英霊の稲荷様   作:名無しのペロリスト

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皇国の興廃この一戦にあり

 聖杯への願いについて議論している途中で、何故か大量のアサシンが湧いて出た来た。

 もっと何か他にあるだろうと思うが、本当にそうとしか言いようがないので困る。

 

 しかし私は動じない。

 何やら小難しいことを喋っているが、実害がないので放っておいた。

 

 だが征服王の呼びかけにも答えず、葡萄酒をぶちまけて挑発したことで戦闘が始まる。

 

「セイバー! バーサーカー! そしてアーチャーよ!

 これが宴の最後の問いだ! 王とは孤高なるや否や!」

「王ならば! 孤高であるしか! ない!」

 

 ライダーの問いにセイバーが答える。

 私もかれこれ五百年近く一人暮らしを続けている。

 だが、自分が孤高と思ったことは一度もない。

 

 イスカンダルはどうなんだろうと首を傾げると、見本を見せてくれるようだ。

 

「駄目だな! 全くもってわかっておらん! そんな貴様らには余が! 今ここで!

 真の王たる姿を、見せつけてやらねばなるまいて!」

 

 豪快に笑いながらライダーが宝具を解放する。

 何処かわからないが、砂漠に飛ばされた。

 

 召喚時に入手した知識にある、固有結界というやつだろう。

 

「ここはかつて! 我が軍勢が駆け抜けた大地!」

 

 どうやら征服王は、己の心象風景を具現化したようだ。

 アサシンたちは戸惑っているが、ライダーの後ろから大勢の英霊が現れる。

 そしてずらりと整列した。

 

「彼らとの絆こそ! 我が至宝! 我が王道! イスカンダルたる余が誇る! 最強宝具!

 王の軍勢(アイオニオンヘタイロイ)なり!」

 

 イスカンダルの宣言と同時に、彼の軍勢も一斉に叫び声をあげた。

 どうやら固い絆で結ばれているのは、嘘偽りないようだ。

 

 それを見て私は、ようやくよっこらしょと立ち上がり、少し頬を朱に染めながら口を開く。

 

「素晴らしいモノを見せてくれたお礼に、私も最強宝具をお見せしましょう!」

 

 本体なら、せいぜいほろ酔い気分で留まっていた。

 しかしどうやら、サーヴァントだと酒の耐性も下がるようだ。

 吐くほどではないが、さっきから思考がどうにもまとまらない。

 

「皇国の興廃! この一戦にあり!」

 

 私も固有結界を展開する。

 酔ってはいるが狂化はしていないので、イスカンダルのモノを消さないように出力を調整する。

 それに全力全開では、雁夜おじさんの魔力が枯渇して死んでしまう。手加減は必須だ。

 

 とにかく自分の心象風景が広がり、ライダーの固有結界と拮抗し、ちょうど半分ほど塗り潰した。

 

 なおこっちは量より質なので、人数はかなり少ない。

 ただし陸海軍の現代兵器が揃っているため、かなりの場所を取っていた。

 そして場所は砂漠ではなく、真逆の海に面した雪原である。

 

「おおっ! バーサーカーも、まさしく王であったか!」

「小国で、形ばかりの王ですけどね! ですがそれでも、連合軍の盟主を務めたことがあります!」

 

 第二次世界大戦の連合軍で、一番偉い立場なのは間違いない。

 だからイスカンダルのように、確かな絆があるかと聞かれると微妙だ。

 しかし呼び出しに応じて自分の後ろに控えてくれている英霊たちは、異常なほどにやる気になっている。

 

「大軍勢での対決も面白そうですけど! 今は他にやることがあります!」

「うむ! 楽しみはあとに取っておこう!」

 

 私も彼も大勢の英霊を従えているが、こっちは魔力が足りずに全力を出せない。

 ゆえに真っ向勝負だと、どちらが勝つかはわからなかった。

 

 しかし、それはそれとしてだ。今はアサシンの排除である。

 両軍勢の勇敢な英霊たちが、実体化していられる時間は短い。

 速やかに片付ける必要があった。

 

「さあて! では始めるか! アサシンよ!

