「ほどよい馬鹿」と言われた俺が、美人ばかりの生徒会に参加して学園の人気者になる話   作:えんだー

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35 エピローグ

「今日は楽しかったな。お前の生徒会は、遊びに行くことがあるのか?」

 

「そこそこかな。何年も一緒に活動してるから仲いいし」

 

「うらやましいな。俺は今日がはじめてだ」

 

 

 カラオケでの事情聴取後、ほんの少しの時間カラオケを楽しんだ俺たちはそれぞれ家に向かうことになった。

 

 当然兄弟である俺とトオルは夜風に当たりながら並んで帰る。

 

 

「副会長とも一緒に遊びに行くことはあったのか?」

 

「もちろん。僕や千佳に一緒にご飯行こうって誘ってくれたこともあったよ」

 

「なんだそれ。俺は今まで1回もないぞ!」

 

「まだ知り合って1カ月もたってないんだからそれが普通でしょ。というか、むしろハヤトうまくやってるんだなって思ったよ」 

 

 

 いつもの生意気さを感じせない声だった。俺は聞き返す。

 

 

「そうなのか?」

 

「朝比奈さんとは、うまくやってそうだなと思ってたよ。ただ、高等部に行ったあたりから会長は僕たちでもちょっと近寄りがたい人になってたからさ……今日あんなに笑う会長見て、僕と千佳びっくりしたんだから。分かんないでしょ、僕らがどれだけ驚いたか」

 

「分からんなぁ」

 

 

 どおりで俺と副会長を何度も見てきていたわけだ。

 

 てっきり俺が生徒会になじめているか心配してくれてると思ったのだが、トオルと千佳ちゃんのお目当ては副会長の方だったらしい。

 

 

「今月の初めに会ったときはたしかに手厳しい人だなとは思ったぜ。でも、面倒見のいい人だったし俺はあの人のこと好きだよ」

 

「それは見たら分かる。会長にめちゃくちゃ甘えちゃってさ。なんだよ、昨日のお願いって」

 

 

 トオルは口を尖らせてそんなことを言った。

 

 

「いやぁ、なに言っても色々文句言いながら構ってくれるからなぁ……」

 

「開きなおるなよ。なに、やっぱり会長みたいな人がタイプなの?」

 

「やっぱりってなんだ? なんでお前が俺の好みを知ってるんだよ」

 

「いや、それは……」

 

 

 しまった、という顔をしたあと。そんな顔をしてしまったことに対して、トオルはさらに「しまった」という顔をする。

 

 

「お前がなにをどこで知ったのかはいつか聞かせてもらうとして。お前こそ、千佳ちゃんとはどうなんだよ」

 

「……どうってなにが?」

 

「付き合ってるのかどうかってことだよ。千佳ちゃん、めちゃくちゃかわいい子じゃん」

 

 

 世の中には俺と話すどころか一切目を合わせず立ち去っていく高2男子だっているのだ。

 

 そのことを考えれば、自分よりも年齢も高くてずっと大きい先輩相手に「お義兄さんと呼んでいいですか?」なんて冗談がいえるあの子がどれだけすごいことか。

 

 比較するのも失礼なぐらいだ。

 

 

「付き合ってないよ」

 

「なんで? はじめて会った俺にも物怖じせずに目を合わせて話してくれるし、性格もよさそうに見えたぞ。お前だって嫌いじゃないだろ」

 

「そりゃ嫌いじゃないよ。1年のころから一緒に生徒会で活動してきたから信頼もしてる、けど……」

 

「けど?」

 

「これ以上は言えない」

 

「そうか、ならいいや」

 

 

 普段ならあの手この手で聞き出すところだが、さすがに茶化していいものとそうでないものの区別はつく。そもそもこの手の話について、俺がトオルに何かを言えた義理はないのだ。

 

 

「あんなかわいい子、ほっといたらそのうち横からかっさらわれるぞ……なんてお前は分かってるよなあ」

 

