「ほどよい馬鹿」と言われた俺が、美人ばかりの生徒会に参加して学園の人気者になる話   作:えんだー

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9 滝沢、悪事が見つかる

 会長たちと昼食を取ったあと、俺は食後の眠気に襲われながらも午後の授業を受けた。俺の中学は公立だったためか、教師たちもどこかつまらなさそうに授業をしていたのだが。

 

 私立であるこの学校の教師というのはとても楽しそうに授業をする。

 

 

「ここからの歴史の流れすっごいんだから!」

 

 

 そんな風に叫ぶ歴史担当の教師や、物理現象を説明するためにペットボトルのふたを飛ばす物理教師。教師も個性的だし、Eスポーツ部なんてものを作ろうとする生徒までいるのだからこの学校は本当に面白い。

 

 ホームルームを終えた俺はすぐに立ち上がると前の方の席にいた水沢と目が合う。彼女は俺に気が付くと手を振ってくる。俺もお返しに手を振り返すとにぱぁと擬音がつきそうなぐらいの笑顔を向けてきた。

 

 

「滝沢、いつ水沢と仲良くなったんだよ」

 

 

 それを見た俺の数少ない友人の吉川(よしかわ)が話しかけてくる。

 

 

「生徒会でちょっと話す機会があったんだよ」

 

「へー、そうなん? 滝沢もしっかり生徒会の仕事やってんだなぁ」

 

「親みたいな感想だな」

 

「感慨深いぜ~」

 

 

 うんうんと深く頷く吉川に俺は苦笑する。

 

 今週は掃除当番ではないので、俺は吉川に別れを言ってすぐに職員室へと向かった。中に入ると俺の目当ての先生がいたのでそこへ向かう。

 

 

「ん? 滝沢じゃないか。どうした何か用か?」

 

 

 パソコンで資料を作っていた青山先生が視線を上げる。俺は頷いた。

 

 

「先生は水沢という女子生徒のことをご存じですか?」

 

「おぉ、知っているぞ。しかし、どうして君の口からその名前が……あぁ、Eスポーツ部か」

 

「はい、今日の昼に生徒会に来ました。俺はその場に居合わせただけなのですが、副会長のチェックを通って部活の設立ができることになったようです」

 

「そうかそうか。前から水沢のことは気になっていたからな。ようやく部活が作れるようになったのか」

 

 

 実に嬉しそうに青山先生は頷いた。生徒の成功を自分ごとのように喜ぶ、この人のこういうところが俺はけっこう好きだ。だからこそ、俺の頭の中にある予感が外れていることを願っている。

 

 

「実はですね、その水沢の部活のことなのですが……彼女は本当にEスポーツ部を立ち上げたいと思っているのか疑問に思ってます」

 

 

 俺がそう言うと先生の表情は変わる。

 

 

「……なるほど。何故そのように思った?」

 

「特に根拠があるわけないのですが……」

 

「いい。君の勘はそこそこ当てになる。話半分に聞いてやるからまずは話してみろ」

 

「イエッサー」

 

「だからせめてマムにしてくれ」

 

 

 そんな風に俺と先生は軽口をたたいて笑った。そして、青山先生は体を横に倒して俺の後ろの方へ視線を向けた。

 

 

「ところで、君たちも滝沢と同じ用件かな?」

 

「……え?」

 

 

 後ろを振り返ると会長と副会長が立っていた。会長は驚いた表情で俺を見上げ、副会長は腕を組んだ仁王立ちの状態で俺のことを鋭い瞳で見つめていた。

 

 

「滝沢くん、いまの……どういうこと?」

 

「説明、お願いできるかしら」

 

 

 

 青山先生に相談しようとしていたところ、会長たちに見つかってしまった結果。俺たち生徒会メンバーは青山先生に連れられて面談室に通された。現在、小さめな机を囲んで俺たち4人が椅子に座っている状態だ。

 

  副

 青□会

  俺

 

 立ち位置を表すとこんな感じだ。ちなみに面談室の扉は副会長の後ろにあるので取り調べを受けている気分である。

 

 

「先生、助けてください」

 

「そうしてやりたいところだが、生徒会の不和を解消させる方が優先だ。見守っておくから彼女たちに思っていることを話してみるといい」

 

 

 信じられないほどに真摯な言葉をもらってしまったので、俺は諦めることにした。向かい側に座る副会長の鋭い眼光が俺を射貫く。

 

 

「会長、副会長。俺はどこから話せばいいでしょうか」

 

「そうね、まずはどうして私たちに一言も相談してくれなかったのか教えてくれないかしら」

 

「……相談し辛いことだったのかもしれないけど、話して欲しかったな」

 

 

 しょぼくれた会長を見ると心が少しだけ痛む。どうしてこの人は見た目から仕草まで小動物じみているのだろうか。

 

 誤解がないように、と。俺は頭を悩ませながら言葉を紡ぐ。

 

 

「……単純に、確証が無かっただけですよ。確たる証拠がないのにようやく叶った部活設立に水を差したくなかったんです」

 

