─1─
立体機動の適性を見られた私たちだったが、すぐに実践に移るわけではなかった。
あくまで適性があるかどうかが分かっただけでは不十分なのだ。強靭な肉体が伴わなければ。
南方訓練地での立体機動の講義に当たる時間は、最初の数か月間、身体の鍛錬に充てられた。腕立て伏せ、懸垂に上体起こし、スクワット、フォワードランジにサイドランジと、自重を活かした鍛錬を徹底的に叩き込まれた。
規定の回数、セットを一人でもこなせなければ最初からやり直しとなり、その分他の科目の時間は遅れることとなる。初日は悲惨なもので、明け方から始まったにも関わらず、誰かしらが音をあげ、身体の鍛錬だけで丸一日が潰れることになった。まさか芋女を笑えなくなる日になるとは思わなかった。どこ吹く風でこなした者は数名といなかった。
私自身、開拓地で唯一の若者だったため、もっぱらの力仕事は押し付けられ、自信の筋力には多少自信はあったのだが、使われる筋肉の箇所がまったく異なるこの訓練にはたいそう面食らった。
身体の鍛錬と並行して、超硬質ブレードに見立てた長物の素振りの訓練も実施された。長物は二種類あり、実際のブレードと同量の重さを持つ木刀と、実際のブレードの厚みと長さを再現した模造刀。前者はまず動作そのものへの適応のため、後者は間合いの把握のためである。
事実、私はは満足にブレードを振るうことができなかった。重量は問題ではなかったが、振った際の独特のたわみが驚かせる。巨人に見立てた実寸大の模型を実物のブレードで切りつける訓練でも、刀身がひどくしなるためにそもそも刃を突き立てることすら叶わず、いたずらに肉を撫でたり叩いたりした挙句、教官にこっぴどく怒鳴られた。
無論、私以外にも勝手の分からない人は多かった。毎日振り続け、手はマメが潰れ、血だらけになりながらもなお、振るのをやめない。遅々たるものだが、確実に標的に近づいていたからだ。巨人を倒す、その目標に。
だが、この時点で少しずつ差は開き始めていた。すんなり適応した者、不慣れなまま幾日も進捗が無い者。実力の二極化が進んでいた。
最も優れた者は、ミカサ・アッカーマンだった。彼女は持たされたブレードを少し眺め、見終わるや否や、模型の肉を一太刀で切り落とした。私たちがあんなに苦戦した会心の斬撃を、彼女は碌な素振りもせずに、呼吸するように振るったのだ。
他にも、ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、アニ・レオンハート。この三人も適応が早く、とてもではないが追いつけない。正直悔しい。
訓練開始から1か月、とうとう死人が出てしまった。崖上りの訓練の最中だった。命綱はもちろん付けていたが、落下の途中でひどく体を打ち付けたらしい。犠牲者の友人たちはひどく悲しみ、涙を流す者もいた。
しかし、死後の扱いはあまりに無情なものだった。群がる群衆を押しのけ、担架に乗せられた遺体はすみやかに訓練地の外へと運ばれていった。教官は眉一つ動かさず、訓練の続行を命じた。訓練兵たちはオドオドと恐慌していたが、再び発せられた教官の一喝に、すぐさま態度を改めた。
”訓練の途中で死ぬ程度ならば、どの道巨人とは戦えない。”
その重圧をひしひしと感じた。きっと、教官は事故で亡くなる訓練兵たちを何人も見てきたのだろう。だが、死者のあの、生気を失った無情な瞳は、私に暗い影を落とした。
・・・立ち上がらなければ。追い抜かされたくらいで泣き言を漏らしている暇など無いはずだ。私は自分を奮い立たせ、また訓練へと向かった。
─2─
本格的な立体機動の演習が開始されたのは、訓練地にきて3ヶ月ほど経ったときのことだ。ようやく、私たちは立体機動装置を身に着け、巨人に立ち向かう、本格的な訓練を実施するに値するほど、成長を続けた、と判断されたのだろう。
三人一組の班に編成され、訓練が始まる。私は、トーマスとミーナと一緒に、訓練を開始する。
「難しそうだけど、みんな一緒に頑張ろうな!」
「うん、開拓地行きなんてごめんだからね!」
二人は気合十分なようだ。
「ああ、私も全力を尽くす!」
負けられないんだ。
やや開けたグラウンドから出発し、両側を崖に挟まれた谷を目指して走る。
崖までたどり着く。いよいよ、立体機動装置の出番だ。ブレードの柄を確認する。まず、柄の先端後ろの突起で、崖の上のほうに狙いを定める。次に、ブレードの柄の辺りにある、縦に二つ並んだトリガー。そのうちの上のトリガーを押す。腰に付けられたアンカーが発射され、崖に突き刺さる。
よし!
