進撃の巨人2 名もなき英雄の軌跡   作:なげすて

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リヴァイ兵士長視点でのお話


第2章最終話 第53話 サイド:リヴァイ─結成記念に当て布を─

俺に日記を付ける習慣は無い。

無駄な習慣だと考えてはいない。兵団の報告書や署名、任務で十分手は酷使しているつもりだ。いつでも躊躇なく動ける判断が出来る自負があるからこそ、その判断に身体がついていけることを当然とすべく、調節する必要がある。

 

 

俺は今、カラネス区の審議所の一室で、適当に過去の判決を記した本の頁を捲っている。物資の運搬の関係でより東に近いここを、エレンの軟禁場所として借りているこの生活は、累計で10日は経過した。掃除はとうに終えている。一度大々的に掃除したから何日か放っておいてもいいだろう、というどこぞのメガネのようないい加減な判断は許さねえ。

 

「アイツら……」

 

俺の部下は今日の正午前から、現在の夕方の直前の辺りまで姿を現してねえ。個人差はあれど6時間もあれば、誰かしらは戻ってくるものだ。朝方言っていた、「どうしても外せない用事がある」、という言葉には、日課の掃除は素早く終わらせるが詰めを甘くする、という含蓄があったのか?……まあ、このリヴァイ班が結成される前から、アイツらが新兵だった頃から叩き込んできたこの技も、4年も生き残ればそれなりのモノにはなっている。俺が手入れを加えた箇所は5つと無かった。

 

持って殴れば人を殺せそうなほど厚い本の内容にいよいよ目が滑り始めた頃、俺のいる部屋の扉がノックされた。

 

「リヴァイ兵士長、ただいま戻りました」

 

ドア越しのくぐもった声は少し震えている。自覚はあるようだな。

 

「エレンか。入れ」

 

今日のアイツらは、出掛ける際にエレンも借りて出ていった。「失礼します」という一つの声に対して、入ってくる人の数は随分多かった。

 

「6人全員いるな。なら、まずは今朝の掃除の──」

 

突然銃声のような音が2つ鳴り、俺は即座に臨戦態勢に入る。音の出所を探していると、目の前には色彩豊かな花束と一つの包みが、ペトラの手によって差し出されていた。

思わず呆気に取られた俺は、エルドとグンタも何か手に持っていることを視認した。ガキがよくこさえる、でけぇ音を立てる細工がされた折り紙だ。

 

「お前ら、なんのつもりだ」

「今日で結成2か月でしょう?一ヶ月の時は、異形の巨人の討伐で流れてしまいましたから」

「だから、結成2ヶ月を記念して、兵長に贈り物を送ろうと、前々から考えてたんですよ」

 

コイツらは、いつもそうだ。余計な手を回して、俺の機嫌を取ろうとする。以前にもそういう部下はいた。そいつは俺の誕生日を聞きたがっていた。知らないと答えたら悲痛なツラを浮かべやがったから、今の班にはそもそも秘密だとして伝えてねえ。叱ろうとすると言葉が出る前に目に涙を浮かべるから止していた。今回も念のため、コイツらの意図をあえて汲んでやる。理解できねぇ。明日の命も分からねぇのに、コイツらは何がなんでも記念日を作りたがる。

 

「中身、見てもいいか?」

「はい!それでは」

 

オルオがぎこちない所作で包みをつまんで広げれば、そこには一枚のスカーフが横たわっていた。

 

「どうです?俺が一生懸命探した仕立屋の、特注品です!」

「『新兵』の協力もあったけどね。『彼』、普段から街のことも記録していたみたいだから、候補を何件か探してくれていたのよ」

「勿論、俺だけじゃねえよ。俺達全員で捻出した金で、店主に事細か~~に要望を纏めて出したんスから。どうですか?絶対似合うと思うんですか!?」

 

オルオ、なんて面してやがる。

 

……部下がこういう行動を取る度に、あいつらの顔が過るのを止められない。

 

『リヴァイ!』

『リヴァイの兄貴!』

 

後悔は残さない。俺はそう決めている。コイツらがこの選択を後悔しないというのなら、受け入れてやる。

 

……いや、この場合、後悔させないのは俺の行動次第か。

 

「ああ。貰っておこう」

 

俺は何一つ変わらねぇ貌で、コイツらが必死な面して探したであろう贈り物を、ほつれねぇよう取る。少し触れただけで、心地が全く違うのが、分かる。

 

「それで?これ一つで終わりなのか?」

 

俺はその言葉がすぐに催促の意を含んだものであると発した後に察知しすぐ取り消そうとしたが、待ってましたとばかりに、一人の兵士が一歩前に出る。

 

「えー、それでですね」

 

『新兵』が手を揉みながら、俺にある提案をしてくる。

 

「贈り物といっても様々な形式を想定していたんですよ。もの一つでいいのか、それとも体験の方がいいか、とか。そんな中で、少し割高ですが、それなりの美味が集まる料亭を町人から窺いまして……ええ、一週間ほど前に、予約してあるんですよ」

 

俺はその古典的な小芝居にフッ、と愛想笑いで好評を示し、答えた。

 

「いいだろう。その料亭とやらに案内しろ。不潔な店なら、分かってるだろうが」

 

コイツらはなぜか俺の空笑いに青ざめていたが、答えを聞くやいなやいつもの顔色を滲ませる。

 

「そうと決まれば、今すぐ行きましょう!」

「カラネス区内にあるんですよ、その店が!」

「勿論俺達の監視付きだがエレンも来い!今日は多分……兵長の奢りだ。たらふく食うぞ」

「おい待てそこまでは──」

「肉が出るらしいですよ、そこは」

「肉の問題じゃねえ」

 

俺の部下は想像していたよりもふてぶてしく、がめつかったようだ。

だが、こんな日も悪くねぇ。ただ、そう思った。

 

俺達はカラネス区の審議所の控え室から、各々の歩調で出ていった。

 

後に新兵が見つけたその店は、案の上その手の店だと会計時に判明し、俺は今日1日かけて読んだ法廷知識の一端を披露する羽目になった。味だけは、間違いなく良かったんだがな。

 

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