 

 俺のつぶやきにトオルは返事をしなかった。

 

 チカちゃんのことかなり大切にしてそうなのに何が理由で付き合わないのか。事情を知らない俺には分からない。

 

 副会長に関することだってだってそうだ。

 

 話を聞く限りだと、以前はもっと穏やかな人だったらしいが何があったのだろうか。過去に副会長だった男が任期前に辞めた、という話を聞いたがそれが関係しているのだろうか。

 

 副会長のことだけじゃない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()がある。

 

 しかし、俺の手元には推測を立てるだけの材料はない。材料が足りない以上、推測は妄想になる。

 

 気になることがあれば直接聞けばいいのだろうが、それができるほどの関係を俺はいまだ会長や副会長と作れていないのが問題だ。

 

 とりあえず、今日は会長も副会長もひまりも楽しそうにしていたのだからそれでよしとしたい。

 

 

「───そっちこそひまり先輩とどうなんだよ。昨日はじめて会ったにしては好かれすぎてない? 村重先輩が取り乱すのもめちゃくちゃ理解できるんだけど」

 

「さっきの失言といい、今日は頭の調子が悪いみたいだな。久しぶりに見た笑顔の日比谷先輩がそんなに衝撃的だったか?」

 

「なんだと!?」

 

 

 ちょっと考えてみろよ、と言うとトオルはあごに手を当てて考え始める。

 

 時間にしても10秒も経たないうちに、結論にたどり着いたらしい。驚いたような顔をした。

 

 

「ひまり先輩ってゲストなの!?」

 

「はっはっはっ。ま、他の奴らには相談しづらいこともあるからひまりが俺をよく頼ってくれてるだけだよ」

 

 

 ひまりがゲストである、とは直接伝えることができないので俺はそんな風な伝え方をする。

 

 トオルにはこの程度匂わせておけば十分なのだ。

 

 

「……それにしたってやっぱり懐かれすぎじゃない?」

 

 

 一瞬納得しかけたトオルだったが、やっぱりありえないと首を横に振った。

 

 

「やっぱそう思うよなぁ。ひまりからの好感度高すぎて俺もちょっとビビってる」

 

「なんで来栖に来たのか聞いてないの?」

 

「本人からは聞いてないけど、予想はついてる。理事会のおじさまたちが好きそうな話だ」

 

 

 俺がそう言うと、トオルはふーんと興味なさげな反応を見せる。

 

 

「ま、生徒会でうまくやってるみたいでよかったよ。会長たちを困らせないようにしなよ」

 

「ハハハ、お前もやっぱ副会長の後輩なんだな」

 

 

 俺が笑いながら言うと、トオルが目を細めてにらみつけてくる。

 

 

「はぁ? どういうこと?」

 

「いろいろ言いながら心配してくれてありがとな」

 

 

 ちょうどいい位置にあるトオルの頭に手をのせる。そのまま動かそうとしたら手首を思いっきり掴まれた。

 

 

「おい、いま何しようとした?」

 

「こういうのが恥ずかしい歳ごろだったか」

 

「子供扱いするなよ」

 

「義務教育課程の人間がなに言ってんだ」

 

 

 俺は掴まれた手首をほどいて再び歩き出す。

 

 昨日に引き続き、今日もいろいろあった。ひまりが生徒会に入り、脱出ゲーム部のあれこれに頭を使い、カラオケまで楽しんだ。

 

 生徒会に入ってから、暇という言葉を忘れるぐらい忙しく初めての経験をし続けている。

 

 また明日も何かあるだろう。

 

 帰路につく俺たち2人の、背中を押すような風が吹いた。

 

 

★★★

 

 

「日向さん、そのデータはここに格納するのよ」

 

「かくのう……?」

 

「ごめんなさい、入れるってことよ」

 

「ひまちゃん! シートを保存するときは一番左上のセルを選んですっごい助かる!」

 

「……すみません、セルってなんのことでしょうか?」

 

