チャンピオン、リーグ辞めるってよ   作:スゲー=クモラセスキー

8 / 19
 ポケモンもお洒落も恋愛も全部気合の入った全力でぶつかってくるJKジムリーダーにその全力を丸ごと受け止めてくれるマスクマンをぶつけるのはあまりにも脳みそウェルダン案件だと思いました(小並感)。


マスクマンとスズナ

 カントーポケモンリーグチャンピオンにして同リーグ公認の謎のマスクマンことホオズキは特定のタイプに拘ることなく己の好きなポケモン達と共に熱いバトルを楽しむトレーナーである。

その中でも特に彼が好んでいるのは、自身が身に着けている仮面のそれによく似た装飾を持つポケモンや、彼同様にその生態や生息域──或いはその正体すら不明の謎だらけのポケモン達が挙げられるだろう。

現にこのマスクマンの手持ちにいる仮面で己の顔を隠しながらも溢れる色気で周囲のポケモン達の性癖を悉く捻じ曲げてきたマスカーニャ(♂)や、ウルトラホールの向こう側にいる存在から「神秘の光」を与えられたことで正義の心に目覚めたヒトデマンが進化したスターミーなどを見ても、彼の嗜好の一部が垣間見えるというものである。

一見すると見た目のインパクトが強いばかりのキワモノ集団にも見えるのだが、そこに個々のポテンシャルとホオズキの奇想天外な発想から繰り出される巧みな戦術が加わることで、先の2体+αからなるパーティーがカントー地方(地元)じゃ負け知らずの無敵集団になるのだから恐ろしいことこの上ない。

 

 だからこそ、そんな謎のマスクマンと彼の鍛えたポケモン達とのバトルを一度でも経験したことのあるトレーナーは皆口を揃えてこう言うのだ。

 

 

 

 「アイツもアイツのポケモン達も全員意味分からんくらい強かったけど……それでも、アイツらとのバトルは本当に意味分からんくらい楽しかった」──と。

 

 

 

 記録にも記憶にも残るチャンピオンパーティー──それがホオズキと彼の鍛えたポケモン達に対する世間からの正当な評価だったのである。

もっとも、そんなマスクマンとそのポケモン達とのあまりにも刺激的なバトルを経験してしまったせいで、彼らと対戦したトレーナー達のその後の人生に多大な影響が出たこともあったのだが……まぁその辺りの事情は追々分かることだろう。

 

 

 

 ──良くも悪くも、という枕詞が付くのは難点だが。

 

 

 

 ところ変わって、ここはシンオウ地方随一の豪雪地帯であるキッサキシティ。

厳しい冬の寒さと降り積もる雪の重さにも負けない逞しい人々と、そんな彼らと付かず離れず──時には互いに助け合う理想的な距離感で共生する強力な氷タイプのポケモン達が暮らす地方都市である。

また、同地にはシンオウ神話に残る様々な逸話の中でも特に重要な場所とされるキッサキ神殿もあり、その厳かな佇まいを一目見るためだけこの街を訪れるもの好きな観光客もいるほど。

大自然の驚異とそこに息づく人とポケモンとが生み出した確かな歴史……その双方を一度に味わえるキッサキシティは、広大なシンオウ地方の中でも特に神秘的な場所の一つと言えるだろう。

 

 

 

 そして、そんな雪と歴史の街であるキッサキシティを訪れたホオズキは今──。

 

 

 

「行け、トゲデマルッ!充電で溜めた『エレキボール』付きの雪玉をスズナさん達のゴールにシュゥゥゥーッ!!超☆エキサイティングッ!!!

 

「ト……ゲェェェッッッ!!!」

 

「──させるかぁ!ユキノオー、『こらえる』ッ!そのままホオズキお兄ちゃんとトゲデマルの雪玉(剛速球)を受け止めてッ!!今こそS・K・G・K(スーパー・気合・ゴール・キーパー)の底力を見せどころだよッ!!!