「それならなおさら私たちに話しなさい。ようやく実現にこぎつけたEスポーツ部の設立だからこそ、あとで問題が起きないように今のうちに懸念を潰しておくべきでしょう。違う?」

 

 

 俺の言い訳に対して返ってきたのは反論をしようがない正論パンチだった。副会長の言う通り、あるかもしれない時限爆弾を放っておくのは得策ではない。

 

 Eスポーツ部が無事設立されて軌道に乗って、何かの大会に出場する。その直前に部の存続が左右されるような問題が出てきてしまう……なんて最悪だ。

 

 だが、俺の勘でしかないがこの問題を掘り起こしたら最悪Eスポーツ部設立が白紙になりそうな気がするのだ。

 

 副会長の正論にどう返した者かと頭を悩ませていると会長が口を開いた。

 

 

「滝沢くんなりに、Eスポーツ部のことを考えて黙ってたんだね?」

 

「……はい」

 

「それなら、今回は不問とします。滝沢くんが生徒会の仕事に誠実であることは付き合いこそ短いけど分かってる。だから、次からは私たちにちゃんと話してね?」

 

「了解です」

 

 

 会長からお咎めなしという沙汰が下ったからか、副会長の鋭い眼光が鳴りを潜めた。とりあえず不和の解決はできたかな。

 

 そう考えて青山先生に視線を送ると、久しぶりに「仕方ないやつだ」と言わんばかりの表情が返ってきた。

 

 

「それで改めて聞くけど。滝沢くんは水沢さんがEスポーツ部の立ち上げを望んでないと思ってるの?」

 

「いえ、水沢さんはEスポーツ部を本気で立ち上げようとしているとは思います」

 

 

 資料や会長たちの会話から水沢が本気でEスポーツ部を作ろうとしているのは間違いない。本気でなければ学校の通信回線のスペックを確認したりはしない。

 

 

「うん? どういうこと?」

 

「Eスポーツ部を立ち上げる熱意は伝わるんですが……肝心のゲームに対する熱意があまり伝わってこないんですよね」

 

 

 俺の発言に会長と副会長が互いに顔を見合わせた。

 

 

「会長、確認なんですが水沢さんは最初パソコンを使うゲームをやろうとしていたんですよね?」

 

「そう、だね」

 

「なんていう名前のゲームをやるといっていたのかは覚えていますか?」

 

「うーん、覚えてないなぁ。銃で撃ちあうゲームだったのは覚えてるんだけど......レンちゃんはどう?」

 

「VEILBRINGERっていうゲームでしたよ。特殊能力を持ったキャラを操作する5vs5のタクティカルFPS......チーム戦術の重要度が高いゲームです。水沢さんがEスポーツ部を立ち上げてやろうとしているGogとは違うゲームでした」

 

「さすが、レンちゃん。それで、このことがどう関係しているの?」

 

 

 会長の疑問に俺は遠回しな回答になることを承知で話し出す。二人の会話のおかげで俺の中の仮説の確信度が高まった。

 

 

「会長・副会長。お二人はゲームをそこまでやったことがないのだと思いますが、ゲームと親しんでいる俺からすると水沢の発言には気になる部分がいくつかありました」

 

「……一から説明お願いできる?」

 

 

 副会長の言葉に頷いて俺は頭の中を整理した。

 

 

「まず、これは偏見かもしれませんが。水沢さんがEスポーツ部の立ち上げをしようとしていると知ったとき俺は『おっ』と思いました。俺には水沢さんがゲームに打ち込んでいる人種に見えなかったんです」

 

 

 陰キャ、陽キャという言葉がある。内向的な人間と外交的な人間を揶揄ったような造語だが、水沢はどちらからと言えば陽のものだろう。学校に友人がいて放課後や休日は家ではなく外で過ごすタイプだと思う。

 

 一方、悲しいかな。ゲームに打ち込んでいる人間には内向的な人間……もちろん俺の認識にバイアスがかかっている可能性はあるが感覚的に陰キャが多い気がする。

 

 少なくとも、水沢のようなゲーマーを俺はあまり見たことがない。だってあの人正統派の明るい美人だもん。

 

 

「そんな水沢が去年の一月から、しかも初期費用がかかるせいで敷居の高いPCゲーム主体のEスポーツ部を作ろうとしたことにけっこう違和感がありました。最初は学校の人間と部活でやりたいほど好きなゲームがあると思ったのですが、もし仮にそうならば部活でわざわざやる必要はないことにすぐ思い至りました」

 

「……うーん?」

 

「なるほど。少し分かったわ」

 

 

 会長は理解ができない様子だが、副会長は状況が飲み込めたらしい。

 

 

「やりたいゲームがあるなら、部活に入らずに家でやればいい。うちの学校には部活に入らなければならないなんて決まりはないから、無所属のまま授業が終わって帰ればすぐにできる。それに、いまのゲームってオンラインでできるものも多いのだから友人とやるとしてもやっぱりそれぞれの家でやった方がいい……ってこと?」

