頭文字D -無名の挑戦-   作:たっせ

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お久しぶりです。
本当に、本当にお待たせいたしました。

ちょっとずつ復帰できるよう頑張って参りますので、これからも応援よろしくお願いします!


十三話 衝動

 「おい、来るぞ!」

 

 道路脇の山肌に集まったギャラリーの一人がそう叫んだ。

 

 ギャラリーの目線は森の闇に覆われたコーナー出口に注目した。

 

 真っ暗な夜に包まれた峠には徐々にエキゾーストサウンドが響く。

 

 音はだんだんと大きくなり、こちら側に近づいてくる。

 

 コーナー出口から闇を裂くようなライトの光が照らされた次の瞬間、二台の車両が飛び出してくる。

 

 真っ赤なワイドアンドローのボディで威圧感漂うGTO、稲妻のような黄色で俊敏さを思わせるFD、二台のバトルは未だ鍔迫り合いの状態となっていた。

 

 

 「よし、分かった。」

 「二台はテクニカルセクションを抜けてこれから高速セクションに突っ込むそうだ」

 

 「そうか。流れは順調だな」

 「決着はもうすぐ着くかもしれないぞ」

 

 「え?」

 

 涼介の発した一言に史浩は驚く。

 

 続けて涼介が解説する。

 

 「ハイパワーエンジンに4WD、峠では破格の性能のGTO、重さというハンデも霞むぐらいだ。高速セクションに入ってしまえばFDは敵わないだろう」

 

 「それじゃあこの後どうやって勝つってゆうんだ」

 

 「相手は高速セクションで逃げ切ろうとするはず。そこが最大の攻略ポイントだ。」

 

 涼介は真っ直ぐな目でそう言うのだった。

 

 

 緩やかな左コーナーを二台はアクセル全開で突っ込む。

 

 アンダーステアでアウト側に車体が流され、擁壁に衝突しそうになるのをステアリングで意地でもコントロールする。

 

 それは一瞬のことだったかもしれないが、ステアリングをいつも以上に力強く握った。

 

 長い森林の中を駆け抜けた後、視界は突如開けた。

 

 ここからは高速セクション、GTOの得意分野だ。

 

 ふとバックミラーに視線を移す。

 

 FDは相変わらず気味の悪いほどくっついてくる。

 

 「チクショ、、ゼンゼン引き剝がせねぇ 」

 

 三浦の予想に反しFDの追走は猛烈なものだった。

 

 「だけどこっからだ。すぐに引き剥がしてやる…」

 

 再びステアリングを握る力は強くなる。

 

 (この勝負、ここで決めてやるッ!)

 

 ストレートエンドの緩やかな登り勾配に入り、目の前のS字コーナー入り口の右コーナーが大きくなる。

 

 車体を道の左いっぱいにつけるとともに、ギリギリまで引きつけブレーキを踏み込む。

 

 荷重がフロントにガツンと乗っかる。

 

 S字の膨らみの部分を目指すように右に、左にその大きな車体を振る。

 

 その後方を走るFDはほぼ同じラインながらも軽快に走り抜ける。

 

 その後の短いストレート、FDはジワリジワリとGTOとの差を詰める。

 

 その次にはキツめなS字コーナーが待っている。。

 

 (ブレーキングがッ、結構ツラいな)

 

 後ろから徐々に追い上げてくるFDからのプレッシャーにブレーキングが僅かにビビる。

 

 その僅かな心のブレから車体がアウト側に逸れる。

 

 三浦がそのブレを感じた瞬間、左後ろから突き上げてくる影を捉えた。

 

 「ウソ、だろ…」

 

 “驚嘆”、それに尽きた。

 

 目の前には暗い夜の中ながらも目立つ黄色のマシン、啓介のFDが突如現れた。

 

 アクセルを開けるのがふと遅くなる。

 

 その一瞬でFDとの差は離れていく。

 

 なんとか三浦は我を取り戻し、再びアクセルを開ける。

 

 コーナーをブレーキなしで右足のアクセルワークと両腕でステアリングをねじ伏せ、右左と続くコーナーを抜けてゆく。

 

 幸いにもGTOのもつ峠では持て余す程のエンジンパワーにより無理やり啓介の後ろにつくことは出来ていた。

 

 (次だ、、次のストレートで抜かす!)

 

 二台のヘッドライトが次のコーナーと山腹に設けられた展望台駐車場を照らす、ここを抜けると長いストレートに差し掛かる。

 

 ストレートに入る手前のコーナーでFDの隣に並びかけ、サイドバイサイドの状況となる。

 

 [カイザー]のチームメンバーが観戦する駐車場前のストレートで何と三浦は啓介をオーバーテイクする。

 

 「ヨシッ」

 

 今の成功を自分に褒め聞かせるように呟く。

 

 しかし安堵の先には左の高速コーナーが迎えにきた。

 

 勝負の行方は再び峠の闇の中へと消えていった。

 

 

 「なっ、、本当か!?……そうか、分かった…」

 

 黒川は携帯電話越しからの報告に驚きつつも、少し離れた[プロジェクトD]の面々に動揺が悟られぬよう平静を装った。

 

 そこに松井をはじめとする[カイザー]の面々が群がる。

 

 「どうやら三浦が抜かれたらしい…」

 

 「なんでって…!」

 「噓だろ、、」

 

 やはり彼らはいつもこの峠で走りこんで、三浦の速さを近くで見ている分驚きが隠せないようだった。

 

 「待て、それ以外驚くな。相手に悟られるぞ」

 

 そこに清水が静かにくぎを刺す。

 「あいつならまた巻き返すはずだ。落ち込むのは完全に負けてからだ」

 

 そう清水はメンバーをなだめる。

 

 最初は慌てふためいていた[カイザー]のメンバーは徐々に落ち着きを取り戻していった。

 

 (しかしながら[プロジェクトD]、簡単には勝たせないか…)

 

 はっきり言って開幕早々不利な戦況だ。

 

 せめて引き分けになれば二本目の走行での逆転もあり得る。

 

 (まさか自分が走るより、指揮するほうが大変だとは…)

 

 今はただ、三浦の実力に願うしかなかった。

 




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