進撃の巨人2 名もなき英雄の軌跡   作:なげすて

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狭間の章 『彼』の祖と同志たちが手繰り寄せたもの
第45話 演習と謎


─1─

 

『さて、新兵達の入団から一ヶ月が経過した。第57回壁外調査まで残り一ヶ月まで迫っている現在、我々は大規模な演習を行うことになっている。ただし、目的地は壁外ではなく、北のユトピア区だ。ルートも壁内だ』

 

『彼』の記憶の中で輪郭がやや曖昧なディルクが、指し棒で黒板を叩きながら説明する。

 

『これまでの遠乗りに信煙弾を携行させ、指定のチェックポイントまで移動し、煙弾を真上に打ち上げるという訓練は、その長距離索敵陣形の訓練の前段階と言ってもいい。煙弾はこの作戦の命綱だ。一人がまごついていては、全員の連絡に支障が出る。この演習では、本番同様の内容で実施する。心して臨め!』

 

数週間繰り返し訓練を続けてきた兵士達の中に、やや足早なディルクの説明で質問を必要とする者はいなかった。ごく数人を除いて。

 

現在『彼』が駆けているのは、ウォール・ローゼとウォール・シーナの間の平野。カラネス区の西部内門から出発し、北のユトピア区を目指して、団長を先頭に北北西方向へ馬を走らせている。約200名の調査兵が、広く散開して北へと向かっている。

 

西から、一筋の煙が矢のように上がる。巨人の出現を知らせる赤の煙弾。本来なら緊張の走る瞬間だが、『彼』は眉一つ動かさず、手持ちの赤の煙弾を空に打ち上げる。横着することなく、突然巨人が出現したときのように、手早くソケットから弾倉を取り出してセットする過程もしっかり実行した。無事に煙弾が上空へ昇るのを視認して正面に向き直り、数キロメートル先を先導する団長の指針を待つ。

 

「さて、団長の指示は……」

 

東を指すように、緑の煙弾が『彼』の視界の右へと放物線を描く。

 

「東方向か。行くぞ」

「はい。よし、そっちへ頼むよ」

 

手綱を右に拳一つ分引き、馬の頭を煙と同じ向きに合わせる。特段話しかけなくても馬は従うよう調教されていると、ネスからは聞かされているが、『彼』はクリスタの動物との向き合い方を診療所や訓練地で何度も聞いているため、つい彼女の真似をするように、親しみを込めて動物に話しかけてしまう。それに動物が応えてくれるかは機嫌次第だ。今回は目の前の草原を駆け抜けることに専心しているようで、まったくの無反応だった。

 

壁の中に、当然巨人はいない。あくまで状況を限りなく壁外に近付けるための演出だ。だが演出だろうと、それに白ける者はこの兵団にはいない。カラネス外門の巨人掃討演習を繰り返してきた結果が実を結んでいた。

 

「しっかし、俺達が中列後方になるたあ、随分手厚いお守りじゃねぇの」

「ゲルガー、いくら演習だからといって、士気を削ぐ発言はよした方がいい。本番も同じ配置とは限らないんだし」

「ナナバ。今じゃもう出発して二日と二晩が過ぎたんだ。早馬なら二日寝ずに飛ばせばユトピア区に着いてるぜ。それが、三日になろうにまだ中間地点をほっつき歩いてる。そこらの前例の無い長期の行軍。普段の壁外遠征と比べても、あくびが出そうな馬のストライド。ぼやきたくもなるってのが人情だ」

「懐から酒まで出してきそうな物言いだな、ゲルガー」

「ミケ分隊長、そりゃあ無いですよ。初めての壁外調査ですぜ。このぼやきも、新兵の緊張を解いてやらねぇとと、俺が慮ってのことですよ」

 

長距離索敵陣形にて散開した兵士達は、数人ひと塊で動くように設計されている。

 

