チャンピオン、リーグ辞めるってよ 作:スゲー=クモラセスキー
カントーポケモンリーグチャンピオンにして同リーグ公認の謎のマスクマンことホオズキは自他共に認める旅行好きな男である。
ある時は、イッシュ地方の中心都市であるヒウンシティを自由気ままに練り歩いては100mに一度の頻度で職務質問を受け、その様子を不憫に思った隣のスーパーモデルに助け舟を出される不審な観光客として。
またある時は、パルデア地方のテーブルシティに悠然と佇むアカデミーで他の教員達と共に様々な分野の教えを説いては、その奇妙な恰好に興味をそそられた子供達に群がられる謎の仮面講師として。
そしてまたある時は、ガラル地方のヨロイ島でかつて師事した伝説の超ガラル人と激しいバトルを繰り広げる傍ら、色んな意味で毒の強い後輩にバトルの神髄の何たるかを伝える頼もしい先輩マスクマンとして……。
──このように、ホオズキ自身はあくまでプライベートでの訪問と嘯きながらも、実際には過去に自身が紡いできた他者との縁を大切にする義理堅い人間でもあるのだ。
もっとも、そんな彼が紡いできた縁の大半が女性や将来有望な少女ばかりなのがこの男の不審者加減を更に高める要素にもなっているのだが……その辺りの事情はいずれ何処かで語られることだろう。
さて、そんな着の身着のまま風の向くままに各地を放浪してはその先々で新しい人やポケモン(主に女性と♀)を引っ掛けてくることに定評のある神出鬼没のマスクマンが今何処で何をしているのかいうと──。
「全く……折角だからと久しぶりに顔を見せに来たというのに……。──そんな殊勝な旧友の顔を見た途端に攻撃を仕掛けてくるなんて、随分な挨拶じゃあないか。……だけど、そっちがその気ならボクだってそれ相応の対応を取らせて貰うよ!行くぞ、スターミーッ!」
「ヘアッ!」
「コケーッ!」「テフ♡」「ブルァ……ッ!」「……レヒ」
アローラ地方はポニ島、「海の民の村」付近の孤島にて、妙に足の長さと鳴き声に特徴のあるスターミーと共に、暇を持て余した神々との仁義なき戦いに身を投じていた。
何を隠そう、ホオズキはアローラでの武者修行時代に同地方の人々から敬愛される4柱の「カプ神」達──即ち戦神「カプ・コケコ」、生命神「カプ・テテフ」、農耕神「カプ・ブルル」、海神「カプ・レヒレ」の4体と、暇さえあれば毎日のようにバトっていた生粋のバトルジャンキーだったのだ。
つまり、このマスクマンとカプ神達の間には、ある意味カプ神と彼らの住まう4つの島々と遺跡群を守護する「しまキング」や「しまクイーン」などよりも遥かに強い友情と信頼の上に成り立った強い絆が結ばれているのである。
「
「迎え撃てスターミーッ!『
「ダァァァッッッ!!!」
そんな過去の経験と実績に基づく確かな友情と信頼があるからこそ、彼らはお互いのことを大切な友であり、ちょうどいい喧嘩相手として認め合っているのだ。
……普通の人間とそのポケモンがカプ神4体と相対してまともにヤりあえていること自体がおかしい?
それはそう。
「──そんなわけで、ホウエン地方に現れたフェローチェには穏便に向こう側に帰って貰えたんだけど、あれはあの子がそれなりに話が出来るタイプのウルトラビーストだからこそ出来たことだと思うんだよ。何せその前にイッシュ地方に現れたアクジキングなんかは明らかに攻撃的だったし」
「レヒ?」
「ん?ああ、勿論、最終的にその子にも向こう側に帰って貰うこと自体は出来たよ?ただまぁ、彼はボクが思う以上の頑固者で、ボクとの勝負についても中々自分の負けを認めてくれなかったからそれなりに苦労したけど」
「レヒー?」
「彼とどんな勝負をしたのかって?いやー、別に大したことはしてないよ?」
そうして、久しぶりの喧嘩にテンションMAXになったカプ神カルテットとの勝負に辛くも勝利したホオズキは、途端に静けさを取り戻した孤島の浜辺に腰掛けながら、ここ一体の守り神であるカプ・レヒレにウルトラビースト関連のものも含めた近況を語っていた。
誰に対してもフレンドリーで口達者なこのマスクマンと、彼と喧嘩する時以外は基本的に物静かで聞き上手な海神は意外と相性がいいのだ。
「ただ単純に、お腹を空かせてイライラしていた彼とホットドッグ早食い勝負をしただけだから」
「れ、レヒ……」
しかし、幾ら聞き上手なレヒレさんでも、ホオズキの口から語られたアクジキングとの逸話に対しては流石にドン引きしていたようだが。
因みに、そんなレヒレさんもドン引きな件の早食い勝負の結果は、事前に用意されたホットドッグ10本に対してホオズキが2.1秒、アクジキングが2.2秒でそれぞれ完食という具合に、レイコンマ1秒の僅差でマスクマンの勝利に終わったのだが、それを見ていた野次馬たちがその異常なスピードに揃ってドン引きしていたのは言うまでもない。
──もっとも、先の勝負の結果に納得がいかない様子のアクジキングによる抗議の2戦目と泣きの3戦目についても同様にホオズキが勝利を収めていたことに比べれば、彼らのドン引き具合などはまだまだ序の口に過ぎなかったわけであるが。
「ほうほう……相変わらずホオズキくんは面白い経験をしてるねぇ。まぁそれより何より君個人の方が遥かに面白いけれど。……あとこれ。さっきの君とカプ神様達とのバトルを絵にしてみたから、よかったら貰って」
「ありがとうマツリカさん。……うん。今回の絵も素晴らしい出来だね。特にボクのスターミーが
「──ところで、マツリカさんは一体何時からここに?」
「ホオズキくんが気付かなかっただけで私はずっとここにいたよぉ?……そう。君がここに来た時からず~っとね」
なお、そんなほぼほぼ人間を辞めてる疑惑のあるホオズキをして一切の気配を悟らせなかったマツリカも、中々に謎多き人物であるのは間違いない。
・ホオズキ
アローラに来たついでにカプ神カルテットに喧嘩を売りに来たマスクマン。
アクジキングとの早食い勝負に完勝する剛の者。
君、本当に人間?
・スターミー
ホオズキの手持ち。
轟く叫びを耳にしてウルトラホールの向こう側から帰って来たウルトラヒトデマンの進化形。
カプ神カルテットが放った合体技を一人で相殺出来る剛の者。
強い(確信)。
・カプ神カルテット
アローラ地方の守り神……の皮を被った暴の化身。
同地方で武者修行をしていた頃のマスクマンとノーガードで殴り合った仲。
伝説の名に違わぬ力を持つ自分達と対等にヤり合える人間にもう4柱の脳は焦げ焦げ。
・マツリカ
ポニ島でフェアリータイプのキャプテンを務める有名画家。
若き日の自分の目の前でカプ神カルテットと激闘を繰り広げるマスクマンの姿を目に焼き付けたあの日から彼女の脳はベリーウェルダン。
気になるあの人ためなら気配を消すことなど造作もない。
日刊ランキングで本作が1位になっていました。
皆さん、本当にありがとうございます。
これからも頑張ります。
また、感想と一言付き高評価は随時受け付けておりますので、今後もどしどし送って下されば作者は泣いて喜びます。