チャンピオン、リーグ辞めるってよ   作:スゲー=クモラセスキー

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 TS、勘違い、曇らせ、ヤンデレという作者の好きな要素全部盛り。


謎のマスクマン編
プロローグ


 カントーポケモンリーグ最奥──通称「チャンピオンの間」。

カントー地方全土に数多いるトレーナー達の頂点に立つ者と、その頂に挑まんと数多の試練を乗り越えた選ばれし者のみが立ち入ることが許される、まさに決戦の場である。

 

 そんな厳かながらも何処か静謐とした空気を湛える頂点の舞台に、相反する表情を浮かべた二人のトレーナーが向かい合っていた。

 

 

 

「──ようこそ『チャンピオンの間』へ。ここに君が来るのを楽しみにしていたよ」

 

 

 

 そう言って穏やかな声と共に目の前の人物を歓迎しながらも、当の男の顔には一切の感情も浮かぶことはなかった。

 

 ……いや。

この場合、今の彼の顔からは一分の感情すらも読み取ることが出来なかったと表現した方が適切だろう。

 

 

 

「カントーポケモンリーグのチャンピオンとして──何より、君の旅立ちから今日までの軌跡を知る一人の大人として、君ほどのトレーナーをこの場に迎えられたことを心から嬉しく思う」

 

 

 

 何故ならこの男の顔には──正確には先程から詠うように言葉を紡ぎ出している口元より上の部分には、まるで彼の人間としての本質全てを覆い隠すかのような漆黒の仮面がぴたりと張り付いていたからだ。

 

 

 

「改めて自己紹介をさせていただこう。ボクの名前はホオズキ。ここ、カントーポケモンリーグのチャンピオン──つまり、この地方最強のトレーナーとして君臨させて貰っている者だ。以後よろしくね。……まぁ、君にこのくだりを話すのはこれで2度目なわけだけど」

 

 

 

 そう言うと、謎のマスクマンことホオズキは、己の顔の中で唯一怪しげな仮面に覆われていない口元の端を僅かに持ち上げる形で微笑を浮かべる。

その姿は「どう好意的に見ても事あるごとに意味深な台詞を呟く怪しい不審者そのもの」なのだが、残念なことに、この場でその事実を声高に指摘する者は誰もいない。

何故なら、ホオズキはカントーポケモンリーグのチャンピオンになったあの日から──もとい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ずっとこのスタイルを貫いてきたからだ。

 

 つまり、ホオズキは世界で初めて主要なポケモンリーグから公式に認められた謎のマスクマンというわけなのである。

 

 なお、詳しい事情を知らない一般人──特に子供達からは「何か怪しいけどバトルが強くて意外と頼りになる優しい不審者」として絶大な人気を集めていたりもするのだが……。

それはまた別の話である。

 

 

 

「──そうですね。貴方に憧れて……。貴方の背中に少しでも近付きたくて、ここまで来ました」

 

 

 

 そう言って、ホオズキと対面する形で彼の目の前に立つ少年の顔に特にこれといった感情の機微は見られない。

しかし、この少年の表情に変化が見られない理由はホオズキのそれとはまるで異なるものであった。

 

 

 

「色んなことがありました。博士から貰ったポケモンと一緒に旅に出て。その途中で色んな人やポケモン達と出会って。ポケモンを使って悪いことをしようとしていた人達とも沢山戦って。──そして、その先々で貴方に助けて貰いました。だから今日は、これまでの恩返しの意味も込めて、ここまで来たんです」

 

 

 

 というのも、この少年はホオズキのような仮面で己の顔を隠していたわけではなく、ただ単純に感情の動きが殆ど表情に現れないタイプの人間だったからである。

また、この少年は余程のことがない限り、自分からは殆ど口を開くことのない非常に寡黙な人間でもあったのだ。

おかげで一足先にホオズキに挑戦していた同じ町出身の幼馴染からはそのことでよく揶揄われていたのだが……。

その詳細は後日改めて語ることにしよう。

 

 

 

「全ては、このバトルで貴方に勝って、あの日立てた目標を必ず現実のものとするために」

 

 

 

 何故なら、既に臨戦態勢に入っている二人の間に、最早これ以上の言葉は必要なかったのだから。

 

 

 

「ふむ……。君の目標というと、シルフカンパニーを占拠していたロケット団達を相手にボクと肩を並べて戦ったあの日に聞いたものと記憶しているのだけど……それで間違いなかったかな?」

 

「はい。それで間違いありません」

 

 

 

 ──しかし、そう思っていたのはあくまで少年のみで、ホオズキからはそんな少年に対して多少なりとも言いたいことがあるようであった。

というより、目の前で並々ならぬ闘志を燃やす少年に対して最後に確認したいことがあったと言った方が正しいか。

 

 

 

「成る程……。ということは、やはりあの日聞いた内容はボクの聞き間違いや記憶違いではなかった、というわけだ。……念の為に聞いておきたいのだけど、今からでもその目標の内容を別のものにするつもりはあるかな?」

 

「ありません」

 

え"。……じゃ、じゃあ、もしもボクが今君にあの日聞いた目標……という体の脅しの内容を少しでいいから変えて欲しい、と言ったら受け入れてくれたりする?」

 

「嫌です」

 

「そ、そこを何とか……ね?」

 

「無理です。だって──」

 

 

 

「だって()は、『ホオズキさんの素顔を見せて貰うこと』と、『ポケモンリーグで貴方に勝ったら正式に私と結婚を前提にしたお付き合いをして貰うこと』を目標に、今日まで頑張ってきたんですから。……私をキズモノにした責任、取って下さいね?

 

「Oh……」

 

 

 

 何故なら彼は、目の前の少年……と思い込もうとしていた知り合いの目の光が消えた美少女ことレッドから、とある出来事をきっかけに猛烈なプロポーズを受け続けてきたのだから。

 

 

 

(どうして……。どうしてこうなった……)

 

 

 

 カントーポケモンリーグチャンピオンにして世界初のリーグ公認マスクマン、ホオズキ。

 

 

 

(ボクは……俺はただ、正体不明のチャンピオンとして頂点さんの道中を見守りながら、最終決戦でこの人と満足いくまでバトルした後、円満にリーグチャンピオンの座を退くつもりだったのに……)

 

 

 

 これは、前世の記憶という名の原作知識を持ってポケモン世界に転生したアホな転生者が、「一度でいいからこの世界の『原点にして頂点』とマジバトルしてみたい!あとついでに謎の男ムーブもしてみたい!!」という雑な目標を胸に世界各地で何やかんやした結果、どういうわけかTSしていた頂点さんほか複数名のトレーナー達から一斉にクソ重感情を向けられることになった物語である。




・ホオズキ

 公式最強こと「原点にして頂点」さんにロックオンされた人。
控えめに言って詰みである。

・レッド(♀)

 人呼んで「原点にして頂点」。
狙った獲物は決して逃さない。



 ……そんな話が読みたいので、誰が続き書いて下さい。
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