この演習で『彼』はゲルガー、ナナバ、そしてミケ分隊長の三人に混じり行軍していた。『彼』には理解出来ていた。ゲルガーの言葉は皮肉であると。元より数が絶対的に少ない調査兵団は、他兵団と比べてもほぼ全員の顔と名前を覚えられるほど、任務での同行で重複することが多い。

 

ゲルガーの諫言も七割方おふざけから出たものだ。同期も少なく上官だらけの訓練も、一ヶ月も顔合わせもすればすっかり適応してしまうもので、礼節を欠かさず与太話に付き合う程度のことならば、『彼』を除いた新兵らには造作も無くなっていた。

 

「緊張なんてしてませんよ、ゲルガーさん。この一ヶ月、任務で何度も顔を合わせてますから」

「そいつぁどうもよ。呑みの勧誘全部断ってる割には、アツいこと言ってくれるじゃねぇか」

 

ゲルガーは不平を漏らすが、『彼』が呑める歳に未だ達していないことは自明であり、もはや定型句になりつつあるその問答に佳肴を見いだす程には、ゲルガーの心は清らかだった。

 

「それなら、君こそ素面でもよっぽど暑苦しいよ。戦闘でももう少し冷静でいて欲しいくらいだね」

「どこぞの兵長のまねっこしてる奴じゃあるまいし、そこらは弁えてんだよ、俺は」

 

だろ、とゲルガーは片眉を吊り上げ、『彼』に向かってほくそ笑んでみる。『彼』は思わず吹き出しそうになるが、片手でフードの端を手繰り寄せて膨らんだ頬を隠した。

 

確かにオルオは実力者であり、敬われるにしかるべき先輩だ。だがしかしそれが普段のおどけた態度に笑いを漏らすなと命令させるほどの拘束力は無い。ほか班だからと気が緩んでいたのだろうか。

 

「んで、【異形の巨人】とやらはこの辺りにはいないんだろうな。いまだソレ用の煙弾は上がっていないが、しれっと壁の中をうろついてるかもしれねぇしな」

「【異形の巨人】、ですか?」

「例の、『お前』が普段いる班が報告した巨人のことだよ」

「ああ、多くの普通の巨人に混じって、妙な匂いとともに現れるタイプのことだ」

 

異例の存在が言及されたか、兵団でも異例の嗅覚を持つ男、ミケが口を開いた。

 

「ミケ。匂いで判別できるのか、あの妙な巨人が」

「ああ。どちらかというと、あまり好かない匂いだ。区別が着くようになったのは、リヴァイ班が報告した巨人が二件目だったからだ。だが今は普通の巨人の匂いも、その例の異形とやらの匂いもしない。安心しろ」

 

使う信煙弾も完全に同一だが、唯一この演習で演出目的で打ち上げることが無い煙弾は、黒の煙弾。これは寄行種の出現を知らせる煙弾だが、特別な事情を除いて、これを演習の名目で打ち上げることは制限されている。

 

リヴァイ班の報告に挙がった、【異形の巨人】。その存在、生態の歪さを警戒し、本演習中ではこれの出現時のみ、黒の煙弾を打ち上げることを敷かれている。幸い、ユトピア区にたどり着くまで、『彼』らがこれを打ち上げることない。

 

【二件目】という言葉に『彼』の胸はつかえた。ハンジ分隊長が言っていた、鎧の巨人の出現。旧調査兵団本部で最初にその存在を聞かされてから、実に一ヶ月となる今日まで、その存在の詳細を、『彼』は聞きそびれていた。忙殺されたとも言えるし、ハンジとも任務を同じくすることもあったが、その話題が上ることもなかったのだ。

 

(そもそも、もし本当にあの鎧の巨人なら、迂闊に姿を現すことがあるのだろうか。)

 

調査兵団の現状では、超大型巨人、及び鎧の巨人には知性があり、さらに中に人間がいることをほぼ前提としている。エレンという前提があったからこそ、二つの巨人が行った大虐殺が、明確に人間の作為によりもたらされたことに確信を得ることが出来たのだ。

 

(それなら、分隊長が触れた鎧の巨人はきっと、【異形】の個体なんだろう)

 

