「みんな!無事で良かった…。エレンやミカサは?まさか…。」
エレンを発見するよりも早く撤退していたクリスタは、最後に避難してきたジャン達を心配し、一人一人に革製の水筒を渡していた。
「んぐ…んぐ…ぷはっ…。クリスタ、俺達には守秘義務が課せられた……言えない。もっとも、隠し通せるような話じゃねぇ。すぐに人類全体に知れわたるだろう……それまでに人類があればな。」
「ああ、そういやお前らに付いてきた兵士が言ってたな。『エレンが生きてた』って」
「ユミル、それ本当?」
「間違いねぇな」
「あの野郎…やっぱ付いてこさせなきゃ良かったか?」
私達から少し離れた場所で、ジャン達が休息を取っていた。私はというと…
「マルコ…俺はもう駄目だ…もう…巨人と戦えない…」
悲嘆にくれるダズを何とか励まそうとしていた。
「仲間が目の前で食われた…仲間が食い殺されたのに…俺は悲しみも憎しみも感じなかった…ただ、心底俺じゃなくて良かったって思った…でも、次は俺の番だ…気付いたんだ…俺達の仕事ってのは…つまりは…巨人に食われるまで、戦わされ続けることなんだろ?食い殺されるくらいならいっそ今!!」
ダズはブレードを引き抜き、早まろうとする。
「やめろ!!」
マルコは懸命にダズの凶行を押さえつける。
「しっかりしろよ!!お前だけじゃないんだぞ!?みんな恐怖と戦ってるんだ…サシャを見ろ!!あんな目に遭ってもなお気高き兵士のままだ!」
「ぐあああああ!!」
マルコに指摘されたサシャは唐突に腹を押さえた。
「あの…お腹痛いんで…!!負傷者にしてもらって…いいですか!?」
「もう駄目だ!!」
「よせ!!」
「そうだよ!怖くても、戦わなければ」
いっそう事態が悪化した。
「まあ、元より目的が違うんだから、仕方ないのか」
「は?お前までなに言って…!」
「『私』は鎧の巨人を殺すために訓練兵になった。奴にたどり着くためなら、何体でも巨人を倒す覚悟がある。でも、ダズやサシャは違うから」
「え?あの……」
「ん?もうお腹はいいのか?」
「え?ええっとあいたたた……」
(思い出したかのように演技を再開しないでくれ)
「胃薬でも持ってくるか」
「いやそれは大丈夫ですハイ」
踵を返そうとしたら直ぐに返答は帰ってきた。
(てか、さっきまでうずくまってたのに声が下向きじゃなかったし)
「なんで『お前』はそんなに冷静でいられるんだよ」
ダズは半泣きになりながら私に問う。
「さあ、2回目だからじゃない?」
「はあ?」
「ダズ、思い出すんだ。なんで兵士になれたのかを」
「そりゃ、死にたくないからだよ」
「じゃあ、状況は同じだ。訓練兵の時だって、大勢死んだ。今日生きてるのもただの偶然かもしれないだろ」
「全然違うだろ。暴論だよそんなの…」
少しダズが落ち着いて、私が自分の混乱を自覚したかに思えたところで、砲声が遠くで鳴った。私達のいる場所からやや南東、内門の方からだ。
「なんだ?」
「砲声?」
「まさか突破されたのか?!」
兵士達は口々に憶測を述べるが、ここで頭を悩ますより、直接見に行った方が早い。
私達は、適当な家屋の屋根に昇る。
そこで目にしたのは、上半身だけの、骨と肉が剥き出しになった巨人だった。
「なんだありゃ?!」
「うわああああ!!」
「巨人だ!巨人がいるぞ!!」
「待て!あれは死にかけだろ!それに、駐屯兵団が囲んでる!今なら殺せるだろ!!」
さっきまでの恐怖が想起されたのか、冷静さを簡単に失った大勢の兵士から、思い思いの所感があっさり吹き上がる。
「…アンタはどうする?」
「ユミル」
彼女は『私』に問いかけていた。
「ひとまず、駐屯兵団の出方を窺おう。状況が飲み込めてない以上、ここで狂乱しても仕方ない」
