葉がアルミンから飛び出したからか、私はバランスを崩し、ド派手に地面を転がった。

 

 

 

「びっくりした・・・。もしかして、聞こえてた!?」

「びっくりしたのはこっちだ!てっきり大変なことが起こったのかと思ったよ。なあ、ベルトルト。」

「あ、ああ。ホントにびっくりした。」

「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。」

 

さっき、アルミンは自分のことを役立たずだって言っていた。

 

「それで、アルミン。何か嫌なことでもあった?」

「・・・、先日の訓練で、どうしても体が付いて行かなかったんだ。それで、班の足を引っ張った。だから、今日一人で鍛錬してたんだけど・・・。やっぱり悔しくて。」

 

アルミンはあまり周囲に不満を漏らさない。もちろん、私たちのように悔しがったり、怒ったりすることはあるが、それでもかなり辛抱強く努力し続ける人だ。雨の中、兵站行進を行っていた時も、一度はライナーに助けられていたが、すぐにライナーから荷物を取り返し、走り出していた。アルミンは、そんな高潔な人だ。今回も、そうして溜まった不満を、叫ぶことで発散させていたんだろう。

 

「今日のことは見なかったことにするよ。それでいいよな、ベルトルト?」

「え?あ、ああ。・・・いや、僕もやろうと思う。」

「へ?」

 

珍しく、ベルトルトが言い出た。

 

「やるって何を?」

「だから、アルミンと同じことだよ。森の中で、思いっきり叫んでみる。」

「そ、そうか。でも、なんだっていきなりそんな?」

「僕も、やってみたくなったんだ。」

「ふーん。じゃあ、私は一旦立体機動をやめて、格闘訓練の方をやってみるよ。」

「ああ。じゃあ、後で。アルミン、叫ぶときのコツってあるかな?」

「ええっと・・・。」

 

ベルトルトは何か見つけたらしい。自分の自信が無いことを打開するための何かを。それならここからは、彼に任せてみよう。

私は歩いて森を出て、訓練に付き合ってくれる相手を探した。

 

─2─

 

「・・・あんた、そこそこ素質あるかもよ。」

「そうかい?アニにまともな一撃を入れられたことはないけど?」

 

運よくアニが暇を持て余していたので、格闘訓練に付き合ってもらっていた。今や彼女の態度は、そこそこ軟化してきたように思う。現に、こんなお世辞まで言われているわけだし。

 

「エレンみたいにむやみに突っ込んで行くばかりじゃない。自分で作戦を考えてから実行して、駄目ならまた案を組みなおす。その柔軟さは、なかなかのものだとあたしは思うけどね。か弱い乙女のあたしを気遣ってくれてるみたいで。」

「ありがとう。けど、全っ然、追いつける気がしないのは、ハァ、変わらないね。普段の乙女ぶりなんて知らないけど、今ここじゃ兵士そのものみたいだよ。」

 

涼やかな彼女に対し、私は息がかなり上がっていた。アニの教えがうまいから、確実に技のキレは上がっている。だが、手足を繰り出すたびに消耗する。対してアニは、幾度組手をこなそうとも息一つ上がらない。エレンや私と立て続けに戦っても、少しも弱音をはいたときが無いのだ。いつもけだるげに訓練をこなしてばかりだが、彼女はそれでも、必死に食らいつく私たちを屁とも思っていない。途方もなく強い。

 

私が少し休みたいからと、乾いた砂が薄く敷かれた地面に、並んで腰を下ろす。

 

「この一年半、決して手を抜いてたつもりはないんだけどなぁ・・・。」

「悔しい?」

「勿論だ!」

「そう。・・・・・・この技がこんなにありがたがられるなんてね。これを仕込んだ父は、何て言うかな・・・。」

「褒めてくれるんじゃない?少なくともこの訓練地じゃ、アニに敵う人なんていやしない。エレンも、私もね。」

「教わっていた時は、あんたみたいに自発的にはなれなかったよ。今だってそう・・・。この技術は役に立たないんだし、正直、あんたやエレンのような人が不思議でならない。 

やや下の方からアニの声が聞こえる。彼女は項垂れ、砂地を見つめていた。そこには、一匹のはぐれた蟻が歩いている。

 

「エレンはシガンシナにいた頃、アルミンを助けるためだけど、喧嘩ばっかりしてたみたいだし、そういう技術をカッコいいと思うんじゃないかな?」

「これから戦うのは、巨人だってのにね。」

「・・・私は新しいものを学ぶとき、誰かに命令されてやったことは、多分これまでには無い。この格闘技術も、面白そうだったから学んでいるんだ。」

 

シガンシナの学校で勉強していた時も、算術や読み書きができれば十分だったためか、それ以外の勉強には強制力も、提出すべき課題も多くは無かった。そういうときは、自宅にある大昔の生き物の図鑑を読んだり、昆虫を捕まえるために何時間も森の中をさまよったり、釣りをしたり、そんなことばかりしていた。

