Wizard of the World of Stand   作:泡醤油

8 / 10
二ヶ月以上間が空いてしまいすみません!
もうここまできたら一気に三話くらいの同時更新しちゃおうかな、とか考えてましたが結局次がなかなか書けなくてとりあえず一話だけ更新です。
英雄ハリーまじ便利。


08

「インセンディオ!」

 

大理石の床に置かれた数枚の紙が燃え上がる。数秒それを眺めていたカルミアは首を傾げながら反対呪文で水を出し消火を試みた。

どうやら加減を間違えてしまったらしく、水をかければ火はすぐに消え燃えカスだけが床に残った。

 

闇払いの父によく呪文を教えてもらい親友と一緒に練習していたのだが、いざ一人で練習するとなると勝手が分からない。少しは自立した気でいたが、こういう状況に陥って初めて自分はまだまだ親に頼りきっていたのだと自覚した。

どうでもいいことだが、父との練習は未成年魔法使いでも魔法を使ってもいいように法的な手続きを済ませている敷地で行っている為違法にはなっていない。手続きの際ハリー達の名前を出すと二つ返事で許可が降りたそうだ。英雄の友人というのは実に得な立場である。

 

「エバネスコ、消えよ」

 

カルミアが一番得意とするのはこの呪文である。言いながら一振りすると、床に転がっていた燃えカスが跡形もなく消え去った。

昔、マルフォイに地味な特技だなと鼻で笑われたが、全くその通りだ。便利と言えば便利なので特に不満はないのだが。

 

「カルミア、そろそろ時間ですよ」

「あれ、もうそんなに経った?」

 

離れた所にある椅子に座っていたアレンは、カルミアに声を掛けながら立ち上がった。懐に杖を直しながらアレンに駆け寄ると、彼が愛用している古い懐中時計を突き付けられる。

時計の針が示す時刻はとっくに昼を過ぎており、カルミアは苦笑を浮かべる。

 

二人は建物の外へ出ると、まず太陽の光の眩しさに目を細めた。室内は外からの光を遮断しているので、慣れない内は外に出ると必ずと言っていいほど皆同じ反応を示す。

先程までカルミア達が入っていた二階建ての建物は、SPW財団が昔何らかの研究をする為に建てた物だ。エジプト支部の更にまたその支部なので、簡易な内装で広さもそこそこである。

今は使われていないそれを、アスワンに滞在する間自由に使用していいとのことなので、カルミアは戦いに備えて魔法を練習する場として使っている。

昔誰かに貰った(多分くれたのはロンおじさん辺りだろうが)「これでアナタも負け知らず! 格闘魔法図解」という本を巾着袋に入れっ放しにしていたのがこんな所で役に立つとは思っていなかったが、カルミアはこれのおかげで初戦の時に比べてかなり実力がついていた。

 

露店が並ぶ通りを抜け、大通りへと出る。途中でアレンにチャイを勧められたが、ニヤニヤと笑みを浮かべるアレンを軽く睨んで丁重にお断りした。

昨日辺りアレンに奢って貰ったチャイは砂糖三割増しだったのだが、知らずに飲んだカルミアは、客観的に見ればかなり面白いリアクションを取って驚いていた。それからカルミアの中ではチャイはそういうものだと間違った認識が植え付けられ、苦手意識まであるようだ。

 

「今日の経過次第で包帯の取れる日が決まるんだっけ」

 

病院が見えてきた頃、カルミアはふと思い出して尋ねるわけでもなくそう声に出した。

 

「そうですね。昨日は思ったより治りが早いとか言ってたので、ジョースターさん達がDIOの館に辿り着く前に追いつけそうですね」

 

ジョースターさん、その言葉に皆怪我はしていないだろうかと不安になる。居場所は把握しているが、それ以外の連絡はさっぱりな為大怪我はしていないと思うのだが、やはり心配なものは心配だ。

花京院のことも心配だと言えば心配だが、カルミアは日頃彼の飲み物に治癒の効果を持つ薬を混ぜているので経過についての心配はしていない。喧嘩の生傷が絶えないカルミアを心配したネビルが持たせてくれた薬だ。マグルに服用しても大丈夫だと信じている。

そんなことを全く知らないアレン達は花京院の怪我の治りの速さに目を丸めているが、今のところカルミアが事実を話す予定はない。

 

「うおッ!?」

 