「同感だな。後ろの連中、ピーピー喚きやがって、うるせぇなあ」
「すぐに攻撃してないあたり、アイツを取り囲んでる奴らに何かワケがあるんだろうな」
ライナーが言う。
「アルミンがいないし、ここはお前の観察にでも頼るか。」
「巨人の出現した位置が明らかに内門から離れている。東の水門辺りまでやって来たと思ったけどそれも違いそうだ。水門が破られてない。連れてこられたのか、はたまた壁を乗り越えたのか」
「前者も後者もありえねぇな。あの体格は15メートル級。悠長に切り刻んで連れてくる暇は無ぇだろうし、仮に壁を乗り越えたのだとしたら、損傷が大きすぎる。なんせ、骨と皮まで見えてるからな」
ユミルが合いの手を入れる。
「そうだ。それに、壁上から奴に向けられてる大砲が1門だけだ。大砲の旋回に時間が掛かるにしても、あまりに悠長だ」
「おっ、あたしらが無い頭巡らしてる合間に、でけぇ骨組みが倒れ込んだぜ。そろそろ答え合わせが出来そうだな。」
「ん?待て。誰か来るぞ……あれは、アルミンか?なんだって巨人のところから出てくるんだ?」
アルミンは武装を解除し、兵団の制服だけで、両手を上げて包囲のギリギリまで近づく。ひと際背の高い駐屯兵の絶叫に止められ、彼は立ちすくむ。
【彼は人類の敵ではありません!私達は知りえた情報をすべて開示する意思があります!】
(彼?彼ってまさか……。いいや、今エレンだって呟くのは、余計な混乱を招くだけだ……)
「命乞いに貸す耳は無い!目の前で正体を現しておいて今更何を言う!奴が巨人でないと言うなら証拠を出せ!!それが出来なければ、危険を排除するまでだ」
(確かに、疑念があった、彼が本当に味方なのか)
「なあ、ライナー」
「ん?」
「エレ……アイツは本当に味方だって言えるのか?」
「……さあな。だが、まだアルミンは止まらないみたいだぜ」
アルミンは、証拠は必要ないと叫び、一つの事実を突きつけた。
【そもそも我々が彼をどう認識するかは問題ではないのです!!】
「どういう意味なんだ?」
「俺達が決めることじゃないってことだろな」
「澄ました顔してんな、○○○が」
罵倒が聞こえた気がするがまあこの際気にするまい。
【大勢の者が見たと聞きました!ならば彼と巨人が戦う姿も見たはずです!周囲の巨人が彼に向かっていく姿も!つまり巨人は彼のことを我々人類と同じ捕食対象として認識しました!!我々がいくら知恵を絞ろうと、この事実だけは動きません!】
「巨人は敵だと見なした……」
(敵の敵は味方ということか)
「確かにそうだ……」
「ヤツは味方かもしれんぞ……」
私達のさらに後方で固唾を飲んでいた連中も、アルミンの演説に少しなびいているように見えた。アルミン達を取り囲む駐屯兵たちも、隣同士顔を見合わせている。彼らに迷いが生じた。
「……攻撃をやめてくれるだろうか」
「下っ端が動いても、アイツはどうだろうね」
「アニ?」
「最終的な判断は指揮官にある。……あいつの私情が混じれば、覆らないだろうね。現に、ホラ」
「ああっ、そんな……」
指揮官は迎撃態勢を取るよう叫び、砲弾の発射を再び知らせるべく、寸暇も与えず右手を高く掲げた。
「マズい!攻撃を再開する気だ!」
「止めるのか!?」
「わからない。だが、アルミンの力にはなりたい!」
「……いいぜ。俺は乗った」
「僕も!」
「あたしも」
「間に合え!!」
ライナー、ベルトルト、アニ、そして私は屋根から跳び出す。反逆と見なされぬよう、ブレードは装着しない。しかし、のっぽの駐屯兵の腕は、私たちがたどり着くよりもはるかに早く、振り下ろされるのは火を見るより明らかだった。攻撃の第2波は、アルミンの演説の最中にも進められていたのだ。
(駄目だ!・・・やめろ!!)
