チャンピオン、リーグ辞めるってよ   作:スゲー=クモラセスキー

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 両親や姉が殆ど帰って来ない大きなお屋敷の中で一人寂しく過ごしていた体の弱いお嬢様に、時折ふらりと現れては人と接することの楽しさと世界最高レベルのポケモンバトルの愉しさの両方を教えてくれる謎のマスクマンを与えるのはあまりにも劇薬過ぎると思いました(小並感)。


マスクマンとネモ

 カントーポケモンリーグチャンピオンにして同リーグ公認の謎のマスクマンことホオズキは自他共に認める強者である。

それは彼と彼の鍛えた仲間達とが最難関との誉れ高いカントーポケモンリーグを破竹の勢いで勝ち進み、遂には当時の四天王やチャンピオンすらも下して史上最年少チャンピオンの栄冠を勝ち取っただけでなく、その記録を就任当初から継続中の無敗記録と共に保持し続けていることからも明らかであろう。

 

 そんなホオズキがチャンピオンとなった今もなお貪欲に強さを追い求め続けているのには主に三つの理由がある。

 

 一つ。

富や権力以上に己の腕っぷし──もとい、ポケモンバトルの強さが全てと言っても過言ではないこの世界で、自身の築き上げた地位をより盤石なものとするため。

何せホオズキ自身が行く宛もない根無草の立場から一地方のリーグのトップにまで登り詰めた生粋の苦労人だったのだ。

それを考えれば、彼が強さという名の安心を求めて日々研鑽を続けているのも寧ろ納得というものである。

 

 二つ。

世界最強を謳うカントーポケモンリーグのチャンピオンの座にある者は全ての挑戦を受ける立場にあると同時に、その全てを退けるほどの強者でなくてはならないため。

勿論、これはあくまでもリーグ本部が掲げるチャンピオンとしての理念や心構えに関する話であって、決してそれらの遂行が義務化されているわけではない。

しかし、他ならぬホオズキ自身がその理念をクソ真面目に受け取り、それを遂行することが自分の使命と思い込んでしまったことが、彼に敗れたことで心を折られた者と、その凄まじいまでの強さにすっかり脳を焼かれてしまった者の両方を生み出してしまったのは何とも皮肉な話である。

 

 そして、最後の三つ目にして、彼が自身の強さを追い求める上で最も大切にしている理由。

それは──。

 

 

 

「──やぁ。久しぶりだねネモさん。しばらく見ない内に、また少し背が伸びたんじゃないかな?」

 

「──ッ!ホオズキさん!お久しぶりです!そうなんです!実は去年測った時より10cmも背が伸びてて!」

 

 

 

 チャンピオンという立場を使えば、世界各国のポケモンリーグとの連携強化や新たな才能の発掘を理由に、世界各地の原作キャラ達と合法的に触れ合えるから。

所謂ひとつの職権濫用という奴である。

それで会いに来たのが未来のパルデアチャンピオンであるネモ(アカデミー1年生の姿)な辺り、もしかしたらこの不審者は中々に業の深い性癖を拗らせているのかもしれない。

ジュンサーさん、この人です。

 

 

 

「10cm……それはすごいね。どうりでネモさんの姿が以前と比べてもぐっと大人びて見えた筈だ。いやはや……毎度のことながら、若者の成長の早さには本当に驚かされるよ」

 

「あはっ!そう言うホオズキさんだって十分お若いじゃないですか!……まぁさっきの台詞は少しだけおじ様っぽかったですけど」

 

「……認めたくないものだね。自分自身の、老い故の失言というものを」

 

「だ、大丈夫ですよ!ホオズキさんならきっと素敵なおじ様になれますから!勿論、今だって十分過ぎるくらい素敵ですけど!」

 

「ありがとうネモさん。お世辞でもそう言ってくれると嬉しいよ」

 

「……別にお世辞を言ったつもりはないんだけどなぁ」

 

 

 

