Wizard of the World of Stand   作:泡醤油

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お久しぶりです。前回投稿から随分間が空いてしまってすみません。今回から月一更新!と、いうことでまたがんばっていこうと思います。
そして、大したことでもないのですが。
これからWWSはハーメルンと自サイトで同時更新していくことにしました。夢がお好みの方は自サイトの方で名前変更して読めます。リンクは私のマイページにありますので、よろしければどうぞ。

長くなってすみません。今回あまり動きがないですが、久々の更新ということで大目に見てやってください。


09

早朝、車の中でカルミアは大きな欠伸をしていた。口元に当てた手とは反対の手は隣に座る花京院によってしっかりと掴まれている。

昨日少年と別れた後、花京院達と合流したカルミアとアレンは予想以上に花京院の傷が回復している為翌日にでも包帯を取ることが出来るだろうという医師の話を聞かされた。さすがにそこまで劇的な効果が出ているとは知らず、カルミアでさえも驚いて数秒ほど間の抜けた表情を晒していた。

どうせ包帯が取れたからといってもすぐに出発出来るわけでもなく、しばらく視界が塞がっていたので今度は視界が戻った状態で慣らさなければいけない。早く承太郎達に合流したい花京院は出来るだけ早く包帯を取ってくれ、と交渉しその結果朝一で病院に行くことになったのだ。

 

病院に行くだけなので別に手を繋ぐ必要など全くないのだが、いくら言っても聞く耳を持たない花京院にカルミアが先に折れて好きなようにさせている。

人肌に触れると落ち着くのだと聞いたことがあるし、多分平気な顔をしていても少しは不安があるのだろう。傷のつく以前の状態に視界がきちんと戻っているのかは包帯を取って確かめてみなければ分からないのだから。

安心させてやろうと花京院の手を握り返すカルミアに、驚いたように顔を向けた花京院は嬉しそうに口元を綻ばせた。体格も性格も違うのに、親友のアルバスがそこにいるような、そんな気がした。

 

「カルミアはきっと人の良さそうな顔をしているんだろうね」

「変な期待すんなよ。あと、俺は目つき悪いぞ」

 

まだ病院までは数分はある。花京院に初めて見られる顔が欠伸をしている間抜け面になってしまわぬよう、少し寝ておこうとカルミアは窓の方へ体を預けた。

目を閉じて意識が現実と夢の境目を行き来していると、シートと肩の間に手が差し込まれ体を反対側に傾けさせられる。服越しに僅かに感じ取れる体温が心地良く、少し身じろいで寝やすい位置を探した後そのまま眠りについた。

 

起こされる前に目を覚まし、カルミアは斜めに凭れかかる体制から体を起こして凝った首を回した。あんなに短い時間でも少しは深く眠ることが出来たらしく頭はすっきりとしていた。

 

「おはよう」

「おはよ。重くなかった?」

 

返事が返ってくる代わりに繋がれた手を一瞬強く握られた。文句を言わないってことは大丈夫だったのだろう。気を遣ったのに自分の方へ倒したのは花京院なのでカルミアが文句を言われることはないのだろうが。

あることに気付きカルミアは内心首を傾げる。眠りにつく間手を離された感覚はなかったが、体の向きを変えてきた手のようなものは背中から入り込んできた。辿り着く答えは自然と一つしかなくなるのだが、カルミアはこれ以上考えないことにした。触手は勘弁願いたい。

 

医師の手によって、ゆっくりと包帯が取り払われていく。その様子をぼんやりと見つめていたカルミアは、睫毛長いよな、などと場違いなことを今更ながらに考えた。

いよいよ目を開く、という時になって医師が「近くに来てあげていいですよ」と言ってくれた為その言葉に甘えてカルミアは花京院のそばに寄り、膝の上に置かれた彼の手を握った。少しでも安心出来ればいいのだが、と思っての行動に花京院は応えるようにカルミアの手を握り返した。

医師に促されて、僅かに震えた瞼がゆっくりと持ち上がる。部屋を薄暗くしている為眩しくはないようだが、しばらく視界を失っていたせいでやはり違和感があるのか少し目を開けたところで瞬きを繰り返している。

 

「何本に見える?」

 

時間をかけて目をしっかり開いた花京院に、医師は指の本数を数えさせたり色がきちんと識別出来るか確認したり、と異常がないか色々と質問する。最後に部屋の明かりを通常通りに戻しても大丈夫か確認して、典明の目は無事完治ということになった。