 

「そういうことです。付け加えれば、PCゲームを学校の部活でやるのはハードルが高いです。学校の回線を使わなければならないので、学校から面倒な許可を取らなければなりませんしそもそもパソコンを揃えるのだって費用がかかりすぎるのでけっこう大変です。もともとパソコンを持っていた人間が学校に持ってくるならパソコンを揃える問題は解決しますが、そんなことをしたら今度は家でできなくなります。満足にゲームができるスペックのパソコンを何個も持っている金持ち高校生はそんなにいません」

 

 

 そんな富豪高校生羨ましすぎるからたかりに行ってやる。

 

 

「必然的にEスポーツ部を学校でやるならスマホのゲームをやるのが一番コスパいいんですよね。みんなだいたいスマホ持っていますから」

 

「うんうん。だから、水沢さんもそうしたんじゃないの?」

 

「そうですね。でも、なんで初めからそうしなかったのでしょう。スマホゲームが一番コスパいいっていうのは、ゲームをある程度やってる人間ならすぐに分かることです。ですが、話を聞く限り水沢さんがスマホゲームをやると言い始めたのは最近のことのようでした」

 

「それは、やっぱりパソコンでやりたいゲームがあったから……あ、でも。そうなるとさっきレンちゃんが言ったみたいに家でやった方がいいのか」

 

 

 会長もだんだん状況が飲み込めてきたようだ。これで次の説明に移ることができる。

 

 

「その通り……今までの話をまとめると、水沢さんは何故かPCゲームをわざわざEスポーツ部でやろうとしていたことになります。ここまではいいですね?」

 

 

 会長と副会長は頷いた。

 

 

「ですが、結局Eスポーツ部の立ち上げが難しかったので水沢さんはスマホゲームで部活を立ち上げようとしました。去年の1月から何か月も頑張ったのに、結局スマホゲームで妥協した。そうなると、理由は分かりませんが水沢さんにとって一番重要なのはEスポーツ部を設立することになります」

 

 

 細かいところを挙げれば違和感はまだまだある。例えば、水沢が最初にやろうとしていたPCゲームとスマホでやろうとしているゲームのタイトルが違うこととか。だが、いま重要なのは2人にEスポーツ部の何が問題なのかを説明することだ。

 

 

「競技性があるゲームを行うことで目的を達成するやり方やチームプレイを通じて協調性を培う、という名目で水沢さんは部活を作っています。ですが、もしEスポーツ部の設立そのものが水沢さんの目的だとしたら部に中身が無い。定期的に練習を行い大会に出る、みたいな感じでしっかりと活動ができなければ今は良くともいずれ廃部になる可能性だってあります。いずれ廃部になるビジョンが見えている部活の立ち上げを認めるのは問題があるのではないか、と思ったんです」

 

 

 せっかくできた新しい部活がただのたまり場になってしまう事態は誰だって避けたいだろう。だというのに、Eスポーツ部なんて学校や保護者の反対が起きそうな部活がたまり場になってしまったら、なおさら「やっぱりゲームを部活でやるなんてダメじゃないか」と言われかねない。

 

 最近、Eスポーツ部が増えてきているといってもまだまだ少ない。

 

 他の生徒からしても、あんな部活があるなら自分たちも……なんて考えて中身のない部活をやろうとするやつが増えかねない。

 

 

「そっか……そういうことか」

 

 

 納得したように会長が呟く。俺はついでに先ほど説明しきれなかったことも補足しておくことにした。

 

 

「それで、ここまで考えはしましたが結局は憶測の域を出ません。確たる証拠が無いのにいたずらに廃部がちらつくようなことを言うのはどうかと思ったので、まずは青山先生に相談してみようと思ったんです」

 

「……そっか。滝沢くんはそんな風に考えていたんだ」

 

 

 感心したような様子で会長が俺を見てきた。副会長のことを見ると「疑問はあるけど……」という表情をしていた。

 

 

「気になることはいくつかあるけど、滝沢くんの話自体は論理的で説得力もある。私も水沢さんがどうしてわざわざEスポーツ部を作ろうとしているのか気になった」

 

「しっかりと説明できていたならよかったです」

 

「それだけ口が立つなら次からはもっと早く報告しなさい」

 

「了解です」

 

 

 相変わらず鋭い眼光を向けてくるが、なんとか副会長も納得してくれたようだ。俺はそのことに安堵してばれないように胸をなでおろした。

 

 いま会長と副会長に説明した内容は()()()()本当のことだ。

 

 俺の姉曰く、どうしてもバレたくないことがあるときの対処法は『それ以外は全て本当のことを話す』ことらしい。

 

 会長はともかく副会長は嘘に敏感そうなので誤魔化せるか不安だったが、傍若無人なうちの姉も役に立つことを言うようだ。

 

 しかし、俺と一年以上の付き合いがある青山先生は呆れたような顔を俺に向けていた。




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