柄の前の辺りについたレバーを引く。ワイヤーの巻き取りが始まり、私は、ついに空を飛ぶ。二番目のトリガーを引き、ガスを噴射、慣性が前へと発生し、推進する。
「トーマス・ワグナー!できないなら貴様だけ歩いて移動するか?」
「ミーナ・カロライナ、何をしている!そんなザマでは家畜以下だぞ!」
「か、必ずやり遂げます!」
数か月がたってもなお、完全に適応できたとはいいにくい。器械体操、バンジージャンプ・・・立体機動を疑似的に体験する活動は頻繁にやってきたものの、実際に何メートルも高く跳び上がる感覚にはまだ慣れない。だがそれは、ほかの皆も同じはずだ。
負けてたまるか。
「ふんッ!」
ワイヤーでブランコのように自分を空中に放り出し、最高高度で思い切りガスを蒸かす。これで最高速度を出せる。ガスの慣性がなくなれば、再びアンカーを刺して下向きの放物線を描く。上昇と下降、交互に放物線を作る。大雑把だが、これが私のやり方だ。
目標地点の広場まで、トーマスやミーナを追い越して、真っ先に着いた。まあ、私たちは最後に出発した班だから、ここまで急がなくたっていいのだろう。
「移動は貴様が一位だ!これで立派な囮になれるぞ!」
教官の嫌味たっぷりな賛辞を聞かされたところで、次の訓練に移る。
「次は巨人を模した目標を相手に、戦闘の基本を学んでもらう!」
金属製の支柱を持つ、薄い板状の物体が起き上がる。それは、五、六メートル級はあろう巨人を模した、大型の模型だった。巨人は斜めに立っており、腹部のあたりから地面へ二本の棒が伸びている。一本は地面に対し垂直に伸びており、巨人の体重の支点となっている。もう一本は、巨人の真下の円形の台座の内周に伸びている。
私は再び空中へ飛び出し、ブレードを構える。狙うべきは、うなじだ。
近くにアンカーを刺せる立体物は無い。よって、直接巨人にアンカーを刺し、突っ込むことになる。いざ実践だ。
アンカーを飛ばす。刺さった。
「よし!」
キリキリとワイヤーが巻き取られ、急速に巨人に接近する。
「ふうー──」
呼吸を整え、心を落ち着かせる。大丈夫だ。手を血だらけにしてまで振り続けた、この両手なら。
「このっ!」
タイミングを見切り、思い切り振り抜く。ザクッという音とともに、うなじの肉を削いだ感触。地面に降り立ち、振り向くと、見事に深く、巨人のうなじを削ぎ落していた。
「やった。」
たったこれだけの工程だったが、手足はひどく震えていた。模型を相手にだが、この確かな手ごたえを嚙みしめる。大きく深呼吸し、震えを抑える。ついに、私にもできた。
「おーーい!」
トーマスとミーナが駆け寄る。
「凄いな!俺たち立体機動を初めてやるのに、お前はさらにうなじまで削いじまうなんてな!」
「ああ。・・・ああ!私にもできた!」
トーマスに指摘され、改めて自覚する。訓練でも、巨人を倒せた。これだけで自信は大きく身に着いた。
「おい!次の訓練に進め!」
教官が私に向かって急かす。
「ごめん、教官がああだから・・・二人とも頑張って!」
「私たちはこれからね!頑張りましょ!」
「おう!負けないぜ!」
ミーナ、トーマスは踵を返し、模型へと向かう。
私は次の訓練地へ。
次は大型の巨人だった。ただ、条件はさっきとあまり変わらない。一つ異なるとすれば、うなじに加え、腱にも切断可能な俵が用意されていたことだ。
(二か所狙わなければならない・・・ということか?)