 

「ノォォォッッッ!!!」

 

 

 

 妙に目付きと背中の棘が鋭いトゲデマルと共に、同街のジムリーダーにしてキッサキ神殿の守り番も務める今時女子ことスズナ&ユキノオーのコンビと手加減抜きの雪合戦(3Dアクションゲーム)に興じていた。

何を隠そう、この二人は一度顔を合わせれば互いの力量を確認するためのポケモンバトルと称して全力で遊び合うほど仲のいい友人同士でもあるのだ。

当初こそジムリーダーと遺跡の守り番という二つの重責に押し潰されそうになっていたスズナの緊張を解すためにこのマスクマンが始めたちょっとしたレクリエーションだったのだが、それが数年も続けば街公認の一大イベントになるのだから驚くべきことである。

なお、見物客達による双方の応援比率がスズナ33:ホオズキ4で前者の圧勝に終わったのは、偏に後者の日頃の行いというものであろう。

 

 

 

「……ッ!?雪玉が──ユキノオーの手前で逃げるように大きく曲がった……ッ!?」

 

「ノォッ!?」

 

「フハハハハハッ!油断したねぇスズナさんッ!!うちのトゲデマルの投げる雪玉の軌道とはこういうものだぁッ!!!」

 

「トゲェ……」

 

 

 

 そう言って仮面越しからでも分かるホオズキの見事なドヤ顔とその相棒たるトゲデマル──もとい、ドヤデマルが放ったあまりにも理不尽な高速スライダーの両方を目の当たりにしたスズナは激怒した。

必ず、かの邪知暴虐で唐変木のおたんこなすな女誑しマスクマンをこの手で分からせてやらねばならぬと決意した。

 

 

 

 スズナにはホオズキのことが正直まだよく分からぬ。

スズナは、今時女子なキッサキジムのジムリーダー兼キッサキ神殿の守り番である。

ポケモンもお洒落も普段の仕事も得意の気合で大体何とかしてきたが、それでもこと恋愛に対しては若干及び腰かつそれほど積極的になれぬまま暮らしてきた。

けれども幼い頃の自分にとてもよくしてくれた憧れのマスクマンに対しては、人一倍に敏感な乙女心の持ち主であった。

 

 

 

「……いやでも流石に今のはズルいでしょッ!?久しぶりに会った年下の女の子との遊びの中で放るにはあまりにも遊びのない変化球だったじゃんッ!汚いな、流石お兄ちゃん汚いッ!!」

 

「フッ……大人というのは皆心の何処かに汚さを隠し持っている生き物なんだよスズナさん。……それとも、こんな汚い大人なボクとはもう遊びたくなくなっちゃったかな?ん?」

 

──はぁッ!?んなわけないじゃんッ!次こそは絶対お兄ちゃんに勝ってその悪趣味な仮面をはぎ取ってやるんだからッ!!」

 

「ハッハッハ!それは楽しみだねぇ!」

 

 

 

 そして同時に、スズナはことホオズキに関してだけは彼の口車に簡単に乗ってしまうちょろい系女子でもあった。

現役JKを誑かす不審なマスクマンなど控えめに言って通報案件だが……まぁ両者が納得しているのならそういう関係も有りなのだろう。

 

 

 

「それでお兄ちゃんの顔からその仮面をはぎ取った後は『あたしの純情を弄んだ不審者の素顔』として全世界に拡散して責任取らせてやるんだから」

 

「うん、それはマジで止めてね?」

 

 

 

 もっとも、当のスズナは隙あらばホオズキと彼の今後の人生そのものも狙う強かな女性として鋭意成長中のようではあるが。




・ホオズキ

 売られたバトルは例えそれが幼子であろうとも全力で買うマスクマン。
勿論、相手のトレーナーとしての力量や繰り出したポケモンの練度を見てバトルの展開を演出するのも忘れない。
「どうせバトルするなら相手にも全力で楽しんで欲しい」がモットー。
そのせいで対戦相手の脳をウェルダンしてることを彼は知らない。

・トゲデマル

 ホオズキの手持ち。
マスクマンにとってのピカ様枠ということで、その実力は彼の手持ちの中でも屈指のもの。
特にクローザーとしての性能がずば抜けており、その豪腕から繰り出される七色の変化球(エレキボール)で数多の強敵達を討ち取って来た。
最終的に「俺自身がボールになることだ」理論で放たれるワイルドボルトは最強最速。

・スズナ

 キッサキジムのジムリーダー兼キッサキ神殿の守り番。
大概のことは気合で何とかして来たパワフルJK。
前述したお役目を二つ同時に背負うことになった重圧に潰れかけていたところをマスクマンに全力で遊ぶという形で救われたことですっかり脳みそウェルダン。
そんな乙女の純情を焼け野原にしたホオズキには責任を取って貰いたい所存。

・ユキノオー

 スズナの手持ち。
S・K・G・K(スーパー・気合・ゴール・キーパー)の異名を持つ。
だけどやっていることは実質キャッチャー。
解せぬ。

 カロス、パルデア、ホウエン、イッシュ、アローラ、ジョウト、シンオウと来てラストはガラル。
一体誰の脳みそがウェルダン&曇らされるのかご期待いただける方は感想と一言付き評価をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。