名もなき英雄の軌跡(進撃の巨人2二次創作)   作:なげすて

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第71話 怒りに駆られて

殺せ。殺せ。

 

ヤツを殺せ。全てを奪ったその者を殺せ。

 

希望を奪おうとする者を殺せ。

 

ヤツは壁を降りた。今すぐ追うんだ。

 

倒れた人類の希望へと歩くヤツを殺せ。

 

これは悲願だ。またとない。今すぐ刃を振るえ。うなじからヤツを引きずり出せ。

 

そうだ。叩き付けろ。刃が砕けた?なら次の刃に替えればいい。一枚も二枚も変わるまい。何枚でも振るえ。

 

あの鎧の巨人こそ、私がずっと追い求めてきたものだ。

 

そうだ。私よ。規則正しく繰り返せ。散々手を血で汚しながら得た力を、今こそ全て出す好機だ。

 

……なぜに今手が軽くなった?

 

刃が尽きたか。……なにをやめることがある。

 

手があるではないか。

 

握りしめたこの手を、何度も叩き続けろ。あの鎧一枚隔てた先に、討つべき仇がいるんだぞ。

 

止める者などいるはずない。あるのは鎧だけだ。

 

…………誰だ?私をヤツから引きはがす者は。

 

こうも殴り続けてなお一瞥もくれない、不届きな鎧を誅せんとする『私』を引き留める者は誰だ?

 

『私』はただ、ヤツを殺したいだけだ。

 

顔の半分を失っても立ち上がり、吠えるあの人類の希望のように。

 

ああ。ヤツは腕を絡め取られ、地に叩きつけられた。顔にヒビが入り、逃れようとするも離れられない。ヤツの腕がメキメキと音を立てて千切れ飛んだ。

 

羽交い締めにされた『私』は、”希望”とともに壁まで後退させられる。

 

目の前に何かを差し出された。

 

それは、替えの刃か?寄越せ。二本あれば十分だ。二本だけで何体も殺してきた。今さらなんだ。

 

今なら明確に有効な一撃を加えられる。ヤツの膝裏から破片が落ちるのが見えた。

 

ヤツの動きが格段に速くなった。だが、人の身の『私』には関係ない。

 

ヤツは依然、『私』を無視し続けている。

 

なら、利用できる。

 

壁から離れた”希望”は、敢えてヤツの突進を受け止めて。倒れる。

 

ヤツの背がまた顕になった。

 

赤い骸布を纏った女が片足を、『私』がもう一方の足の膝裏を断つ。

 

再び鎧の身体から音が立ち、エレンに捉えられた首に亀裂が入る。

 

……幾らでも吠えているが良い。もうお前に手札は残っていない。これで全てが終わる。

 

明確な勝利に近づいた途端、『私』の身体を支配する狂熱は、ようやく冷めた。

 

首さえもげば、そこから中身の肉を引きずり出せる。

 

あと少しだ。もう少し。

 

あと少しで、『私』の願いが叶う────

 

「上だああああ避けろおおおおお!!!」

 

仲間の声を聞いて空を見上げた時には、巨大な骸骨が地面と衝突しようとしていた。

 

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