突然腰に何かが激突して来た為、カルミアは思わず声を上げながら歩みを止め後ろに仰け反った。倒れないように何とか足に力を入れ、隣にいるアレンの肩を掴んで体制を立て直す。

こんな生易しいものが敵の攻撃なわけがないのだろうが、一応警戒しながらすぐ後ろに目を遣ると、真っ青な顔をした少年が冷や汗を流しながらカルミアを見上げていた。余所見をしていたのか何なのか、この少年がぶつかってきただけのようだ。

安心させてやろうと頭を撫でようとしたが、頭の上で纏めてある髪に癖がありすぎてアフロのように広がっている為どこに触れていいのか分からないので、とりあえず目線を合わせてから肩を優しく叩いた。余程臆病なのかそれだけで肩を跳ねさせ目を泳がせる少年に苦笑が漏れた。

 

「ご、ごごッご、ごめ、……ごめん、なさ…い」

「大丈夫だからそんなに怯えるなって。怪我はねェか?」

 

一冊の本を大事そうに抱える少年は、俯き加減だがそれでもカルミアの質問に頷いて肯定を示した。

怪我はないようだが、今にも泣き出してしまいそうなほど目を潤ませている少年を放っておくことが出来ず、カルミアはあーとかうーとか小さく唸ってから怖がらせないよう笑顔を作りながら顔を覗き込む。

 

「えっと……病院に用があるのか?」

 

ここはもう病院の敷地内だ。答えが分かりきっている質問を投げかけると、案の定少年は首を縦に振った。その動きに合わせるように数滴涙が落ちてしまっているが、少年はそれ以上泣いてしまわないようにか目を見開いて固まっている。

困ったように眉を下げたカルミアは、ふと何か思いついたのか懐を探って例の巾着袋を取り出した。

地味な色のそれを少年の前で振って見せ、興味を引いてみる。

 

「見た所君は悪い所が無さそうだし、知り合いが入院してるのかな?」

「お、お兄ちゃん…が……」

「そうかそうか。じゃあ、見舞いの品を用意しないとな」

 

言葉の意図が分からずキョトンとカルミアを見上げる少年に、やっとこちらを見たとカルミアは歯を見せて笑った。

巾着袋を手で潰してみて何も入ってない、なんてことを言うと少年はカルミアと巾着袋を交互に見て頭上に疑問符を浮かべる。目に溜まっていた涙が少し引いてきているようだ。

 

「この袋は魔法の袋だ。今は何も入っていないが、こう……二回叩いてやると……」

 

昔ハーマイオニーおばさんが持っていたテレビとやらで見た、マグル界の手品というものを真似た手順で言いながら袋を叩く。別に叩いたからと言って物が増えるわけではないが、ワンクッション置いてやらなければそれっぽく見えないだろう。

袋の中に手を突っ込んで適当な物を探す。奥に引っ込んでいたせいで少し手間取ったが、まあ初めてにしてはスムーズに出来ただろう。

虹のような七色に輝く棒付きの飴を五つ袋から取り出すと、少年は驚いて目を見開き飴を凝視した後、輝く目でカルミアを見つめてきた。

 

「す、すす、すご、い…ッ!」

「だろう? よし、これを見舞いに持って行け。お兄ちゃんと仲良く食べな」

 

五つ共手渡してからアフロのようになっている髪を軽く撫でてやると先程までの涙はどこへやら、満面の笑みで礼を言ってくる。まだオドオドとした口調は抜けていないが、それは元からの性格なのだろう。

 

「おまけに、その飴にも魔法をかけてやろう」

 

適当にそれっぽいデタラメな呪文を唱えて手を翳す。一つで色んな味が楽しめる魔法の飴になった、と言ってやれば飛び跳ねて喜び礼を言いながら走って行った。大事そうに本と飴を抱える姿に思わず頬が緩む。

正直な所、元から味が七色に変わる飴なのだが、この時代には数種類に味の変わる菓子などマグル界にはないらしいので子供ならばこれで納得してくれるだろう。本物の蛙のように飛び回る蛙チョコよりはマシだ。

 

「マグルの子供は純粋でいいな」

「騙したような気がしなくもないので複雑ですが……」

 

眩しいものを見つめるように目を細めた二人だが、ふと我に帰ったように顔を見合わせると花京院達を待たせていることを思い出し、少し急ぎ足で病院へ歩き出した。

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