「ほどよい馬鹿」と言われた俺が、美人ばかりの生徒会に参加して学園の人気者になる話   作:えんだー

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仕事で遅くなってしまいましたが投稿です!


22 脱出ゲーム部!

 世の中には本当に多くの趣味嗜好を持つ人間がいる。映画好き、スポーツ好き、読書好き、銀髪好き、BL好き、幼女趣味、ガチ獣が好きなケモナー。

 

 まあ、後半のような趣味を堂々と公開しながら生徒会にやって来るやつはいない。ただ、生徒会に「こんな部活を作りたい」と申請にやって来る連中が話す内容は、俺がよく知らない界隈のものばかりが多い。

 

 正直、初めて聞く概念も多いので俺はその場で解説をしてもらうことが多いのだが、驚くべきはうちの副会長である。

 

 百科事典のようにどの部活の話題にもついていけている。自分のやっていることを知らない相手にはまず前提知識から伝えなければならないので、けっこうめんどうだと思うのだが副会長相手だとそれがいらない。

 

 

 今だってカバディ部とかいうマイナースポーツ界の代表みたいな彼ら数人と話しているが、当たり前のように議論が成り立っている。

 

 基本的なルールなら雑学の範疇かもしれないが、なぜセオリーや戦術を把握してるんだあの人?

 

 思い返せば水沢の時もゲームのタイトルをスラスラと口にしていた気がしたし、俺が感じた違和感への理解も早かった。とても賢く幅広い知識がある人なのだ。

 

 そして、副会長がその博識さを存分に発揮して部活申請者にどう対応しているのかというと。

 

 ちゃんと相手の活動内容を正確かつ詳細に理解し、反論しづらいかつ痛いところをつく。副会長なりに良かれとやっているのは俺や会長は理解できるが、相手からしたら説明書をしっかり読み込んだクレーマーに見えていてもおかしくない。

 

 実は一番手厚いサポートをしてくれるのも副会長なので、副会長が担当になった彼らには同情しつつも心の中でエールを送る。

 

 横に視線をそらすと会長が「すごい!」「そんなことやるんだ!」「え、見てみたい!」みたいな反応とともにパチパチと手を叩いている。その会長の反応が嬉しいらしく、聞いてもらっている相手は気分よく自分たちの活動内容を話しているようだ。

 

 自分のやりたいことを伝えるときによくあることだと思うのだが、相手に分かりやすく伝えるために言葉を選んで伝えると、本人が感じてる熱量や魅力がどうしても薄まって伝わってしまう。

 

 たとえば、推し活・ヲタ活してる人が、その推しへの熱量を100%伝えようとしたら「すこなんだが~」とか「マジやばい」「くぅ~~~!!!」「エロくない!?」みたいな言葉を使うしかない。

 

 その界隈にいない人間はドン引きである。

 

 推し活をしている彼らも、そんな言葉を使ったら微妙な反応をされるのが分かっているので、「○○が○○なところがある。そして、私は○○な人に○○を感じるから好き」みたいな落ち着いた表現をするわけだ。

 

 それらの言葉はどう考えても本人の熱量を100%表現した言葉じゃない。

 

 この学園には部活で降霊術や賭博をやろうとする人間こそいるものの、一般的な生徒は自分たちの思いを論理立ててきれいに説明しようとする。

 

 その過程で相手に伝わる熱量はどうしても削れてしまうのだが、会長はその化けの皮をはがす。相手の好きや得意なことをうまく褒めることで、彼らの熱量を引き出すのだ。

 

 生徒会へ来て緊張してうまく話せない人間でも、会長相手だと話せるやつも多い。おかげで彼らがどういう思いで部活をやろうとこちら側が知れる。何より申請した部活を隠れ蓑にして、賭博やR18ものを扱おうとする不届き者が見つかる。

 

 なんで会長におだてられて裏でやろうとしていたアウトな行為をポロっと口にしちゃうんだろうね。

 

 一方の俺はというと、今日もごく普通の常識的な対応をしている。

 

 

 

「という活動内容で、脱出ゲーム部を作りたいんです」

 