【私はとうに人類復興のために心臓を捧げると誓った兵士!!その信念に従ったすえに、命が果てるなら本望!!彼の持つ「巨人の力」と残存する兵力を組み合わせれば、この街の奪還も不可能ではありません!!人るの栄光を願い!!これから死にゆくせめてもの間に、彼の戦術価値を説きます!!】
アルミンがいくら叫ぼうと、のっぽの手は動かない。だが、そののっぽに、ある一人の禿げた駐屯兵が近づく。歩みはごく平静で緩慢、しかし迷いがなかった。
(誰だ?)
禿げた駐屯兵は、のっぽよりも背は低かったが、何か、異様な気配を感じた。彼はのっぽの腕を掴み、
「よさんか」
と、一帯張り詰めた緊張を一声で治めた。
彼は指揮官を宥めながらも、アルミン達の話を聴くよう、譲歩の姿勢を見せていた。
「おい!新兵ども、何やってる。早く待機場所に戻れ!」
上官の一声で自分が立ちすくんでいたことに気付き、慌てて待機場所へ小走りで戻った。
過程はどうあれ、アルミン達は助かったのだった。
─2─
新たに班の編成を告げられ、整列させられる。そして、壁の上を見上げる。あそこから、先ほどのハゲ頭、ことピクシス司令が顔をのぞかせると知らされたためだ。
(司令…最悪な形で覚えてしまった。…いやまあ、誰に知られるでもないし、黙っておこう)
とはいえ、アルミン達の話を聴くためなのか、司令は中々姿を現さない。
アルミンの大立ち回りで鎮められた不安は、時間の経過とともにまた起こり始める。
「また、あの地獄に…いやだ!死にたくねぇ!家族に会わせてくれ!」
「おいダズ!声が大きいぞ!」
「そこのお前!聞こえたぞ!」
狂乱し声を漏らしたダズを落ち着かせようとマルコが呼び掛けるが、上官の駐屯兵に気付かれてしまった。
「貴様!任務を放棄する気か!」
「ええそうです!この無意味な集団自殺には、何の価値も成果もありません!」
ダズは涙目で怯えながらも、上官にきっぱり申し出る。
「貴様人類を…規律をなんだと思っている?私にはこの場で死刑を下す権限があるのだぞ?」
「いいですよ…その方が巨人に食い殺されるより百倍マシです!」
「よせダズ!」
「離せ!あんな所にもどってたまるか!!」
ダズと上官は、互いに剣を抜こうとする。互いにその表情は険しかった。どちらも怯えていた。己の言葉の重大さを、双方とも理解していたのだ。
止めに行きたいが、私は彼からは離れた列にいる。動けば隊列を乱してしまう。
私の周囲でも、彼の声を引き金に、まだ説明もされてない作戦に対して疑念の声を上げる者が現れ始めた。
「こっちでも反逆者出ないかな?」
「私だって、死に方くらい選びたい」
「娘に会いに行くんだよ。どうせこの壁も破られるのだからな。」
「ちゅうもおおおおおおく!!!」
吃驚した。
凄まじい声量だ。壁の上から叫んでいるはずなのに、まるですぐそばで叫ばれたかのような大きさだった。
この場にいる全員が上を向く。
声の主は、ピクシス司令だった。
「これより、トロスト区奪還作戦について、説明する!この作戦の成功目標は、破壊された扉の穴を、塞ぐことである!」
会場が静まりかえった。その言葉を誰もが疑った。塞ぐ手段など現状無いからだ。
「穴を塞ぐ手段じゃが、まず、彼から紹介しよう!訓練兵団所属、エレン・イェーガーじゃ!」
(ここで正体を明かすのか)
「彼は極秘に研究してきた、巨人化生体実験の成功者である!!彼は、巨人の身体を生成し、意のままに操ることが可能である!」
(明らかな嘘だ。私を含めた一部の人にはわかる。彼がそれを隠し通せるほど裏表のある人物じゃないことは明らかだ)
