自分は圧倒的FF派ですね
このキノコタケノコ戦争みたいなバトルはどちらが勝つのでしょうか、、
「 G O ! ! 」
上田の掛け声と腕が振り落とされる刹那、32はホイールスピンして甲高いスキール音と排気音を響かせて発進する。
次いで高木のCR-Xもホイールスピンをしてフロントが僅かに持ち上がる。
フロントタイヤが地面を捕えると車両は一気に加速する。
細かいコーナーを何個か過ぎるとまず一つ目のコーナーだ。それを抜けるとストレート区間に入る。
ストレートにおける単純なパワー勝負なら約20馬力勝る32の方が有利かもしれない。しかし今度はダウンヒル、重力によって普通以上に速度が乗る。
ドアミラー越しに見える風景はスクリーンで倍速に映しているかのように流れていく。
だが高木の視界の真ん中には目の前を走る32を捉え続けていた。
そしてストレートを飛ばしていた2台の前に小刻みなカーブが現れる。
2台はブレーキングを始める。
32は大きくキャンバー角を取っていることによりコーナリングは安定している。
お互いまた再びストレートに入り前半区間を越えて中後半の4連続ヘアピンから始まるテクニカル区間に差し掛かろうとしていた。
「さて、ここからだぞ」
金髪の男はほくそ笑んだ。
(こっからが見モノだな…)
2台の後方からついてきている上田は内心ワクワクしていた。
いつも高木の走りのテクニックはバトルに集中していてまじまじと観察する機会はあまりなかった。
それを走行中の後方からという特等席から見れるのだから心が踊らないということはなかった。
32とCR-Xの2台はようやく最初のヘアピンに侵入する。
高木の目の前の32はドリフトのきっかけを作るべく頭をコーナーとは逆側に大きく振る。
そして白煙を撒き散らし、爆音を立てながらコーナーをドリフトして曲がる。
一方高木のCR-Xはブレーキングポイントギリギリまで引きつけてブレーキングを始め、最小距離に留める。
そうして十分に速度を落としてコーナーに突っ込むグリップ走行をする。
一般にドリフトのメリットとしては、コーナーで速度を殺すことなく素早いコーナリングを実現できることだ。一方のグリップ走行は安定したコーナリングがメリットだ。
ドリフトを得意とするFR、グリップ走行のFF、両者の特徴が顕著に現れるバトルとなった。
次いで二つ目のヘアピン、一気にCR-Xはギリギリのフルブレーキングで32との距離を詰める。
高木はギリギリのフルブレーキングによって生じる慣性の力を全身で受け止める。
シートベルトが体に食い込み、内臓が絞り出されそうな感覚になる。目の前の視界には白煙の向こうに一気に大きくなる32を捉えていた。
32に乗る金髪はバックミラーにいきなり大きく映るCR-Xに驚く。
32はコーナーの脱出で一気に距離を詰めるCR-Xに狼狽えるかのように一瞬ふらつくがすぐに立て直す。
三つ目のヘアピンにおいて立場が逆転する。
三つ目のヘアピンの頂点の先は崖ではなく壁、32の金髪は目の前の壁にビビって中途半端に頭を振ったものの中途半端になってしまい、イン側を開けてしまった。
そこを高木は攻める。
ここぞとばかりにレイトブレーキングと精密で安定したライン取りで空いたインを差し、鋭く旋回する。
高木は先ほどと同じようにシートベルトに食い込む感覚に加えコーナリングでかかるGも感じた。
体が外側に吹き飛ばされそうな力をバケットシートが受け止める。
目の前の視界はようやく開けた。
金髪はこの果敢な攻めに呆気に取られていた。
「おい、マサ!抜かされたぞ!」
同乗していたキャップを被った男が声をかける。
我に帰った金髪は変な返事をした。
「マサ、あいつヤバイぞ!!」
「う、、うるせェ、あいつ、、、抜かし返してやるよ!!!」
次の四つ目のヘアピンでCR-Xは32を躱す。
そしてまたストレート区間に入る。
だがこのストレート区間は4連ヘアピン前のものと違いタイトで小さいコーナーが点在する。
高木はここをアクセル全開で駆け抜ける。
その意思に応えるが如く、B16Aは勢いよく吹け上がり、回転数を指し示す針は跳ね上がる。
その後を一息置いて32が追いかける。
直線の先に待ち受けるコーナーを前にハードブレーキをかける。
今まで以上に前につんのめり、体は前に飛ばされそうになる。
バックミラーには白煙を巻き上げてドリフトする32が見える。
その先のヘアピンを抜けて進むと2連続ヘアピンが待ち受ける。
先を走るCR-Xは安定したグリップ走行でアウト・イン・アウトの理想的なライン取りで処理していく。
対して32はここもドリフトで処理するがCR-Xに追いつこうと焦り、オーバースピードで突っ込み外側に膨らんでしまう。
コーナーの外側は山の土砂が積もっていた。
そこにリアタイヤが踏み入れてしまいリアタイヤは空転する。
そのまま路面に乗り上げてしまい、過剰な回転数となったリアタイヤによって車体はスピンしてしまった。
後輪駆動車はコーナリング時においては不安定になる。これは曲がろうとするフロントタイヤに対し、後輪は真っ直ぐな方向に力を伝える。やがて両方のタイヤはグリップを失い、地面を捕えきれずスピンしてしまうのだ。
32は大きな白煙を巻き上げながらスピンして運悪くコーナー内側の溝に足を引っ掛けてしまい、壁に車体を打ちつけてしまった。
壁に打ちつけた左側は大きく凹み、サイドミラーは原型を留めず、更に溝に引っかかったことで出られなくなってしまった。
「おい!だいじか?!」
2台の後を追いかけていた上田は車を路肩に停めて32に駆け寄る。
「イテェ、、おいショウ、大丈夫か、、、」
金髪はかすれた声で同乗していた男に問いかける。
「マァな、、、派手にやったな、、」
「おい、だいじかお前ら!!」
上田は割れた運転手側のドアミラーから無事そうな二人を見て一旦安堵する。
「出れそうか?近くの病院まで送ってやるよ」
「あぁ、すまねぇ、、、」
先程のバトルが嘘だったかのように、周囲はゴムやガソリンの匂いと静寂が包み込んだ。
「本当にスマねぇ、、こんなザマになってヨ、、、」
高木のCR-Xの助手席に乗った金髪は言葉を絞り出す。
「仕方ない、峠走ってるってことはそうゆうコトなんだ」
高木の言葉には峠という危険や死と隣り合わせのストリートを攻める重みを含んでいた。
32はクラッシュする運命なのか…
仁Dといい湾岸といい割と可哀想な扱いを受けているのは33ではなく32なのかもしれません(板金7万、ブロー、クラッシュ、等々…)
次回あたりから頭文字D本番と何かしらの関わらせていこうと思います