 

 俺の本日対応する2つ目の部活の卵は、脱出ゲーム部を作りたいという高等部1年生の村重拓真くん。高等部1年生だ。

 

 こないだまで中学生だっただけあって顔に幼さが残っているものの、落ち着いた雰囲気を持っており口調もハッキリしている。どことなくトオルっぽさを感じさせる子だ。

 

 

「なるほど……」

 

 

 彼のトーンにつられて俺の声も落ち着いたものになる。

 

 

「脱出ゲームを作る、か。面白そうな部活ですね」

 

 

 俺がそう言うと、顔が少し明るくなった。

 

 

「滝沢先輩は、脱出ゲームや謎解きが好きなんですか?」

 

「俺というより、弟が好きなんですよ。脱出ゲームには行ったことないですが興味があります」

 

 

 謎解きの類はトオルがたまに俺が解けるのか試してくる。

 

 

「そうなんですね!」

 

「弟の名前は滝沢徹というんですが、ご存じないですか?」

 

「え……あの滝沢くんですか?」

 

「……あの滝沢くん?」

 

 

 軽い雑談のつもりだったのだが、意外な反応が返ってきたぞ?

 

 トオルは中等部で生徒会長をやっていると聞いたが、中等部では思ったよりも有名人なのだろうか。

 

 

「うちの弟のことをご存じなんですか?」

 

「えっと、知っているというわけではないんですけど……去年から中等部の生徒会長をしていたので」

 

「それで知っていたと」

 

 

 村重くんがトオルのことを知っていた理由として納得できるものがある。だが、自分の中学の生徒会長のフルネームを覚えているものだろうか。少なくとも、俺は会長の名前を生徒会に来る前まで覚えていなかった。

 

 ということは……トオルのやつ、一般生徒に覚えられるようなやべーことをしているのではないだろうか。あいつに限ってそんなことはないだろうが。

 

 なぜ村重くんが弟のことを知っているのか。兄として非常に気になることであるが、まずは目の前の仕事をこなさなければならない。

 

 

「あまり弟は学校のことを俺に話してくれないので、機会があったら弟の話聞かせてくださいね」

 

「はい、機会があればぜひ!」

 

「それで話は戻るのですが、脱出ゲームを創作するのが脱出ゲーム部の活動内容なんですよね?」

 

 

 村重くんが頷いた。

 

 

「個人的には面白い部活だと思います。顧問も活動場所も部員も規定数いる。部活を作るうえで必要なものはだいたいそろっています。ただ、部活を作って存続させていくには活動実績っていうのが必要です。運動部であれば地区大会に出るとか、文化部だったらコンクールに出るとか」

 

「そう聞いたので文化祭での脱出ゲームの出し物をすること。そして高校生脱出ゲーム制作選手権に出場する予定です!」

 

「おぉ、準備万端ですね……」

 

 

 さらっと俺の目の前に二枚の企画概要書が置かれる。

 

 うちに相談に来る奴の中には、相談中に部員の規定数が足りないから俺に入ってくれないかと頼むやつもいる。そういう切羽つまったやつらもいる中で、村重くんは相談前から学校の規約を読みしっかり準備をしてきてくれたのだ。

 

 俺の方からする説明が少なくてすむので非常にありがたい。

 

 ただ、気になることが一点ある。

 

 俺は企画書に書かれている文字を指でなぞる。

 

 

「この全国高校生脱出ゲーム制作大会というのはどういうものですか? はじめて聞いたのですが」

 

「高校生が作った脱出ゲームの面白さを競う大会です。予選と本選があって、予選は企画を。本選は企画した脱出ゲームを形にして、一般の来場者の人にも来てもらって遊んでもらうんです!!! それだけでもすごいことなのに、優勝した企画は主催している脱出ゲーム会社の全国の店舗で展開されるんです!」

 

「え、けっこう夢ある大会ですね」

 

「そうなんです! ずっと出てみたかったんです」

 

 

 村重くんの表情が輝く。

 

 

 

「脱出ゲームってどんなの作るんですか? うちの弟は謎を解いて列車の先頭を目指していくって内容のゲームやってましたけど」

 