 見ての通り、我ら具象化した戰場は平野! あいにくだが、数で勝るこちらに地の利はある!」

 

 ライダーは、集まった兵士を鼓舞するために大声で叫ぶ。

 ならばと、私の便乗して鳴狐を掲げた。

 

「多くの英霊が、無駄死にでなかった証の為に! そして再び! 人類の理想を掲げる為に!

 今こそ奴らに一撃を食らわせて! この戦に終止符を打ちます!」

 

 こっちはかなり酒が回っているが、イスカンダルは素面のようだ。

 多分だがあと今回のやらかしを思い出し、ベッドの上で羞恥のあまりゴロゴロするのは確定だろう。

 

 しかし私は基本的に、その場のノリや行き当たりばったりで行動する。

 残念ながら良くあることだった。

 

「蹂躙せよおおおっ!!!」

 

 私はイスカンダルのような大きな黒い馬はいないが、このためだけに狼たちと犬ぞりも呼びせて、よっこらしょと乗り込む。

 

「稲荷魂を見せてやりなさい!!!」

 

 私が突撃すると、呼び出した軍勢も雄叫びをあげて追従する。

 流石に今回は一人だけ突っ込んだら、恥ずかしいなんてものじゃない。

 クラスはバーサーカーだけど、集団行動できて良かったとホッとする。

 未だに戸惑っているアサシンたちに、イスカンダルと共に襲いかかった。

 

 ただし殆どが攻め込む前の支援砲撃で肉片になったので、私たちの出番は殆どなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 襲撃してきたアサシンを、イスカンダルと私の固有結界で倒した。

 大軍勢に勝てるはずがなく、勝負は一瞬でついたので蹂躙である。

 ただ勝鬨をあげるときは、酒も入っていたので割と楽しかった。

 

 その後はイスカンダルがセイバーを王とは認めないと言い放ち、チャリオットに乗って帰っていく。

 それじゃ私も帰ろうとしたが、おっとっとと足元がふらつく。

 

 どうやら本体の感覚で酒をグビグビ飲んだことで、かなり酔いが回ってしまったようだ。

 仕方ないので落ち着くまで庭園の隅っこに座らせてもらい、涼しい風で火照った体を冷やしながら、セイバーとアーチャーの言葉に耳を傾ける。

 

 しかし彼は、騎士王を一方的に馬鹿にしていた。

 苦悩する姿が慰み者として大変可愛らしいと、笑いながら去っていく。

 なので私は、ついポロッと口に出してしまった。

 

「……アーチャーが好かれる要素なさすぎでしょ」

 

 幸いアーチャーには聞かれなかったようだが、近くのセイバーとそのマスターにはバッチリ聞かれ、微妙な表情をしていた。

 

「あっ、私のことはお気になさらず。酔いが冷めたら帰りますので」

 

 取りあえず文明の保管庫を使い、コップに水を注いでぐいっと飲む。

 少しだけ酔いが抜けた。

 

(しかし、これはこれで捨てがたい)

 

 前後不覚に陥るほど酒に酔うのは、本体では味わえない感覚だ。

 魔力で無理やり抜くのは勿体なく思い、のんびりと涼しい風に当たる。

 

「思い出したのです。アーサー王は人の気持ちがわからないと言い残して、かつてキャメロットを去った騎士がいたことを。

 もしかしたら、アレは……円卓に集まった騎士たちの、誰もが抱いていた言葉なのかも知れません」

 

 セイバーも大変なんだなーと思いつつ、私は水をちまちま飲む。

 だが騎士王やマスターがこっちをチラチラ見てくるので、自分に一体何を求めているやらだ。

 

 しかし、せっかくこの場に居るのだ。

 しゃーないかと頭を掻いて、おもむろに口を開く。

 

「人の気持ちがわからないのは、別に珍しくありません。

 私もセイバーが何を考えているのか、さっぱりわかりませんしね。

 そもそも自分の心の内を理解している人だって、滅多にいませんよ」

 

 わざわざ専門職があるぐらいなので、王だからという理由でそこまで求めるのは酷なことだ。

 他人の気持ちを推し量るのなど至難の業だ。

 

「現代でもカウンセラーや精神科医などがあるのです。

 専門職でない騎士王は、人の心がわからなくて仕方ありませんよ」

 

