「ほどよい馬鹿」と言われた俺が、美人ばかりの生徒会に参加して学園の人気者になる話   作:えんだー

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24 好物はお早めに

 ひまりが机を挟んだ形で村重くんと向かい合う位置にある椅子、つまり先ほどまで俺が座っていた椅子に座っていた。

 

 俺の視線に気がついたひまりが慌てた様子でこちらを振り返る。

 

 

「あ、先輩ごめんなさい! いまどきます!」

 

「そのまま座ってていいから」

 

「ありがとうございます。その代わりといってはなんですが……こちらにどうぞ!!!」

 

 

 そう言ってひまりは自分の隣に椅子を持ってきて俺に座るよう促した。俺はありがたく礼を言って椅子に座った。

 

 ふと自分に視線が向いている気がして顔を上げると、妙に悲し気な顔をした村重くんと目が合った。村重くんは俺と目が合った瞬間、はっとした様子になりすぐに視線をそらす。

 

 いったいどうしたんだ……?

 

 

「ひまり、俺が席を外しているあいだ村重くんとどんな話をしたんだ?」

 

「えっと、村重くんが今日生徒会に脱出ゲーム部の用件で来ていること、それとわたしが生徒会に入りたいと思っていること。あとはクイズ研究部のことを少し!」

 

「なるほど……?」

 

 

 その話の内容であんな好物をタカに盗られたかのような悲し気な顔をすることはないと思うが……

 

 

「センパイこそなんのお話をしていたんですか?」

 

「脱出ゲーム部の設立をこのまま進めていくって報告とひまりのこと。あとで、ひまりを会長たちに紹介したいんだが時間は問題ないか?」

 

「さっきもお伝えした通り大丈夫です! なにからなにまでありがとうございます!!!」

 

「こちらが頼んだことだから気にしないでいい」

 

「あ、あの……!」

 

 

 村重くんの声が俺とひまりの会話に割って入る。

 

 

「何か気になることでも?」

 

「あ、えと……」

 

 

 村重くんがもじもじとし始めた。

 

 好きな子が近くにいるせいなのかは分からないが、村重くんはさっきまでは落ち着きながらも明るく俺と話していたのに。

 

 本当にいったい何があった?

 

 

「その……脱出ゲーム部を作るうえで足りていないものとかっていまのところありますか?」

 

「特にはないよ。このままいけば1週間しないうちに部室も使えるようになると思う」

 

「……そうですか」

 

 

 なんとなくその場の流れで俺の村重くんに対する敬語が外れてしまったが、そんなことより村重くんの表情に陰りが残ったままなのが気になる。さっきの質問も村重くんにとって本当に聞きたかったことじゃないような気がするし。

 

 

「他に聞きたいことがあるなら答えるけど」

 

「いえ……大丈夫です」

 

 

 そういわれても大丈夫じゃなさそうな顔なんだよなぁ……

 

 ひまりも村重くんの様子が気になるようで心配そうに彼のことを見ている。脱出ゲーム部のことを色々と聞きたかったがそれどころではなさそうだ。

 

 マジで俺がいない間に何があった?

 

 ひまりに先ほど何を話していたのか聞きたいところだが、本人の前で「村重くんが落ち込んでいる気がするんだけど何か知ってる?」なんて聞くことはできない。

 

 

「まあ、何か気になることがあったらいつでも聞いていいから」

 

「はい……」

 

「その代わり俺からもいくつか質問いい?」

 

「大丈夫です」

 

 

 本当は脱出ゲームのきな臭い部分について直接聞きたかったが、村重くんのこのテンションで質問したら答えてくれなさそうだ。

 

 俺は仕方なく遠回しな質問をする。

 

 

「さっきひまりが話していたが村重くんはクイズ研究部なんだって?」

 

 

 村重くんは頷いた。

 

 

「クイズ研究部ってなにをしている部活なんだ? クイズと言われて俺が思い浮かぶのは早押しクイズぐらいなんだけど」

 