 

「昔、学校の宿題をやらなくちゃいけなかったとき、好きな教科だったはずなのにとても面倒くさく感じてさ。」

「あんたも、そんな風に思うことあるんだね。」

「今は兵士としてやらなくちゃいけないことだから、面倒だなんて言ってられない。そんなこと考えることもないくらい、昔の話だよ。アニの格闘訓練への気持ちも、それに似た感じ?」

「・・・そう。」

「だったら、アニが気にすることはないと思う。もし、私たちが楽しそうに訓練してて、自分がそうじゃなくて、それを気にしていたとしても。」

「あんたらみたいに兵士ごっこしてる連中とも、馴染めそうにないね。そこまで同情されたとあっちゃあ。」

「え・・・仲良くなりたいのか?」

ふと、顔を上げて、アニの方を見る。彼女はこちらを見ていない。だが、その横顔には、

『しまった。』と書かれていた。

「なあんだ、そういうことだったんですか!!」

 

大声を聞き、私とアニは急いで立ち上がり後方を向く。いくら休日でも、訓練地の中では巡回してる上官たちが目を光らせている。だが、声の正体は恐るる禿げ頭のものではなかった。

サシャとコニーがやって来た。

 

「珍しいね、二人とも。今日は休日だろう?」

「お前、休日は大体格闘訓練やってるからな、面白え動きするからよく覗いてたんだぜ。」

「じゃあ弟子入りする?」

 

二人は格闘訓練の時は、いつも一緒にふざけては教官に締め上げられている。だが、その二人の悪ふざけの中に、なにやら素質のようなものを感じなくもない。冗談半分だが、でも、組手の相方が増えるのと嬉しい。

 

「俺は天才だからすぐお前らを負かしちまうかもな!はっはっは!!」

「コニー、今はその話じゃないでしょ!」

「ん?おお、わりい!」

「それで、あんたらはなんでここに?」

「アニ、水臭いですよ!そんなこと考えてたなんて、寂しがり屋さんなんですね!」

サシャが茶化す。この二人はこうなると、とことん手ごわい。

「あっあたしはそんなつもりじゃ───」

「あっ、今度みんなでどこかに出かけるってのはどうです?」

「いいよ、そういうのは・・・。」

 

そして私は、こういうノリは大歓迎だ。

 

「行こうよ!日頃のお礼もしたいし!」

「あんたまで・・・まったく、勘弁してよ。」

「よし、決まりだな!今度の非番の日、兵舎の前で集合な!」

「すっぽかさないでくださいよ!」

「はぁ・・・わかったよ・・・。」

アニも案外あっさり折れた。

「というより、あなたも悪いんですからね。」

 

サシャは恨めしそうに私を見ている。面食らった。私に矛先が向くとは思っていなかった。

 

「え、どうして?」

「だってあなた、狩りに行くって約束したのに一向に誘わないじゃないですか!『一日そこらじゃ準備できない!』とか、『今度こそ命中させるから、ベルトルトに銃の腕を見てもらう』とか!」

「それは、ここ最近ずっと忙しかったのは本当だし───」

「私、あなたがいつぞやの夜の訓練のときのこと、覚えてますからね!『地図覚えるために出かけてた。』ってコニーに自慢したでしょう!あれ、訓練のためだったんですか!私との約束はどうするつもりだったんですか!肉はいつ食べられるようになるんですか!!」

 

サシャの形相はどんどん恐ろしくなっていく。昔話でよんだ幽鬼のような怨嗟まで伝わってくる。

 

「だああああ!わかったよもう!蓄え少しあるから、買い物付き合うよ!だから許して!!」

 

その場は祈り続けることでなんとかサシャの怒気をおさめ、バカコンビは外出の大義名分を得て、大手を振って退散した。

 

─3─

 

再び静かになった訓練地で、砂が少し舞う。

 

「それよりあんた、他の人といたんじゃないの?」

「そういえば、アルミンとベルトルトが森の奥で───」

 

まずい。これは言わない方がいいかも。

 

「立体機動の訓練してたんだけど、私が飽きてアニの所に来た、って感じ。」

「・・・そう。」

 

アニは目を細める。が、特に気にする素振りもなく、続ける。

 

「珍しい組み合わせじゃない?」

「そう、そうなんだ。どうやらベルトルト、自信が無い、とか言っててさ、それでこれまで学んできた科目を一通りこなしたけど、どうにも納得がいってないみたいで。」

「それがアルミンとどう繋がるわけ?」

「立体機動をしていたら、アルミンが思いつめた顔をしていて、訊いてみたら、足を引っ張ってることに罪悪感があるみたいで。」

「似た者同士、ってことだね。」

「あ、そっか。そう。」

 