 そう言って私はセイバーを真っ直ぐに見つめて、はっきりと告げる。

 

「でも今ここに居る私と貴方は、ちゃんと話せています。

 あとは会話を重ねれば、やがては互いを理解できるでしょう」

 

 だが互いの気持ちを理解できても、決して譲れないモノはある。

 それは他人の心がわかったからといって、どうこうなるものでもない。

 セイバーの、祖国の滅びを避けたいという願いも同じだ。

 

「ありがとう。バーサーカー」

「お気になさらず。ちなみに今言ったことは、割と一般常識です。

 セイバーが人の気持ちを知りたいなら、まずは基本的なことから勉強すると良いでしょう。

 そっちのマスターは、……ちょっと無理そうですね」

 

 人間とホムンクルスの違いは良くわからない。

 でも温室育ちでは、世間一般の常識や人の気持ちを推し量るのは難しい。

 色々と考えた結果、私は溜息を吐きながら首を振る。

 

 しかしそんなアインツベルンをじっと見ると、どうも妙なモノが見えてしまう。

 どうにも気になった私は、ちょいちょいと手招きする。

 

「それと、そこのホムンクルスさん。ちょっとこっちに来てください」

「えっ!? わっ私のこと!?」

 

 マスターは驚き戸惑っているが、先程のセイバーのやり取りで、危険はないと思ったようだ。

 少し怖いがこちらに近づいてきてくれた。

 

 なので私は自分の毛を一本引き抜いて、神気を込める。

 そして狐火を右手に集め、そのまま彼女の腹部を刺し貫いた。

 

 さらにアイリスフィールの全身を青い炎で包み込む。

 

「バーサーカー!? お前は最初から! アイリスフィールを殺すつもりだったのか!」

「落ち着いてください! セイバー!

 だから貴方は、人の気持ちがわからないなんて言われるんですよ!

 私がそんな非道をするわけないじゃないですか!」

 

 私はセイバーに斬りかかられる前に、右手を抜いて狐火も消した。

 浄化の炎をまとわせることで無理やり干渉して霊体化し、彼女の肉体にも影響を及ぼしたのだ。

 まあ酒に酔った勢いとはいえ、ぶっつけ本番だったが、どうやら上手く行ったようだ。

 

 しかし何で毎回、こんな綱渡りをしなきゃいけないのやらである。

 成功して良かったはずなのに、大きな溜息が出てしまう。

 

 偶然とは言え、強引に霊体化する手段を編み出したのは良かった。

 だが、これでは他の英霊がやっているように透明にはなれない。

 

 外から見たら、全身を炎に焼かれているようにしか見えないのだ。

 あくまで霊的な干渉ができるようになっただけで、使用する場面はかなり限られそうだった。

 

 どう見ても焼いてるようにしか見えないため、セイバーに誤解されるのも無理はない。

 

 とにかくアイリスフィールは大きくよろめき、後ろに下がって倒れそうになる。

 すぐに騎士王が駆けつけて支えた。

 

「大丈夫ですか! アイリスフィール!」

「えっ、ええ、わっ私は平気よ! セイバー!」

 

 アイリスフィールは自分に何が起きたのかわからず、冷や汗をかいて困惑している。

 そしてセイバーと共に、先程貫かれた腹部や全身を何度も確認する。

 

「傷がない?」

「そちらのホムンクルスの体に、少し干渉させてもらいました。

 目に見える外傷はないはずですよ」

 

 次にセイバーとマスターは、今度は私の右手に視線を向ける。

 すると彼女の肉体から抜き取った聖杯を見つけ、騎士王は驚く。

 

「それは聖杯!? 何故バーサーカーが!」

「その説明は、そっちのホムンクルスに聞いてください」

 

 情けない話だが、私にも事情はさっぱりわからない。

 

 そもそも彼女の全身は、明らかに妙な魔力で満ちていたのだ。

 何かの術式が悪さをしていることがわかったので、見つけたついでに治療しておくかぐらいの気軽さで、埋め込まれていた聖杯を引っこ抜いた。

 

「どうやらこの聖杯が悪さをしていたようです。

 放っておけばアイリスフィールさんの肉体は、いずれ崩壊していたのは間違いありません」

 

