本が光って、風が吹き荒れた。
「やめてくれ!頬を引っ張らないで!」
「この~!変な暴走しやがってッ!」
「あなた何もしてないでしょ。コイツの頬をつまむ権利は私にあるわ」
「あれ?結局怒られるの?」
あのあと、カイドウは二人から頬をつねられることになった。必死の弁明によって、二人に悪意がないことは納得してもらったが、それはそれとして頬をつねられていた。
「さて、満足した。さっきの本はこれだな...あれ?こんなかんじだっけ?」
カイドウを一通り弄んだ魔理沙は、先ほどの本を手に取る。輝きは失っていたが、明らかに新品同然のような見た目になっており、表紙も読めるようになっていた。
「借りた時はボロボロだったんだけどな」
「カイドウの持ってた本ね...なんて名前なの?」
「え~と?」
「魔法使いの伝記だな。中身は...あれ?
「ウソだあ!私は確かにちゃんと読んで...」
「そもそも、この本には特におかしな魔力を感じないわ。やっぱり、彼女がトリガーなのかしら?」
「カイドウ、この本には何が書いてあった?」
「魔法使いの伝記でしたよ。最後のページに挿絵があって。その挿絵が私にそっくりで...」
すると、魔理沙が手に持っていた本がまた輝きだす。こんどは風が発生することはなかった。本がひとりでに開き、ページがバラバラと飛び立つように宙を舞う。
「ちょ!私の本!」
「あなたのじゃないでしょーが」
そのページ1枚1枚が鳥のように部屋を飛び回り、カイドウ目掛けて突っ込んできた。
「~~~ッッッ!?」
突っ込んできたページはベシベシと体にぶつかることはなく、カイドウの体に溶け合うように入っていった!
「こ、これは帰着ッ!?まるで、元の持ち主に帰っていくような...!」
そして、最後のページがカイドウの体に溶け合う。本人はなんともないように、手足を動かして確かめる。いつもはやらないような指パッチンを試しにやった時、
それは火花ッ!カイドウの指パッチンはまるで火打石のように火花を散らした!
「おい!私の家で火花を散らすな!家が燃えちゃうだろ!」
「...とりあえず、外に行きましょう」
それから、魔法店の外でカイドウは色々と試した。その結果、カイドウは伝記に書かれていた発火が得意な魔法使いと同じことが出来た。
さすがにハリケーンとか、炎の波のような派手な物はできないが、指先に炎を灯したり、火花を散らすことができた。
「あの本の人物が使っていた魔法...能力を使えるようになったってことだよな」
「本の内容を再現する能力かしら...?」
「自分のことなのに、まるでわからない...」
輝く本、魔法使いの伝記、カイドウそっくりの似顔絵、ホムンクルスの体、溶け込んだページ...一見、偶然の積み重ねのようだが、魔理沙は閃く。
「さっきの本。もしかしたら、カイドウの記憶じゃないか?」
「え?いや、それっぽい感覚はないんですけど...」
「それだと、本が体の中に入っていくわけにもなりそうだけど...少し早合点かしら?」
「ええ、そこの魔法使いは正しいわ」
突然、ここにいるはずがない人物の声がした。いや、人ではない。我々はこの妖怪を知っている。いや!この能力と胡散臭い雰囲気を知っている!
彼女こそ、この幻想郷を設立した賢者の一人であり、絶対的な能力をもつ最古参の妖怪。
八雲紫登場。その妖怪、敵か味方か。