チャンピオン、リーグ辞めるってよ 作:スゲー=クモラセスキー
カントーポケモンリーグチャンピオンにして同リーグ公認の謎のマスクマンことホオズキは基本的にポケモンに対して好き嫌いをしない男である。
勿論、一人のトレーナーとしての彼なりの好みであったり、パーティーを構築する際の攻守バランスを考えて自身の手持ちに加えるポケモンを選ぶ時はあるが、そういったバトル方面での事情を抜きにすれば、このマスクマンは全てのポケモン達を分け隔てなく愛する博愛の人となるのだ。
某有名サイトが実施しているアンケートで「見た目の怪しささえ除けば純粋に尊敬出来るトレーナー」部門10年連続第1位を獲得した実績は伊達ではないのである。
「一流のトレーナーにして一流の人格を備えた不審者」とはまさにホオズキのために存在する言葉と言えよう。
但し、それらはあくまでも人間側から見たホオズキという男に対する評価であって──。
「……あー、もう!さっきから私の前に飛び出してくるポケモンがどいつもこいつもビードルばかりって、一体どうなってんのよこの森はッ!?うざったいったらありゃしないわッ!!──ということでフシギダネにポッポ!あいつら全員、得意の『このは』と」『かぜおこし』でぶっ飛ばしちゃいなさいッ!!」
「ダネーッ!」
「ポォーッ!」
「「「ビ~ッ!?」」」
「……グリーンの虫ポケモン嫌いは相変わらず、か。まぁ私も特別好きってわけでもないけど。……あ、オニスズメ。それも結構沢山。……ヒトカゲ、ピカチュウ。『ひのこ』と『でんきショック』でやっちゃって」
「カゲーッ!」
「ピッカーッ!」
「「「オニ~ッ!?」」」
(……ふむ。グリーンさんの手持ちはフシギダネとポッポか。主力となる御三家は序盤の壁であるニビジムとハナダジムの攻略を目指して手堅い草タイプを選んだ感じかな?対するレッドさんの手持ちはヒトカゲとさっきゲットしたばかりのピカチュウ……。成る程、こちらは単純に自分好みのポケモンを選んだと考える方が妥当だろうね。何にせよ、二人とも手持ちの子達と仲良くやれているようで何より──って痛い痛い痛いッ!ごめん、ごめんってッ!!君達のテリトリーに無断で入り込んでしまったのは謝るから、そのデカくて太い針で執拗にボクのお尻を突きまわすのを止めてくれッ!!!」
当のポケモン達からは「さては人間のふりした
……もっとも、自分達の縄張りを侵されたことに怒るスピアー達からの執拗な毒針攻撃を痛いの一言で済ませる辺り、この男が少しばかり──いや大分人間から逸脱した存在であること自体は否定出来ないが。
「全く……この森に入ってからは本っ当に碌なことがないわ。……っていうか、年頃の女の子二人だけで野宿させるとか倫理的にアウトなんじゃないの?あーあ。早くニビシティのポケモンセンターでシャワー浴びたい……」
「……そう?私はこうして外で野宿するのも結構楽しいけど。……寧ろさっきから文句たらたらのグリーンだって、少し前まではその辺の原っぱで普通に寝てたじゃない」
「昔は昔、今は今よ。……あとレッド。さっきの話、ホオズキさんの前では絶対にしないでよね」
「……別にホオズキさんは気にしないと思うけど」
「私・が・気・に・す・る・のッ!」
「……はいはい」
──視点を移して、スピアーに襲われる不審者から一仕事を終えたTS初代コンビへ。
トキワの森でビードルやオニスズメといった野生のポケモン達からの襲撃を退けたグリーンとレッドの二人は、この森の中心にある巨木の下で火を起こしながら今日の出来事を静かに振り返っていた。
彼女達が同じ日、同じ時間にマサラタウンを出発した理由は実にシンプルなものである。
ただ単純に、親類同然の付き合いのあった互いの両親から「せめて最初のジムがあるニビシティまでは二人で行動して欲しい」と懇願されたからこそ、彼女達は渋々ながらも行動を共にしているのだ。
勿論、年頃の娘に一人旅をさせたくないという両親の気持ちは分かるし、初めての旅を今日まで共に過ごしてきた幼馴染みと体験してみるのも悪くないという思いがグリーンとレッドの中にあったのは確かである。
しかし、そういった諸々の事情を加味してもなお、彼女達が誰にも干渉されない──特に誰よりも自分のことを理解しているであろう幼馴染みとは別の、自分だけの旅に拘ったのには相応の訳があったのだ。
(この数日の間で、レッドには私が爺ちゃんから貰ったフシギダネや自力でゲットしたポッポの性格とレベル、そして今時点での技構成といった基本的な情報を粗方知られてしまった。勿論、それだけで私が不利になるわけじゃない。けれど、あの気難しいことで有名なピカチュウをああも簡単に手懐けてしまうほど育成に長けたレッドに余計な情報を与えてしまったのはマズったわ。本当なら、ニビジムに挑戦する前の腕試しで私と私のポケモン達との完璧なコンビネーションを披露するつもりだったのに……。これは少し作戦を練る必要があるかもしれないわね……)
(……グリーンが博士から貰ったのはフシギダネ。恐らくは岩タイプのニビジムや水タイプのハナダジムのジムリーダー達とバトルすることを踏まえて、最初のポケモンにあの子を選んだのだと考えるのが妥当。その後にポッポを捕まえていたのは……多分、素早さに劣るフシギダネの弱点を補完するためかな?慎重派のグリーンらしい手堅い選択だね。それに、私の前ではあの子達に極力新しい技を使わせないようにしていた癖に、逆に私のヒトカゲやピカチュウの動きについては今の時点でもほぼ完全に読み切っているみたいだし……。やっぱりグリーンはすごい)
(だけど、例えレッドがどんなポケモンを育てていようが関係ない)
(……でも、例えグリーンがどんな作戦を立てていたとしても問題ない)
((──だって最終的にあの子に勝って、ホオズキさんのいる場所まで行くのはこの私だから))
何故なら、彼女達は姉妹同然の仲で育った最高の親友同士であると同時に、ホオズキという想い人を巡って鎬を削る最強のライバル同士でもあったのだから。
「転生直後にビードル達から受けた毒針攻撃も然り、今日のスピアー達から受けた極太毒針攻撃も然り……。もしかしてボクって彼等から天敵レベルで嫌われてたりするのかな……?」
──一方その頃、度重なる交渉の末に何とか恐怖のスピアー軍団から解放された不審者は、未だに鈍い痛みの走る尻を気遣いながら、自身の身に降り掛かった不運を一人嘆いていた。
・ホオズキ
恐怖のスピアー軍団から執拗に尻を狙われたマスクマン。
チャンピオンの姿か?これが?
・グリーン(♀)
虫ポケ嫌いの初代ライバル。
内心では親友のレッドに対する対抗心でバチバチ。
・レッド(♀)
虫ポケは好きでも嫌いでもない初代主人公。
内心では親友のグリーンに対する対抗心でバチバチ。
次回は久しぶりにマスクマンに曇らせられる不運な女性キャラの様子を書いていきます。
そんな不審者による曇らせ描写にご期待いただける方は是非感想と一言付き高評価をお願いします。