 まだ不完全ながら、とんでもなく強力な聖遺物だ。

 とてもではないが人間に制御しきれるものではないし、たとえ特殊な処理を施されたホムンクルスでも無理だろう。

 

「なので、私が奪わせてもらいました。

 コレが聖杯なのは、今初めて知りましたけど」

 

 だから別に、聖杯を見つけたから奪ったわけではない。

 危険物を発見したので、全身を狐火で包み込んで霊体として干渉する。

 その後、体内に溶け込んだモノを一箇所に集めて具現化し、強引に引っこ抜いたのだ。

 

 酒に酔った勢いとは言え、我ながら行き当たりばったりの脳筋的な行動にも程がある。

 しかし、他に説明のしようがなかった。

 

「それは助かった。……のか?」

「少なくとも私は、アイリスフィールさんを助けたつもりですが?」

 

 私も首を傾げる。

 そして、まだ警戒しているセイバーとマスターにトコトコ近づいていく。

 

「取りあえず、返しますね」

「えっ? あっ、どっどうも?」

「それと、聖杯の代わりを与えて、肉体の不調を治しましたけど。

 それを体内に戻すのは止めてくださいね。せっかく助かった命です。大切にしてください」

 

 狐っ娘の毛を埋め込み、肉体の損傷を治療しつつ魔術回路の補強などを行った。

 ようは、雁夜おじさんや桜ちゃんにしたのと同じことだ。

 彼女はホムンクルスの魔術師なので、放っておけばそのうち神気が抜けるだろう。

 

 だがマスターだけでなくセイバーも困惑しているようで、私に尋ねてくる。

 

「助かったことには感謝するが、聖杯は良いのか?」

「私の目的は聖杯ではありません。

 それに今は不完全ですし、持っていても仕方ありませんしね」

 

 まだ聖杯は不完全で満たされていないので、持っていてもしょうがない。

 そもそも、使い方がわからない。

 

 所有権がアインツベルンにあるなら、最後の一人になるまで預けておいて良いだろう。

 

「バーサーカーは本当にお人好しだな。私が言うのも何だが、サーヴァントらしくない」

「まあ私も、サーヴァントになるとは思いませんでしたし」

 

 セイバーの指摘通りで、反論の余地はない。

 私自身も、本当にどうしてこうなったと困惑している状況だ。

 

「だが、おかげで助かった。マスターの代わりに礼を言わせてもらう。ありがとう」

「どういたしまして、しかし、さっきからお礼を言われてばかりですね」

「ふっ、それもそうだな。だが本当に、バーサーカーには感謝しているんだ」

 

 取りあえず、私は素直に受け取っておく。

 そしてマスターとしては微妙な判定だったようで、今も凄く戸惑っている。

 

 多分だが聖杯を体内に埋め込んでいたのは、何か理由があるのだろう。

 私はそれをご破産にしてしまったので、本来なら謝るのはこっちのほうかも知れない。

 

「貴女の身体がそうなったのは、私の責任です。

 ……だが私は謝りません!」

 

 つい何処かのライダーの迷台詞が出てしまった。

 しかし自身の行動を全く悔いていないので、謝罪したくなかった。

 私にとっては、聖杯や根源の渦など正直どうでも良いのだ。

 

 なので相変わらず戸惑っているセイバーのマスターを、ビシッと指さして堂々と告げる。

 

「貴女はもっと自分を大切にしてください! 死んだらどうするんですか!

 聖杯や根源の渦なんて、犬にでも食わしてやりなさい!」

 

 まさかの魔術師や聖杯戦争全否定だが、私の目的は世界の滅亡を防ぐことだ。

 目的が全く違うのでしょうがなかった。

 

「でっでも、私は! 聖杯はアインツベルンの悲願なの!