 

 カラオケから2日経ち、部活設立ラッシュが落ち着き始めたころ。ひまりは正式に生徒会のメンバーになり、生徒会の仕事を始めるようになった。

 

 しかし、いままでパソコンにすら触る機会がなかったらしいひまりはちょっとした作業でも苦戦をしている。

 

 

「実行委員会でPC使う機会ないのか?」

 

「体実では体を使うか、スマホを使うお仕事ばかりやってまして……」

 

「そっちは無理なくできてるの?」

 

「なんとか」

 

 

 ひまりは人差し指でゆっくりタイピングをしながら答えた。

 

 まだまだ時間はかかりそうだ。

 

 

「未熟な身ですが、がんばりますので色んなこと教えていただけるとうれしいです!」

 

「おう」

 

「ところで、話は変わるんですが。委員長がそろそろ生徒会からも人手を借りたいそうです」

 

「あ、もうそんな時期か!」

 

 

 会長は机の上に置いてあった卓上カレンダを1枚めくる。

 

 6月のカレンダーの最終週、その土日である6月29日・30日に「体育祭!」と赤く書かれていた。

 

 体育祭の運営には、人手が必要なのだが生徒会も手伝うのが慣例らしい。

 

 

「ひまちゃん、いつから来てほしいって?」

 

「来週の月曜の放課後に、全体の会議があるそうなのでまずはそちらに顔を出してほしいそうです!」

 

「来週の月曜かぁ。なんか予定あった気がする……」

 

「カバディ部とセパタクロー部、体育館利用時間の調停ですね」

 

「そうだった! うーん、2つとも練習場所の確保にすごい真剣だから時間かかっちゃうだろうなぁ。私とレンちゃんは体実の会議に行けないかも……」

 

「委員長からは滝沢センパイを呼ぶように言われてます!」

 

「そうなんだ! じゃあハヤトくん、ひまちゃんと一緒にその会議に出てもらっていいかな?」

 

「いいですよ」

 

 

 俺が了承すると会長が「ありがとう」とお礼を返す。

 

 

「それにしてもハヤトくんをご指名なんだね。なんでなんだろう……ハヤトくんなんか心当たりある?」

 

「心当たりはありませんけど、俺が逆の立場だったら俺もあいつを呼びつけると思います」

 

「何やら穏やかなじゃない言い方するね〜。たしか、今年の委員長って……」

 

「"あの"玄道くんですよ。彼と滝沢くんは去年の編入生ですから、交流があるのでは?」

 

「そういうことか!」

 

 

 会長たちが話しているのを見ていると、俺の顔をじーっと見ていたひまりが話しかけてくる。

 

 

「玄道委員長とどういうご関係なんですか?」

 

「比較的交流のある去年のクラスメイト」

 

「えぇー? ホントにそれだけですか?」

 

 

 珍しくひまりが疑いの目を向けてくる。

 

 

「委員長は『滝沢は俺のライバルだ!』っておっしゃってましたけど」

 

「……あいつ、まだそんなこと言ってんの?」

 

「はい! ですから、ただならぬご関係なのかと!」

 

 

 興味津々、それ以外に表現しようのないひまりの瞳が俺に向いた。

 

 

「ひまり、手が止まってるぞ」

 

「はっ……! すぐ動かします!」

 

 

 俺の指摘を受けたひまりが再び人差し指タイピングを始める。

 

 それにしても、いまだにあいつ───玄道は俺をライバルだと思ってくれているらしい。

 

 

「センパイはどうやっってぶらいんどたっちができるようになったんですか?」

 

「パソコン触ってるうちにできるようになった」

 

「ということは、わたしの努力次第ということですね! がんばります!!!」

 

 

 今年の体育祭実行委員長、玄道(げんどう)達也(たつや)は昨年俺のクラスメイトだった編入生。

 

 そして、この学園における最初の友人であり、俺と同じく()()()()()()()()()()()()1()()()()()()だ。




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