遠目にコニーが戸惑っているのが見えるが、多分別のことに気掛かりになっているのだろう。
「巨人と化した彼は、前門付近にある例の大岩を持ち上げ、破壊された扉まで運び、穴を塞ぐ。諸君らの任務は、彼が岩を運ぶまでの間、彼を他の巨人から守ることである!」
「あの巨大な岩を持ち上げる?そんなことが…。人類はついに巨人を支配したのか?」
「嘘だ!!そんなワケの解らない理由で命を預けてたまるか!俺達をなんだと思ってるんだ!俺達は、使い捨ての刃じゃないぞ!!!」
ダズは再び叫ぶ。実際、その悲観は核心を突いていた。
「人間兵器だとよ」
「まやかしに決まってんだろ!」
「バカにしやがって」
「今日ここで死ねってよ。俺は降りるぞ!」
「俺も!」
「俺もだ!」
「人類最後の時を、家族と過ごします!」
各々が降りる意志を表明し、会場を去ろうとする。
(このままじゃ、秩序が無くなる)
「覚悟はいいな反逆者ども!今この場で叩き斬る!」
エレンを討とうとした駐屯兵が猛り、背を向ける者どもに刃を引き抜く。
だがピクシス司令は、意外な言葉を投げ掛ける。
「ワシが命ずる!今この場から去る者の罪を免除する!!」
「んなっ!」
「一度巨人の恐怖に屈した者は、二度と巨人には立ち向かえん!巨人の恐ろしさを知った者は、ここから去るがいい!」
去る者達の足は止まらない。それどころか罪を免除されたためか、躊躇っていた者たちも、去ることを選んでいく。
私の隣に並んでいるサシャも、震えていた。きっと、駐屯兵団本部で仕留め損ねた巨人に襲われた時のことを思い出しているのだろう。
(無理なら、去ってもいい)
そう彼女に呼び掛けようとした時、ピクシス司令は再度声を張り上げる。
「そして、その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟、愛する者にも味わわせたい者も!!ここから去るがいい!!」
まばらな足音が、一斉に止んだ。
彼らが知らない恐怖。大切な誰かを喪う恐怖。自らにではなく、他者に降りかかる恐怖。
去ろうとした人々は、一人、また一人と隊列へ戻ってくる。
サシャの震えは、止まっていた。『私』の方を向いて、
「私もまだ怖いです、でも……逃げるわけにはいきませんね。」
そう言い終わり、壁の上をキッと睨む。
「……。」
『私』は答えなかった。
誰かを喪わなければ立ち上がれなかった私とは違う。
想像の範疇を出られない恐怖でも、彼女は、彼らは立ち向かう。だから彼らは兵士になった。直に味わい、怒りを抱いた私と違って。
だから私も立ち上がれる。彼らへの敬意を忘れられないからだ。
ピクシス司令は、私達の原点を思い出させてくれた。凄まじい求心力だ。これが、司令という立場に立つ男の力か。
「四年前の話をしよう!シガンシナ区奪還作戦の話じゃ!」
ピクシス司令は、四年前の25万人のウォール・マリアの住民を死に追いやった作戦に言及する。
あれは政府の抱えきれぬ口減らしだと。
誰もその話について口をつぐんでいるのは、彼らを壁の外に追いやったお陰で、今の我々が生き抜くことができたからだと。私達全員に罪があると。
私も無論解っていた。
開拓地の二年間、うだる夏も凍える冬も、老獪なる者たちが私に言い聞かせてきたことだ。私達は、運良く死の行進に選ばれなかったに過ぎないと。
もしウォール・ローゼが破られれば、今度の犠牲は人類の二割では済まない。
もし人類が滅亡するのなら巨人にはよってではなく、人類同士の殺し合いで滅ぶと、司令は言う。
「我々はここより奥の壁で死んではならん!どうかここで!ここで死んでくれ!!」
「家族……」