異形の巨人の情報は兵団に広く知れているが、新聞などにまでは渡っていない。普通の巨人よりは特徴はあろうと、二体の知性巨人ほどの脅威であるかは、まだ見定める段階である。

なにより、市民にこれ以上の混乱を招くわけにはいかなかった。

 

【異形】の鎧の巨人がどこにいるのかは知らされていないが、『彼』はその推測を立ててもなお、鎧の巨人に抱く怒りは、異形の巨人には向いていなかったし、そこまで憂慮する問題でもないだろうと考えていた。調査兵団内部で情報が共有されていないということは、まだ討伐していないということなのだから。兵団総出で異形の巨人を討伐したという嘘で覆い隠すことも可能とは思えない。だから、『黙る』選択をしたのだろう。

 

「ミケ分隊長」

「どうした、新兵」

「その、今訊くことでは無いのかもしれませんが、ミケ分隊長の鼻が持つ嗅覚って、生まれついてのものなんですか?」

「生まれつきのものだ。子どもの頃多少困りはしたがな。特に辛いものは一段と辛く、悪臭はさらに鋭敏に嗅ぎとる」

「想像は出来ます」

「だがその厄介な能力も、今では兵団には無くてはならないほどのものになってる。新兵、お前の耳の良さも、きっと何かの役に立つだろう」

「ええ。きっと」

 

『彼』の持つ優れた聴覚は、一部上官達の間で、その利用価値を審議されていた。畢竟、ミケに匹敵する有用性を保持する、と。その能力から本演習で伝令の役を買われ、陣形の中心から方々へ伝達を行っていた。次の伝令のためミケから派遣されそうになったところで、目ざとくゲルガーがある方向を指差した。

 

「やっとこ見えてきましたぜ、例の山が」

「ああ。思ったより早く着いたか」

「予定どおり、中間地点であるここで兵団全体を一度合流させ、長めの休息を設けるぞ」

「長めっつったって、この遠征じゃあ頻繁に休んでいたからなあ。二時間走って三十分休んで。この例じゃあまた待ちぼうけかもしれねぇな」

 

たどり着いた一行はすでに到着していた複数人の調査兵に出迎えられ、出迎えられたゲルガー達もそれぞれが労いあった。

 

 

 

 

カラネス区から出発して三日目を終えた午後3時頃、青の顔料の産地の村に停泊を決め、各自が待機していた。

 

やや青の混じった粘土質の土がうっすらと浮かび上がるこの山地に新兵たちは少し物珍しさを覚えたが、好奇心を満たすような俗的な物はほぼなく、まさしく顔料の元となる粘土質の鉱物しか出てこないため、直ぐに新兵たちは落ち着きを取り戻し、これまでの行軍を振り返り、思い出話に花を咲かせるのだった。『彼』もまた午後三時頃から夕食、就寝までの間、一時的に自由行動を許されており、すずろなるままに『彼』は、とりあえずより高い所へ向かって歩いてみた。

 

平坦な地平が大半を占める壁内だが、この産地の標高はやや高い。山頂はきっと、旧調査兵団本部がある山よりも高いだろうか。鉱山ゆえに採掘に必要となる箇所の近辺の木々は切り開かれており、坑道の屋根の上に足を掛ければ、容易く山下を見通せる。

 

ただ、この山よりも高い山は当然あるもので、視線を南へ向ければ、消失点にウォール・シーナがよく見える。もっと目を凝らせば、例の滝とやらも見えるだろうか。そういえば、マルロが手紙を寄越していた。内地での勤務を始めて一月が経ち、相も変わらずの上官の腐れぶりに胃に穴が開きそうだ、と。彼とは三年の間に診療所で何度か顔を合わせていた。

 

荷物引きからその高潔さを買われ、いいように足にされていただけだが、彼はそれをまるで課せられた使命かのように、一生懸命取り組んでいた。今でもきっと、あの内地でそうしているのだろう。そのひたむきさを、『彼』は愚かさと詰るような悪辣さは持ち合わせていない。

 