「大型の巨人は攻撃の素早い選定が肝だと覚えておけ!」
教官が言い放つ。
真っ先にうなじを削いだ私に、意図を解説したようだ。手を煩わせてしまった。
「ご鞭撻感謝します!教官!」
「貴様に言ったのではない!」
「はい!善処します!」
「人の話を聞け!」
私も口が減らないものだ。だが、巨人を弱体化するために、狙う部位を的確に判断することもまた重要である、ということか。
納得した。
「これより本日最後の訓練を開始する!」
(最後の訓練?)
「これから多数の目標が出現する!迅速に索敵し、撃破せよ!」
来たか。
これまでの一体一体撃破していたのとは違い、ペースを速め、対応もまた素早くしなければならない。思い出せ。さっきの感触を。確かに切り裂いたあの感触を。
やってやる!
思い切りガスを蒸かし、一直線に標的へ向かう。幸い、まだ誰にも狙われていない。
「うおおおお!」
勢いのまま、思い切りブレードの切っ先を合わせ、振り抜く。後方を一瞥すると、しっかり部位を切れている。しかし、ある一点に気づく。
(まただ。足首に当たる位置に、うなじと同じような俵がある。)
そう。どうやらこの試験、討伐数ではなく、破壊した部位の数で順位が決まるようだ。だが、先ほどうなじを削がれた模型は器用にもとの倒れた態勢に戻ってしまった。
(足首、うなじの順で撃破しなければ、最大の点数は確保できない!)
ガスで加速した慣性を殺さないよう、ギリギリまでアンカーを射出しない。慣性が伸びきったところで、ようやくアンカーを射出する。
(そして・・・)
再びガスを思い切り蒸かす。とにかく素早く発見し、足首から撃破する。
そしてこの訓練では、チームワークを必要としない。
(手段は選んでいられない!)
私は次の模型を探し、高速で空中を駆ける。
風切り音の中で、言い争う声が聞こえる。
「俺が先に目標を見つけたら・・・横取りすんじゃねぇぞ!」
ジャンの声だ。しかし、声は複数あった。
「意外とぬるいことを言いますね、ジャン。獲物を狙うのに作法が必要ですか?」
「そうだ、取られるお前が悪い。」
声のする方から推測するに、彼らは立ち止まっている。ならば、彼らの進行方向を予測して、前もって目標を枯らすか。
「よしっ!」
読み通り、ジャンたちの言い争う少し先に、隠れてはいるが目標がいる。
すぐさま、ブレードで刈り取る。
(次だ!)
「オイオイ、何だよその立体機動は・・・少しは俺を見習ったらどうだ?」
ジャンが飛んで過ぎ去る私に指摘する。その技術は後から教えてもらうとして、
(気づかれていないな。)
どうやら先回りして点数を稼いでいることを気づかれてはいないようだ。
「ついてくなら、ミカサか、ライナーか・・・ん?何だ、お前かよ。」
坊主頭・・・。確か、コニー・スプリンガ―、だったか。初日、教官に頭を鷲掴みにされていた人か。
「・・・。」
思い切りガスを噴射し、他に切り込めそうな目標を探す。この戦いに、私はある種の願掛けのようなものを思いついていた。
(この作戦で一位を取れば、立体機動のコツが掴めそうな気がする。)
実際、制限時間が設けられ、かつ破壊した部位の数がそのまま得点につながるこの状況は、解釈を拡大すれば、より多くの人々を救える行軍のような、そんな一件も想定できる。
鎧の巨人を倒す前に、普通の巨人も倒せないようでは、到底足りない。
何より、まだ実力差が開いていない今なら・・・。
ガス、刃を補給できる拠点が点在するこの敷地内で、私は燃費もよそに思い切り飛ばす。
(これが、私の出せる全力だ!!)