「だいたいそれで合ってます。部室に行ったらずっとクイズしてる人が多いですよ。クイズの休憩中にクイズしたり。クイズ以外もすることありますけど」

 

「クイズ以外?」

 

「ボードゲームとかオセロとか、頭を使う遊びをみなさんよくしてます! こないだは......あの、えっと。村重くんなんだっけ。友達の腕を食べちゃったみたいなゲーム」

 

「なんだその猟奇的なゲームは」

 

「……もしかして、ウミガメのスープのこと言ってる?」

 

 

 村重くんが首をかしげながらひねり出した答えにひまりが手を叩いて喜ぶ。

 

 

「そう! さすが、村重くん!」

 

「なるほど。答えのことを言っていたのか。村重くんよくわかったな」

 

「クイズ研の中でも流行ったので......」

 

 

 村重くんは恥ずかしそうに頭をかいた。よしよし、ちょっとずつ村重くんが元気になってきたぞ。

 

 ウミガメのスープとは、出題された一見不可思議な状況を出題者に対して『Yes』か『No』かの質問をしていくことで真相を明かすというゲーム。ひまりが言っていたのはこのゲームのタイトルにもある『ウミガメのスープ』と呼ばれる問題の答えの一部だ。

 

 前に、姉とトオルと俺の3人でやったがかなり面白かったのを覚えている。テレビでよく見る早押しクイズのように豊富な知識が必要なのではなく、出された問題に対する解釈と一見結びつかないものに共通点を見つける直感が重要になる。

 

 知識がそれほどなくてもできるので、学力や知識量ではトオルに勝てない俺と姉でも勝負になるのでかなり白熱した。

 

 白熱したからこそ分かるのだが、ひらめき力が必要になるという点で、たぶんウミガメのスープが好きな奴は脱出ゲームも好きだ。

 

 だからこそこんな疑問がわく。

 

 

「ウミガメのスープが流行るなら、脱出ゲームが好きな人間はかなりいるんじゃないか?」

 

「たしかにクイズ研に脱出ゲームが好きな人は多いですよ」

 

 

 明らかに声のトーンが上がり表情も明るくなった。これを機に色々と聞いてみよう。

 

 

「やっぱりそうだよな。これは生徒会の人間としてじゃなく一個人として聞くんだが、どうして脱出ゲーム部を作ろうと思ったんだ? 部を作る前にクイズ研の仲間内でも脱出ゲームは作ろうって話になったことがあったんじゃないか?」

 

 

 実際、さきほど村重くんが話してくれた脱出ゲーム選手権には、どこか忘れたが高校のクイズ研究部が過去出場していた。

 

 だから、水沢のときと同じく「わざわざ部活を作る必要なくない?」と疑問に感じる。

 

 そんな俺の問いに村重くんは、困ったように笑った。

 

 

「もちろんそう思ったことはあるんですけど......脱出ゲームをやるのは好きでも作るのが好きな人は少ないみたいで」

 

「なるほど」

 

 

 ゲームが好きな奴がゲームを作れるわけではないのと同じように、やるのが得意な奴が作るのも得意とは限らない。十分に納得できる話だ。

 

 

「だから、新しい部活を作ることにしたのか。じゃあ、いま一緒に部活作ろうとしている仲間はクイズ研の人じゃないってこと?」

 

「クイズ研の人もいます。1人だけですけど。あとは、全員クイズ研じゃない僕の友達です」

 

「そうなんだ。その子たちと一緒に大会も出るの?」

 

「そうです」

 

 

 部活を新しく作るには部長を含めて4人部員が必要だ。脱出ゲームも例に漏れず、4人集めてきたようだがそのうち2人はクイズ研でもない人間ということになる。

 

 どういうきっかけでその4人で脱出ゲーム部を作ることになったのか。それを聞こうとして、さっきからひまりの声が聞こえないことに俺は気がついた。

 

 隣を見ると、ひまりが目を細めながらほっぺたを膨らませていた。

 

 理由は分からないが……これはもしやひまりさんが不機嫌になっていらっしゃる?




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