(一人になると、いつもそんなことを考えてばかりだ。元気にしてるだろうか、とか、そんなことばっかり。)

 

ただよう青の顔料の香り。一応故郷の匂いだし、それらを一つ程頂いておこうと、『彼』はこの先にある売店で、青の顔料を一瓶ほど買っておいた。

店主は小高い直売所に、しかも兵士が買いに来たことに驚いていた。近頃は掘る人は増えても買う人がおらず、一部の芸術家がこぞって買っているというのだ。

労働力の供給ばかりで、需要が追い付いていないこの始末に、一度販売自体をストップするよう鉱山に掛け合うつもりのようだ。

 

店主の苦労話も話し半分に聞いていたが、『彼』はその隣に位置する、ある店に吸い寄せられるように近付いた。

 

その店には、二枚の看板があった。

 

一枚の看板には、『極北の名水、ひと瓶───』と書いてあった。もう一枚には、

『裏口にて待つ』と書いてあった。前者は誰の目にも止まるよう吊るされていたが、後者の看板は壁に無造作に立て掛けられており、その文字はまるで書き損じていたかのように誰にも読めず、気にも止めていなかった。『彼』以外には。財布に掛けていた『彼』の手は止まり、ただ無造作に置かれたその木の板を、目を見開いてただ黙って眺めることしか出来なかった。

 

呆然とする『彼』の後方から、吊り看板に向けて実直そうな声が出る。その声に『彼』は我に返り、声の方角通りに頭を左ななめ上に向ける。

 

「おっ極北の名水かあ…いいねえ」

「モブリットさん。名水が何か?」

「ん?ああ、大した話ではない。新兵に話すことでは─」

「堅いなあモブリットさん!あんたが酒大好きだってことくらい、新兵に話したっていいでしょうが」

「ゲ、ゲルガーさん!素面なのに寄りかからないでくださいよ。ちょっと肩凝ってますんで」

「あはは、悪い悪い。なんですか、またそっちの分隊長が巨人への愛から粗相でもしましたか?」

「逆ですよ。何も起こらない壁内に三日も走り続けてるから退屈だと、私にこれまでの研究の進捗を報告させ始めたんですよ。口頭で」

「なんだって?研究なんておたくらが散々担当してきたのに、今さら副長がそらんじたところで新鮮味が無いでしょう」

「いやはや、全くその通りで、結局、過去の資料について分隊長と論を交わすことになりましたよ。お陰で喉がカラカラです」

「ははあなるほど。今はとにかく水がほしいと。それなら、名水に加えて、コイツなんてどうです?」

 

喉をさするモブリットに、ゲルガーは懐に忍ばせていた安酒を取り出して見せびらかす。

 

「……ゲルガーさん、分かってるでしょう」

「あ?何が?」

「ユトピア区には上等な酒があることを、ですよ」

「何ですか、だからってこの酒を断る理由もないでしょうに。あ、まさか、旨いものは最後までとっておくタイプですか?あるいは、好きなもののために他のものは食べないタイプですか?」

「酒の席で何度か言いましたよ、それ。ゲルガーさんが忘れてるから…」

「いやあすんません。毎度潰れてしまうもので。……あれ、ところで新兵はどこに行ったんだ?」

「きっと話し込んでる間に帰りましたね、多分。私たちも早く買って帰りましょう。呑むなら、翌日に持ち越すことが無いよう、早い方がいい」

「おっ、分かってますねえ、副長!」

 

ゲルガーははしゃいでモブリットの背中をこれでもかと叩き、モブリットの代わりに若干掠れた声で「極北の名水二瓶!」と頼んだ。

 

 

 

─2─

 

『彼』は店の裏口で、ゲルガーの注文する声を聞き、戸口に添えた拳を全力で引き戻した。「おうこれこれ」とゲルガーは手をたたいて喜び、喉を大きくならして空の瓶をカウンターに叩き付ける音を立てて、「もう一瓶!」と大声で頼む。『彼』は逸る心臓を押さえて辛抱強く待ち、ゲルガーとモブリット、二人分の足音が遠ざかり、完全に消えるのを耳で確認してから、裏口に掛けられた板を見る。さっき掲げた自分の手が行う動作に、間違いが起こらぬよう確認するために。