ここで、自分がどこまで戦えるのか、試すために。
─3─
時は同日夕暮れ。最優秀成績者に選ばれた私は、図に乗っていた。あのあと、他の兵士の探知の外を突いたり、部位の破壊にてこずったりしている仲間の獲物を横取りしたり、なかなか卑怯な手段を講じて点数を荒稼ぎしていった。
途中、明らかに一部兵士に嫌な顔をされたが、芋女の論理を鞭撻したら苦虫を嚙み潰した顔に変わった。
・・・芋女の評判がどんどん地に落ちていくような気もする。ごめん!あの人には今度何か奢ろう。まったく身に覚えがなくてびっくりしそうだけど。
「・・・まだまだ、これからだ。」
訓練が終了した後も、食事も忘れ、一日中森で立体機動を続けていた。
(・・・!いた!)
大型の巨人の模型が一体。
(ここからでも狙える!)
距離を測り、左方向に身をよじらせ、アンカーを射出する。ワイヤーは張りつめているが、模型にまで届いた。
(よし、これなら!)
しかし、
ブツッと音がして、アンカーがすっぽ抜けた。
(あ)
私は現在、地上から十メートル以上離れている。ワイヤーの巻取りも間に合わない。このままでは確実に・・・
(死ぬ!)
意思は明確だが、何もできない。掴まれる枝も無い。ただ、落ちるだけ。
不意に、崖上りの訓練での、あの死者の目を思い出す。暗く、冷たい瞳。
「あっあああ!」
空中で手足をバタつかせるも、何も起こるはずもない。このまま死んでしまうのか。
(いやだ!)
「大丈夫か!?掴まれ、引っ張り上げる!」
声がした。と同時に、体重をまるごと引っ張り上げられる。ライナーだった。私を助けてくれた。
「今行く!」
ベルトルトも続く。この訓練地屈指の体格を持つ二人に引っ張り上げられる。この二人に比べられたら、私なんて羽も同然だった。
「・・・無茶させやがって・・・焦って姿勢を崩したんだな。」
「でも、無事でよかったよ。」
「ああ、本当にごめん!そしてありがとう!」
さっきまで死の恐怖に晒されていたのに、謝罪と礼の言葉はあっさり出る。親の教育の賜物か。それともアドレナリンでおかしくなってるのか。
興奮と恐慌、相反する感情二つで挟まれて急速に胃酸がこみあげる。
「うっぷ・・・」
私は、胸の内ポケットからスキットルを取り出す。
「オイ、そりゃまさか・・・」
「違うよライナー。ただの水だ。」
水分補給のために持ち歩ていたものだ。死にかけた、という衝撃を和らげるために、口をつける。濾された葉の不完全な香りは腹に下りていき、やがて、あの暗い瞳は少しずつ、私の脳裏から消えていった。
「ふう。」
一息つく。
「おい、本当にそれは安全な物なんだろうな?少し俺にも飲ませろ。」
「ライナー。」
「ベルトルト。俺は兵士として道を踏み外しかねない奴かどうか、コイツがそうなのか知りたいだけだ。」
さっきの演習での独善的な行動を言っているのだろう。私が兵士として品行方正な人なのか、このスキットルに入っている物を確かめることで知ろうとしている。もっとも、私のやりたかったことは、そこまで大義なものではないのだろう。
「じゃあ、どうぞ。」
ライナーにスキットルを差し出す。
「ああ。ありがとな。」
ライナーは受け取り、直接口に付けないよう、容器を傾けて内部の液体を口に注ぐ。その姿に、子どもの頃の私を思い出した。一日中外で遊んで、喉がカラカラになった夕方のことだ。急いで家に帰り、とにかく水が欲しくて、ケトルから直接口に水を注いだ昔のことを。
