何もない少女は本を求める   作:エアロスミス

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<前回のあらすじ>
魔理沙がアリスに丸投げした。少女が起きた。


第2話 カイドウ。それが少女の名前ッ!

「う、まいッ!」

 

カップに注がれた冷えた水*1は、おそらく何も飲んでいなかった少女の体に染みわたっていった。

その飲みっぷりを前にして、魔理沙は少し感銘を受ける。

 

「こんなに美味しそうに水を飲むとは...」

「どこに感銘受けてるのよ」

 

さて、前置きはこのあたりにして。冷えた水を飲んだことで、少女の喉は潤った。受け答えもばっちりだ。

 

「さて、これから色々と聞きたいのだけど...最初に名前を教えてくれない?」

「...えーと、カイドウです。多分。自信ないけど、それが私の名前」

 

カイドウと名乗った少女は少し自信がなさそうに答える。

 

「名前に自信がないってどういうことだ?」

「あー、()()()()()んですよね。本当に自分の名前なのか」

「...もしかして、ここに来た記憶がないってこと?」

 

記憶喪失。幻想郷の外からやってきた外来人に稀にある症状だ。しかし、カイドウが話したことはそれ以上の症状であった。

 

「それもそうですけど...自分が誰なのか分からないですよね。カイドウって名前も覚えてたというか、与えられていたって感じで。何もかもが自分じゃない...ちょっと伝えにくいんですケド」

「え?それってどういうことだ?」

()()()()()()()()()()()?ハハハ...」

 

ここで、アリスはカイドウを少し休め、魔理沙と二人きりの状態にした。アリスは少し考える素振りをしながら自分の考えを話し始める。

 

「彼女、記憶喪失としては極めて重症よ。記憶だけでなく、アイデンティティ*2も失っているなんて。彼女、長くないわよ」

「カイドウが人間ならな」

 

チッチッチッと魔理沙がわざとらしくカッコつけた。

 

「いつもしないでしょそんなこと」

「い~だろ別に。それでな、アイデンティティが無くてもちゃんと生きてる奴はいるだろ?例えば...お前の人形とか」

「...上海人形*3のこと?確かにそれっぽいけどアレもアイデンティティは...」

「たしかにそうだ。人形には魂がなければ、アイデンティティもない。でも、人形として生きることができる。それが、魂が入っている人形なら?」

 

その一言で、アリスは気づく。カイドウという少女の正体を。

 

「いつから気付いてたの?」

「運んで、ベッドに寝かせたくらい。いやー私も初めて見たな」

 

「カイドウの体はホムンクルス*4だ。しかも、飛び切り上等なヤツだ」

*1
夏に飲むと美味すぎて、身体が宙を舞う飲み物。

*2
別名:自我。今作において、生きとし生ける者(例外アリ)なら誰もが持っているものであり、「自分が自分であること」の証明である。これを失うということは既に死んでいるか消滅するということだ。陰陽、魔術の観点では魂が損傷していると捉えられる。

*3
アリスが所持する人形。自我は無いが、自我を持っているように動く。

*4
錬金術によって生み出された人間のこと。




[悲報]主人公が人間じゃない。
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