 

裏口には『彼』にしか読めない文字で書かれた、もう一枚の看板があった。故郷で『彼』が解読するべく躍起になって読んでいて、今では日誌の読まれたくない箇所に用いていた、古代の生物を記したあの本と寸分違わない文字で書かれたそれを、『彼』は黙読する。

 

『扉を三度叩き、二拍置いてさらに二度叩け』と書かれていた。

 

『彼』は目視した看板の手順通り、裏口の扉を叩いた。

 

数秒の沈黙の後、木製の扉で大して響かない残響がなりやむ程度の秒数の後、足音がした。一歩一歩、外にいる『彼』に近付いてくる。『彼』の聞き耳はその精緻さから、足音の大きさや種類、間隔から、その歩む人の体格や履き物を言い当てることが出来る。

 

『彼』はその足音から、様々な想像を巡らせずにはいられなかった。自分の家に置かれたあの一冊の本。そこに記された未知の文字を知っている誰かが姿を現す。親にはこの文字のことを明かさないよう固く言いつけられていたのに、別の誰かがこれを知っている。両親の親類か、友か。それとも、あの文字はすでに割られていて、特定の学会とかで用いられているものだったりして、今その扉の向こうにいるのは、その同好の者である、とか。

そんな頓珍漢な予想の中でも、一つの選択肢は想像に昇る前には潰されていた。

 

(父さんと母さんは死んだ。ここで、『もしかすると生きているかも』なんて考えられるほど、私は楽観的ではいられなくなったんだな。いずれにしても……)

 

いずれかの予想のうち、一つくらいは当たるのかもしれない。だがしかし、今から明かされるであろう事実に、『彼』はしかと身構えることは忘れていない。

 

(出てくるのか。この文字を知っている、誰かが……)

 

しかし、足音は扉の前で止まり、扉が開くことは無かった。

 

代わりに一枚の紙が、扉の下から出てきた。『彼』が身をかがめて拾ったその紙には、また『彼』にしか読めない文字で、こう書かれていた。その文言を見て、『彼』は首を傾げる。

 

『青の顔料と巨大樹の樹液をあらん限り集め、黒く染められた地を目指せ』

 

(前半部分はまだ分かる。だが、後半の黒く染められた地ってなんだ?暗示か何かか?)

 

紙を裏返してみても、日時や、地図など書かれていない。『彼』は恭しく尋ねてみる。

 

「あの、地図か何か頂けませんか?」

 

沈黙が数秒続いた後、足音は扉から離れていき、戻ってくることは無かった。『彼』が扉をもう一度同じ手順で扉を叩いても、扉の向こうの誰かが応じることは無かった。まるで、役目を終えたかのように。

 

「これだけですか?まだ何かありませんか?」

 

『彼』は思わず食い下がるも、返事は返ってこなかった。もう一度同じ手順で扉を叩くも、その無遠慮な演出に乗ってくる相手ではなかった。

 

(これで終わりか。誰かに訊く訳にはいかないな。私にしか読めない字で記してる以上、動機は私と同じだ。なるべく読まれたくない筈だ。読み直すと、前者の内容は非常に具体的だ。だが後半は……これだけでは全く断定できない。答えがもらえないし、相手は自分の落ち度とも思ってない。じゃあ仕方ない。今はとにかくこの紙の指示通り、顔料と樹液を集めてやろう)

 

『彼』はとうに懐にしまった紙の代わりに顔料の入った瓶を取り出して眺め、その後、透明な瓶の向こうに見える地面を見つめながら、踵を返して長い時間を掛けて宿屋に帰った。

 

翌日の四日目、終盤の行路で巨大樹の森を立体機動の演習場として利用し、さらに翌日の五日目、ようやく調査兵団は、ウォール・ローゼ北端、ユトピア区に到着した。

 

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