 そんなロ○コン疑惑がますます深まる謎のマスクマンとパルデア地方一のお嬢様との交流が始まったのは、今から数年ほど前のとある出来事がきっかけだった。

何ということはない。

パルデアポケモンリーグの依頼を受けてアカデミーでの講演を終えた彼が、カントー地方に戻る前に何となく立ち寄ったコサジタウンの美しいビーチで一人寂しげに佇む少女に声を掛けたのが全ての始まりだったのである。

怪しい仮面を付けた男が幼気な少女に声を掛ける姿は控えめに言って変質者のそれだったのだが、ホオズキ自身が困っている人──特に泣いている子供を放って置けない優しい不審者で、ネモもまた、そんな彼の優しさを誤解なく受け取ってくれる素直な少女だったのは幸いであった。

 

 

 

 そうでなければ、彼らが今でもこうして笑顔で交流し続けることは決して出来なかっただろうから。

……もっとも、そんなホオズキとネモとの心温まる交流の絵面が世間知らずなお嬢様を誑かす謎のマスクマンで固定されているのはある意味不幸なことなのかもしれないが。

 

 

 

「──ところでホオズキさん。チャンピオンとして普段からお忙しくされている筈の貴方がこうして私に会いに来てくれたということは、しばらくの間私と一緒に過ごせる時間があると考えて問題ないですか?」

 

「そうだね。オモダカさんから頼まれていたこちらでの仕事は一通り終わらせて来たし、ボクとしてはそうなれば嬉しいなと思っていたところだよ」

 

 

 

 ──さて。

話は変わるが、子供というのは必ずと言っていいほど自分の周りにいる大人達の姿から影響を受ける生き物である。

それは自身が目にした大人の行動であったり、自身が耳にした大人の口癖であったりと様々ではあるが、一つ確かなことを挙げるとすれば、子供というのはそんな大人のあれこれをすぐに真似したがるということだ。

子供は大人の背中を見て育つとはまさにこのことである。

 

 

 

「そう、ですか……。──でしたら、これから私達がヤるべきことは一つしかありませんよね?」

 

「フフッ……そう言われると思って既に準備は整えてあるよ。──何せ、ボクも久しぶりにネモさんとヤるのを楽しみにしていたからね」

 

「も、もう!揶揄わないで下さい!……それじゃ、私と一緒に一杯気持ちよくなりましょうね……♡

 

「ああ……存分に堪能させて貰うよ……」

 

 

 

 では、良くも悪くも周りの大人達の影響を殆ど受けることなく一人寂しく日々を過ごしていた少女の前に、見た目こそ怪しいが基本的にフレンドリーでなおかつ奇妙な色気を放つ歳上の男性が現れたらどうなるだろうか?

その答えは実にシンプルである。

 

 

 

「行くよマスカーニャ!今日こそ私と貴方の二人で、ホオズキさん達に一泡吹かせてあげちゃうんだからッ!」

 

「ニャンッ!」

 

「行こうかマスカーニャ。ネモさん達の前にはまだまだ越えるべき壁があるということを、ボクと君の二人でしっかりと教えてあげよう」

 

「ニャフ♪」

 

 

 

 朱 に 交 わ れ ば 赤 く な る(バトルジャンキーは伝染する)

 

 

 

 つまりはまったくそのとおりなのである。




・ホオズキ

 ネモの脳を焼いてバトルジャンキーに仕立て上げた元凶。
なお、本人的には寂しそうだったからポケモンと一緒に遊んであげた(意味深)だけの模様。

・ネモ

 ホオズキに脳を焼かれてバトルジャンキーに仕立て上げられた被害者。
なお、同時に将来の結婚相手に求める基準がこのマスクマンで固定されてしまった模様。

・マスカーニャ

 ホオズキとネモの手持ちポケモン。
二人が最初に出会った時に偶然ホオズキが持っていた卵から生まれた兄妹で、ネモにとっては記念すべき最初のパートナー。
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