そう、なのか。

アニに指摘されて、気づいた。自信が無いのは、二人とも同じなんだと。アルミンは実力が原因で、ベルトルトは・・・わからないけど。

 

「まあ、あれだけ叫べばスッキリするんじゃない?」

「そうだね。私は叫ぶより、こうしてアニと組手をやってた方がスッキリするけどね。」

「あれ?あんた、『叫ぶ』とかなんとか言ってたっけ?」

「あれ?あっ・・・。」

 

カマを掛けられた。全く気付かなかった。とんだ間抜けだ。

 

「・・・あんたはもう少し嘘を吐く練習をした方がいいね。格闘の最中は随分頭が回るから少しは厄介だけど、こういう時はてんでダメだね。」

 

褒められながら説教された。

 

「アルミンが森の中で叫ぶのは、ごくまれだけど耳にしてた。あんたは今日が初めてだったみたいだね。」

「いじわるだなあ。」

「バカ二人にあたしを巻き込んだからね。」

 

根には持たないのが幸いして、仕返しはチクリと刺された程度だ。ユミルよりは優しい。

 

「・・・噂をすれば。じゃあ、あたしはもう行くから。」

「ああ。じゃあ、約束だからね!」

 

アニを見送った後、入れ替わるようにベルトルトがやって来た。声が割と掠れていた。

 

 

ーーーーー

 

ベルトルトと一緒に食堂に向かう。夕暮れ時になり、すっかりお腹がすいていた。

 

「うん。前と比べて時間は取りにくくはなったけど、やっぱり何かしらストレスを発散できる機会があったほうが良いな。」

 

サシャやコニーも、出かけることで鬱憤を晴らしていたんだろう。アルミンにも、独特だがそのやり方が合っているんだろう。

 

「アルミンの助言では、森の向こうへ飛ばす感じで声を放ると良いんだって。」

 

ベルトルトも発声練習のつもりで臨んだらしい。目標を叫んでいるうちに、自信が少し湧くようになったらしい。

 

「そういえば、なんで私に相談したんだ?ミカサやライナーじゃなくて。」

「えーっと、君、なんだか余裕があるように見える気がして。」

「まあ、十番以内を目指さなきゃいけないとか、そんな重圧は無いからね。」

 

少し嫌味を言ってみる。

 

「そうじゃなくて。なんだか、力が抜けたような、そんな気がする。」

 

ユミルと喧嘩してから数か月が経ち、少しだけ、ユミルが本心を話してくれるようになった。わからないことがわからないままでいるのは、私にとってストレスだったのだ。そのつかえが取れたおかげか、自分の目的に、少し自信をつけられたのだろう。

 

「まあ、悩みが減って、やるべきことがわかったからだと思う。」

「…やっぱり、僕にはまだやりたいことが何なのかは分からない。」

「これまで通しでやった訓練で、少なくとも、兵士としてどこまで頑張れるのかは分かったんじゃないかな?」

「うん。アルミンの発声練習の手ほどきもあったしね。あれで、少し前向きになれた気がする。」

「じゃあ、それでいいんだと思う。私は、クリスタやほかの訓練兵がひたむきに頑張ってて、それで、自分がやりたいことが本当にこれでいいのか、また悩んでいたんだ。」

「鎧の巨人を倒して、故郷を取り戻すんだろ?なら、今やってることで充分なんじゃないかな?」

「今まで訓練してきて痛感したけど、上位成績者10名は、多分この段階で決まっていると思う。」

「そうなの?!」

 

ベルトルトは不安がまたぶり返したか、少しあたふたしている。せっかくアルミンに気分転換の方法を学んだのに。

 

「そのくらい歴然とした差が着いているってことだ。驚かして悪かった。ただ、上位の成績があったからって巨人に勝てる確証はないわけだし、上位ですらない実力で、鎧の巨人に勝てるのか…それがわからなくて、悩んでたんだ。何かいい方法はある?」

「それなら…腕立て伏せとか?僕は心が晴れない時は、よくライナーと並んで腕立て伏せをしたものだよ。どうかな?」

「それは…それぐらいの鍛練はは訓練の時間外でやってるし、頭の方はアルミンとチェスをやることで鍛えてるし…うーん、ごめん。まだ解決できそうにないかも。」

 

吹っ切れた、とは言ったものの、ユミルの態度に納得がいっただけで、やはり、自分の強みについては、まだわかりかねている。私は頭を数度振り、また悩みを仕舞い込んだ。

 

「それより例の発声練習、うまく行くといいね。頑張って!」

「うん、今度、またやってみるよ!」

 

 

それ以降、森の中でごく稀に、甲高い叫び声と伸びやかな叫び声が、日にちも時間帯もまばらに聞こえるようになったという。104期生の卒業まで続いたそれは、後の代の訓練兵たちの間で、「南方訓練地の叫ぶ怪異」と呼ばれるようになったとかならないとか。

 

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