彼の飲み方には、昔の私のような下品さは感じられなかった。上品でもないが。
「…こいつぁ、結構キツイな。なんというか、喉に氷が張り付いたような、冷たい感じだ。」
「嘘を吐いたことについては悪かった。だが酒の類いではないことは明らかだし、信じてもらえるかな?」
「ああ。お前の立体機動の危うさについてはあとで訊くが、ひとまず、勝手に疑ったことについては、俺も謝らせてもらう。こちらも悪かったな。」
「優秀な君たち二人に、助けられてしまったな。」
「今日ばかりは、お前が一番優秀な兵士だ。」
「ライナーの言う通りだ。おめでとう。」
ライナーから私に送られた賛辞に、ベルトルトも同意する。ライナーの言葉に、皮肉や嫌味は無かった。素直に敬意を込めた目で、まっすぐ私を見据える。
「いやいや、君たちにそんなこと言われるなんて・・・」
「あの結果を見れば明らかだ。俺も真剣にやってたつもりだが、不意に背中をド突かれた気分だぜ。」
「ああ、僕も肝を冷やしたよ。」
憲兵志望のベルトルトに、ミカサに次ぐ成績を持つライナー。二人から手放しに絶賛されると、とてつもなくおかしくなった。
「ハッハハ!君たちに言われちゃあ、認めざるを得ないな!いや本当、ありがとう。」
この二人には、かなわないな。
「さて、俺も負けてられねぇ。行くぞ、ベルトルト!」
「・・・いや、今日はここでやめにした方がいい。」
「私もベルトルトに賛成だ。死にかけた手前、君たちがしくじるとは思わないけど。」
ライナーは少し、考え込む。
「・・・そうだな。もうよしておくか。」
少し跳んだあと、ワイヤーで減速し、地面に着地する。ライナー、ベルトルトも続く。
「どうしてああも点数を稼げたのか、俺たちに教えてくれないか。」
ライナーは私に乞う。
「勿論だ。あれはね───」
話していくうちに、少しずつ、気持ちが落ち着いてきた。
そうか、私は今日、勝てたんだ。あの優秀な英傑ぞろいの兵士たちに。今度はすっ転んでしまうんじゃないかと用心しながら、宿舎の方角へ向かって、二人と一緒に歩いていく。
地面を歩いているものの、また空へと跳んで行ってしまいそうな気分だった。実際、石につまづいて一度転んだ。想像以上に体力を使っていたみたいで、碌に起き上がれなかった。二人は大慌てで私を担ぐ。
苦笑しながら、容赦なく二人に体重を任せる。今日くらい、いいか。なんとなくそんな気分だった。
なんだかんだ理由を付けても、結局私は、一位を取ることが目的だった。強くなるだとか、鎧の巨人に勝つためだとか、そんな動機付けでごまかしていたのだろう。まだ兵士間で実力差が開いていないことを思いついた時点で、なんてあさましい。だが、この二人は私を認めている。私の動機と裏腹に。
(だが、まあ・・・いい気分だ。)
とても楽しかったんだ。純粋にそう思った。
今日この日以降、私が彼らに勝つ日はついぞ来なかった。全員が何かしらの技能において最優秀な才能を持っており、私ではまったく歯が立たなかった。頭脳はアルミンに、体力はミカサに。努力し続ける気力にはエレンに。その他大勢に。
・・・きっと、あの日の訓練は、警告だったのだろう。油断すればいつでも足元をすくわれ、気づけばもう死んでいるのだと。あの一日は、ほんの一瞬の、夢のようなものだったのかもしれない。
だが私は、今日この日を忘れることは、決して無いだろう。あの皆の兄貴分のライナーに見上げられたんだから。