「それはルーム型の脱出ゲームですね! 僕が普段作ってるのはホール型っていうやつです……いつかルーム型も作ってみたいなぁ」

 

「ルーム型……? 脱出ゲームっていくつか種類があるんですか?」

 

「そうなんです! ルーム型っていうのは部屋そのものにギミックがあったりアイテムを探したりもして脱出を目指すタイプで、ホール型はテーブル上で謎解きを完結させることが多いタイプです。特徴は大きな部屋に複数のテーブルを設置することでテーブルと同じ数のチームが一緒にイベントが体験できることです! スタッフの演出があったり、複雑で面白いストーリーがあったり……初心者の方に特におすすめでとにかく面白いです!」

 

「よっぽどお好きなんですね。脱出ゲームが」

 

 

 俺がそう言うと村重くんが照れたように笑う。

 

 

「はい……」

 

「そんなに好きなことがあるのはうらやましいですよ。ちなみに、さっき言っていた大会にはそのホール型?という脱出ゲームの企画を出すんですか?」

 

「そうです! ホール型は最低でもテーブルと紙とペンがあればゲームが作れるんですけど、ギミックを作ったりするルーム型みたいなものは高校生が作るのが難しいので大会側も応募はホール型のものに限定しているんです。それに大会側が用意した審査員がつけた点数で優勝者が決まるようになっているので、審査員が1度に審査できるように複数のチームが同時にプレイできるホール型である必要があるそうです」

 

「なるほど……」

 

 

 この生徒会にいると本当に博識になれそうだ。

 

 彼の話を聞きながら大会のことをスマホで調べる。

 

 お、本当にある大会らしい。

 

 すでに何回か開催されているものらしく、ぱっと見、ちゃんとした大会と運営元のように見える。

 

 

■■■ 脱出ゲーム選手権:応募要項 ■■■

 

【エントリー】

20○○年5月27日 23:59までに、企画書を提出してエントリーしてください。

 

【予選(書類審査)】

20○○年6月20日 までにメールまたは電話で通知。

 

【本選】

20○○年8月30日、31日で実施

 

【結果発表】

20○○年8月31日

 

【本選会場】

○○○内の学校施設

 

【参加資格】

20○○年4月1日(火)から同年8月31日(日)までの期間継続し、日本国内に所在する高等学校、高等専門学校または中等教育学校(後期課程)の在校生のみに。

各団体のメンバーは、同一の学校法人に属する学校に通う生徒のみによる、3人以上8人以下の生徒。

 

■■■────■■■

 

 

「筑摩大学付属高校『Howstory』、麻川高等部の『クイズ研究部』、国際信州学院大学付属高校『LIARverse』......」

 

 過去には色んな高校の色んな団体が参加しているようだ。

 

 応募要項を見る限り、本選の日も高校生にとって夏休みの間であるので参加に無理もない。ただ、またも気になる点を見つけた。

 

 

「今日が5月の24日ですから大会への企画提出期限まで3日………これに参加するのは来年からですか?」

 

「あ、いえ。今年から参加をしようかなと思ってます」

 

「もう提出したんですか?」

 

「それがまだ詰めたいところがあるのでギリギリまで頑張ろうかと……」

 

 

 そういわれて俺はうーんと唸り声を上げそうになる。大会の企画提出期限まで1週間もないなら、提出するか締め切りが過ぎてから部活の申請をすればいいと思うのだが。

 

 それに他にも気になることがある。

 

 

「ところで───」

 

 

───コンコン

 

 

 村重くんと話している最中、生徒会室の扉がノックされる。一番扉に近い位置にいる俺以外誰もノックに気がついていないようである。会長も副会長も対応をしている最中なので俺以外ノックの主に対応できる人間もいない。

 

 村重くんに断りを入れて俺は扉に近づいて開ける。

 

 

「センパイ、お疲れ様です!」

 

 

 そこにいたのは昨日俺の制服にチョコの染みを作り、数百万のリスクをものともせずに行動して俺をドン引かせた期待の1年生。

 

 日向ひまりだった。




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