自分にはもういない者たち。だが、彼らの足を止め、引き戻すには充分過ぎる大切なものだ。決して足かせなんかじゃない。
私達訓練兵は知っている。
あんな気弱で泣き虫なダズがなぜ兵士を目指したのか、その理由を。
彼にも守りたい家族がいるからだ。だから彼も今日まで懸命に耐えてきた。
ダズはすすり泣くのをやめないが、その足は、しっかりと門へ向けられていた。
繋がりは、力を発揮するための大切な源だ。誰かを守りたい、彼のその勇気は、彼の普段の愚痴や泣き言を同期らがなじっても、見下すことはしない鉄の心持ちだった。
『私』にも大切な物はある。
ここから先に家族はいなくても、この場所があるじゃないか。
皆で必死に汗水を流した訓練地が。サシャと行った狩猟区が。
アニ達と出掛けた市場が。
そして、今奪われようとしている、トロスト区が。
ここで死ぬつもりはない。けれど、もう奴らには奪わせはしない。
私達は、ならなければならない。
市井の希望に。
そう固く誓い、私はこれから始まる作戦の説明を受ける。
ーーーーーーー
私はトロスト区の北端の壁上で、作戦の内容をアルミンから聞かされていた。私はアルミンと同じ班だったためか、他の者たちが地上で作戦の説明を受けているところ、私だけが壁の上に呼び出されていた。
地上では匂わなかった、焦げた木材と血の匂いが、南からのそよ風で運ばれてくる。
「アルミンと一緒か。そして、今度は二人一組で巨人を誘導すると」
「うん。各地に散らばる巨人を一斉に北に向けさせるには、少人数で各個体を確実に誘導する方がいい。多人数編成の班だと、あらゆる方角から同時に多数の巨人が寄ってくることになるから」
「なるほどな。『私』は誘き寄せることを念頭に置いていたから、より人数が多い方が有力だと考えてた」
「その方が確かに食いつきやすいけど、討伐の必要がない以上、導線の作りやすさや、仲間との連携の取りやすさを重視したんだ。」
「さすがだな、アルミン」
「僕だけじゃないよ。今ここにいる駐屯兵団の方々にも、作戦の立案を協力してもらったんだ」
「そうか。なら、挨拶も兼ねて、彼らにも礼を述べてくる」
「わかった。じゃあ、また後で」
この幅20メートルも無い細長い壁の上。そう遠くない距離をもったいつけて歩いた。
「君は!」
「お久しぶりです。リコさん。ミタビさん。イアンさん」
「ああ!一年前の年明けから任務に参加した、あの生意気な訓練兵か!」
「よせよミタビ。もう彼は卒業したんだ。立派な兵士さ」
この状況下でも、彼らの軽口は変わっていない。ハンネス隊長の手紙のやり取りでも、そう聞き及んでいた。
「順調に卒業できたようで良かった。んで、上位10名には入れたのか?」
「いえ。残念ながら力及ばず」
「なんだい。手応えがあったんじゃなかったのか?」
「事情が変わりましてね。自分は思っていたより未熟でした」
「あの任務の中で十分解っていたと思うんだがな」
「ほおん。てっきり簡単に同期どもを蹴散らしてると思ってたんだが。残り一年で、仲間の成長が想像以上だったのかもしれん」
「まあ、新兵は新兵だ。あっちの並みの兵士百人分の逸材とやらには敵うまい。あれと同じ訓練地だったのは少し同情するね」
「おいミタビ──」
「貶してなどいねぇよ。これはアドバイスだ。いいか新兵。未熟でいいんだ。何かあったら、迷わず他を頼れ。あん時言ってた大言をフイにするなよ」
「解りました」
「じゃあ、早く行ってやれ。あ、あと手紙はハンネス隊長と一緒にしっかり読んだからな」
「はい!」
ハンネス隊長の秘匿性の甘さにややカチンと来ながらも、アルミンの元へ急いだ。