なんとなく、ずっと繋いでいた手に視線を落とすと、カルミアの髪を梳くように大きな手が撫でた。カルミアのよく知る、丁寧なその撫で方は間違えようもなく花京院のものだった。

 

「綺麗な髪だね」

「ノリアキの目も綺麗だな」

 

照れる様子もなく笑みを浮かべながら綺麗だと言葉を交わす二人を見て、アレンはどこのバカップルだと大声でツッコミを入れたくなった。シルヴィオは相変わらずの無表情で何を考えているか全く分からない。

 

カルミアのパーツを確かめるように髪を撫でていた手を顔に移し、耳や首筋をなぞっていた花京院だったが、医師の咳払いに、悪いことをしていたわけでもなかったのだが思わず大袈裟にビクリと肩を震わせる。

どうやら、ここが病院だということをすっかり忘れていたようだった。

 

 

「明日、か」

 

病院からの帰り道、少々落ち込んだ様子で花京院はポツリと呟いた。今にも二人の空間を作り出してしまいそうな彼らの行動を咎めるように咳払いをした医師は、「明日の朝もう一度診察をして問題がなければジョースターさん達を追いかけてもいいだろう」と言っていたのだ。

視界がある状態で慣れる為に時間が必要だと分かっていても、仲間達は今も敵と戦っているのだと思うと花京院の気持ちも分からないでもない。しかし、今万全の状態でない彼は、仲間に追いついたとしてもはっきり言って足手まといになってしまうだろう。そうならない為にやはりもう少し時間は必要だ。

頭が悪いわけではない。むしろ、良すぎる花京院はそのことを分かっているが、意識せずに漏れるため息はどうしようもない。

 

「安心しろ。明日の昼にはジョータロー達に追いついてやるから」

 

元気づける為かわざと明るい声でそう言ったカルミアは、花京院の髪を少々雑に掻き回した。幸いカルミアが触った部分の髪は短かったので、そこまで彼の髪が乱れることはなかった。少し別の方向へ跳ねてしまった程度だ。

 

ジョセフ達でさえ二日はかかって辿り着いたというのに、一体どんなショートカットをすれば半日でカイロに着くのか。そもそもDIOの館を探して動き回っている彼らの居場所がすぐに分かるのか。花京院の脳内にはいくつもの疑問が浮かび、一体どこから聞いていいのか分からなくなる。

 

「まあ、それは明日のお楽しみってことで」

 

分かりやすく疑問が顔に出ていたらしい花京院の顔を見て笑いを堪え切れなかったカルミアが、口元に手を当てながら悪戯っ子のように口角を上げた。つり目の彼の口が弧を描くのを見て、いつかテレビで見た不思議の国の物語に出てくる猫のようだと花京院は思う。

縞模様の猫は用が済むとくるくると模様で円を描き体の先から消えて行ってしまう。そんな曖昧な場面だけを思い起こして、カルミアが突然消えることはないと頭では思っていても、言い表せない不安が襲って来る。

 

「お手をどうぞ?」

 

いつの間にかホテルまで着いていたようで、カルミアに続いて降りようとした花京院にカルミアは少々茶化して手を差し出した。それは彼なりに気を遣ってのことだろうが、冗談っぽく言ってしまうのが彼らしい。

笑いながら手を取ると、釣られるように笑いながら手を引かれる。目の包帯は取れているのに、ここ数日と同じく当たり前のように繋がれたままの手に、アレンとシルヴィオが突っ込むことはない。アレンの内心はどうか分からないが。

 

「……ッ」

 

車内で変なことを考えていたせいか、ほんの一瞬、カルミアが透けたように見えた。

命を救ってもらった恩なのか、数日世話を焼いてもらい共に過ごしたせいで湧いた情なのか、それとも別の何かなのかは分からないが、花京院はカルミアには少なからず好意を持ってしまった。そんな彼が消えると思った瞬間に感じたのは、恐怖。

 

「ん? どうかした?」

「いや……何でもない」

 

繋いだ手を離さないように力を入れると、カルミアは不思議そうに首を傾げて花京院を見上げる。何でもない、その言葉をどう捉えたのかカルミアは花京院の目をじっと見つめた後少々速度を落として再び歩き始めた。

そんな気遣いに気付いた花京院は、いつかカルミアが元の場所に戻る未来を想像して、喜ばしいことなのに、胸が締め付けられた。

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