 聖杯戦争を制して、万能の願望機を手に入れないと駄目なのよ!」

「その聖杯なんですけど! ちょっとおかしいですよ!」

 

 周囲が困惑する中で、私は続けて彼女に返した聖杯について話していく。

 

「何処がどうおかしいのかはわからないんですけど! 何となく妙な気がします!」

 

 今の発言に、セイバーが呆れた顔をする。

 

「……それは、気のせいというやつなのでは?」

 

 もっとも指摘だが、これまで私の直感は一度も外れたことがない。

 なので聖杯が変なのは、ほぼ確定である。

 だがまだ満たされていないし、未完成だからかも知れない。

 それに本来の効果を発揮していない今現在は、特に異常は感じ取れなかった。

 

「でも! 絶対に変です! 断言しても良いです!」

「やれやれ、貴方は頑固ですね」

 

 セイバーとマスターは困惑しつつ、大きく息を吐く。

 私は念の為に文明の保管庫から向こうの聖杯を引っ張り出して、詳しく調べてみようとした。

 しかしその前に、騎士王はこれ以上は埒が明かないと思ったのか話題を変える。

 

「ところで先程、アイリスフィールに代わりを与えたと言ったな。それは一体?」

 

 別に隠すことではないので、正直に告げる。

 

「彼女には私の毛を与えました」

「「えっ!?」」

 

 二人揃って驚きの声をあげる。

 私は文明の保管庫に一度手を突っ込んだが、やっぱり中止して詳しい説明をする。

 

「別に毒ではありませんよ。

 心身の不調を治したり魔術回路の補助を行う、霊験あらたかな御守りだと思ってください」

「いっ、いや! そう言われてもだな!」

 

 あっちの世界では、いつの間にか大天使の一柱にされて崇められているので、聖遺物という言葉に間違いはない。

 

「それに毛ぐらい良いじゃないですか。

 自分で言うのも何ですが、聖杯にも負けないぐらい、格の高い聖遺物ですよ」

 

 なお、『狐の毛ぐらい何よ! アイリスフィールの体内には、聖剣の鞘が埋め込まれてるのよ!』という言葉は飲み込む。

 聖杯を取り出す際に気づいたが、癒し効果があるっぽいので摘出しないで放置したのだ。

 

 だがもしセイバーやマスターが、まだグダグダ言うようなら、心の内に飲み込んだことを詳しく説明するつもりではある。

 

 しかし、その必要はなさそうだ。

 

「確かにバーサーカーからは神性を感じるし、悪いサーヴァントではない。……ような気はする」

 

 セイバーは若干混乱しつつも、私のことを信用してくれたようだ。

 そのあとに再び、感謝の言葉を口にした。

 

「だがバーサーカーは、何故私たちを助けてくれるんだ?

 聖杯戦争では敵同士だろう?」

 

 その問いに対して、私は迷うことなくはっきりと答える。

 

「誰かを助けるのに、理由がいりますか?」

 

 質問に質問で返すのはどうかと思うが、中身がオタクの私はキョトンと首を傾げながら、ゲームの名言を伝えた。

 

 セイバーとマスターは息を呑んで動きを止めて、やがて緊張が解いて穏やかな表情になる。

 

「……良くわかった。バーサーカーに感謝を」

「できれば、貴方とは戦いたくはないわ。

 でも、もしそうなったら、その時はごめんなさいね」

「ええ、では酔いも覚めたので、そろそろ失礼しますね」

 

 そう言って私は犬ぞりを召喚し、よっこらしょと乗り込む。

 手綱を持って、狼たちに家に帰るように指示を出す。

 するとフワリと浮き上がり、安全運転でゆっくり走り出した。

 

「あの! バーサーカー! もう一度言わせて! 助けてくれてありがとう!」

「お気になさらず! 目の前で困っている人がいたら、助けるのは当たり前のことですから!」

 

 マスターから、再びお礼を言われた。

 命が助かったことが、凄く嬉しかったのだろう。

 

 私たちは敵同士なので、本来なら助けたりはしない。

 だが個人的な感情だが、聖杯戦争で殺し合うのはサーヴァント同士にするべきだ。

 

 弱くて倒しやすいからと、マスターを狙うのは人道に反する。

 殺されても英霊の座に戻るだけのサーヴァントとは違い、人は死んだらもう二度と会えないのだ。

 

(間桐臓硯とは違い、少なくとも彼女は悪人ではなかった。

 それに魔術師だから、与えた神気もそのうち薄れて消えるだろうしね)

 

 私は五百年近い月日の中で、数え切れないほどの出会いと別れを繰り返してきた。

 なので命の大切さは良く知っているし、だからこそイタズラに弄んだり殺すような行いは、断じて許せないのだった。

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